第2次世界大戦後のアメリカを舞台に、同じ故郷へ戻ってきた3人の帰還兵が様々な社会問題に直面しながらも再生していく姿を描いたヒューマンドラマ(モノクロ作品)。1947年・第19回アカデミー賞で作品賞・監督賞・主演男優賞(フレデリック・マーチ)、助演男優賞(ハロルド・ラッセル)など9部門に輝いた作品です。
戦争終結直後の戦場帰還兵の物語、これはめずらしいとNHKBSプレミアムで鑑賞しました!
監督:後に「ローマの休日」など数々の名作を生んだウィリアム・ワイラー。原作:マッキンレー・カンター、脚本:ロバート・E・シャーウッド、撮影:グレッグ・トーランド。音楽:ヒューゴ・フリードホーファー。
出演者:マーナ・ロイ、フレデリック・マーチ、ダナ・アンドリュース、テレサ・ライト、バージニア・メイヨ、キャシー・オドネル、ホーギー・カーマイケル、ハロルド・ラッセル、他。
あらすじ;
1945年8月に第二次世界大戦が終結した。陸軍軍曹アル(フレデリック・マーチ)、空軍大尉フレッド(ダナ・アンドリュース)、海軍水兵ホーマー(ハロルド・ラッセル)の3人の帰還兵がたまたま同じ軍用輸送機B=17に乗り合わせアメリカ中部の町ブーンシティ(架空)に帰還した。
ホーマーは両手が義手。器用にマッチを擦ってタバコに火をつけて、相手にも勧める。しかし、恋人が待っているというがどこか表情が暗い。フレッドは階級に似合わないぐらいに腰が低く、陽気だ。結婚して間もない妻が待っているという。アルはこの中での年長者、なんでこの人が軍曹なのかという、落ち着いた雰囲気がある。
それぞれが家族の元に帰った。
ホーマーは両親に暖かく迎えられてが、ホーマーの儀手を見た両親の複雑な表情を目にした。そして恋人ウィルマ・キャメロン(キャッシー・オドネル)を複雑な気分で抱擁した。気まずい気分を払うように叔父ブッチ(ホーギー・カーマイケル)が経営するナイトクラブに向かった。
フレッドの両親は沢山の勲章をもらって生還したことを喜んだが、妻のマリー(ヴァージニア・メイヨ)は家出してナイトクラブで働いていると知ら、すぐに妻を捜しにナイトクラブに向かった。
アルは豪奢なアパートに戻り、妻ミリー(マーナ・ロイ)、娘ペギー(テレサ・ライト)や息子ロブ(マイケル・ホール)に会った。彼は出征前、銀行の役員だった。妻は帰還を喜んでくれたが、娘は無関心、息子に至っては「日本人は家族の絆を大切にすると聞いた」と言い、「レーダーやミサイルに原子力が結びつけば悲劇になるから人類は共存すべきと物理の先生が言っていた」とアルが日本軍と戦ったことを批判するような発言をする。気分晴らしにと妻と娘を連れてクラブに出向いた。
ナイトグラブに集合
ホーマーは叔父ブッチの弾くピアノに惹かれていた。彼は傷痍軍人で年金が貰えるので就職を考える必要がなかった。これから両腕がない体でどう生きるか、その答えを探していた!
アルは戦争の憂さを晴らすように飲んだ。フレッドはアルに勧められて飲み、そして踊った。取っ払ったフレッドはアルの車で送ってもらい彼の豪邸に止めてもらうことになった。
夜中、フレッドは戦友が亡くなったときのトラウマで苦しみ、ペギーの介助を受けて彼女の優しさが忘れられないものになった。
翌朝、フレッドはアルに車で送ってもらったマリーのアパートに戻った。
マリーは大喜びで、制服で劇場に行って友達に勲章をもらった話をして欲しいと言い出す。フレッドは仕事を見つけなければならないと言いながら、これを受け入れた。
仕事探し、
アルは元の職に戻って欲しいという頭取の希望で、融資部長として復職した。最初の仕事が新規事業を始めるという復員兵への融資だった。担保なしで融資したことで、頭取から注意を受けた。
帰還祝いのパーティーで挨拶に立ったアルは「戦場で攻撃せよと指示されたが勝目がないと断りえらい目にあった」話をして、「復員兵には担保がなくても積極融資をする」とスピーチして、大喝采を得た。これを聞いたミリーがことの他喜んだ。出征前のアルは堅物で融通が利かない男だったようだ。
フレッドは元のドラッグストアーを訪ねた。後輩が彼に職に就いており嫌だったが、マリーにせかされ、薄給ではあったが、香水売り場の職に就いた。そこにペギーがやってきた。フレッドは驚いた。ペギーを送り出すとき、思わず抱きしめた。これにペギーも驚いた。
ホーマーは家に籠って、人を近づけず、猟銃射撃などで過ごす。ウイルマが訪ねてきてもそっけない。そんなホーマーにウイルマは昔と同じように愛していると伝える。ホーマーは戸惑っていた。
フレッドとペギー
ぺギーはフレッドの気持ちを知ろうとフレッドとマリー夫婦をクラブに招待した。マリーは放縦にフレッドより他の客たちと楽しそうに過ごす姿を見て、フレッドに惹かれていった。
こんなペギーにアルは「妻のいるフレッドとは付き会うな!」と注意した。アルはフレッドをクラブに招いて、「ペギーとは付き合わない」と電話するよう促した。そこにはピアノが弾けるようになったというホーマーがいた。アルがピアノを弾くホーマーに話しかけているとき、フレッドは「君に特別な気持ちはない。会うのはよそう」と電話した。このシーンはアルとフレッドのふたつの行動が深度の深いカメラで同じ画面に収められていると話題になったシーンらしいです。
ホーマーとウイルマ
ホーマーがフレッドのいる店に顔を出すと、そこにいた客から「日本やナチスは共産主義を絶滅出来たのに我々は英国に利用されてしまい、無駄な犠牲を払た」と批判され、ホーマーが怒って殴りかかろうとするところを、フレッドがホーマーを庇ってその客を殴り倒した。フレッドはこれで店を首になったが、ホーマーに「結婚しろ!俺が立会人になる!」と伝えた。
町を出るようにと家族に言われたウィルマはホーマーを訪ねそのことを彼に伝えた。ホーマーは避けていたウイルマを寝室に呼び入れ、両腕の義手を把持して何もできない自分の姿を見せるとウイルマがパジャマのボタンを留める。この姿に感激したホーマーは「愛している!」と本心を打ち上げた。
フレッドの再就職
フレッドがアパートに戻ってくると、マリーが男を呼び入れていた。フレッドは男を殴り、荷物を持って、別れて新しい仕事を探すと空軍基地の飛行場に向かった。
飛行場には大量の爆撃機が解体され横たわっていた。フレッドはその一機に乗り込んで懐かしんでいるとあのトラウマに襲われた。これを乗り越えるにはどうするか?
そこに解体爆撃機を管理している男がやってきて「仕事がないなら解体を手伝わないか?」と仕事の話をもってきた。フレッドは新しい物に生れ変えるこの仕事に意義を感じ、就職を決めた。
ホーマーとウイルマの結婚式。
ここにはアル夫妻、ペギーも招待されていた。結婚式のシーンではふたりの誓の言葉を述べるシーンがとても丁寧に描かれます。誓の言葉に促されるようにフレッドはペギーの元に近づき、やさしく抱擁した。
感想:
戦争が終わった次の年に、この作品。淀川さんが言うように「本当は最悪の年なんですね。この3家庭を通して、アメリカを見事に見せたんです。うまいんですね」というように暗い社会を救った作品でした。タイトルが見事だと思います。
物語は淡々と語られるというか、まるでそこに居合わせたようは平凡なストーリーですが、リアル感があり、アメリカは勝利したのにそこには大きな悲劇があり、戦争の無意味さが伝わる作品になっています。この時期に、この作品!映画の役割がありましたね!
「アメリカ本国には戦争被害はない」と思ったが、使用することがなくなった爆撃機の墓場や帰還兵には戦争の大きな傷が残っていた。これがリアルに描かれる。ワイラー監督が戦場を経験していたからでしょうか、すばらしいです。
そして新しく生きていくという帰還した3人の生き様がいい!
語られない戦場の傷。ホーマーは恋人と別れる決意で戻ったが、同じ悩みを知るフレッドに励まされ、ウィルマの愛を受け入れ、予想される困難をふたりで克服するであろう長い結婚の誓の言葉!
戦場と平時の生活は全く異なる。戦場では英雄であっても平時をうまく生きるとは限らない。フレッドは名爆撃手という名誉を捨て、新しい仕事を得てミリーとともに新生活に踏み出す!マリーはちょっとひどい嫁でした!(笑)
アルは戦場で自分本位の自分を見つめ直し、復員兵に暖かい手を差し伸べるようになった。
印象的なのは、語られる部分は少ないが、ホーマーの物語で、ハロルド・ラッセルの不安な表情演技が冴ていた。次いで、トラウマを抱えながらも新しい環境に勇気をもって飛び込んでいくフレッドの物語。
アルの生き様はよく分からなかったが、演じたフレデリック・マーチがアカデミー主演男優賞!「復員兵への暖かい手を!」という社会的要求によるものだったんですかね!
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