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「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014)怪獣映画ではない、“映画”でしか説けない人の生き方!

かつてヒーローだった「バードマン」を演じた男が、再び名声を取り戻そうと人生に翻弄される姿を描いた作品。第87回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本、撮影賞を受賞。

WOWOWアカデミー賞特集アンコール」として放送された作品。当時、全編1カット撮影作品として騒がれ、劇場で観ましたがよく分からず、感想も書きませんでしたので、いい機会と見直しました。

監督:「バベル」(2006)「レヴェナント: 蘇えりし者(2015)」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコボーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr. アルマンド・ボー。撮影:「ゼログラビティ」のエマニュエル・ルベツキ美術:ケビン・トンプソン、衣装:アルバート・ウォルスキー、編集:ダグラス・クライズ、スティーブン・ミリオン。音楽:アントニオ・サンチェス。

出演者マイケル・キートンザック・ガリフィアナキスエドワード・ノートンアンドレア・ライズボロー、エイミー・ライアンエマ・ストーンナオミ・ワッツ、他。


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あらすじ

かつてスーパーヒーロー映画「バードマン」で世界的な人気を博しながらも、現在は失意の底にいる俳優リーガン・トムソン(マイケル・キートン)は、復活をかけたブロードウェイの舞台に挑むことした。レイモンド・カーバーの「愛について語るときに我々の語ること」を自ら脚色し、演出も主演も兼ねて一世一代の大舞台に挑もうというもの。

ところが相手役の男優ラルフ(ジェレミー・シェイモス)が大怪我をして降板。代役に実力派俳優マイク・シャイナー(エドワード・ノートン)を迎えるが、彼はリアルな芝居の標榜者でリーガンと共演して自分の芝居を見せつけてやろうと企んでいた。プレビュー舞台で、「セットが偽物だ!」と暴露するし、幕間で相手女優のレズリー(ナオミ・ワッツ)とセックスをやってそのまま本番の幕が開く。(笑)それでも舞台は大喝采で、彼の評判でキップが完売。マイクの行動にリーガンは精神的に追い詰められていった。

リーガンはこれまで映画に打ち込んできたために家族サービスを怠り、妻シルビア(エイミー・ライアン)とは離婚、娘サム(エマ・ストーン)は麻薬に走った。レーガンはこの舞台でサムとの仲を取り戻そうと自分の付き人とした参加させたが、薬を隠し持っていることを知って大喧嘩!

最後のプレステージ。

リーガンは「今回は上手くいってくれ!」と準備していると、あろうことかマイクとサムの仲を知った。「なんたること!」と劇場出口ドアーの外に出てタバコを吸ったが、ドアーに鍵が掛けられ、バスローブの裾がドアーに挟まれ、元に戻れない。しかたなくバスローブを脱いで下着姿になって街を歩き劇場の正面玄関から入って舞台に上がり、肌のままで演技を終えた。(笑)娘サムが「これよ、パパ!」と励ます。

ところが、裸で歩くリーガンの姿SNSにアップされ「あのバードマンが!」と大評判になった。(笑)

リーガンは舞台を止めようかと弱気になったが、バードマンが出てきて、「お前ならやれる」と元気づけてくれる。バーで飲んでいると高名な舞台評論家・タビタ(リンゼイ・ダンカン)に出会った。彼女に挨拶すると「観ないでも結果は分かっている。明日の上演でお仕舞!」と罵倒された。「あんたはレッテルを貼るだけの評論家!」と激しく反論した。

リーガンはウイスキーを買って飲みながら劇場に帰り始めると、バードマンが現れ、「飛べ!炎の中を奔れ!」と囁く。リーガンはバードマンになって悪と戦い、空を飛んだ。そして、ベンチで過ごして朝になって劇場に戻った。

公演初日、

劇場に戻ったリーガンは舞台を見届けにやってきた妻シルビアに励まされ、ラストシーンの呼び出しに、マイクに勧められたように実弾を拳銃に込めて、血のりのペイントを断って舞台に上がり、俺はいつも愛を願う側だ!君の望む男になりたがったが、今は俺以外の誰かになりたい!」と頭を撃った。この演技に観客はスタンデイングオベーションで答え、タビタの論評は「無知がもたらす予期せぬ奇跡」と書かれ、TVでは「リーガンが復活した」と報じられていた。

目覚めたレーガン、顔が包帯で覆われていた。これで妻と娘の見舞を受けた。プロデューサーのジェイクは「大成功だ!」と歓声を上げた。

レーガンはトイレットで自分の顔を見た!鼻がバードのように膨れ上がっていた。傍にいるバードマンが“しょぼん”としている。彼は部屋の外で鳥が飛ぶのを見て、俺は飛べるか?と飛んだ!(笑)

あとからやってきたサムが父が部屋にいないことに気付いた!外を見て、空を見上げ微笑んだ。(笑)

感想ねたばれ:注意):

映画と舞台の世界をブラックユーモア全開で見せながら、役者の名演技とノンストップ撮影でリアルに描き、「人生での、幸せとは何か」を問うという、監督の作風をたっぷりと楽しめる作品でした!

冒頭、「この人生で望みを果たせたか?」と聞かれ、「果たせたとも。“愛される者”と呼ばれ愛されると感じること」(レイモンド・カーヴァーの言葉)と答え、バードの生息地からバードマンが火の弾になってやってくるシーンから物語が始まります。そして、このシーンの逆が、リーガンが頭を拳銃で撃った直後に出てきます。「“愛される者”と呼ばれ、愛されると感じること」「本作のテーマ」です。

バードマンとして持て囃されたリーマンの20年後。「ひと旗上げたい!」とカーヴァーの短編小説「愛について語るときに我々の語ること」を引っ提げ、ブロードウエイで演出、自らが主演する。こんな無鉄砲なことは奇跡でもなければ出来っこない!

この小説のラストシーンのセリフ「俺はいつも愛を願う側だ!」と自分の頭を拳銃で撃って愛に目覚め、評論家から「これは奇跡!」と評価されたというエンデイング(笑)、これは上手い脚本でした!

今は冴えないバードマンに、初代バットマンでその後出番のないマイケル・キートンをキャステイングするという皮肉?いや名キャステイングの妙に脱帽です。キートンの演技がすばらしかった!

さらに、マイクに幕間でセックスを迫られ「初めてのブロードウェイでまだ認めてもらえない!」と泣くレズリー役のナオミ・ワッツ。彼女もなかなか売れない女優であっただけに、絶妙なキャステングでした。(笑)

キャステイングの妙を楽しめる作品でした。

リーガンは座禅を組み空間浮遊してからリハーサルに参加。リハーサル中に照明が落下してラルフが負傷する。リーガンは一連の行動に「自分には特別な力がある」と信じている。プロデューサーのジェイクは「馬鹿な!と笑う。この他にも特別な力を信じるリーガンの映画ならではの描写が続く。「映画でも可能だ」と言わんばかりに全編ワンカット描写、この作品にはこれが絶対に必要だった!そしてラストシーンこれが映画です!

これに対して、舞台俳優のマイクと舞台評論家のタビサが、ハリウッド映画への反旗を翻すかのように、かっての人気映画俳優リーガンをぼろくそに叩く。これにリーガンも反論する。尺の1/2はこれ!“両者ともに正しい”とリアルな演技を楽しみました!(笑)

「映画俳優である前に父親であって!」と娘サムの登場。「話題にもならないものやってどうするの?SNSを無視するようではダメ!」と父をくさし、父に殴られたマイクに恋して父のバカ夢を覚まさせようとする。父のパンツ姿がSNSにアップされると「これよ、パパ!」と励ます。

薬上がりの表情がよく出た大きな目、痩せた体、入れ墨、激しい父親とのやり取りがラストで意味深な笑みに変わり、この笑みに“作品のテーマが託される”というみごとなエマ・ストーンの演技でした!

誰しも過去の栄光に捉われ苦悩します。自分を失わず、家族を愛し、愛される道を選ぶことの大切さを教えられる作品でした!

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