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韓国映画「私の頭の中の消しゴム」(2004)記憶が消えても消えないものがある! 泣けます!

韓国映画が観たい!と、WOWOWでぶち当たったのがこの作品。タイトル名が洒落ていて早速鑑賞。

日本のTVドラマのリメイクであったとは知らなかった!タイトルから想像できるようにアツツハイマー症に関わる物語ですが、全く暗さがない!それでいて結構泣け、この病にどう対処すべきかとひとつの答え、“コンビニ店のコーラ缶”これがすばらしい!! (笑)

アルツハイマー症に関する映画では「明日の記憶」(06) 「アリスのままで」(17)を観ましたが、これに並ぶ、いや、エンターテイメント視点ではこれ以上の作品ではないでしょうか。

韓国では大ヒットしたそうですが、当時の韓国の建築ラッシュを考えると“宜るかな”と思わせてくれる作品でした。韓国映画にはこういう社会風刺がある作品が多々ありますが、ポン・ジュノ監督の「ほえる犬は噛まない」(2000)も然りで、大喝采だったでしょう。

監督・脚本イ・ジェハン撮影:イ・ギョンジュ、編集:ハム・ソンウォン、音楽:キム・テウォン。

出演者:「無垢なる証人」のチョン・ウソン「愛の不時着」ソン・イェジン、他。


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あらすじ

電車を同じホームで待っていたスジンとチョルス。来た電車にスジンは乗らなかった。待ち人来たらずだった。チョルスは仕事疲れでベンチに寝込んで乗らなかった。

スジンがコンビニでコーラ缶を買って、支払いをして外に出て聞きづいた!コーラ缶を店に置いたままだった。取に戻ると、チョルスが飲んでいた。スジンはこれを取りあげて飲んだ。ふたりの出会いはコーラの横取りだった。(笑)

こんなふたりがなぜ結婚したか?前段は、結構尺を取って、とてもコミカルに描かれます。

チョルスは寺大工(チャン・イナン)から建築の面白さを教わって、現場監督をしながら独力で建築士資格を取ろうとしている、いつも労務者風体のむさ苦しい男だった。建築現場ではセメント量や養生時期などセメント強度など建築強度について非常に厳しく監督し、周りから煙たがられていた。しかし彼はこんなことが全く気にかけない。アパートに戻れば、建築士の勉強だった。

スジンは父親が建設会社社長の娘で、アパレルメーカーに勤めるOL。ソ・ヨンミン室長(ペク・チョンハク)と不倫関係にあるが、どうやらうまくいかなくなったらしい。

アパレルメーカーの建物補修が必要になり、スジンの親父さんに電話すると「いい職人がいる」と紹介されたのがチョルスだった。仕事の合間に飲んだのがコーラ缶だった。(笑)

彼と別れ会社を出たところで、オートバイで近づいてきた男にバックをひったくられた。これをバックミラーで見たチョルスがドアーでオートバイを引っ掛けて、男からバックを取り戻した。ウインドガラスが壊れた車でスジンを自宅に送ることにした。(笑)

これを契機にふたりの交際が始まった。屋台で飲んで、バッテイングセンターでのデート、どうしょうもない不器用なチョルスのデートに笑いです。これを楽しむよう流れるラテン音楽が面白い。(笑)

チョルスは「結婚は身分差があるから」と躊躇したが、ふたりは結婚することにして、スジンはレストランで家族にチョルスを紹介した。父(パク・サンギュ)がチョルスの顔を見るなり「許さない!」と激怒した。あまりのことで席を外して化粧室で倒れた。チョルスが抱き上げ必死 に病院を探した。チョルスのこの行動で、結婚が許された。

豪華な結婚式だった。チョルスは建築士の資格を取って、高級住宅の建設を任されることになった。いよいよ順風お満帆の人生と思っていたが、・・。

スジンは物忘れがひどくなり、自分の家への道順も忘れてしまうようになった。

チョルスは自分たちの家を建てることにした。チョルスは世話になった寺大工を思い出しスジンを会わせた。この時、チョルスが母親と断絶状態であうことを知って、義母になる人だから赦して欲しいと説得した。チョルスは服役中の母を訪ね、「産まなければよかった」と毒づく母を許した。

スジンは室長から元の関係に戻したいと言い寄られ、会社を辞めてチョルスのために尽くすことにした。スジンは病院で診察を受け若年性アルツハイマー症と診断された。チョルスに病院で何があったかと聞かれ「頭に消しゴムがある」と答えた。「別れて欲しい」と頼んだがチョルスが「君が忘れても、俺が全部覚えていてあげる」と許さなかった。

スジンは記憶に残るように絵や日記をいっぱい書いた

スジンは義母の誕生会をするためにパーティーを計画していた。そこに室長が現れ、チョルス不在中に彼を招き入れたことにチョルスが激怒して暴力を振るった。原因がスジンに記憶が消えていたことだった。チョルスはスジンの愛が分からなくなった。

こんなチョルスの状態を見て、スジンの両親がスジンを引き取り終身ケア施設に預けた。

チョルスは苦悩の中でスジンの書き残した手紙を読み、辿りついたのは・・・。


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感想

愛の記憶が消える!どんな世界になるのか?人は記憶で生きているから、怖いですね!

前段でコミカルな物語が後段でシリアスなヒョーマンドラマに変わるという大転換。驚きましたね!それだけに、最高に泣けるラブストーリーになりました!

チョルスはアルツハイマー病のスジンをやっと受入れ、終身ケア施設から彼女を引き取りました。コンビニでコカ・コーラ缶を買うとスジン笑顔が戻った。車の中で自分が彫った木彫りのマドンナ像を渡すと、スジンがこれを握り、チョルスを抱擁してきた。彼女の記憶は“ここに”残っていた。恐らくふたりはコーラを買い、車でデートする毎日。毎日が初めてのデートの生活になりますね!

大泣きで、いい結末でした。

脳幹の記憶に訴えるという、面白い発想ですね。(笑)脳にある写真や思い出の話でなく匂いや味、皮膚などに記憶が長く残っていると信じたいですね。これを信じて最後まで看取る決意こそが大切です。

チョルスがアルツハイマー病のスジンの愛を受け入れることができたのは、彼の心の部屋を赦しのために空けることができたこと。このことはスジンが自分を捨てた母を許せないというチョルスに「本当の大工は心の部屋を作ることができる」と教えたことだった。このネタがここで生きてくるというプロットがすばらしい。

母に捨てられ、愛を知らず、他人に厳しいチョルスというキャラクターの設定。これで当時韓国は建設ブームで不正建設が横行していたが、頑固なチョルスがこれをこっぴどく叩いて、社長令嬢のスジンと結婚するプロット

ふたりの結婚に対するスジンの父の激しい怒り。これも身分制度が今なお残っていることへの批判、貧富差社会への抗議だったかもしれませんね!

韓国社会の世情をうまく組み込み、アルツハイマー病にどう対応したらよいかを問うという、よく出来た脚本でした。韓国映画はなんでこんなに映像が美しいんだ!

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