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「エルヴィス」(2022)「エルヴィスを蘇らしてくれてありがとう」と言いたい映画だった!

ロック・シンガーとして音楽の世界に革命をもたらし、42歳の若さでこの世を去った伝説のスーパースター、エルヴィス・プレスリー知られざる真実を語るという。何故エルヴィスがスーパースターになれたのか?その死の謎は知りませんでしたが、エルヴィスの歌をよく耳にした者としてはぜひ観たい作品でした!

監督:ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン原案バズ・ラーマン ジェレミー・ドネル、脚本バズ・ラーマン サム・ブロメル クレイグ・ピアース、撮影:マンディ・ウォーカー、美術:キャサリン・マーティン カレン・マーフィ、衣装:キャサリン・マーティン。編集:マット・ビラ ジョナサン・レドモンド、音楽:エリオット・ウィーラー。音楽監修:アントン・モンステッド。

出演者:オースティン・バトラー、トム・ハンクス、ヘレン・トムソン、リチャード・ロクスバーグ、オリビア・デヨング、ヨラ、デイカー・モンゴメリー、他。

貧しい家庭に生まれ、黒人音楽の中で育ちブルースとゴスペルをベースに革新的な音楽を身につけたエルヴィス(オースティン・バトラー)とカーニバルの興行師で興行師として成功した敏腕マネージャー・トム・パーカー大佐(トム・ハンクス)の物語。エルヴィスはどのようにしてスーパースターになれたか、人気絶頂の彼が早逝。その死の謎を追うというもの。

世界史上最も売れたソロアーティスト。彼がいなければビートルズも、クイーンも存在しなかったと言われますが、それが分かる作品です。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

冒頭で、カーニバルの興行風景をバックに、カーター大佐に「エルヴィスサイドは俺のことをペテン師、詐欺。儲けの50%を搾取したというが、ギャンブルだ。私は彼の大興行主だったと信じている」と語らせ、いきなり、ジャンプスーツのエルヴィスがステージで、くねくね腰で踊りながら歌い、女性たちが熱狂するシーンに移行。「エルヴィスを作ったのは俺だ!」とカーターに云わせて、ここから時程に捉われず、エルヴィスのロック歌手としての成長が描かれます。

ラーマン監督らしく、オペラを見ているように美しく、テンポがいい。2時間半がアッと言う間に過ぎてしまう。

エルヴィスは1935年ミシシッピー州トゥペロの農家に生まれ、黒人住居区に住んでいた。彼は黒人たちが歌うゴスペルに接し、集会所で男女がくっつき激しく歌い踊る様を除き見し、遂に中に入って踊るようになる。これが愉快に描かれ、エルヴィスが腰を振って踊る原形を見ることになります。13歳のとき父親の金銭トラブルでメンフィスに転居。ここでブルースやカントリーなど沢山の音楽要素を組み合わせて独自の音楽を作り上げていった。

1955、エルヴィスはハンク・スノー(デビッド・ウェンハム)らと組んで興行にでたが、「黒人の歌は嫌だ」と彼らが去って行った。エルヴィスはルイジアナの小さなライブで歌っていた。パーカーがこのライブを見にいった。その時、エルヴィスは最初歌い出せず震えていたが、「ベィビー、ベィビー」と歌い出すと客席から「長い髪切れ!」と声が掛かった。

この声に吹っ切れてように歌い出した。この歌に、パフォーマンスに、女性たちが興奮しだす。「もっと激しくやれ!」の声。パーカーが「これは断禁の実だ、売れる!」と断定した瞬間だった。

パーカーはツアーに出ることを勧めるが、両親が「パーカーの目がいけない」と反対した。(笑)エルヴィスは「喰わせてやる、車を買ってやる」と母親を説得した。(笑)

各地で熱狂的に歓迎されたが、「腰ふりはだめ」「共演はしない」と批判もあった。このツアーでディキシー・ロック(ナターシャ・バセット)と恋仲になったが、パーカーが断った。

パーカーはサン・レコードと手を切り、「これがビジネスだ!」とRCAレコードに移籍させた。

観覧車の中でエルヴィスはパーカーに「キャプテンマーベルが好きなんだ。空を飛びたいんだ!」と注文を出すと「飛ばせてやる!」と返事した。

1956RCAでのレヴュー曲「ハートブライク・ホテル」が大ブレイク。この1曲で全てが変った。エルヴィスは両親に豪邸と母親にピンクの車を贈った。「トラック運転手が歌手になってもう大邸宅だ!」とニュースになった。

エルヴィスへの批判も出てくる。「わいせつで白人を貶めている」、「白人が黒人の歌を唄う」、「人種の融合だ!」という肯定的な意見もあった。が、ライブがキャンセルされる。パーカーは「“新生エルヴィス”だ」とエンビ服での公演を決めた。ところが街の人は「印象が違う!」とこれを嫌がる。エルヴィスが街を歩いても人気に陰りは見えなかった。

B.B.キングのライブを訪ねると「E.p、E.p」の大歓迎。キングも派手にやっていた。「お前、自立しろ!エンビ服なんぞ止めておけ!」と忠告された。ここで話しているところを当局に写真に撮られ、暴露された。エルヴィスは「本物を見せてやる!」とステージに立った。女性たちが絶叫する!下着が飛んでくる!これを見たパーカーが激怒した。

エルヴィスは徴兵を課せられた西ドイツに派遣された。エルヴィスはここで米軍将校の娘プリシラに恋した。パーカーは「除隊したら俳優として再出発する」ことにしていた。

除隊したエルヴィスは映画に進出、メンフィス・マフィアと一緒になり、夢のような結婚をした。ハリウッド史上最高の俳優だったが、音楽ではビートルズらの世界になって行った。時代が大きく変化していた。「エルヴィスは大コケだ!」とニュースの話題になりだした。プリシラが歌を聞きたいという。エルヴィスも歌いたくなった。

1986年4月キング牧師が凶弾に倒れ、パーカーはすっかり弱気になっていた。

その時、NBCTVプロヂューサーのステーブ・ピンダーが「クリスマスソングは苦手かもしれないが、今、君の歌が必要だ!」と番組への出演を促した。後に“68カムバック・スペシャル”と呼ばれる番組です。パーカーは「クリスマスソング以外歌うな!」と釘を刺したが、一曲目にハートブレイク・ホテルを歌った。大変な盛り上がり、続いて監獄ロック、これがまた大盛り上がり。パーカーの要望もあり出だしはクリスマスソング だったが、「IF I CAN Dream」を歌った。この歌は素晴らしかった!オースティン・バトラーがエルヴィスに見えた!

高視聴率だった。

エルヴィスは海外ツアーをパーカーに求めたが、許さなかった

 パーカーはラスベガスのインターナショナルホテルでの興行を勧めた。エルヴィスも新しい歌を出すとこれに従った。大盛況だったが、裏にパーカーの陰謀があった。ホテルの社長に、博打の負債をエルヴィスの写真とカレンダーなどの権利譲渡で補うというものだった。

ステージ上からエルヴィスがパーカーを名指して「抜けられない!俺のことを信じない!」と歌うシーンは傑作です!(笑)パーカーはこれを無視して契約書にサインした。

パーカーはフアンに異常なサービスをするエルヴィスに妻のプリシラが嫉妬していたという。

プリシラはエルヴィスに「パーカーを替えて!」と懇願した。エルヴィスはパーカーに「ヨーロッパと日本に行きたい」と再度要求したが、「警備に問題がある。国内ツアーをやってからだ!」と断ってきた。

エルヴィスの国内ツアーが始まった。彼は疲労困憊して薬を使うようになった。衛星放送が稼げると、こちらにも進出した。

薬を使うことに堪えられなくなった妻プリシラの言い出しで、離婚することになった。ふたりは泣いた!

エルヴィスは倒れてもステージに立つという状況に追い込まれ、ステージ上で「FBIを呼んでくれ。俺は閉じ込められている。パーカー大佐のせいだ!」と歌った。幕が下り、エルヴィスはカーターに「首だ!」と伝えた。しかし父親がカーターから借金をしており、首にはできなかった。

1年後「ジャクソンでエルヴィスが5年ぶりに公演。身体が肥大化しているが大丈夫か?」というニュースが流れる。

プリシラが娘を連れて空港に会いにきた。プリシラが「これが終ったらサンチェゴで静養して欲しい、ジェットは準備してある」と伝えた。エルヴィスは「俺はもうすぐ40歳だ。忘れられる!誇れるものが何もない!」と言い残して飛び立っていった。

エルヴィス、42歳で死去。

まとめ

「エルヴィスを蘇らしてくれてありがとう」と言いたい映画だった。オースティン・バトラーがまるでエルヴィスだった、すばらしい!

冒頭で、トム・パーカー大佐に「おれが50%エルヴィスの儲けを喰ったと言うが、エルヴィスは俺を信じていた」と語らせ、エルヴィスが世に出るには大佐が必要だったことをしっかり描き、エルヴィス倒れて1年後、再起をかけてジェットで「一度でも着陸したら死ぬ」と飛び出した姿を映し、彼の死を伝えてその死因は何であったかを問うてくる。

誰しも、大佐だ!ニコポラス医者だ!と想像するでしょう

 ところが監督はここで、パーカー大佐のナレーションを止めて、自分の言葉で「死因は歌だ、歌が彼を殺した!」と結論づけ、エルヴィスが、醜い太った彼が、囁くように歌う姿を映し出して、エンデイングを迎える。この演出!この歌がよかった。

監督のエルヴィスに歌わせかったこと、無念の気持ちがしっかり伝わってくる。泣いた!泣いた!あの日のエルヴィスがいた。演出がすばらしい!

たった42歳での死だった。・・・

プリシラとの別れの際、「俺が50歳で、お前が40歳になったらもう一度一緒になろう」と泣いたエルヴィスに、せめて50歳まで歌わせたかった!

この作品が公開される意義。人種問題で混乱する今、いい時期にエルヴィスを蘇らしてくれたと思います。彼は白人でありながら、彼の歌がゴスペラに原点があったため、ベトナム戦下のアメリカ民衆が彼の歌を欲したにも関わらず、官憲に抑圧された。エルヴィスの歌は時代の歌だ!いかにビートルズやクイーンに先んじていたかが分かります。

オースティン・バトラー、トム・ハンクスの文句ない演技、アカデミー賞を期待しています!

再び青春を貰ったような作品、監督に感謝!すばらしい映像だった!

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