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「メインストリーム」(2021)“いいね”は猛毒!

人気YouTuberへと駆け上がろうとする若者たちの野心と狂気を描くという今時の作品、アンドリュー・ガーフィールドが主演を務めている作品ということで、WOWOWで観ました。

監督ジア・コッポラ、脚本:トム・スチュアート ジア・コッポラ、撮影:オータム・デュラルド・アーカポー、美術:マシュー・パーカー、衣装:ジャッキー・ゲッティ、編集:グレン・スキャントルベリー、音楽:デボンテ・ハインズ。

出演者アンドリュー・ガーフィールド、マヤ・サーマン=ホーク、ナット・ウルフ、ジョニー・ノックスビル、ジェイソン・シュワルツマン、他。


www.youtube.com

あらすじと感想(ねたばれ:注意):

ロサンゼルスで暮らす女性フランキーは、寂れたコメディバーで働いていた。店主には子細なことで叱られ、アパートに戻っても話す相手もいない人の温かみを感じない生活の中にいた。唯一の慰めは映像作品をYouTubeで公開することだった。

ある日、街を撮っていて、熊の縫いぐるみでチーズの宣伝をするリンクがフレームに入った。彼に「何を撮った?」と聞かれ、「あの広告!」と指さすと、彼がその広告紙を壁から外し、通りかかる人々に「アートを喰え!アートを喰え!」とパフォーマンを見せると大変な人だかりができた。この映像をYouTubeにアップロードするとこれまでつかなかったナイスとコメントがついた。もうびっくり!

リンクは定職を持たない何でも屋。老人の車椅子押し、車のウインドウ拭き(1ドル)、子供の遊び相手等。親は亡くなったとしか言わない。スマホ嫌いだった。そんな彼に誘われ中国料理を食べたが、彼の話とパフォーマンスが面白かった。

ガーフィールドの演技がめっちゃめっちゃ面白い。ふたりがテーブルの下に隠れて話すシーンは笑える!そんなリンクをアパートに連れてきて聞く話「今は誰でもダメ人間だ。誰も居心地が悪い、ブチ切れているんだ。中には人間でなく動物だと思っているやつがいる。身体を間違えて猫だと思っているやつにスニーカーを宣伝してもムダだ!」。

フランキーは「彼は話術の天才だ!」と、バーの同僚で歌手のジェイクを誘って、YouTubeを作ることにした。ジェイクは「7歳の姪はYouTuberが子守代りだ!中身のないYouTuberを神だと崇めている」と参加することになった。(笑)

簡単で安く作れるものと、#糞みたいな日常、#カクテル、#パイナップルなどリンクの喋りとパフォーマンスでアップロードすると、どんどんナイスが増えて、YouTuber“ノーワン・スペシャル”となった。結構SNSの軽率さを突いているとは思ったが、これが面白いとは思わなかった。が、リンクは「俺は生まれ変わった!」と真っ裸で街を歩く。(笑)これは大傑作でした!(笑)

これに目をつけたのが売れっ子YouTuberのファンパ。リンクとファンパの共演が実現して、リンクの「明日の夜、フォーストーン墓場でパーティーやろう」とツイートしたことで、まさかの盛大な墓場パーティーが出来た。ここでのリンクは女の子たちの輪に入って薬を吸っていた!

パーティーの盛況を知ったファンパのマネージャー・マークが企業広告を貼って稼ぐYouTuberを勧めた。リンクたちはスタジオを借りて製作を開始。

フランキーが「スマホは必要かをゲームでやりたい」と提案し、スタジオで撮った。小さなステージにわずかな聴視者を入れたスタジオ。カンペと拍手催促で撮った。(笑)聴視者の中から一人の男(予め決めていた)をステージに揚げ、スマホを取りあげ、スマホと賞品のどちらを選ぶかをリンクと視聴者が競うゲーム。他愛もないゲームで、どこが面白いのか分からなかった。この動画にどんどんナイスがつき740万になった。(笑)

こんな動画をじゃんじゃん作って、あっという間にリンクは売れっ子YouTuberになったが、その人気もすぐに下がり出す!

リンクはジェイクと揉めて「ネット上の人格を変える」と自分で脚本を書くことにした。

リンクはステージにモデルのイザベルを迎え、モデル前の痣がある顔をちらっと映像で見せて、「スマホと虚栄心。本当の君を見せるか?」と問う。視聴者は見たがる。イザベルが拒否する。リンクがこれを巧みに“見せる“に同意させてナイスを取る。「やりすぎ!いじめだ。世間を皮肉って最悪なことをしている」とジェイクはリンクと決別し去っていった。フランキーはリンクが無理強いするシーンをカットしてアップロードした。

リンクは人気司会者テッドの生番組に出演し大物インフルエンザーたちから「あなたのテーマはSNSに依存するな!だが、あなたが有名になっているのはSNSを軽蔑している。イザベルを泣かせたのはあなたの主義に反する」と非難された。リンクは「それはカットされたシーンだ。よく見つけたな!泣いたあとイザベルはやりたと言ったんだぞ!」とやり返した。そのあと「本当の俺を見せてやる!」とテーブルに上がり“うんこ”をしてインフルエンザーたちに突きつけた。(粘土だったのだが)会場は騒然とした。ナイス数が一挙に上がった。これには笑った!

これをスタジオで聞いていたフランキーは「終わった!」と思った。フランキーはバーで歌ってるジェイクに相談した。ジェイクは「やつは嘘つきだ。金持ちの子だ。学校に放火して施設に入っていた。目を覚ませ!」と忠告した。そしてカット映像を流出させたのは自分ではないという。それでは誰が流出した?

フランキーが悩んでいるところにリンクが戻ってきて「YouTubeの生放送特番に出演する」という。フランキーはほっとした。

フランキーが会場に足を運ぶと「リンクは死ね!」「ノーワン・スペんシャルは退場せよ」コールに溢れていた。フランキーはリンクが襲いかかってくるようで怖くなった。

リンクはダンサーたちとステージに上がって踊って、パフォーマンスを見せて、話しかけ始めた!

「イザベルが死に謝りたい。悪かった!謝りたい!しかし、君たちが彼女を崖から落としたんだ。それが真実だ!俺も殺す気か?そうはさせん、画面の後ろに隠れているやつ出て来い!イザベルをナイス稼ぎにしたかもしれないが、それは君たちのためだ!これがSNSの弊害だ!リアルに向き合えず、利用し合うだけだ」「最高なのはお前らと俺が同じこと。でも自分を見る勇気がない、見られるのは俺ひとりだ。俺は真実を語っている。俺に賛成なのか?反対なのか?

賛成なら“いいね”をくれ!」。どっと“いいね”が入り出す。リンクの顔は自信に満ちていた!

まとめ

スマホが嫌いな男がYouTuberに嵌って、自分の発言が相手を殺すことになっても、その責任を負わないで“ナイス”をつけた視聴者に回す。この態度は益々エスカレートしていく。まさに“ナイス”は猛毒です!よくぞ描いたという作品でした。

SNSの悪罪を題材にした作品だから、悪評なのはあたりまえ!(笑)しかし、それだけではなかった!ここで提示されるYouTubeが何を訴えているのか分からず面白くない!ネタバレをしようにもできないレベルでした。(笑)

作品はガーフィールドの演技で観せてくれる作品でした。ラストでガーフィールドが吐く長セリフには震えました!

ラストシーンの「イザベルをナイス稼ぎにしたかもしれないが、それは君たちのためだ!これがSNSの弊害だ!リアルに向き合えず、利用し合うだけだ」、このフレーズだけは忘れないようにしたい!

メインストリームとはナイスの数で動く社会の流れ。なんの責任もないいい加減なナイス判断で流されていく社会。これは怖い!つまらん作品だという所見が多いですが、そうは思わない!その危険性を危惧し、怖くなっています!

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