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「ヒトラー 最期の12日間」(2004)この狂気に我々は関係ないのか?

終戦記念日に観ようと取り貯めていたもの。NHKBSで放送されたものです。

1945年4月のベルリン市街戦を背景に、ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーの総統地下壕における最期の日々を描くというもの。狂気のヒトラーを核に周囲の国防軍軍人や親衛(SS)隊員の行動とその末路、戦火に巻き込まれ混乱するベルリン市民の姿が描かれています。

ドキュメンタリーのように史実が丁寧に描かれ、ヒトラーの秘書(実在)の告白という形でプロローグとエピローグが入ることで、この作品の意義が問われるというメッセージ性のある作品になっています。

原作:ヨアヒム・フェストによる同名の研究書、およびヒトラーの個人秘書官を務めたトラウドゥル・ユンゲの証言と回想録「私はヒトラーの秘書だった

監督:オリバー・ヒルシュビーゲル、脚本:ベルント・アイヒンガー撮影:ライナー・クラウスマン、美術:ベルナント・ルペル、音楽:ステファン・ツァハリアス。

出演者ブルーノ・ガンツアレクサンドラ・マリア・ララ、コリンナ・ハルフォーフ、ウルリッヒ・マテス、ウルリッヒ・ノエテン、ユリアーネ・ケーラー、ハイノ・フェルヒ、クリスチャン・ベルケル、マティアス・ハービッヒ、トーマス・クレッチマン、他。


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あらすじと感想

プロローグ

ヒトラーの個人秘書であったトラウドゥル・ユンゲ(2002年死去)の「夢中で秘書の依頼を受けた。ナチでもなかったから断ることもできた。好奇心に動かされ愚かにも飛び込んだ。今も自分を許せずにいる」と回想があって、本題に入ります。

1942年11月、トラウドゥル(アレクサンドラ・マリア・ララ)は東プロイセンのラステンブルクにある総統大本営で、ドイツ総統アドルフ・ヒトラーブルーノ・ガンツ)自ら行う秘書採用試験に合格した。ここから一気に1945年4月に飛ぶ。

1945年4月12日、ソ連のベルリン空襲が始まりヒトラーは激怒して「空軍は全員首だ!」と怒りを露わにした。(笑)

420日ヒトラーの誕生日。ベルリンの総統地下壕でゲーリング国家元帥をはじめ国軍、SSの高官、閣僚の祝いを受けた。

そこでSS長官ヒムラーが「連合軍と交渉だ、自分には自信がある」とヒトラーに申し出たが、ヒトラーはこれを無視。最も信頼を置いている軍需大臣のシュペーア(ハイノ・フェルヒ)に首都改造モデル(ゲルマニア計画)を前に「次はこれだ!」と話しかけると、シュペーアは「先ずは避難だ!」と勧めが、ヒトラーは断った。

ヒトラーは参集者を会議室に集めて、地図で部隊を示しながら「シュタイナー師団と第9軍団で挟撃させる!」と将軍達に発破をかけた。将軍たちは「ヒトラーは紙の上の軍隊しか知らない」と嘲笑していた。

ヒトラーに作戦の細部まで介入されたら将軍たちの出番がない!失敗した場合の叱責が怖い!これが作戦がうまくいかない要因!ロシア軍のウクライナ攻勢初期におけるプーチンの作戦指導もこうだった。

このころの市街の状況はソ軍の空爆のほかに砲弾射撃を受け、偵察戦闘車両が出現。市民は避難を開始。現場ではSS防衛隊、ヒトラー・ユーゲントが駆り出されて配備についていた。幼いユーゲントの姿が痛ましい。ヒトラーが地下壕から出て、彼らに勲章を渡して激励!

指揮官はモーンケSS少将(アンドレ・ヘンニッケ)。負傷者の多発に薬品不足を司令部に要求するが返事がない。逆に「罷免!」と言い出される。(笑)ヒトラーに会おうにも副官たちに阻止されて会えず、ヒトラー付軍医のシェンクSS大佐(クリスチャン・ベルケル)に薬品を要求して指揮所に戻った。シェンクが薬品を持って病院に出向くと、ゲシュタポによって男性患者は全て殺害されていた。軍の規律が混乱していた。

夜、ヒトラーの愛人エヴァ・ブラウンユリアーネ・ケーラー)の合図でダンスパーティーが始まった。ヒムラーヒトラーの恋人・エヴァの義弟ヘルマン・フェーゲラインSS中将(トーマス・クレッチマン)に「お前の姉の縁で、ヒトラーに去るよう助言しろ!」と耳打ちした。そこにソ軍の砲弾が落下し爆煙で大混に乱陥った。

トラウドゥルら女性はヒトラーの言う「シュタイナー師団と第9軍団の攻勢」を信じていた。

4月22日ヒトラー国防軍司令部の作戦会議を指導。クレープス陸軍参謀総長(ロルフ・カニース)が「シュナイター師団は兵力不足!」と異議を申し出ると、「カイテル(陸軍元帥)、ヨーデル(陸軍上級大将)、グレープス(陸軍大将)、ブルックドルフ(陸軍大将)の4名は残れ!」と命じ、作戦会議を解散した。「主ナイターに攻撃させろ!命令に背くとはけしからん!」と叱責。さらに「将軍どもは負け犬だ。ドイツ人のクズだ!陸軍はわしの邪魔ばかりする。スターリンのように将校を大粛清しておけばよかった」と激しく攻撃した。さらに「この戦争は負けだ!ベルリンを去るぐらいなら頭をぶち抜く!」と言い捨てて、秘書たちの部屋を覗き「お終いだ!1時間後に飛行機が出るから支度しろ!」と言って自室に戻っていった。ヒトラーが去ったあと、将軍たちが「本心ではないだろう」と言い、ゲッベルス宣伝相(ウルリッヒ・マテス)が「降伏はない!」とヒトラーの代弁をした。

夜になるも砲撃が続き、逃げ惑う市民。こんな中でゲシュタポが「脱走兵だ!」と市民狩りが始まる。シェンクが避難所に薬品を届けに訪れると、避難民、患者で溢れていた。シェンクは内科医だが、ここでハーゼ博士(SS中佐)の手術を手伝うことにした。

エヴァに義弟ヘルマン・フェーゲラインエヴァに「逃げろ!」連絡したのち、姿を消した。

ゲッペルスの妻マグダが6人の子供を連れてヒトラーを訪ね、歌を唄ってなぐさめた。ヒトラーは「ヒムラーが置いていったものだ、あげるものはこれしかない」と劇薬をマグダに渡した。

4月23日

秘密文書の償却が始まった。エヴァが妹あてに遺書を書いた。トラウドゥルも遺書を準備した。

ヒトラーカイテルに「今夜中に発て!デーニッツ元帥の元にゆき立て直しを図れ!」と命じた。

ヒトラーの動きを察したゲーリングから総統権限の委譲要求の電報が入った。ヒトラーは激怒し「成り上がりのクズ、空軍は失敗ばかりだ、処刑に値する!」と空軍総司令官職を罷免した。さらに軍需大臣のシュペーアが離職を申しでてきた。ヒトラーは「ドイツと世界のめに壮大な計画があった。公然とユダヤに立ち向かったのはよかった。ドイツを浄化できた。死ぬのは一瞬だ!」とシュペーアを責めず「さらばだ!」と涙を見せた。

シュペーアはマグダを訪ね「子供と一緒に逃げろ!船が準備してある」と告げたが、マグダは「非ナチの社会で子供を育てたくない」と断った。エヴァを訪ねると彼女は「ヒトラーのために残る。私は怖くない!」と言った。

4月26日、空路でソ連軍の包囲網を突破し、グライム空軍上級大将(ディートリッヒ・ホリンダーボイマー)と空軍パイロットのハンナ・ライチュ(アンナ・タールバッハ)が地下壕にやってきた。ヒトラーは喜んだ。グライムを直ちに空軍総司令官に任命した。グライムを囲み側近8人で食事中に「ヒムラーがリューバックで連合軍と和平交渉を行っている」という報告が入ってきた。ヒトラーは激怒し、ゲッペルスに「グライムとともにデーニッツ元帥の元に飛べ!ヒムラー処罰のためあらゆる処置を取れと伝えろ」と命じた。そしてエヴァの義弟フェーゲラインを逃亡罪で逮捕するよう命じた。エヴァヒトラーに助命を願ったが、フェーラインは捕らえられ殺害された。

4月27日ヒトラーは再度国軍作戦本部に攻撃を命じた。グレーブスが「2万の若者が亡くなっている」と状況説明すると「それが若者の使命だ!」と取り合わなかった。ヒトラーはトラウドゥルを呼び出し「政治的遺言」をタイプさせた。「1914年兵となり30年が過ぎた。私の心は国民への愛と忠誠に動かされてきた。何世紀が過ぎても戦争責任を負う者への増悪が再生するだろう。ユダヤ民族と支持者どもだ・・・」。

4月29日、ヒトラーエヴァと結婚式を挙げた。モーケンが「敵は100m先、持ち答えられるのは20時間が限度だ!」と伝えてきた。カイテルが「12軍は反撃能力がなく9軍は包囲された」と伝えた。ヒトラーは副官のギュンシェSS少佐(ゲッツ・オットー)を呼び、「自殺後の遺体を焼却し敵に渡さないよう」厳命した。

ハーゼ博士を呼び「毒薬の使い方」を確認し、愛犬プロンディでテストして、確実に死ねるとことを確認した。

トラウドゥルはエヴァに呼ばれ「15年付き合ってもて、ヒトラーのことは何もわからない!犬と菜の話ばかり。ブロンディが憎たらしい!あの犬を蹴ると彼は異変に気付くのよ」(笑)と言い、「逃げなさい!」と言い形見のコートを渡された。

4月30日ヒトラーは側近ひとりひとりに別れの挨拶をしてエヴァと自室に入った。ゲッペルス夫人マルダが「逃げてください!」と訴えたが、「人は私を呪うであろうがそれも運命!」と部屋に消えていった。ふたりの遺体は庭に運び出され、ガソリンで焼却された。

市街ではゲシュタポによるボリシェヴィキ狩りが始まり、男たちが吊るされていた。

5月1日参謀総長クレープス大将はソ連軍のチュイコフ上級大将と停戦交渉を行うが、「無条件降伏以外は認められない」と返答され、交渉は失敗に終わった。ヒトラーの遺言で新政権の首相に就いていたゲッペルスは「総統に逆らう者は処刑する」とこれを拒否した。

マクダがハーゼ博士からもらった劇薬で子供たち全員を葬ったゲッペルスは遺言「虚偽はいつか消え、再び真実が勝利する。その時こそ我々の地は清らかで完璧になる」とトラウドゥルにタイプさせた。

壕ですべき仕事は終わったとトラウドゥルたちは壕からの脱出を準備し始めた。準備を見届け、クレープスとブルクドルフが拳銃自殺した。

壕の外では軍の街宣車が首都防衛司令官名で「総統は亡くなった。総統の命令で抗戦し続けてきたが武器弾薬が尽き、これ以上の光線は無益である。即時戦闘を中止する」を流していた。

ゲッペルスはマクダとともに自決し、その遺体は焼却された。

夜、トラウドゥルはモーンケらに導かれ、壕を脱出して集合場所に移動した。ここでソ連軍に包囲されて、コーンケらは降伏するが、トラウドゥルは親のない少年とともに自転車で包囲網を突破した。

1945年5月7日、ドイツ軍は5月8日2400全戦闘終結で合意した。

エピローグ

ニュールンベルグ裁判で悲しい話を耳にした。600万人のユダヤ人や人種が違う人々が無残に殺されたと大変ショックでした。私には結びつけられず、私には非はない。ある日犠牲者の銘板を見てゾヴィーショルの人生が記されていた。私と一緒に秘書になって処刑されたと。そのとき私は気づいた。若かったということで言い訳にならない。目を見開いていれば気づけた

まとめ:

エピソードが沢山で書き切れない!信頼するベーリングヒムラーに裏切られ、シュペーアに去られ、ソ軍の反撃に追い詰められたヒトラーのすさまじい狂気が描かれていた。「この狂気に我々は関係ないのか?」プロローグで問題を投げかけ、エピローグで絞め括った演出はよかった!

総統地下壕でヒトラーが地図上の幻の軍を見つけ将軍たちに攻勢を催促し、将軍達を罵倒する。一方で壕外では市民がソ軍放火に晒され逃げ惑い、傷つき、あるものはゲシュタポに追われて木に吊るされている。「何のための戦いか?」と壕の内外を対比させた描写がとてもよかった。特に市街戦の様相がうまく描かれ、戦場の悲劇が伝わる映像になっていた

ゲッペルスの妻マクダが6人の子供たちを毒殺する際、長女のヘルガ(13歳)が薬を拒むシーン。狂気の極みでした。

ヒトラーを演じたブルーノ・ガンツが居並ぶ将軍たちを罵倒、あるいは裏切りのゲーリングヒムラーに向けて吐く狂気の毒舌がまるでヒトラーでした。(笑)自殺すると腹が決まってからの、毒気が消えた演技もよかった。シュペーアとの決別でヒトラーの涙を見るとは思わなかった!

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