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「ヘルドッグス」(2022)闇落ちした男たちのブロマンス、その結末が切ない!これぞ新フィルム・ノワール!

岡田准一さんが「関ヶ原」「燃えよ剣」に続き原田眞人監督と3度目のタッグを組んだクライムアクション

原作は深町秋生さんの小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」、未読です。原作はかなり変更されているようです。原田監督は自分の主張を作品に乗せる人だからそうなるでしょうね!「それがちょっと・・・」と思うこともあります。(笑)

原田監督は潜入捜査官の話を映画化したいと常々考えていて、やっと想いがかなった作品のようです。映画地獄の黙示録」「東京暗黒街・竹の家」米TVドラマ「タイトロープ」をオマージュしながら、1950年代のフィルム・ノワールの世界感をデジタルで描くというもの。(笑)

フィルム・ノワールと言われても何のことだか分かりませんが、裏社会の映画、ダークヒローの話は、現実のもやもやを吹っ飛ばしてくれるので好きです。

監督・脚本:原田眞人撮影:柴主高秀、編集:原田遊人音楽:土屋玲子スタントコーディネーター:小池達朗、技闘デザイン:岡田准一

出演者岡田准一、坂口健太郎松岡茉優、MIYAVI、北村一輝大竹しのぶ金田哲、木竜麻生、酒向芳、他。

物語は、

愛する人が殺される事件を止められなかったことから闇に落ち、復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾(岡田准一)。その獰猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のヤクザ東鞘会への潜入という危険なミッションを強要される。兼高の任務は、組織の若きトップ・十朱(MIYAVI)が持つ秘密ファイルを奪取すること。警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスなヤクザ・室岡秀喜(坂口健太郎)に白羽の矢を立て、兼高と室岡が組織内でバディとなるよう仕向ける。かくしてコンビを組むことになった2人は、猛スピードで組織を上り詰めていく、・・・・。

キャッチコピーは「相性98%。狂犬注意 これぞ日本の映画革命!」というもの。

監督作品特有のセリフの速さ、観る人を放っておいて進んでしまう、それにやたらと英語が出てくる。(笑)もうこれには我慢、我慢! 物語の背景となる風景、建物、美術、料理が凝っていて、これがフィルム・ノワールの世界感かと楽しむことです。(笑)

ストーリーは、監督の描きたいフィルム・ノワールの人間関係(ブロマンス)に主体を置き、アクションを見せ場にしている。テーマは岡田さんが番宣で協調している「セクシー!」、これです。原田監督と岡田さんの関係かもしれませんね!(笑)ということで、「潜入捜査官という身分がいつバレるか!」というヒリヒリ感が薄くなっています。

ラストで明かされる彼らの運命に、フィルム・ノワールとはそういうことかとサプライズがあり、目が離せません。


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あらすじと感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、墨だらけの兼高密林を抜けて養鶏場に現れ、襲い掛かってくるマッドドックを葬って「眠れる俺、アリチアの森」と呟く。そしてコンビニで恋人がヤクザに殺されるシーンで「この森を捜し、殺さんとするものを殺し・・」と回想する。これは「地獄の黙示録」のカーツ大佐の愛読書”金技編”からの引用とのこと。この描写で兼高がサイコキラーに落ちた説明は終わりということになります。(笑)

兼高は、失踪して10年後、秘密場所に勾留され警視庁組織犯罪対策本部特別捜査官・阿内(酒向芳)から「潜入捜査官として東鞘会に派遣する。こいつと一緒にやれ!7代目会長は十朱・・・仕事が・・」と説明されるが、これが鉄砲弾のようなスピードで喋られる!(笑)

物語は1年後から始まる、

廃墟と化した植物園にモグラを呼び寄せ、兼高と室岡で銃を使わず小道具で殺害して森林内に埋める。手始めに岡田さんと坂口さんの格闘演技、サイコっぷりが披露された。相手に絡みつくような体に動かし方、見事でした。岡田さんが開発した技?

兼高は上司の東鞘会の三羽烏の一人組長の土岐(北村一輝)に任務終了をスマホで連絡すると土岐の女・恵美裏(松岡茉優)がこれを取り継ぐ。土岐に注射で健康管理している。(笑)背中に入れ墨を背負った松岡さんにびっくり!恵美裏は兼高とも関係を持っている。何故か彼女は象牙に興味を持っている!

 兼高と室岡が東鞘会本部に挨拶。その後、ヒーローの歓迎と豪華レストランでの食事会。豪勢な食事、これは羨ましい!(笑)ちらっと見せる東鞘会の三羽烏のひとり・熊沢(吉原光夫)の妻・佐代子(赤間真理子)が経営するSMバー、闇の世界につれて行ってくれる。赤間さんのリーゼント髪型に黒グラス姿、圧巻でした。(笑)

その後、兼高はマッサージのため衣笠典子(大竹しのぶ)の店にでむく。ふたりは親しい関係のようだ。典子は「息子が東鞘会に殺され恨みがある」という。典子は東鞘会の三羽烏のひとり組長・大前田(大場恭正)に出張サービスを行っていた。

一方の室岡は幼馴染の杏南(木竜麻生)に会っていた。

兼高と室岡は会長の警護要員に選ばれ、十朱のチェックを受けた。会場は東鞘会本部ビル内のスタジアム。要員をA、Bチームに分け防弾衣をつけてリングに上げ、いきなり十朱がマシンガンで射撃!倒れ込むと「起きろ!」と起こされ、ABチームの格闘。覇気が試されていた。この後、兼高は会長に呼ばれ会長室に。十朱は「ヤクザの闇営業とは何だ!7歳の女を捕まえて絞殺か」この記事読め!と新聞を投げ、「久しぶりに気分が昂る!お前といれば退屈しない」と声を掛け、回し蹴りでウイスキーグラスをぶっ飛ばすという切れっぷり、この色気がいい!

杏南は犯罪者遺族の会に顔を出していて、室岡を誘った。ここで室岡は「被害者にお金を送って来る警察官がいる話を聞き「良い話だ」と答えた。このころ兼高は昔居た新宿交番あたり歩いていて、お回りから「吾郎じゃねえか!」と声を掛けられていた。このシーン、兼高の身元が割れるかとハラハラドキドキの面白いシーンだった。杏南は室岡にヤクザを辞めて自分と結婚することを勧めた。

十朱は絵が趣味で美術館に出向くが、これにも兼高は警護員として供しらくちんだと思っていた。そこに、東鞘会の三羽烏のひとり・熊沢(吉原光夫)の仲立ちで、十朱が対立する神戸泰岡組幹部・俵谷(田中美央)に泰岡組のスパイを依頼する席に警護員として室岡ともに立たされた。会談はVIP室で、ホステスを入れて、熊沢がオペラ曲を歌う中で行われた。(笑)

兼高は俵谷に酒を勧めるホステスに異変を感じ問い詰めると刺客(中島亜理紗)だった。兼高の機転で取り押さえることができた。ここでのふたりの絡みつくようなクロバットアクションが見どころ!

十朱は俵谷に土下座で謝罪し大金を持たせて返した。十朱自ら地下の拷問室で女刺客を拷問、刺客の頭に発信機が隠されていた。時すでに遅し、敵に襲われた。土岐はこのことを予期して屋上で待機していた。

激しい銃撃戦が始まり、熊谷がショットガンで対応していたが、息を吹き返した女刺客に熊谷が撃たれて亡くなった。十朱は熊谷に「悪かった」と侘びた!

熊谷の葬儀がスタジアムで聖歌隊が入り盛大に執り行われた。土岐は大前田から警備責任を問われ指を切り落とすことになった。このとき恵美裏は何ひとつ文句を言わなかった。

土岐組の若頭・三神(金田哲)のところに子分のお歯黒(吉田壮辰)が「兼高が新宿で歩いていて警官から“吾郎”と呼ばれていたのを見た」と報告した。三神は室岡に近づき「真っ先にお前が指を落とせ!サイコボーイ、兼高は警察の犬かもしれんぞ!」と挑発した。これが引き金になり、三神ともみ合いになり、階段から突き落として死なせた。これに三神の子分が室岡を追った。ビルから街に出たところで室岡が相手を刺し自分も負傷した。そこに兼高が駆け付け「俺と同じ運命だ!逃げろ!」と指示した。室岡は自分の隠れ家に戻り、“癒しのテント”に入って治癒を待った。

恵美裏は阿内に会い「東鞘会が外国勢と組んで象牙ロンダリングをやる」と知らせた。ここにきてこの話、びっくりです。(笑)

久しぶりに阿内が兼高のところに現れ「十朱をやってくれ!」という。

阿内は教会で典子に会い「長い間辛抱したな!3人殺す!」と告げた。典子は大前田邸にマッサージで訪れることにした。

恵美裏が土岐のところに現れると、「なんであいつに金貸した!お前とあいつのことは知っている」と責められた。恵美裏は土岐を眠らせた!

兼高は会長室の外でBクループのメンバーと警備についていた。上手く言いくるめてメンバーを殺害し、会長室に入った。十朱はヨガの最中だった。「お前と秘密を共有したい。俺のアンダーカバーだから!今、ここを出よう。犬は辞めろ!一緒にやろう」と誘った。兼高と十朱が撃ち合ったが、急所をはずしていた。兼高が十朱の首を絞めて殺害した

室岡は包帯姿で恵美裏の前に姿を現し「兄貴は大変だった!」と拳銃を突きつけた。恵美裏が「彼は私の男よ」というのを聞いて撃つのを止めた。そして兼高に「恵美裏と一緒に飯食おう!」と電話した。

兼高は阿内に秘密文書の入ったバッグを渡した。阿内が「もうひとりやってくれ!十朱の死体を確認する」と去って行った。

兼高が恵美裏の部屋を訪ねると室岡に「俺とこの女のどちらか選べ?」と拳銃を突きつけられた。兼高は・・・?

まとめ

ラストシーン、兼高が室岡を撃って自分も死のうとした兼高は「マッドドックに始まってヘドドックに終った」と言い、カーツ大佐の愛読書“金技編”の一節を口にして大佐と同じ闇に落ちた。

エンデイングで冒頭の空白の1年、兼高がタイで土岐組に出会い、ひとめで兼高と室岡が絡みつくシーン。このシーンを見て、ふたりの関係の切なさに泣いた!室岡は美しくって純真な心の持ち主・杏南を振っての行動だった!

十朱との最後の戦い、ふたりは的をはずして撃ち合った。十朱は当初から兼高の素性を見抜いて傍に置き続けた。これも泣けますね!

3人のヤクザ、いずれもイケメンでもう昔のヤクザのイメージがない鈴木亮平は出てこない。(笑)

闇落ちしたカーツ大佐は兼高と思った。が、今では特捜部の阿内だと思う。酒向さんの「検察側の罪人」(2018)で見せた怪演がここでも光っていました。

兼高に一片の正義が残っていたことが、とても爽やかだった。

おんなたち、恵美裏、典子、杏南、佐代子、そして刺客の女ルカ、どの女性も強い!これも新しいヤクザ映画の方向かもしれない!

闇の社会で生き残ったの女性だけ!黒澤監督の「七人の侍」(1954)のラストで島田勘兵衛が呟く「農民は強い!」に通じる結末でした。黒澤監督を崇拝してやまない原田監督らしい結末だと思いました。

キャストのみなさんの演技はすばらしく、楽しんで演じているように見えました。テーマとしてもう少し今の社会に繋がる何かを出して欲しかった!

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