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「ほんとうのピノッキオ」(2019)美しい寓話ではない!ほんとうだと信じられる作品でした!

本作、有名な児童文学「ピノッキオの冒険」を美しくも残酷に映画化した“ダークファンタジー”作品だという

私は正本「ピノッキオ」を読んだことがない。なんか子供臭くって!(笑)タイトルに“ほんとうのという枕言葉が付いているのが気になります!

ピノッキオと言えばディズニー・アニメーション映画「ピノキオ」(1940)と言われるらしい。「それは違う!本物はこれだ!」とピノッキオ生誕の国イタリアの鬼才マッテオ・ガローネ監督が撮ったからには「これが本物だ!」とWOWOWで観ることにしました。

2021年・第93回アカデミー賞衣装デザイン賞、メイクアップ&スタイリング賞の2部門にノミネートされています。

監督:マッテオ・ガローネ、原作:カルロ・コロディ、脚本:マッテオ・ガローネ マッシモ・チョッケリニ、撮影:ニコライ・ブルーエル、美術:ディミトリー・カプアーニ、衣装:マッシモ・カンティーニ・パリーニ、編集:マルコ・スポレンティーニ、音楽:ダリオ・マリアネッリ


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あらすじ&感想

貧しい木工職人・ジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)が木工職人のさくらんぼ親父から譲り受けた丸太で作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始めた。ジェペット爺さんは「パパになった!」と大喜びで人形に“ピノッキオ”と名付けた。パパはソファー布で作った洋服を着せ、謝金して買った本を持たせて「人間になるためには学問が必要だ!」とピノッキオ(フェデリコ・エラピ)を学校に送り出した。

ピノッキオは学校への途中で人形劇団に出会い、本を売ってお金を作り人形劇を見ることにした。「学校に行け!」と言うおしゃべりコオロギ(ダビデ・マロッタ)の注意を無視した。

劇団の親方(ジジ・プロイエッティ)にスカウトされて人形劇に参加して観客から大拍手をもらったしかし、貧乏劇団には燃やすものがなく、親方の料理を作るために人形の誰かを燃やさねばならなくなった。ピノッキオが「自分を燃やしてくれ!」と志願したことに親方が大感激して「親のところに帰れ!」と5枚の金貨を渡した。おしゃべりコオロギが「それを持って家に戻れ!」と注意したがまた無視した。

人の忠告を聞かないピノッキオでした

ピノッキオは行くあてもなく歩いていて、キツネ(マッシモ・チョッケリニ)とネコ(ロッコ・パパレオ)というふたりの男に出会った

金を何倍にも実らせる木を育てると森に誘われた。おしゃべりコオロギが「そんな美味い話はない、行ってはダメ!」というのに出かけた。

「こいつが死んだら金を楽に奪える」と覆面のふたりの男によって木に吊るされ、あわや命を落とすところを通りがかりの妖精姫の馬車に救い出された。姫(ジジ・プロイエッティ)と姫の乳母のカタツムリ(マリア・ピア・ティモ)の介抱で傷が治癒したピノッキオはパパのところに帰ることにした。

帰宅途中の街でキツネとネコに再会した。「金のなる木を育てよう」と誘われて森に入り、金を埋めて湖に水汲みに行ってる隙に金を盗まれた! (笑)

ピノッキオは裁判所に「金を盗まれた」と申し出ると、裁判官(テコ・セリオ)が「盗まれた者は牢に入れ!」という。「豚や鳥、金を盗んだことがある!」と白状すると「優秀な子供だ!」と褒められ解放された。この国はどうなっているの?(笑)

ピノッキオは家に戻ったがパパが居ない。パパはピノッキオを捜しに海の向こうに出て行ったという。ピノッキオは海に浮んで、潮に行き先を任せた。着いた海岸で妖精姫に再会した。(笑)姫(マリーヌ・バクト)はすっかり大人になっていた。ピノッキオが「大人になりたい」と尋ねことで、学校に行くことになった。

学校では質問に答えられないと鞭が飛んでくるという厳しい先生に教わることになった。(笑)できない子が鞭で叩かれ教室の前に座らせられる!生徒は先生にお返しにとスカートにカエルを入れる!この光景は私の小学校時代の思い出です。(笑)

ピノッキオは出来の悪い悪戯っ子のルチャーニと仲良くなり、盗みをしたり授業をさぼる。夜、家に入れてもらえない。ピノッキオは心を入れ替えて姫に勉強を教わった。先生から優秀な成績だと褒められ、姫が「人間になれます。お祝いのパーティーを開くからお友達に連絡したら」と言われルチャーニに会った。

ルチャーニは「世界1のおもちゃの国に行こう!」とピノッキオを誘った。ピノッキオは「行かない!」と断ったが、ルチャーニが迎えに来たおもちゃの国のバスに乗るのを見て、バスから「来い!」という声の誘惑に負けてバスに乗った

おもちゃの国では、プールに浮び、巨大なスベリ台、皆でひく綱引きなど楽しく遊んだが、夜檻に入れられロバにされてしまった。おしゃべりコオロギが言う「タダより怖いものはない!」が分かっていなかった。(笑)

ロバとなったピノッキオはサーカス団に売られ、火縄くぐりの舞台に立っていた。そこに妖精姫が見物にきていた。ピノッキオは気を取られ、輪くぐりに失敗して脚を折った。

即、ピノッキオは売られて海辺で解体され食べられるところだったが、海に飛び込み逃げた。すると沢山の魚がよってきて元のピノッキオにしてくれた。姫の魔法だった。しかし、巨大な鮫に喰われた!(笑)

そこで先に喰われたマグロに会った。何時か溶けてしまうというマグロを励ました。光が見えるので奥に進むと、そこにパパがいた。ふたりは抱き合って会えたことを喜んだ。ピノッキオは「ここは魚が釣れ、楽に過ごせる!」というパパを、鮫が大あくびをするチャンスを狙って、外に連れ出した。(笑)マグロも一緒だった。マグロは感謝して海に戻っていった。

外に出たパパは病気で臥せった。ピノッキオは農家の水車引きをして稼いでパパにミルクを飲ませ看病しながら、夜は勉強した。

キツネとネコが現れたが「二度と現れるな!」と相手にしなかった。

羊小屋で働いているところに妖精姫が現れ「優しい人形になりましたね、許します!よく考えて行動すると幸せになります」と告げピノッキオを抱きしめた。ピノッキオが目を開けると、可愛い少年になっていた。

まとめ

あらすじを少し詳しく書いてみましたが、どのくらい原作に近いのでしょうか?

ピノッキオがラストで自分が働いて金を稼ぎ、パパにミルクを飲ませて介護しながら、夜は勉強するという、すばらしい少年に育ちました。

ここにくるまでのピノッキオの行動は、子供には見せられない、人の忠告を守らず、勉強せず、騙され、誘惑に負けるというとんでもない子でした。これを原作が生まれた19世紀末の、貧困と無知、法整備の整わない、暗い世相の中で描いて見せてくれました。これがほんとうのピノッキオの姿、恐らく原作通りの作品ではないでしょうか。ということで、ユーモアや風刺があって、大人も楽しめる作品になっています。

特に戦後直後をピノッキオと同じ年齢で過ごした身としては、彼が体験することのほとんど全部を経験したように思え、だから先生は「ピノッキオ」を読めと言わなかったのだと感無量でした!(笑)

キツネとネコの騙し、学校風景、裁判シーンなど“イタリアではスリに注意”“買うときは値切れ!”等、「ローマの休日」にも描かれたように、イタリア人の特性か!と、少し間をおいて、笑いが出てきます。(笑)

この作品の面白さはピノッキオ、キツネやネコ、おしゃべりコオロギ、マグロなどのメイクによる擬人化。背景の風景とともに鮫の造形もすばらしい。実写版ですが絵本を読むような感覚になります。エンドロールでこれを味わってみましょう!

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