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「線は、僕を描く」(2022)空っぽの俺、水墨画に魅せられ、これで生きていく!

水墨画に魅せられた霜介が湖山の弟子となりタイトル「線は、僕を描く」を描き上げるでの青春成長物語

監督がちはやふる」の小泉徳宏さん。清原果那さん出演作ということで観ることにしました。

原作:砥上裕將さんの2020年「本屋大賞」第3位受賞同名小説、未読です。監督:小泉徳宏脚本:片岡翔 小泉徳宏撮影:安藤広樹、美術:五辻圭、編集:穗垣順之助、音楽横山克水墨画監修:小林東雲、主題歌:yama。

出演者横浜流星、清原果耶、三浦友和江口洋介富田靖子細田佳央太、河合優実、他。

物語は

大学生の青山霜介(横浜流星)はアルバイト先の絵画展設営現場で水墨画と運命的な出会いを果たす。白と黒のみで表現された水墨画は霜介の前に色鮮やかに広がり、家族を不慮の事故で失ったことで深い喪失感を抱えていた彼の世界は一変する。巨匠・篠田湖山(三浦友和)に声を掛けられて水墨画を学ぶことになった霜介は、初めての世界に戸惑いながらも魅了されていく。

水墨画に出会い、師匠はじめ様々な絵師との触れ合いの中で、水墨画の本質へと迫っていく姿が、テンポよく描かれます。すばらしい水墨画の世界を見せてくれる作品になっています。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意)

霜介がアルバイト先の神社を訪ね、そこで千瑛と落款のある水墨画“椿”に出会い涙を流した。湖山がスクリーンに描いて見せる鷹の水墨画に大感動した。

そして湖山に“弟子にならないか?”と声を掛けられ、まずは湖山水墨画教室に入ることにした。この最初の水墨画との出会いが霜介の生涯を決めることになろうとは!

湖山の弟子の西濱湖鋒(江口洋介)が「弟子になれば家族のようなものだ」と優しく誘ってくれた。

ここでの湖山、三浦さんが太筆で最初にす~と横に引く所作で、一気に水墨画の世界に持っていかれます。霜介ならうとも水墨画フアンになります。(笑)

霜介が湖山邸を訪ねると、見たことのないアトリエに通され、湖山は皿に“春欄”を絵つけしており、「この中に水墨画のすべてが入っている」と見せ、筆を持たせて線を描かせた。出来上がった線の画をしっかり褒める!このあたりは物事を始めるにあったての興味付け、楽しさを味わわせる教育法の定番でした。(笑)

ここでの筆に墨を吸わせて、その墨を器に落とすシーンの美しさ、さらにこれに合わせたピアノ音がよく合っている。とても丁寧に作られた作品だと思います。

霜介は別室で椿の絵を描いている千瑛に出会った。千瑛は「私がいるのに何で弟子を取る!」と苛つきを見せた!千瑛には湖山が何故霜介を邸に入れたかが分からなかった!これがテーマでした。

霜介は湖山から硯で墨を溶くことから教育が始まったが、何度溶いても首を縦に振らない。

これを見かねた千瑛が手ほどきする。筆に墨を吸わせる量のコントロールが勝負と説いて見せ(このシーンの絵もすばらしい!)、基本形は「蘭」「梅」「菊」「竹」の4つがあり「四君子」と言い、最初はもっとも易しい竹の書き方を教えた。

こんな霜介の変化に学友の古藤(細田佳央太)や美嘉(河合優実)は水墨画サークルを立ち上げ、千瑛を講師に迎えた。サークルのコンペで霜介が飲み過ぎてダウン。千瑛が霜介のアパートに送り届けた。彼の部屋で見た彼が描き仕損じた水墨画の量に圧倒され、「自分にないものがここにはある!」と思った。

これからはふたりが席を並べ、描いた。千瑛が霜介の手に手を添えて指導することもあった。

食事は西濱が作り、湖山、千瑛と4人が、料理に感謝して食べる!この所作は水墨画を描く上での湖山一家の拘りだった!料理がすばらしく美しい!

霜介が梅の画を湖山に見てもらうと「ダメだ」と言う。

西濱が「千瑛は行き悩んでいる!四季賞を狙っている、君も狙ってみろ!水墨画は技術だけでは描けないものがある」と教えてくれた。

湖山に画の指導を仰いだ。「悪くはないが千瑛と同じだ!次は“菊”を描いて、出品しろ」と落感が渡された!

秋の水墨画展示会

霜介が“菊”画を出品した。貴婦人がこの画を見て「いまいち!棒ぎれだ!」と評価した。「自分の画です」と名乗り出た霜介に「この菊には命がない!」と言った。この貴婦人は、この展示会の主催者で、湖山に並ぶ水墨画の大家・藤堂翆山(富田靖子)だった。実はこの人の評価で千瑛は四季賞を棒に振っていたのだった。

アトラクションでスクリーンに画を描くことになっていた湖山が病に倒れ、誰かを代役にとなった。霜介が「千瑛さん!」と声を上げたが(笑)、翆山に却下された。すると、ステージに西濱が立っていた。

西濱が太い筆で描き始めた。シャツを脱いでこれに墨を吸わせて描き始めると{あっ}と声。墨が飛び散ったが、これを生かして画を仕上げていく。会場から拍手が起こった。

ここでの西濱、江口さんのパフォーマンもすばらしい!

 展示が終って、霜介と千瑛が病院に駆けつけると湖山はにこやかに西濱と談笑していた。しかし、千瑛は今まで考えもしなかった湖山の存在感に気付き始めた。「大丈夫だ!」という霜介に「あなたは心配ないの?」と千瑛が聞く。霜介は「泣いたり、騒いでも何も変わらない」と、自分の心の痛み「進学で国を離れる際、両親と喧嘩して何も話さず別れ災害で家族を失ったこと、妹から助けてという電話があったこと」を話し、「思い出すと辛く、ここに立ち止まってしまう」と話した。

千瑛は自分を考え直すために家を出て行った!

霜介は辛い思い出の幻覚が現れて画は思う等に進まない!学友たちの将来の進路が決まっていく。こんな霜介のために西濱が生の食材を手に入れると市場や農家訪問に連れ出した!「生きた画を描け!」という西濱らしい配慮があった。

西濱は「君には君の画がある。千瑛ちゃんの画は繊細で真似できないが固すぎる。俺は雰囲気で描いている」と話した。

湖山は病後右手が不自由になった。霜介に手伝わせて描き続ける。霜介の今後を心配して「自然も人生も同じ、思うようにはいかん。描き続ける先に画きたいものがある」「自分の線は自分を描く。水墨画は君の生きる線になる」と教えた。

千瑛が霜介のアパートを訪ねてきた。「水彩画が詰まらないと思うが捨てられない。貴方が翆山から守ってくれたのは何故か?」と聞いた。「君の画!妹のために植えた椿のためだ」と答えた。千瑛は「あれは中学の時に描いた絵。湖山の前では描けない!」という。霜介が自分と家族の関係に決着をつけるために災害現場に行くと話すと千瑛が一緒に行きたいと言った。

ふたりは霜介の家族が亡くなった災害現場に立った。そこに流された椿の木があり、花びらが“生きて”見つかった。霜介は泣いた!千瑛は「湖山の弟子なら描ける!」と励ました。霜介は「弟子なる!」と決心した。千瑛も椿の花びらに触れ「描きた!」と思った。

朝明けに赤く焼けた美しい景色を見て戻った

 ふたりは展覧会の出品作の製作にとりかかった。ふたりは出来上がった画を褒め合った。

第61回水墨画展覧会。当日千瑛は会場に、霜介は大学の水彩画サークルの実演に臨んでいた。

まとめ

水墨画に魅せられた霜介が湖山の弟子となりタイトル「線は、僕を描く」を描き上げるまでの青春成長物語。ラストシーンで大スクリーンに描き上げる流星さんの姿に“見事”と声を掛けたくなるような爽やかな作品でした。

千瑛の湖山に対する歪な心から、霜介の妹や家族への贖罪から解き離れ、自由な心で今の自分の“生の喜び”を描いた出品作が、展覧会において、千瑛が四季賞を霜介が新人賞を受賞したことで、彼らの成長を見ることができました。

百人一首“ゲームと違って言葉とアクションのない水墨画の世界。ここに至る霜介と千瑛の成長をどう見せるか?水墨画の分からない人にどう理解させるか?ずいぶん苦労したのではないでしょうか。

四君子、春欄という難易度を示し、師である湖山、湖峰の言葉で導かれていく霜介と千瑛、流星さんと清原さんの佇まい、描くことへの真摯な姿勢などで描くことでふたりの成長を見せてくれ、それなりに掴めたかなという感じで、物足りない。

おふたりのキャスティングはナイスでした。三浦さん、江口さんの存在感ある演技、よかったですね!

 水彩画のすばらしさ、これはたっぷりと味わうことができました。筆を持つ日本人ならばの“心の置き処”を見る思いでした。

それだけに本作に出てくる描き手の心の置き処「水墨画は命を描く」が分かる心境になります。

作品の背景となる水墨画家小林東雲さんの描く水墨画、道具、アトリエでこの世界のすばらしさを味わいました。

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