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「20センチュリー・ウーマン」(2016)1979年という変革時期に悩みもがき自分の生き方を模索する女性たち!

人生はビギナーズ」(10)のマイク・ミルズ監督が、自立心旺盛だった自身の母親をモチーフに描いた作品アネット・ベニンググレタ・ガーウィグエル・ファニングビリー・クラダップらの共演で、アカデミー賞脚本賞にノミネートされた作品です。

監督:マイク・ミルズ脚本:マイク・ミルズ撮影:ショーン・ポーター、美術:クリス・ジョーンズ、衣装:ジェニファー・ジョンソン、編集:レスリー・ジョーンズ音楽:ロジャー・ネイル、音楽監修:ハワード・パー。

出演者アネット・ベニングエル・ファニンググレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ、他。

物語は、

1979年、米カリフォルニア州サンタバーバラに住むシングルマザーが、思春期を迎えた15歳の息子についていけないと、ふたりの女性に「どんなときでも自分を保ち、より良い人生を送れるようになってほしい」と協力を依頼した。そこで何が教えられたか、母と子の絆、母親と彼を取り巻く三人の女性の生き方を描いた作品。

1979年はアメリカに、サンタバーバラにとって特別な年。ジミーカーターが大統領として過ごした最後の年。この時代、おおきなうねりのなかにあるフェミニズムやパンクロック熱が米西部に達するなど社会やカルチャーが大きく変容する時期でした。

舞台となるサンタバーバラの風景と三人の美女の演技を観ようとこの作品選定を選びました。が、作品を観てこんな性教育は日本にないと驚き、また美しい映像を楽しみました。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

母親ドロシア(アネット・ベニング)は息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)とショッピングに来ていて、突然表に止めていた父親の形見のフォード・ギャラクシーがオーバーヒートで燃え出すというシーンから始まる。車が古いというより、時代が大きく変化しているということを暗示。“時代の変革期”というのがテーマです。

ドロシアはちょっと大きめの家を持っていて、車の整備、大工仕事が得意なウイリアムとニューヨークから戻ってきた写真家アピー(グレタ・ガーウィグ)にシェアーさせていた。

母親ドロシアは、1924年生まれの55歳。少女時代に戦争を経験し空軍パイロットに憧れ、映画「カサブランカ」を繰り返して見てハンフリー・ボガートが理想の男性。40歳で息子ジェイミーを産みシングルマザーとして育てている。缶製造メーカーの製図担当者として働き、毎日株価をチェックし、セーラムを大量に吸う。過去を絶対に否定しない意地硬さと戦中育ちの勇ましさ前向きさを持つ頑固な女性。結婚生活については「私の見た人とは違っていが、良いところもあった。毎日株価を点検するだけだったが、それだけでよかった」と多くを語らないが、夫婦というものはこういうものかという疑念を持っていた。

アビー1955年生まれ、24歳。かってニューヨークのアートシーンに憧れ、アーチストを目指していたが、子宮頚がんでサンタバーバラに帰ってきて、がん経過観察を続けながらカメラマンとして生活している。バンクロックが大好きでデヴィッド・ボーイに感化され髪を赤に染めています。そして、フェミニズムの旗手だった。

近所に住むジュリー(エル・ファニング)がジェイミーの部屋で休んでいる。ジュリーは1962年生まれ、17歳。セラピストの母親にグループセラピーへの参加を義務付けられている。母の再婚で、新しい父親と脳性マヒの妹に馴染めず、夜はジェイミーのベットに潜り込み過ごすことが多いが、絶対にセックスは許さない。ヘビースモーカーでドラッグやセックスの経験が豊富。

ジェイミーがジュリーの体に興味を持ち始めていた。

 

ある日、ドロシアが大音響で「ザ・レインコーツ」を聞く息子ジェイミーに「きれいな演奏できないの?」と文句をつけると、「きれいな音楽は社会の腐敗を隠す」と言う。「自分が下手だと知ってやっているってこと?」と聞くと、一緒に聞いていたアビーに「強い感情があれば技術は必要ない」と言われショックを受けた。トロシアは若い人に感覚にはついていけないと思った。

さらに、ジェイミーは学校をさぼり、ロスのパンクロックライブに出かけ薬に手を出し「気絶ごっこ」というばかな自傷行為を繰り返す。息子には誰かの力が必要だが、ドロシアは自分の体験から女性が良いと判断した。これがこの作品のポイントです。

そこで目をつけたのがアビーと近所に住むジェイミーの女友達ジェリー(エル・ファニング)。「ジェリーは、ジェイミーをよく知っているから、見守ってやって欲しい。アビーには「あなたの生き方や興味の対象を見せてやって欲しい」と協力を依頼した。

アピーはジェイミーの教育を任されたとバカ正直にバンクロックから女の扱い方、男友達の付き合い方まで指南する。

アピーはウイリアムの部屋を訪ねて彼を求めた。ウイリアムはアピーの求めるようつき合う。

アピーのがん検診に、ロシアはジェイミーを同行させた。アピーは「子ともは持てないかもしれない」と診断され、将来への不安を口にして生き辛さを漏らした。ジェイミーはこんなアピーに憧れ、励ますようになっていった。

ジェイミーはジェリーがクラスメイトとセックスして避妊に失敗したと聞いて、妊娠検査薬を買って彼女を救った。が、もやもやが残る。(笑)

そんなある日、アビーが「フェミニズムにはこれを読みなさい」と「からだ・私たち自身」(1971)「連帯する女性たち」(1970)を渡す。このような本は、この年齢ならもうバイブル、読んで、読んで読みまくる。(笑)

ジェイミーは「オーガスムスの中心は直接刺激すること」と急進派フェミニストのアビーが勧める知識にかぶれ、友達のやり方を貶し殴られて戻ってきた。アピーから「友達にはいうな!」と注意された。(笑)

アビーに勧められたTシャツを着てるので、友人からART FAG(アートかぶれのオカマ野郎)とデイスられる。

ジェイミーは母トロシアに「良い男になりたい、女を満足させたい」と訴えると「あんた大丈夫!」と注意された。(笑)

トロシアは、車にART FAGとペインテイングされる騒ぎが起き、「もうほっとけない!」と同居している元ヒッピーの“なんでも屋”ウイリアムビリー・クラダップ)をドライブに誘い、ニューウエーブでダンスを始めた。ウイリアムに「アピーと寝ているの?」と聞くと「やめた」という。家に帰ってジェイミーを誘い覚えてダンスを「頭で考えてはだめ」と二人で踊った。(笑)

ウィリアムは過去にヒッピーとして生活し、そこで女性に恋をしたが、教養のなさや劣等感からその女性から逃げ出した。それ以降、修理の仕事や趣味の陶器造をする傍ら、孤独を紛らわせるために女性と関係を持ち続けていた。

ジェイミーはジュリーを誘い「からだ・私たち自身」で学んだ「オーガムス」の感じを彼女に聞くと「感じない、あの声よ、それに相手の身体が隅々まで見れるのが快感。2回に1回は後悔する」と言う。「じゃなぜやる!」と怒りをぶつけた。

ジェイミーが母に「この本に興味をもったら!」と雑誌を勧めると「興味はあるが、私には本はいらない」断られた。(笑)

ドロシアは「15歳の子には過激すぎる」とアビーを責めるが、「彼は大丈夫」と意に介しなかった。

カーター大統領のTV演説「クライシス・オン・コンフィデンス・スピーチ」(自信喪失の危機)を皆で聞いていて、ドロシアは「美しいと思う!」と感想を述べた。一方アビーは立ち上がり「生理よ!男が女とやるなら生理ぐらい知らないと!生理知ってる?」と男たちをなじり始めた。

すると、ジェリーが「”カッコーの巣の上で”を観ながらやった」と言い、14歳のときの初体験を話し出した。「くだらない」とドロシアが止めた。

その夜、ジェイミーは部屋に来たジェリーに「そんなんじゃ誤解される。もう喋るだけなら泊まるな」と言うと「海辺に行こう」と誘った。

ジェイミーはジュリーと旅に出て、モーテルでシュリーにセックスを求めたが「親しい人とはできない」と断られ、「このままではだめになる。協力するから乗り越えよう」と迫ると「あなたはただしたいだけ!他の男と同じ。あんたは普通の男、今風にしているだけ!」と言われ、ショックでモーテルを出て行方不明になった。

ジェイミーの行方不明を聞いたドロシアはあわててアピー、ウイリアムと一緒に捜索した。モーテルにやってくるとシェリーは申し訳なさそうな顔で「あそこ」と大木を示す。ジェイミーは朝になってモーテルに戻ってきていた。

ドロシアが「ジュリーって、複雑な子よ」と話しかけると「あっ、そう。僕の世話にうんざりした」と言う。「私のようになって欲しくなかった。私ひとりでは教育できなかった」と答えると「僕はおかあさん一人でいい」という。ドロシアは「今後はなんでも話してくれる!」と諭した。モーテルでドロシアはアピー、ウイリアムと踊ってジェイミーの無事を喜んだ。 

感想

生々しい性で語るフェミニズム。愛とは何かを導き出し、ドロシアの家で過ごした経験をもとに自立した豊かな人生を選択するという結末がいい。

 20世紀、「大恐慌時代」「ベビーブーム時代」「ベトナム戦争時代」に生まれた3人が、1979年という米国にとって大きな変革時期のなかで、お互いが悩みもがきながら自分らしい生き方導きだした女性たちが愛おしい。演じる三人が個性豊かで、美しくて、すばらしい演技でした! 

アピーとジュリーが14歳のジェイミーに教えたことはとても破天荒なものだった。ジェイミーは男の自尊心を打つ砕かれるほどのショックを受けたが、母親の人としての強さ愛を知り、強いやさしい男に成長していった。

ラストで、20年後に亡くなるドロシア、ジェイミー、アビー、ジュリー、ウィリアムのその後が語られています。それぞれの生まれた時代の良いところを生かし新しい時代の中で、自分らしく、豊かな人生を送りました!

アピーは結婚しふたりの子供に恵まれ写真家といて生きる、ジュリーは大学を卒業して結婚、子供を持たないが夫とスイスで過ごしている。ウイリアムは結婚したが、離婚して陶芸家として生きている。ジェイミーは結婚し父となった。一番むつかしいかなと思ったドロシアが再婚し空を飛ぶという生き様、すばらしかった!

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