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「別れる決心」(2022)道ならぬ恋に、 韓国風味一杯な、愛の本質を見た!

 

ひとりの刑事の男と容疑者となった女のロマンティックなサスペンス作品。今週は、映画「ボーンズ アンド オール」に引き続いて本作、「愛の物語」に挑戦です。監督はパク・チャヌクさん。ある意味、ふたつの作品は似ています。いずれの監督もそれぞれの作品で、国際映画祭での監督賞を受賞しています。

きっと解説がないと分からない作品と思いながらも、前情報なしで、日曜日の字幕版で観ましたが、しっかり客が入っていました。韓国作品。恐るべしです!

一回の鑑賞ではおそらく理解できていないと思いますが、感想をしたためます。

監督:パク・チャヌク脚本:パク・チャヌク チョン・ソギョン、撮影:キム・ジヨン編集:キム・サンボム、音楽:チョ・ヨンウク。

出演者パク・ヘイル、タン・ウェイイ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ、パク・ヨンウ、他。

物語は

男性が山頂から転落死する事件が発生。事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレ(タン・ウェイ)を疑うが、彼女にはアリバイがあった。取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが……。

物語の前後段の切り替わりこそが作品の命。前情報なしで観るのがいいと思います。


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

プサン警察署の刑事・ヘジュンは真面目で清楚、仕事熱心で寝る間もなく働き気鬱に悩むことがある。妻アン(イ・ジョンヒョン)は霧の街イボに所在する原発の職員でイボ市に住んでいる。早くイボ市に転勤するよう訴えていた。

刑事ヘジュンと彼の同僚刑事のスワン(コ・ギョンピョ)は岩山を登はん中に落下するという事件で死亡者が出て出動。遺体の損傷状況の確認、携行品の押収。さらにふたりで岸壁を登り頂上を確認し、事件性があると感じた。死亡者は出入国・外国人庁の元職員で60歳のキ・ドスだった。

遺体の確認に妻のソレが現れた。「写真による確認でいいと言い、「帰ってこないと心配だった」と中国語なまりの韓国語で意外と平然と」していた。解剖すると爪からソレのDNAが発見された。

ソレは看護師だというので、ヘジュンとスワンはソレの仕事場を監視したが、夫の死で落ち込むような姿勢は見られない。そこで拘置して取り調べることにした。

ヘジュンが尋問。中国人で叔父は朝鮮半島独立運動家だと言い気品があり、朝鮮語は独学だと言う。「山は好きが」と聞くとスマホで撮った孔子の言葉「知者楽水、仁者楽山」を示し海が好きだと言うほどに本を読むのが好きだった。

夫の爪にソレのDNAが残されていたこと、脚の創のことを聞いても平然としていた。夕飯にすしをふたりで食べ、食べ終わってヘジュンがテーブルの拭くとソレも一緒に拭く。ヘジュンがソレを拘置部屋に案内し歯ブラシを渡せば安堵の表情を見せる。どうやらふたりは感じ合うものがあったようだった

ソレは取調中に弁護士の要請で拘留を解かれた。

ソレの事件性がなくなり、ヘジュンは署の懸案事案である秩谷洞事件を追うことにした。カフェで見つけた犯人のホン・サンホ(パク・ジョンミン)を追い詰めて逮捕したが、そのときサンホから「あんたは彼女がいるか?彼女に会っていなかったら俺の人生はなかった。このことを伝えてくれ!」と頼まれた。ヘジュンはこの言葉に心動かされた。

ヘジュンは家にいてもソレのことが忘れられないでいたところに、ソレから「会いたい」と電話が入った。ソレのアパートで会うと「夫は出入国業務の不正を暴露され、それを恥じて自殺した」という。そして眠れないヘジュンを催眠術でやさしく眠らせた。

ヘジュンは仕事中もしばしはメールで連絡し合い、またソレのアパートを訪ねて中国料理を作ったり、寺院にデートしたりで親交を深めていった。ソレもヘジュンのアパートを訪ね、彼の捜査証拠写真を目にした

そしてある日、ソレがヘジュンの部屋にやってきて、ヘジュンは拒んだが、岩山登はん事件関連の写真を焼却するということがあった。

ソレは夫の母親ヘドン伯母さんを介護しているが、別件で行けなくなり、代わりにヘジュンが行くことになった。ヘジュンはそこでソレのスマホを見て、事件当日ソレはここに居なかった。ソレのアリバイが崩れたと知った。

ヘジュンはスワンを伴って、岩山の登はんルートを点検してみて、安易に登れるルートがありこと、キ・ドスに打撲傷があったことなどから、ソレの犯行が明らかになってきた。

登山から戻ったヘジュンはソレに「私は名誉を大切にしてきた。君とのことでこれを失いことになる。すべてが崩壊した」と伝え、携帯電話を海に捨てるよう促した。「夫から暴力を受けたか、それをなぜ警察に言わなかったか」と厳しく追及した。

この後、スワンからソレは中国に戻ったと聞かされた。しかし、ヘジュンの頭からソレのことが消えることはなかった。

1年後、霧の街イボ市の漁市場でヘギョン夫婦はソレとソレの新しい夫のイム・ホシンと出会った

次の日、ソレから電話がありアンが受けた。「事件だ!」という。ヘジュンが出向くと夫ホシンをプールの中で殺害し「貴方に会うために殺した!今度は証拠がある」という。ソレに手錠をかけ車で署に変える途中で、ヘジュンは手錠を外して消えた。

ヘジュンは最初に出会ったときのソレ気持ちを知るため、ソレが捨てたスマホをヨンス刑事(キム・ラニヨン)に探させた。そこには「変な中国料理を作ってくれた。そして見つめられたことが忘れられない」等が書き込まれていた。

夜、ソレが訪ねてきた。ふたりは雪の降るなかホミ山に入った。ここでソレが「未解決事件になりたくてイポにきた」と明かし、抱きしめられ薬を与えられ、それを吞んだ。

ヘジュンが目覚めたとき、雪はなかった。韓国では初雪の日にデートをすれば永遠に一緒にいられるというジンクスがある。

駆けつけた警官と妻のアンに確保された。車の中でソレと出会ってからのことが走馬灯のように蘇った。

ソレはヘュンと別れる決心をして美しい海岸に向かっていた。途中で「あなたの愛が終ったとき、私の愛が始まった」のメールを発信した。これを受け取ったヘジュンはソレを追った。ソレは「もう一度私のスマホを海に捨てて!」と発信して消えた。ヘジュンはソレを捜しに海へと消えていった。

まとめ:

1つ目の殺人で別れ、2つ目の殺人で再会するふたりの愛の行方。前段、といっても作品の大部、でミステリアスに殺人事件を追い、後段では一転してラブロマンスになり、何度となく繰り返される前段のふたりが愛を育んでいく映像に、「別れる決心」に絡む名セリフ、哀愁ただよう音楽、うつくしい風景で、ふたりの結末「恋焦がれ海で死す、これしかない」という作品でした。

現在と過去、数個のシーンをシャッフルして構成されるスリリングな映像、スマホで交差するふたりの想い!で、物語に引き込まれました。

タン・ウェイの美しいこと。中国生まれという彼女の生い立ちがしっかり生かされた作品で、うまい演技でした。ヘジュン刑事が惚れるのに理由はいらない!(笑)

ソレがヘジュンに惹かれたのはいつか?警察の尋問室で夕食にすしが出て、拘留所に一泊する際にヘジュンが歯ブラシを渡したこと。一番苦しい、孤独を感じるときにこの行為はソレの心に響いたと思いました。拘置所で過ごしたものでないと分からない!(笑)

殺害された者、老人介護など韓国社会の現況が垣間見れたのがいい。韓国映画、恐るべしでした。

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