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「ワース 命の値段」(2019)命の値段は誰が決める、国が依頼した弁護士?

 

マイケル・キートン主演でアメリ同時多発テロ被害者の補償金分配を束ねた弁護士の実話を映画化した社会派ドラマ。

タイトル名で観ることにしました

監督:サラ・コランジェロ、脚本:マックス・ボレンスタイン、撮影:ペペ・アビラ・デル・ピノ編集:ジュリア・ブロッシュ、音楽:ニコ・マーリー。

出演者:マイケル・キートンスタンリー・トゥッチエイミー・ライアン、テイト・ドノバン、シュノリ・ラーマナータン、タリア・バルサム、ローラ・ベナンティ、マーク・マロン、他。

物語は

2001年9月11日に起こったアメリ同時多発テロを受け、米政府は被害者と遺族救済を目的とした補償基金プログラムを立ち上げる。その特別管理人を任された弁護士のケン・ファインバーグ(マイケル・キートンは独自の計算式により、個々人の補償金額を算出する方針を打ち出すが、被害者遺族が抱えるさまざまな事情と、彼らの喪失感や悲しみに接する中で、いくつもの矛盾にぶち当たる。チームが掲げる対象者約7000人の80%の賛同を得る目標に向けた作業が停滞する一方で、プログラム反対派の活動が勢いづいていく。期限が迫る中、苦境に立たされたファインバーグはある大きな決断を下す。

とても地味なドラマですがマイケル・キートンの圧巻の演技で見せてくれます。事実の物語に想像上の消防士のエピソードを絡め、その結末はどうなるかと、ちゃんと眠気防止がしてありました。(笑)テーマは誰が値段をつけるかです。民主主義の根幹に関わる問題で、政治家、官僚の人達はぜひ観て欲しいと思っています。


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あらすじ&感想

弁護士の通称ケン(56歳)は米国政府の各種委員や事件・紛争の調停人や依頼人を務めてきた著名な弁護士。

大学の教授も務め、学生たちに「命の値段は誰がつけるか、私はこれをつけるのが仕事だ」と教えてきたし、その自負があった。

2001年9月11日、ニューヨークとワシントンDCに同時多発テロ事件が起こった。ケンはニュースを聞きながら一人当たりの補償金をざっと見積り、司法長官に報告。法律事務所の請求管理部長のカミール(エイミー・ライアンと倍賞適用範囲を地図で検討した。この大事件をお金で掴むこの感覚が凄いと思った!

9月22日、政府司法委員会に出席基金で倍賞することが決まり協力を求められた。司法長官から改めて基金の特別管理人に任命され、「訴訟がないように!」と指示された。この役を無報酬で受けることにした。大統領から直接電話で「全権を与える」との励ましがあった。

9月26日、ケンはヴォール街で働いている教え子のプリヤ(シュノリ・ラーマナータン)弁護士を加えて基金対応チームを作り、「従来の計算式でやる、主観を入れるな!」「申請率目標は80%」「申請期日は2003年12月22日」と指針を示した。この指針も凄いと思った。これが叩き台となり大きな反論を起きた

マンハッタンで被害者補償の説明会を行なった。ケンが「計算式で行うこと」、「申請提出最終日」「訴訟を受け付けない」を示すが、「人は同じだ!」「消防士の補償が低い」「訴訟できないのは傲慢だ」と反対の声が起こり、収集できなくなった。被害者のリーダー弁護士:チャールス・ウルフ(スタンリー・トゥッチが「給付をどうするかを話しているだけだ」と騒ぎを治めた。

説明会が終ってケンがウルフにお礼を言うと「私は妻を亡くしている、修正して欲しい!細部はサイトを見てくれ」と訴え、参加者に修正案のビラを渡していた。

脚を負傷した消防士のフランク・ドナート(クリス・タルディオ)が「弟の補償を頼む。あんたが認めるというならサインする」と言って、帰っていった。この消防士がこれからの物語に絡んできます。

自宅に戻ったケンは趣味のオペラ曲を聞きながら、被害者の資料に基づき死亡者ひとりあたりの補償費を試算をしてみて問題はないと確信した。

2002年に入り、カミールやプリヤによる説明会が始まった。被害者たちのアパートで集会を開き、「死亡者ひとりあたり最小限20万ドル支払う」と提示しても反応がない。「ガン患者はどうなるの?」「同性愛者はどうなるの?」「もっと出せ!」と意見が続出する。一方、ケンは被害者補償基金委員会において計算法で行うことに意見を求めると「ひどすぎる」「社長と一般人は同じでない」等に意見が出た。

ケンはカミールから説明会で出た意見を聞き「俺たちはセラピストではない!私情は抜きだ!」と計算式で押し通すよう指示した。若いプリヤは「私情ばかりだ!」と不満を漏らした。(笑)

夜、カレン(ローラ・ベナンティ)という女性が法律事務所のケンを訪ねてきた。「消防士の夫は私の全てだった。お金はいらない!夫の命は計算できない。夫には夢や将来計画があった。金では買えない。遺体が見つからないという知らせがない!」と訴えて帰っていった。カレンはフランクの妹だった。ケンはカミールに「カレンにかける言葉がなかった」と話した。

プリヤはウルフに呼ばれ「君の値段はいくらだ?」と聞かれ、返事できなかった。

2002年12月、プリヤはケンに「人望がある人だから」とウルフに会うことを勧めた。ケンは事務所にウルフを呼び「何が望みか?」と切り出した。ウルフは「金と思うか?君は俺たちの名前を知っているか?妻の値段を数字では表せない。なぜ勝手に人に値をつける!誰の意見だ!」と話し、怒って帰った。

この言葉を反芻しながら砂浜を散歩していたら、フランクが「受取人の子供を3人から5人にしてくれ」と電話してきた。(笑)

ケンは車でフランクに会いに行き、カレンに会い、カレンと亡き夫の結婚写真を見ながら「推定額は・・」と切り出すとフランクから「何が推定額か!君が殺したんだ」と追い返された。

ケンは委員会メンバーのリー・クイン(テイト・ドノバン)に「まだ90件しか申請がない」と話すと「君は嫌われている。上限をあげろ!」と言われた。

9・11連続テロ犠牲者追悼コンサート。ケンが参加して追悼の歌「失ったもの!」を聞いていた。「目的を失い、友を失った 道を失い、冷静さを失った・・・」を聞き、コンサートに来ているウルフに会いたくなった。

ウルフに「国に役立ちたいとこの仕事を引き受けたが、エゴもあった。俺の案では救えない人がいる。どうしたらいいか教えてくれ!」と問うと、「君に恨みはない。橋になれ!直せるものを捜せ!」と言われた。

この段階での申請者数は18%だった。ニューヨークの消防士から申請がなされていなかった。

カミールが「ニューヨークが同性愛を認めた」と報告するとケンが「ニューヨークの消防士はまだ症状が出ていないかもしれない、俺が話を聞く」という。カミールは「大賛成だ!」と喜んだ。

ケンは録音された被災者の声を飛行機の中でも聞くようになっていった。訪ねてくる人の話もしっかり聞いた。

2003年12月1日、ウルフの意見を聞いた。彼は「君の基金を信じる。妊婦の補償が上がるのはいいことだ」と伝えてきた。

2003年12月19日、カミールが「ぎりぎりになれば申請してくる」というのを信じていた。申請数は57%だったところに、大量の申請書が郵便で届いた。目標を達成できた。理由は「政府が俺たちの要望を聞いてくれた」というものだった。ケンは「すぐに金を振り込め!」と指示し、感謝の電話をした。

カレンが事務所にやってきて「夫は浮気で女の子をふたり作っているので、この子たちにも金を渡して!」と申請書を渡した。(笑)こんな話がでてくる程にケンと被害者の距離は近くなっていた。

リー委員が「個別補償は君が学生のころの持論だった、いいことだ」と申請書を渡したが、ケンは受け取らなかった!

まとめ

ケンはしっかり被害者の声に耳を傾け、出来るだけ彼らの要望に添えるよう修正をした。彼は自分の立場が政府と被害者の架け橋であることを忘れていた。

命の値段を誰が決めたか?被害者が決めた!

 補償額に修正を加えたが、「申請率目標は80%」「申請期日は2003年12月22日」を厳守できた先見性が凄いと思った。これがあったからうまくいったと思う。

この後、9・11の被害者補償は改善が加えられ、今では「永久補償」となっているとのこと。

ケン役のマイケル・キートンの、自信に満ちた傲慢な弁護士が一度自信を失って立ち直る繊細な表情の演技が素晴らしかった。彼なくしてこの作品は成立しない!

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