映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「フェイブルマンズ」(2022)母の言葉「すべての出来事には意味がある」を胸に、映画界に入ったスピルバーグ監督の青春物語!

 

巨匠スティーブン・スピルバーグが、映画監督になるという夢をかなえた自身の原体験を映画にした自伝的作品。今、なぜ、何を伝えたかったのかと、初日公開日初回で観ました。大きな劇場が準備されていましたが、がら空き!でした。(笑)

本作は、第95回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞(ミシェル・ウィリアムズ)、助演男優賞(ジャド・ハーシュ)など7部門にノミネートされています。

監督・脚本:スティーブン・スピルバーグ脚本:トニー・クシュナー、撮影:ヤヌス・カミンスキー美術:リック・カーター、衣装:マーク・ブリッジス、編集:マイケル・カーン サラ・ブロシャー、音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演者:ミシェル・ウィリアムズ , ポール・ダノ , セス・ローゲン , ガブリエル・ラベル , ジャド・ハーシュジーニー・バーリン , ジュリア・バターズ , ロビン・バートレット、他。

物語は

1952初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった5歳の少年サミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)は、母親ミッツィ(ミシェル・ウィリアムズから8ミリカメラをプレゼントされる。家族や仲間たちと過ごす日々のなか、人生の一瞬一瞬を探求し、夢を追い求めていくサミー。母親はそんな彼の夢を支えてくれるが、父親パート(ポール・ダノはその夢を単なる趣味としか見なさない。サミーはそんな両親の間で葛藤しながら、さまざまな人々との出会いを通じて成長していく。(映画COMから)

サミーの成長を描きながら、父母の離婚にいたる話でもある。「この両親に育てられたが故に今がある」というスピルバーグ監督の想い(赦し)、“これがフェイブル”となっている。サミーはラストでジョン・フォード監督に会い「覚えておけ!」とある言葉を投げつけられます。その意味は?この答えに至るまでのサミーの成長物語です。

子供をどう育てるか?お子さんをお持ちの方には必見の作品だと思います

 


www.youtube.com

あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

1952年、ニュージャージ州。サミーは父母に連れられ映画館に。セリル・B・デミル監督作「地上最大のショー」を観た。列車が目の前に走ってきて車をクラッシュするシーン。サミーが怖い!と思ったが、この映画の怖さが忘れられない。

この作品がサミーの映画に対する考え方に決定的な影響を与えた。このシーンの映像は「ジョーズ」にそっくりでした。以下出てくるエピソードはスピルバーグ監督作品のネタになるというプロットです。

クリスマス。ユダヤ人のフェイブルマン家にはクルスマスツリーはない。父のパートは高い能力を持つ電気技術者で子供たちへのプレゼントにおもちゃの電車を買い与えた。サミーは電車をいろいろなものに衝突させて楽しむ。これを見た母のミッツィが「撮影すれば壊さないで済む」と父親のカメラを与えた。サミーはカメラ撮影に魅せられ、姉妹に演技させ、面白い映像を作りだす。この映像が楽しい!

父パートの能力が認められてGE社、アリゾナ州へ転職することになった。フェイブルマン家にはパートの同僚ペニー・ローウィ(セス・ローゲン)が同居していたが、転職を求められたのは自分だけだとペニーを残して行くという。ミッツィは生まれたばかりの娘(3人目)がおり、これに激しく抗議した。パートは有能な技術者ではあったが家では役立たずではなかったかと。

突然に竜巻が発生!ミッツィは生まれたばかりの娘をパートに預け、3人の子を車に乗せて竜巻を追った!とても好奇心の強い母親だった。電線がショートし燃える現場を子供たちに見せ、「すべての出来事には意味がある」と教え込んだ。この言葉がサミーの“ものの捉え方”に大きく関わるようになっていきます。

アリゾナへはペニーも一緒に行くことになった。サミーは移動中、そして新しい家に着いた家族の映像を撮り続けた。

母のミッツィは念願のピアノを手にいれ、演奏会の練習を始めた。これを家族で聞くのだか、パートはミッツィの手の爪が気になり「切れ!」というが、ペニーは「気にならない!」と演奏を聞いていた。爪はパートによって切られ、楽譜にも穴が開き、ミッツィは悲観にくれた。(笑)

サミーはボーイスカウトに入会しアリゾナの自然を満喫。サソリを捕まえてお金に換え、仲間たちとジョン・フォード監督の「リバディ・バランスを撃った男」を観て、すっかりこの映画の虜になり、ボーイスカウト仲間をキャストに西部劇を撮った。そして仲間に公開した。父母にも観てもらった。二丁拳銃の射撃でスモークが出るシーンや崖から落ちるシーンなどに大歓声が上がるほどの盛況だった。映画を作ることの喜びを感じた

会場からの帰りに、サミーが父パートに「戦争映画を撮りたい、編集機とマンスフィールドの8mmカメラが欲しい」と話したが、パートは「趣味の範囲を超える、運転免許を取りなさい」と認めなかった。

家族でキャンプに行くことになった。これはペニーの企画だった。自然やキャンプファイアーを楽しんだ。パートはペニーにIBMに移ることを話した。ペニーは「ここで電球を作ることで十分だ」と答えた。サミーは家族のキャンプ中の行動を撮っていた。キャンプファイヤーが盛り上がり、ペニーが大声で愉快な歌を披露し、母のミッツィが車のライトの中で、透けて見える衣装で、バレーダンスを始めた。サミーはこの美しい光景をカメラに収めた。

突然、ミッツィの母ハダサー(ジーニー・バーリン)が亡くなった。ハダサーはミッツィの結婚を危ぶんでいたから、彼女の死にミッツィの精神は傷ついた。

心配したパートはマンスフィールド製カメラと編集機を買い与えることを条件に、キャンプでダンスしたミッツィの映像を映画にすることをサミーに求めた。サミーは戦争映画のために40人のエキストラを準備していたが、これを取りやめて、母のために映画を作った

ハダサーの兄・ボリス伯父さん(ジャド・ハーシュ)がミッツィを悼みにやってきた。ポリスはサーカス団のライオン調教師からハリウッドに転進した人だった。ハリウッドはサーカス団だ。そいつらの世界は天国だ」と言う。(笑)サミーが戦争映画を作ることと母を慰めるための映画を作ることの悩みを打ち明けると、「家族との板挟みか!」と映画を作ること=芸術家としての心構え「芸術は麻薬だ!覚悟してやれ、しかし孤独で地獄に落ちるかもしれない。ミッツィはそれでピアノをやめ結婚した」と話した。

ボリス伯父さん役のジャド・ハーシュの世俗を全く離れたような演技に魅了され、この言葉は信じられると思いました。サミーはこの言葉に大きく動かされることになった。

サミーはキャンプの映像を母のために編集するなかで、母がペニーとキスしている映像にぶつかった、激しく動揺した。この部分を削除して編集し、家族に「キャンプの思い出」を上映した。家族はみんな楽しんで観てくれた。ミッツィは「これが私に姿!」と喜んだ。しかし、サミーの心は晴れなかった。

サミーは計画通り戦争映画「地獄への脱出」を、ボーイスカウト仲間をキャストに、爆破・射撃に工夫し、感情表現も付けて、撮り終えた。多くの観客を集め公開し、大拍手を受けた。ミッツィは「もうアマチュアでない!」と泣いて喜んでくれた。しかし、サミーはミッツィに声を掛けなかった!

サミーとミッツィの関係がぎぐしゃくしだし、もう耐えられないとミッツィに“キャンプでの母の行動”を見せた!ミッツィは泣いた!サミーが「どうしたらいいか」と聞くと「私は子供たちの母親だ」と言い、このことはふたりの秘密にした。

サミーは父パートとカメラ屋を訪ね古いカメラを処分した。パートから「IBMに移る、ペニーは来ない」と告げられ、ペニーからの贈りものだと新しいカメラが渡された。サミーは「映画は止める!」とカメラを受け取る気はなかったが、父の勧めで預かることにした。

家族でカリフォルニア州北部に移転した。ミッツィはペニーがいないことで、自分を責めていた。

カリフォルニアでの高校生活が始まった。サミーは体育嫌いでユダヤ人ということでローガン(サム・レヒナー)らのいじめが始まった。傷をつけて家に帰るようになった。

ミッツィはサルの飼育を始め、名をペニーとつけるなど精神の異常さを見せるようになり、サミーの将来について「この子は天才、興味の持てるものをやらせて!」とパートと口論するようになった。

サミーはローガンの虐めを庇ってくれたモニカ(クロエ・イースト)から「貴方には神が必要!」と交際を迫られ、つき合うことになった。(笑)

モニカの勧めでクラスが“ずる休み日”に海岸で遊ぶ1日を撮ることになった。サミーは久しぶりにハッスルしてクラス全員の姿をカメラに収めた。

父パートは家族を集め、離婚することを告げた。姉妹たちはミッツィを「なぜこうなった!」「ママに責任がある!」と追及した。サミーは黙って聞いていた。

卒業パーティー。サミーは正装して参加、モニカにネックレスを送り、愛の言葉を伝えたが、「そんな気はない、ものごとって複雑よ!」と断られた。(笑)落ち込んでいるところで“ずる休みの一日”が大スクリーンに映し出された。クラス全員が自分の姿に大興奮しだした。映画ってこんなに感動を呼ぶものかと感じた。

しかし、翌日ローガンから「あの映画は俺じゃない!いじめへの仕返しか?」と殴られた。そのあとローガンは悔しさに泣いた。そして「このことを誰にも言うな!」とタバコを渡し、ふたりで吸った!(笑)サミーは映像の持つ真実と嘘を知った!

母ミッツィが花を準備して卒業を祝ってくれた。母は「あのときが一度よ、思えている?」と話し「あなたは一番大切な子、離婚したことが正しかったかどうか?パパは大切な仕事をする人で、私の心を満たさないことを許さなかった。あなたは自分のため、ママのために生きて!」と話した。

1年後、父パートに会い、大学を辞め映画の仕事をしたいと話した。パートは「ママからだ!」とミッツィが撮った写真を見せ、「お前は家族の芸術の血を引いている。それでいい」と言った。そしCBSプロダクションからの手紙を差し出した。

サミーはCBSプロダクションを訪ね、片目が眼帯で覆われ出血しているジョン・フォード監督(誰が演じているか楽しみに!)の面接試験?を受けた。「どういう画を作りたい?」と部屋に掲げられている、自分が撮った映画シーンを示し、「よくみろ!地平線はどこにある」と質問してきた。サミーは1枚目のシーンには下、二枚目のシーンには上と答えた。監督は微笑んで「地平線は上か下がいい画だ!中はダメだ!」と教えてくれた、サミーはお礼を述べて、歓喜してCBSのスタジオ街を歩いた!

まとめ

サミーは藝術家の母ミッツィの血と父パアートの技術者の血を合わせ引き継ぎました!これが今日にスティーブン・スピルバーグ監督を作り上げている。監督作品はほとんどこの時期の記憶でできていると言っていいのではないでしょうか。

子供のころの天才的な映画つくりをみることが出来ました。そして何よりもこの時期に得た大切なのは、「すべての出来事には意味がある」という世界感を持つにいたったこと。善だけでなく悪もみる、いいこともあれば悪いこともある。これがカメラの映像の中にあること父母の離婚劇にこれを見出だし、両親に感謝せずにはいられなかった。

ラストシーンのジョン・フォード監督の「地平線はどこにある」の質問。「すべての出来事には意味がある」の範疇だと思いました!

この作品の中で映像を見る快楽、映像が暴く真実、映像が作り出す虚構をばっちり描いて見せてくれ、驚き、感動し、涙しました。

       *****