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「アメリカン・ビューティー」(1999)とんでもない家族崩壊物語。が、書き手の心が“すこんと”心に入って来る凄い作品だ。

 

現代アメリカの理想的家族の崩壊劇を通して、現代アメリカ社会の抱える闇をコミカルに描き出すというもの。

本作は第72回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞を獲得した作品です。

監督:サム・メンデス脚本:アラン・ポール、撮影:コンラッド・L・ホール音楽:トーマス・ニューマン

出演者ケビン・スペイシーアネット・ベニングソーラ・バーチウェス・ベントリー、ミーナ・スバーリ、ピーター・ギャラガークリス・クーパーアリソン・ジャネイ、スコット・バクラ、サム・ロバーズ。

物語は

郊外の新興住宅地に暮らす夫婦と娘の三人家族。夫婦仲は冷め、娘は親と意思の疎通がない。おかしな青年とゲイ嫌いの父親がいる隣家も同様の家庭だ。だが夫がリストラに合い、娘の友人に性的妄想を抱き、妻は浮気、娘は隣家の青年と駆け落ちを決意し……。(映画COMより)


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あらすじ&感想

広告代理店に勤め、シカゴ郊外に住む42歳のレスター・バーナムケビン・スペイシー)。彼は広告会社に勤めるがいまだ平社員で、仕事に意欲がなくなっていた。

妻キャロラインアネット・ベニング)はこんな夫を「人生の敗北者」と見下し、不動産業を営み業績を上げることにいっぱいで、夫のことなど頭にない。当然ふたりはセックスレスで、レスターは妻にうんざりしていた。(笑)

娘のジェーン(ゾーラ・バーチ)は情緒的な不安と混乱を抱える典型的なティーンエイジャーで、こんな生気のない父親を嫌っていた。そんなある日、レスターは娘のチアリーディングを見に行って、ジェーンの親友アンジェラ(ミーナ・スヴァーリ)に恋をしてしまい、彼女好みの体形つくりにと筋トレを始める。(笑)

アンジェラはセブンティーンのモデル経験がある女生徒で「男性経験は豊富」と公言する。ジェーンに「あなたの父母はセックスレスよ」と言うちょっと跳んでる子。

そこに、元海軍大佐フランク・フィッツクリス・クーパー)家が隣に引っ越してきて、レスターはその息子リッキー(ウエス・ペントリー)に薬を紹介されたことで繋がり、ジェーンはリッキーと恋仲になっていく。リッキーの趣味はビデオカメラ。父親の厳格な躾に耐えられず薬を覚え精神科治療を受けた経歴があった。しかし、見た目とは違って、宙を舞う紙が絶対にカメラのフレームを外れることなく漂う映像に「すべてのものの背後には“生命と慈愛の力”があり何も恐れる必要がない」という哲学をもっている。

退職を勧められていたレスターはアンジェラやリッキーに煽られるように広告会社を辞め、上司のセクハラをネタに金をせしめ、昔に戻ったようなハイな気分で赤色のファイアバードを買い、自由気ままに過ごそうとハンバーガー店員になる。一方、妻のキャロラインは売上を伸ばそうと不動産業の王様といわれるバディ・ケーンピーター・ギャラガー)をベッドに誘った。

こんなレスターとキャロリンが自宅居間で大喧嘩を始めた!

 このとき2階部屋にいたジェーンとリッキー。父母で喧嘩にうんざりしたジェーンが「マジ、あれで父親と言えるの!父親が娘の友達を見て、パンツの中に発射する。死んだほうがいいよ」と言えば、「俺が殺そうか」とリッキー。ジェーンは「やってくれる」と頼んだ。

次の朝、キャロリンはレスターを無視したように仕事に出掛け、レスターは、ジェーンの「今夜アンジェラが来る」を聞いて、意気揚々とランニングに出掛けた。(笑)

レスターが勤めるハンバーガー店に、ケーンとキャロリンがやってきた。レスターはこれを見て「君が幸せならそれでいい。俺につべこべ言うな!」と激しい言葉を投げた。この言葉にケーンが不倫関係解消を言い出す。頭にきたキャロリンは、車の中で「力関係が崩れても自己中心的に生きることができる。他人の犠牲となる日々から解放されることだ」というテープを聞いて、隠し持っていた拳銃をハンドバックに入れて家路に急いだ。(笑)

一方、レスターは帰宅し、アンジェラに会えると筋トレを開始。薬が切れていることに気付きリッキーに電話した。この電話に父フランクが疑念を抱き、窓越しにふたりの様子を監視する。フランクの想像で、リッキーとレスターはゲイ関係にあると判断し、戻ってきたリッキーを罵倒し、殴り倒した。

ファランクはガレージで筋トレしているレスターを訪ね、キスしようとすると「勘違いしているぞ!」と断られ、傷ついて家に戻った。

リッキーはニューヨークで暮らすと母に伝え家を出て、ジェーンを誘いにやってきた。ジェーンのところには泊まりにきていたアンジェラがいた。リッキーを見たアンジェラが「こんな男の何処がいいの」と言ったことでジェーンと仲違い。アンジェラはひとり居間で休んでいた。

レスターが居間に戻るとひとりでいるアンジェラを見つけた。レスターはチャンスとばかりにアンジェラに挑もうとすると「初めてなの!」という。レスターはこの言葉で平常心を取り戻した

アンジェラから「ジェーンはとても素敵な恋をしている」と聞き、自分は何をしていたかと家族の写真を見ていた。そのとき彼は頭を拳銃でぶち抜かれた!撃ったのはフランクだった。

拳銃の音でリッキーとジェーンが駆けつけレスターの死に顔を見た。穏やかな顔だった。帰宅したキャロリンがレスターの遺体を見た。彼のロッカーを開け、洋服を抱いて慟哭した。失くしてみて、何が大切かを知った

レスターは消えていく意識のなかで、「美しいものがあるとそれに圧倒されて、僕のハートの風船のように破裂しかける。そういうときは、身体の緊張を解く。すると気持ちは雨のように胸の中を流れ、感謝の気持ちだけが後に残る。僕の愚かな、とるに足らぬたわごとに聞こえるだろう。大丈夫!いつか理解できる」と微笑んだ。

まとめ

アメリカン・ビューティー」とはバラの一種で色は真紅で発祥はアメリカ。アメリカの幸せの象徴です。パーナム家の庭には“このバラ”が植えられ、妻のキャロリンが手入れをしており、外から見るとまさに幸せ家族に見えます。

が、実情は離婚寸前の夫婦と父親に「死んで欲しい」と願う娘がいる、見た目だけでは分からない家族だった。なぜこうなったかがコミカルに語られ、隣に住む退役海軍大佐の妄想・暴走から、登場人物の真の姿が見えてくるプロット。唸りたくなるほどの上手い脚本だった。

先入観と真実の関係。見てくれで判断すると真実は見えない。愛がなければ真実は見えないという話。

出演者の観る人を欺く演技が見事でした。見た目で判断するなと強調するため、キャラクターの容貌や行動では人となりが判断できないように作ってあり、とても面白い物語になっています。

なかでもリッキー、こいつは目に凄みがあり薬をやり盗み撮りをするという悪の代表例のような男でが、もっとも正義に近い判断力を持っていた。ラストで明かされるレスターの言葉よりリッキーの人生哲学のほうが心に沁みました。

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