映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「リンカーン」(2012)したたかで人間くさいリンカーン。リンカーン像を一変させてくれました!

スピルバーグ監督作としては評判が悪い!(笑)ということで観ることにしました。

監督:スティーブン・スピルバーグ原作:ドリス・カーンズ・グッドウィン、脚本:トニー・クシュナー撮影:ヤヌス・カミンスキー美術:リック・カーター、編集:マイケル・カーン衣装:ジョアンナ・ジョンストン、音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演者:ダニエル・デイ=ルイストミー・リー・ジョーンズサリー・フィールド、ジョセフ・ゴードン=レビット、デビッド・ストラザーン、ジェームズ・スペイダーハル・ホルブルックジャッキー・アール・ヘイリーアダム・ドライバー、他。

物語は

貧しい家に生まれ育ち、ほとんど学校にも通えない少年時代を送ったリンカーンだが、努力と独学で身を立て大統領の座にまでのぼりつめる。しかし権力の座に安住することなく奴隷解放運動を推し進めたリンカーンは、一方でその運動が引き起こた南北戦争で国が2つに割れるという未曾有の危機にも直面していく。(映画COMから引用)

リンカーン」は四年に及んだ南北戦争から、1865年1月を取り上げて、民主主義と戦うリンカーンの姿を描いたもの。戦争が4年にも及び厭戦気分が横溢して来る中で、万一このままで終戦となった場合には奴隷制度廃止が宙に浮く可能性が高い。また、戦争継続も損害をこれ以上出すことを国民は望まない。しかし、なんとしても奴隷制度廃止のための憲法修正法案を成立させねばならない。終戦を視野に奴隷制度廃止を成立させるためのリンカーンの苦悩、議会工作を中心に描いたものです。この時期、「全ての人間は平等に造られている」という米国独立宣言をなんとしても実現したいリンカーンにとっての執念場だった


www.youtube.com

あらすじ&感想:

1864年、ジェンキンズ・フェリーの激戦北軍の黒人が南軍の白人と激しく切り合う。リンカーンダニエル・デイ=ルイス)がこの戦場を見舞、黒人兵の声を聴く。彼らは戦勝を信じ「数年後には黒人の中尉や大尉が、50年後には黒人の大佐が、100年後には選挙権も認められるかもしれない」と解放される日に希望を見出していた。彼らは次の戦場ウイルミントンへと旅立っていった。

1865年1月、リンカーンは不安な夢で目覚める。心配する妻のメアリー(サリー・フィールド)はかって刺客に襲われたことを心配し、奴隷制を廃止させるための憲法修正第13条(修正案という)のことで悩んでいると夫の不安を言い当てる。

リンカーンは大統領2期目に入って2カ月、3月の就任式までに修正案を成立させたいと考えていた上院では通過したが、下院の共和党は通過に必要な3分の2の数を持っていなかった。そこで国務長官のウィリアム・スワード(デビッド・ストラザーン)に議会工作を指示した。

スワードは「会期末で議席を失う民主党員に就職援護を条件に賛成派を回らせる。そして共和党の長老プレストン・ブレア(ハル・ホルブルック)の協力を得る必要がある」と具申した。

リンカーンはブレアに会って協力を依頼すると「共和党議員の中にも平和を臨むものがいる。南軍連合の大統領ジェファーソン・デイヴィスに会え」と提案された。

リンカーン閣議で陸軍長官、海軍長官からウイルミントの攻撃構想を聞く。彼らは「これで勝利し終戦だ」と意欲を示す。そして「なぜ今、修正案が必要なんだ」と議論になった。

リンカーン弁護士時代に老婆が夫を殺し自死した話を聞かせる。殺された夫は遺書に「わしを殺したな!生き返ったら復習してやる」と書いてあった。彼女に面接すると「水はどこで飲めるか?」と聞くから「テネシーだ」と教えた。すると老婆はにげだしたが、正義は中分だと釈放金も免除になった」と話し、皆が大笑いをした。修正案を成立させることは正義のためだから世間の評価は後でついてくるという冗談だった。この後、法律家らしく修正案成立お必要性を説明した。

こういう解脱したような冗談を漏らしながら、自分のやりたいことに邁進するリンカーンの姿に強く打たれます!

スワードの要請を受けたロビイストたちが一斉に動き出した。

共和党の急進派の実力者ダグラス・スティーブンス(トミー・リー・ジョーンズ)は同志から修正案に反対するよう求められるが、彼はリンカーンのやっていることには一定の理解を示していた

1月9日、下院での論議が始まった。民主党議員のフェルナンド・ウッド(リー・ペイス)が猛烈な反対演説を行い、これにスティーブンスが痛烈に非難し議会は大混乱に陥っていた。妻のエミリーはこれを傍聴席で聞き、不安になる。

ハーバードで勉学中の次男のロバート(ジョセフ・ゴードン=レビット)がホワイト・ハウスに戻ってきた。メアリーが「軍に志願しないで」と訴えた。メアリーがリンカーンに「ロバートを戦場に行かせないで!」と激しく求めた。リンカーンはロバートに「勉強しろ!戦場に行く必要はない!」と告げた。

リンカーンはブレアから「南部連合使節団に会って欲しい」と平和交渉を進めることを強く求められた。この話を聞いたスワードは全く聞かされていなかったので、「議会にもれたら議会工作は水の泡になる」と激怒した。

1月11日、南部連合使節団はピーターズバーク郊外で北軍接触、リバークイーン号で待機することになった。

1月15日、新年祝賀会がおこなわれた。メアリーがホステスを務め、出席のスティーブンスに「あなたは愛されない人ね」と皮肉った。

リンカーンはスティーブンスを地下室に招き説得した。測量士として仕事をしていたときの教訓だと「方位磁針は北を正確に指してくれるが、そこへ至るまでの障害物は何も教えてくれない」と話し、自説をまげて、修正案に賛成するよう説得した。

ノースカロライナ州ウィルミントン攻撃開始の情報が入り、閣議が始まった。状況がはっきりするまで、リンカーンは小話をした。アメリカの独立戦争時の英雄イーサン・アレンがイギリス貴族を訪れた際、ジョージ・ワシントン肖像画がトイレに貼ってあった。貴族に「悔しいでしょう」と聞かれ「これほどにイギリス人はアメリカを恐れて糞をたれるか!」と反論した冗談話だった。これを聞いて皆は笑ったが、リンカーンは「なにがあろうとこの機会に修正案を議決しなければ世界の笑いものになる」と伝えたかった。

こういう冗談て場が和むという硬弱混ぜた統率力が凄い。そこに「ウィルミントンが未だ降伏せず」との電報が届いた。

民主党はスティーブンスを攻撃して怒らせ、修正案を破棄させることを企む。

 120日グラント将軍(ジャレッド・ハリス)から「統一と平和を望んでいる」と南軍連合大統領に会うよう要請がきた。リンカーンは電報でグラントに「使節団をヴァージニア・ハンプトンローズへ連れて行き、指示をするまでワシントンへ入ってはならない」と打電した。この通信手がアダム・ドライバーだった。通信手が理系だというので、ユークリッドの“自明の定理”を思い出し「白も黒も始まりは同じ」とこのアダムに決心を説明した。(笑)

1月27日、下院議会。南軍使節団の情報が漏れた。スティーブンス議員に「法の前では平等であると信じる」と修正案に賛成する旨議会答弁させることにした。スティーブンスはこれを呑み、証言した。

リンカーンはロバートを連れて野戦病院の慰問に訪れた。リンカーンは負傷兵を見舞ったが、ロバートが同行宇せず車に待機していた。通過するリヤカーに乗せられ切断した兵士の脚を見て、父に「戦場に行く!」と告げた。リンカーンは「行く必要はない!」と殴ったが 、「メアリーが怖くて反対しているだけだ」とロバートは去って行った。

これを巡りリンカーンとメアリーは揉めた。この夫婦喧嘩も見事だった。(笑)後日、オペラ鑑賞時にメアリーは「修正案を通して戦争をやめて!そのためにスワートに任せず、自分でやって!」と言い放った。(笑)

議決まで4日間と迫ったリンカーンはスティーブンスに民主党員の取り込みを命じた。また、自らが出向き説得、脅しをかけた

側近たちから、「平和交渉している。これでは勝てない!そもそも修正案など必要ない」という意見がでてきた。リンカーンは激怒し、テーブルを叩きながら激しい口調で「人類にとって価値ある奴隷解放するためにこの戦争を終わらせる。これが私の考え方だ。修正案こそ治療薬だ!私は米国の大統領だ!全権を持っている。私のために何が何でも2票集めて来い!」と督励した。

1月31日、議決の日。傍聴席に黒人を招いて共和、民主両党の最終陳述を行った。民主党側は「ワシントンに停戦案を持つ南部連合使節団がきている」と採決を延長するよう訴え、共和党保守派も同調する者が現れ、議会が大混乱に陥った。リンカーンは「自分が知る限り使節団は街にいない」とメモを議会に送り、混乱を鎮めた。

修正法案に対する議決が行われた。リンカーンのこれまでの努力が実り、議長の賛成票が加わり、欠席または棄権が8票、反対56票、賛成119票により、憲法修正第13条が可決された。

リンカーン南部連合使節団と面談。南部連合副大統領がら修正案が適用されないよう申し出たが、これを却下した。

1865年4月14日、リンカーンは妻エミリーとオペラを鑑賞中に射殺された。

まとめ

米国建国の精神を達成するため、この時期を逃してはチャンスがないと、終戦交渉時期を探りながら、あえて強引ではあったが議員買収、終戦交渉を隠蔽し、したたかに修正案を成立させた

ここで描かれるリンカーンは、子供のころに聞かされたリンカーン像とは全く違う。清廉潔白とは程遠い人間くさいもので、それだけに魅力的です。人を多面的に捉えるスピルバーグ監督が描きたい大統領像だと思いました(笑)。ということでとても“味のある作品”になっています。

リンカーンの大統領であり、夫そして父としての姿。普通の父でありどちらかといえば妻に頭が上がらない。(笑)子供には「自主性を認める」と妻と激しい口論をするのが面白い。リンカーンがどのような人物だったのかは分かりませんが、ダニエル・デイ=ルイスが演じた大統領がリンカーンと思えます!特に声が魅力的だった。アカデミー賞主演男優賞、納得の演技でした。

戦争シーンは冒頭だけで、議会での論戦主体の映画。論戦はまるで言葉によるボクシングのようでスリリングだったが、当時これが行われたということに驚きですが、政治状況が理解できてないからよく分からない。これが評判の悪さの原因ではないでしょうか。

映像は明度を落として丁寧に描かれて、そこには荘厳性が感じられ美しく、奴隷解放という歴史が感じられるものになっていました。

               ****