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「私がやりました」(2023)1930年代のパリ。3人の女たちの罪に、開いた口が塞がらない!

 

映画プロデューサー殺人事件の“犯人の座”をめぐって3人の女たちが繰り広げる騒動をユーモアたっぷりに描いたクライムミステリー

 8人の女たち」のフランソワ・オゾン監督作品。「エル ELLE」のイザベル・ユペール出演、といことで観ることにしました。

“犯人は誰か“予想できない殺人劇、二転三転、その最期には開いた口が塞がらないほどの驚き!笑いが一杯。その裏に隠されたテーマがすばらしい!イザベル・ユペールの凄さを感じる作品でしたお勧めできる作品です。

監督・脚本:フランソワ・オゾン撮影:マニュエル・ダコッセ、美術:ジャン・ラバッセ、衣装:パスカリーヌ・シャバンヌ、編集:ロール・ガルデット、音楽フィリップ・ロンビ

出演者エナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペールファブリス・ルキーニダニー・ブーンアンドレ・デュソリエエドゥアール・シュルピス、レジス・ラスパレス。

物語は、

パリの大豪邸で有名映画プロデューサーが殺害され、新人女優マドレーヌ(エナディア・テレスキウィッツ)が容疑者として連行された。マドレーヌはプロデューサーに襲われて自分の身を守るために撃ったと供述し、親友である弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)とともに法廷に立つ。正当防衛を訴える鮮やかな弁論と感動的なスピーチは裁判官や大衆の心をつかみ、マドレーヌは無罪を勝ち取ったのみならず、悲劇のヒロインとしてスターの座を手に入れる。そんな彼女たちの前にかつての大女優オデット(イザベル・ユペールが現れ、プロデューサー殺しの真犯人は自分だと主張する。はたして、オデットは真犯人なのか・・・。(映画COMより)


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あらすじ&感想

有名映画プロデューサー・モンフェラの豪邸を泣きながら出て街を走るマドレーヌの姿から物語は始まる。

マドレーヌは24歳の売れない女優。マドレーヌは弁護士のポリーヌと同居しているが、彼女も仕事がなく、大家から5カ月分3000フランの家賃の支払いを求められるが支払えない貧乏暮らし。

マドレーヌが戻りポリーヌにモンフェラとの顛末を話した

映画「シュゼットの試練」の主役にすると邸に呼ばれ、行くと「気に入った、周2回1時間過ごすのでどうか」と切り出しキスしてソファに押し倒されたから、彼の腕に噛みつき逃げてきたと。

ポリーヌが「彼氏はいるの?」と聞く。「彼、アンドレは私を愛しているが、富豪の息子で仕事をせず、貧乏だ」という。そこにアンドレエドゥアール・シュルピス)が「話がある」と訪ねてきた。

アンドレが「富豪の娘と結婚するが好きなのは君だから愛人になってくれ」という。(笑)

アンドレの親父さんはボナール・タイヤ社の社長。会社経営が思わしくなく、アンドレに持参金500万フランの富豪の娘と結婚させ、急場をしのぎたいらしい。アンドレは「父親から結婚の祝い金が出るから、新婚旅行が終ったら、ブスな娘は嫌だと写真を見せ、君と生活したい。夢の生活だ」と話して帰っていった。(笑)

マドレーヌは冗談で「ヘボ弁護士にエボ女優、誰にも愛されない」とはタンスの上にあった拳銃を頭に突きつけた。(笑)そこに国家警察のブラン警部が訪ねてきた。

ブラン警部は「モンフェラが拳銃で射殺された」とマドレーヌを尋問

警部が「モンフェラが射殺された時間は午後3時から3時15分の間。一発の銃弾で頭部頭蓋骨が撃ち抜かれている」と説明。マドレーヌは「当然の報いだ!」と答えた。ポリーヌが「仕事をくれなかったから怒っているだけ」とマドレーヌの説明を補足した。

警部はさらに「財布が盗まれている。30万フランが支払われており金を狙った犯罪だ、パリを離れないように」と言って帰っていった。

このあとマドレーヌとポリーヌは気分晴らしに映画B・ワイルダー監督、D・ダリュー主演の映画「ろくでない」(1934)を観た。この間に警部はアパートの管理人にふたりの身元調査を行い、部屋を捜索して拳銃を押収していた

新聞で「有名映画プロデューサー。モンフェラ殺害事件」として報道されt。

ブラン警部がラビュセ予審判事(ファブリス・ルキーニ)にモンフェラ殺害事件について報告した

容疑者はマドレーヌ。犯行に用いた拳銃を提出。時間は2時20分に外出し3時半に戻った執事の証言。「金に絡む犯行で、アパートの管理人によるとマドレーヌは金に困っており、当日恋人のアンドレとも別れている」というものだった。

ラビュセ予審判事は、書記のトラピュの進言で念のためにと、モンフェラに邸宅を売った建設家パルマレード(ダニー・ブーン)を尋問した。パルマレードは「その時間帯には君の家で昼飯だった、新聞に載っている」と言い、アリバイが成立した。ラビュセの記憶は曖昧だ。(笑)

マドレーヌはラビュセ予審判事の取調べを受けた

マドレーヌは「モンフェラは豚やろうで襲われたから抵抗して逃げた」と言い、提示された拳銃には、「代役で夜遅くなったときの護身用だ」、1発至れているには「田舎で試射した」と証言した。

ラビュセの示す「モンフェラに招かれ、30万フランを魅せられ、執事が外出したとき、絶交のチャンスとして殺したか?」という犯行シナリオ(モノカラーで描かれる)を「凄い想像力だ」と否定した。

ラビュセは「自白すれば20年の刑期で済む」と新聞記事を見て、「30万フランは葉巻入れで見つかった、あなたには関係ない」と自白を強要する。マドレーヌは「これで証言することは終り」と証言協力金12フランを要求すると、「第1容疑者はダメだ」と断られた。

マドレーヌは弁護士を呼ぶ許可を取って、外で待機するポリーヌと策を練って、ふたりで取調べ室に戻った。

ポリーヌとラビュセ予審判事の論争が始まった

ラビュセは「金に絡む殺人ではなく痴情なら、モンフェラは有名人だから三流女優には惚れないで、妊娠の可能性もある。この姿で撃った場合、刑期は5年だ」と言い出す。マドレーヌは「それでも長い!」と声を上げた。すると「犯行が計画的だから殺意は明らかだ」という。ポリーヌは「男が襲い掛かれば女は銃を持つ。そして撃つ、5年は長い。銃は彼のものだ。正当防衛だ」と反論した。マドレーヌが「私がモンフェラを殺害した。彼の銃で殺し持ち帰った」とこれまでの主張を変えた。審判事は「よく白状してくれた」と喜んだ。マドレーヌは調書にサインした。

マドレーヌは拘置所に勾留された

ポリーヌが拘置所を尋ね「芝居のセリフだと思ってよく覚えて!」と答弁原稿を渡した。

裁判は市民の注目の中で開始された

裁判長の「殺したか?」の問いから始まった。

マドレーヌは「愛人になる話を断ると怒鳴られ、ソファに押し倒され襲われたのでテーブルの上にあった拳銃で撃った」述べた。

幾人かの証人喚問があった。

検事が「若い女性がふたりでベットはひとつ、不自然だ、男について増悪を持っている」と責めて来た。ポリーヌが「恥を知れ!あなた方は貧乏を知らない。私たちは暖を取るため同じベットに寝る」と答弁し防諜席は湧いた!(笑)

アンドレは「自分を殺さなかったのは愛しているからだというマドレーヌの証言を知り自分を恥じた。許してくれ!」と土下座した。(笑)

裁判官が検事に論告を命じた

検事は陪審員に「犯罪は許されないことを望む」と声を掛け、「彼女を見せしめにする。でないと明日から他の女たちが男を殺す。今までも女たちは平然と男を始末してきた。全員一致の極刑を望む」と述べた。(笑)

これにポリーヌは「マドレーヌの行為は正当防衛だ。誰も守ってくれない。女は自分で守るしかない。マドレーヌは貞操を守るために殺した。男性に支配され腐敗したフランス社会で女性の立場はあまりにも不公平だ。過ちが最大限裁かれるよう希望します」と述べた。傍聴席から拍手が起こった。

最後にマドレーヌに発言が認められた

マドレーヌは「1935年なのに、女性としてのキャリアや人生を何の制約もなく自由に手に入れたい」と発言した。ブラボーの声が上がり傍聴席が大混乱!

これは1935年の主張ではなく、現在にも生きた主張というところがこの作品の面白さだ

判決は無罪だった

管理人がフアンから預かった花束を持ってきて「私は40年夫に耐えたが撃てばよかった」という。(笑)

 マドレーヌに舞台、映画と次から次へと仕事が入る。そしてポリーヌも同じように弁護士の要請が入って来る。記者のインタビューも受けた。

アントレがやって来て「誰よりも大切な人の心が読めてなかった」と謝罪し「親の勧めある結婚は止める」と告げた。

マドレーヌは舞台の母親役・シモーヌから「男がうるさく要求してくる、殺したい」と打ち明けられる。(笑)

パーテイで「家の改造計画はどうか」と建築家のパルマレードに水道工事を進められた。(笑)

マドレーヌとポリーヌはブローニュに大豪邸を買った

無声映画時代の大女優オデット・ショーメットが訪ねてきた。ダミ声で「インチキ女、自分たちだけでいい思いをして、もう黙っていられない。私がモンフェラを殺した。盗んだ犯罪を返せ!」と迫る。「証拠は財布だ」と言うが、中身がない。(笑)「それでは証拠にならない」と言うと「30万フラン寄こせ!」と言い、帰って行った。

オデットはラビュセ予審判事に「モンフェラ殺しの真犯人は自分だ」と訴えた。しかし「すでに裁判で解決済み」と相手にされない。オデットは「これが証拠だ」と財布を出すが「裁判が終わり誰もが結果に満足している。裁判長も名声を得ている」と取り合ってもらえない。「法廷侮辱罪で2年の禁固刑だ」と言われる。(笑)オデットは「無罪判決で金が欲しい」と食い下がる。遂に予審判事から「未解決の情痴事件ファイルだ。この中から選べ」と言われた。(笑)が、「私は犯罪を盗まない」と断った。(笑)

マドレーヌとポリーヌは「オデットに暴かれては拙い」とオデットを捕まえカフェに誘い「あなたをカムバックする案がある、30万フランも払う」とマドレーヌとの共演を申し出た、オデットはこれを受けた。

マドレーヌは建築家のパルマレードを誘惑して“ある願い”を聞いてもらうことにしたが、パルマレードは「妻で十分だ」と断った。が、パルマレードに“あるお願い”をした。

マドレーヌはポリーヌと風呂に入り「パルマレードをすばらしい人だ」と話した。

パルマレードはボナール・タイヤ社を尋ね、社長ボナール(アンドレ・デュソリエ)に「息子アンドレをマドレーヌと結婚させて欲しい」と申し出た。

ボナールが「マドレーヌは罪人だ」と断るとパルマレードは150万フランの投資話を持ち出し、「義父に倒産の恥をかかせたくないというマドレーヌの案だ」と説明した。そこにマドレーヌが美しくが着飾って登場、ボナールは結婚を認めた。マドレーヌは「真犯人はオデットです」と話すと、ボナールは「オデットのフアンだ」と驚く。そこにオデットが現れ「30万フラン払わないとマスコミが新聞に載せるのよ」と話す。ボナールが30万フランの小切手をオデットに渡した。(笑)

ボナールが「妻が犯人でないと知ったらアンドレが喜ぶ」と4人で乾杯しているところにアンドレが現れ「マドレーヌを守るためにモンフェラを殺した」と告白した。ここに居る5人はこれを秘密にした。

オデットがモンフェラの屋敷を訪れるとモンフェラがまさにマドレーヌを犯そうとしていた。オデットは拳銃でモンフェラを撃った。するとマドレーヌが立ち上がりその拳銃でモンフェラを撃った。カメラが引かれ、そこは舞台だった。 

まとめ

オデットは真犯人なのか?

ラストシーン、オデットがモンフェランの大豪邸を尋ねるとまさにモンフェランがマドレーヌを犯しにかかっていた。オデットが拳銃でモンフェラを撃った。立ち上がったマドレーヌもその拳銃でモンフェラを撃った。カメラが引かれるとそこは舞台上だった。ここで吐くオデットのセリフ。「試練に耐えましょうシュゼット。冷酷な男どもの不公平な世界で慰めを得られる場所はひとつ、愛する姉妹の腕の中よ!」。観客は拍手と大爆笑だった。エンデイングでマドレーヌを無罪にした裁判の関係者は罰せられている。

つまり、オデットとマドレーヌが組んでモンフェラを殺害したとして、これを裁判で正当防衛と認めさせ、マドレーヌを無罪にした前裁判をひっくり返して、これに関連した裁判官や検察官に罰を与えたという結末。開いた口が塞がらない!(笑)

さらに、このラストシーンから分るように、本作は冒頭からラストシーン、さらにエンデイングまで、女性に対する性暴力、女性の権利平等を訴えている。今も存在する。まさにハイウッドで生起している問題だ。つい最近日本の映画界でも話題になっている。

女優と高名プロデューサーのスキャンダルをエンタメ作品として描き、大ヒットされたところにこの作品の意義がある。

物語の前段、エナディア・テレスキウィッツとレベッカ・マルデールの美しい女優さんで描くコミカルな裁判劇。美しくて優雅なエナディア・テレスキウィッツ、これに反して活発で弁の立つ凛としたレベッカ・マルデールのふたりが見せる答弁。それぞれ女優として、弁護士としての演技は見事だった。そしてコミカルな演技も面白かった。しかし、後段、イザベル・ユペールが出てくると、ドラマは一変、イザベルに全部もっていかれた感じだった。(笑)

オデット登場でドラマの空気が一変する。イザベル・ユペールの演技力が如何にすさまししいかが分かる

イザベル・ユペールがすさましくあつかましい“おばちゃん”演技で上沼恵美子を越えている。 (笑)「パリタクシー」(2022)のダニー・ブーンが、建築家の役で終るのかと思っていたら姦通罪で訴えられるとは。(笑)

キャステイングを含めて笑わせてくれる作品になっていた

そして1930年代の風物、車、螺旋階段のあるアパート、映画館、そこで上映されるモノカラーの無声映画、街の雑沓。楽しめました。

尺は103分、二転三転するドラマを美しい3人の女優さんの演技を楽しみながら、歴史を顧みて、女性の人権を考える作品。洒落た作品だった

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