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「マネー・ショート」(2016)

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2008年世界経済を襲ったリーマン・ショックの裏側でいち早く危機を予見し、ウオール街を出し抜いた4人のアウトローたちの物語。
監督はアダム・マッケイ。脚本はチャールズ・ランドルフ アダム・マッケイ。第88回アカデミー賞で作品賞、監督賞など主要部門を含む合計5部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した。
出演がクリスチャン・ベールライアン・ゴズリング、スティーブ・カレル、ブラッド・ピットという豪華キャストです。
 
この4人が何か悪い企みでぼろ儲けしたように聞こえますが、そうではなくて、彼等は債権市場のルールで正当に勝負したわけで、ここでは彼らの目の付けどころ(勝負に勝てた要因)、そしてこの騒動を引き起こした真の犯人(要因)はなにかをユーモアをもって、分りやすく描いています。とは言え、専門用語が分り辛いですが、物語のなかで一生けん命説明してくれますので、これも見どころのひとつ、知らなくても大丈夫です。(*^_^*)
説明に味のある言葉「人は数字を信じない、人の繋がりしか信じない」、サブプライムローン債権は「腐った魚を煮込んだだけのイカサマ高級料理」など沢山でてきます。下ネタも多い。これも楽しみです。イメージ 7
「知らないことは悪いことではない。知らないのに知ったふりをすることが・・」というマーク・トウェインの格言ではじまり、「この『巨大詐欺事件』で一体誰が責任を取ったのだろうか? 一体誰が刑務所に放り込まれただろうか? ゴミ屑が混ざった証券をトリプルAと称して売った銀行や証券会社は自らの不明を恥じて二度と同じ過ちを繰り返さないと誓っただろうか?そして政府が登場して、救済して、すべてが何事もなかったようになったのを覚えているか?のエンデイング。 
 
この破綻劇は、金融マンたちが驚くほどに自分たちの売っている商品に無知だったということ、いや、問題は彼らが無知だったことではなく、自分たちが無知であるという事実から目を反らし続けてきたことだと問いかけています。
 
***(ねたばれ) 
2005年、サンノゼに拠点を置くエキセントリックな投資家でヘヴイメタル愛好家のマイケル(クリスチャン・ベール子供のころフットボールで片目を喪失、これがもとで孤独を好むようになり、現在はトレーダーでありながら医師の免許を持つ才人で、数学が好き。常に裸足&Tシャツ&短パン姿で変人扱いされている。
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彼は、格付けの高い不動産抵当証券の何千の事例を調べていた時、驚くべき発見をする。ムーデイーズなどの権威の高い格付け会社からトリプルAという国債並みの格付けをされ、保険会社など世界中の機関投資家は買っているにもかかわらず、サプライム(低所得者向けの住宅ローン)などの返済の見込みの少ない住宅ローンを含む金融商品は、数年以内に必ずやデフォルト(債務不履行)に陥るだろうと。
彼は、ドイツ銀行に出向き、低利息で住宅ローン証券を空売りする「クレジット・デフォルト・スワップCDS)という商品を紹介され、これを大量に購入する。対応銀行員は彼が支払うことになる保険料収入に高笑いする。彼はヘッジファンドのオーナーや投資家たちから抗議されが、反対されればされるほどに確信は高くなり、昂揚感で激しくメタルを叩く。
 
ドイツ銀行に勤めるシャレド(ライアン・ゴズリング、若き銀行員で野心あふれる自信家。マイケルの動きを察知し、2007にはサブプライムローンが焦げ付くとして、彼の空売りに同調する。銀行が窮地に陥る危機をチャンスに変えようと「市場を動かしているのはサブプライムローンだ」とブロックゲームを用いて住宅市場崩壊の構図を説明するが、これは分りやすい、行内では全く相手にされない。そこでファンド・マネージャーのマークを説得しCDSに大量の金を投じるべきと説く。イメージ 3
 マーク(スティーブ・カレル)は大手証券会社の傘下でヘッジファンド・マネージャーとして誠実に働いており、この話を耳にして金融業界に腐心を抱き、怒りを感じ、そんなことしたら国がつぶれると住宅市場の徹底的実地調査を行う。
フロリダの住宅市場を調査して、信用力の低い住宅購入者や、頭金なしでイメージ 4
次々と家を買うストリップ・クラブダンサーにローンを組んでいると言う実態を掴む。1000軒に4軒しか住人がいないとか、大きな鰐しかいない住宅、2軒の家をローンで買ったと言うストリッパーのはなしとか面白く描かれています。
「サプライムローンが不安なのになぜ債権が上がるのか」「ローンが下がるのに格付けが上がる」と格付け会社にその評価の適否を質すと答えられないという、格付け会社のギャップに気付く。
 
20代の投資家ジェイミー(フィン・ウィットロック)とチャーリー(ジョン・マガロ)も、この住宅バブルに目をつけている。彼等は金融大手としてウオール街に参入することを目論んでいるが手元資金が足りない。そこで、彼らは元銀行家で今は第一線を引退しているベン(ブラッド・ビット)を訪ね、住宅ローンの実情を説明し資金支援を願いでる。ベンは、業界に大きな影響を持つ元銀行家で破滅論者で、オーガニックに傾倒している。イメージ 5
ベンは、彼等に徹底した調査を命じる。債権者を訪ねると犬の名でローンを組んでいるという投資家に会う。モルガンスタンレーがニンジャローンを移民者に売りだすようになり、市場は100倍になりCDOがよいとベンに電話してくる。ベンは早速ドイツ銀行に電話し彼等を支援することにする。
 
シャレドの勧めで、ラスベガスで開かれる「アメリカン・セキュリテイ・フォーラム」に出席したマークは、この席にはベンとその仲間も参加、「サブプライムは安全で、不安を質問すればみんなに笑いものにされる状況にあること」を知る。マークはこの状況に、(金融機関は)倒産すると泣く。マイケルのところには、彼の投資に反対する多くのメールが届き始める。
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そして、
2008年、住宅ローンの破綻に端を発する市場崩壊の徴候が現れ、株価が急落、915日に米国の大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズ倒産引き金となり、世界的な金融危機に発展する。

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