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「ステイーブ・ジョブズ」(2015)

イメージ 1「ステイーブ・ジョブズ」(2015
20160313
福山駅前シネモード
「パソコンが美しくって誰もが欲しがったら、世界の常識が変わる、なにもかも・・」というナレーションで始まるジョブズの物語。しかし、パソコンの誕生秘話や伝記ではなく、ここで描かれるのは、伝説の、ジョブズの生涯で最も波乱に満ちた時期における3大製品の新作発表会プレゼンテーションの舞台裏(40分)です。
ここには、かっての仲間ウッズニアックやジョン・スカリーとの確執を通じて、彼の信念を突き通すビジネスセンス、さらに娘リサに寄せる父としての愛情が描かれています。
 
1幕 1984Macintosh(世界最初のパソコン機種)
2幕 1988NeXTCube (自分が創業したアップルを追われて作った機種)
3幕 1998iMac(アップルに復帰して作った最初の機種)
 
これら3幕はいずれも会話劇で、激しい会話バトルがテンポよく続けられるので、ジョシュア・マイケル版「ステイーブ・ジョブズ」(2013を観ておくと理解しやすいと思います。解かりずらい作品ですが、ジョシュア・マイケル版に比べてジョブズの性格、性癖、ビジネスセンスが濃縮されていて(パンチが利いていて)100年後モーツアルトダヴィンチと並ぶ天才と言われる彼の人柄に引き付けられます。準備されるプレゼンテーション会場の臨場感が物語を盛り上げてくれ、圧巻です。
 
第1幕、最もよくジョブズのカリスマ性、変人ぶり、ビジネスセンスが出ていて、分りやすい。しかし、絶頂期にあって力を発揮すればするほどに孤独に陥り、不信感が増長。迎えたばかりのスカリーとの間に生まれる不信感につながる影が見られる。
娘リサに見せる彼の目は期待で一杯というように見える。リサに会うとまず「勉強しているか」と問い、彼の創り出す製品にはリサへの想いが詰まっていると思います。
 
第2幕、転落期にあっても、決して失うことのなかった未来を見る眼・革新への揺るぎない信念に感動です。スカリーとのバトルに、儲け主義とは違う、彼の作品に対する哲学が浮彫にされます。
 
第3幕、復活期においても、相変わらず旧友たちの意見を受け入れず、自らの信念を通すが、プレゼンテーションに向かう彼には人間的な柔らか味が出ている。そして、特に娘に対する父の姿には涙がでます。
 
第1幕「Macintosh 発表会」(1984)クバチーノ
「誰もがMacを待っていた」
「直せ」とジョブス。「無理だ」と部下のアンデイ。パソコンMacintoshが「ハロー」と挨拶するはずが、黙ったままだ。マーケテイング担当のジョアンナが音声ソフトは宣伝してないから省こうと言う。ジョブズはこれに猛然と反発。これができなければIBMの世界になってしまうと「発表会は中止だ」と絶対に譲らない。発表時間ぎりぎりまで粘ってこれを可能にする。ここでは、彼の“徹底した信念”が描かれています。
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廊下に積まれた「タイム」誌を見てジョブズは、“今年の人”に選ばれなかったのは、元恋人のクリスアンの娘リサに纏わるスキャンダルが原因と憤慨するところに、クリスアンがリサを連れて控室に現れます。
娘の認知を拒否し「タイム」誌に「米国男性の28%は父親の可能性がある」(彼がインドに旅行中に妊娠した)と語ったことへの抗議に来たのです。
彼女は、生活保護を受けて生活しているので、お金が欲しいと訴え、リサはLisaコンピューターに自分の名前が使われているのが気に入らないらしい。
名前の由来を話し、リサがMACの「お絵画ソフト」で絵を描く姿を見て、金銭支援を約束し「学校に行かなきゃ」と励ます。リサには特別な愛情を感じるようです。イメージ 3
 
開場15分前に、音声デモと格闘するアンデイを急かせながら、突然胸ポケットのある白いワイシャツを用意しろとジャアンナに命じる。ポケットにフロッピーを入れたいという理由のようですが、あとでやって来る東部出のスカリーへの対抗意識でしょうか。
 
共同創業者である親友ウオッズ・ニアックがひつこくアップルⅡチームへの謝辞を求めますが、過去の遺物だと、これを頑固にはねつける。
そして2分前、自らつれてきた新CEOのスカリーと舞台袖で交わす会話。
スカリーの「君は天才だ、それを知る者は自分しかいない」「君は養子で、いつ見捨てられるか心配しているだろう。反対者は自分が追い出す」の言葉に送られ、ウエーブで迎えるステージに向うジョブズ
 
第2幕「NeXTCube 発表会」(1988)サンフランシスコオペラハウス 
「僕はうれしくない」とジョブズ
Macintoshの売上不振から退社に追い込まれ、新たに立ち上げたネクストの発表会。
新会社に付いて来てくれたジョアンナから、アップルの連中がお祝いに来ていると言われる。「誰から呼ぶ?」と聞かれたジョブズは、ウッズニアックを指名する。
ここで、ウッズがコンピューターを乗せた時計を見せると「操作性が悪い」と詰るシーンは、面白い。
ウオッズに「マスコミ相手に自分を批判したのは、スカリーに強制されたのか」と確かめると「正直な気持ちだ」とウオッズは、相変わらず傲慢なジョブズに、「君の正体を知るのは僕だけだ」と「マシンを作り出したのは自分なのに、何もしていないジョブズがなんで天才と言われるのか」「MACは盗人だ」だと主張する。
このウオッズに「おれはオーケストラだ(機械屋ではない)」と応ずれば、ウオッズはさらに今日の主役NeXTCubeはパソコン史上最大の失敗作だ、高価すぎると罵倒する。
 
小学校をさぼって会場で遊んでいるリサを、クリスアンが迎えにくる。ジョブズは、まずリサに「学校に行っているか」と問い、クリスアンには家を買い与え、十分な養育費を送っているのに、彼女の浪費と投げやりな子育てジョブズは腹を立て、激しい口論を繰り広げる。
彼自身養子として育っており、娘にどう対応してわからないなかで、リサが耳にする音楽について会話すると、不意に抱き付いてきて「一緒に住みたい」と甘えます。が、彼は何もなすことなく発表会場に。
 
本番6分前、こっそり潜んでいたスカリーがジョブズの前に現れ、「矛盾した指示を出し、反抗的で皆を不幸にしている」「もう君はアップルに必要ない」と喋れば、「ガレージで未来を発見できた。」「才能がある者が率いたからだ」。ここでは、スカリーもジョブズに首にされる恐怖を持っていたようで、激しいやりとりが交わされる。
会社であげた功績より、4年前に、誰が自分を裏切り、本当は何があったのかと激しい応酬のあと、ジョアンナに告白したジョブズの復讐計画は、「作戦はある、MACを作る」と漏らす。
 
第3幕「iMac 発表会」(1998)サンフランシスコシンフォニー・ホール
「これは事件だ、スーパースターの復活だ、ジョブズがアップルに戻ってきた」「20世紀に起こったもっとも重要な出来事だ。お待たせしました。これがiMacだ!」
「やったな!」と満面の笑みで、スタッフとハイタッチするジョブズiMac発表会の本番前、誘導灯を消して完全に闇にするという長年の夢がようやく実現したのだ。
2年前、業績不振でスカリーを解雇したアップルがネクストを買収したのを機に復帰したジョブズは、現在はCEOを務めている。
「うれしいね。ウオッズも来てくれてる」と上機嫌で客席を指さすジョブズは、さらにジョアンナから莫大な売上予想を聞き、勝利の歓喜に浸るのだった。
 
アンデイがやってきて、彼がリサの教育金支援していることを知って、二人の大激論。ジョアンナもこれには不機嫌。ジョブズとリサの深刻な仲違いを聞いたからだ。
母親が家を得るのを止めなかったリサに激怒したジョブズは、ハーバード大学の学費を払わないと宣告したことが原因だった。
「あの子はあなたにそっくりよ」とジョアンナは仲直りしなければ会社を辞めると涙ながらに「父親としてのあなたの方がすばらしい」と訴える。
一人になったジョブズの瞳に、いつも自分の愛を求めていたリサの姿が次々と去来する。イメージ 4
 
10分前、舞台に戻ったジョブズにウオッズが「アップルⅡチームに謝辞を」という頼みを蒸し返します。「10億ドルの損失を出し、破産まで90日を切っていたチームだ」と再びはねつけるジョブズ。記者と大勢の社員がいる前で、二人のバトルが始まる。
 
スカリーがやって来て、プレゼントだとニュートンを渡し、「株価に囚われるな」そしてこれまでのことは水に流そうと言う。
ニュートンを切った理由はタッチペンだ、5本の指を使え」と返すと、スカリーは「君がいてくれたら、ありがとう」と。
 
開始直前、14年前の「タイム」誌の記事を読んだリサが、父への怒りを爆発させる。発表会は何があっても9時スタートを厳守してきたジョブズが、Lisaコンピューターの名は、お前の名だったと明かします。そして、リサが大学で詩を書いていることを知って「世界がお前を待っている」と言い、会場に遅れるのも気にせずリサに「ポケットに入る千曲も聞けるウオークマンを作るよ」と投げかけ、大歓声の会場に。この時の微笑みがすばらしい。会場から聞こえる「ウオズ」という言葉、次にスカリーという?・・END
 
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