映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「きいろいゾウ」(2013)

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あおいさんの、離婚後最初の作品で、彼女のこれまでの人生経験が詰まった作品です。( ^)o(^ )
作品は、互いの秘密を知らないまま出会ってすぐに結婚したツマ(あおいさん)とムコ(向井理さん)が、一通の手紙をきっかけに傷つきながらも、ともに生きていくことの意義を学んでいくというもの。
西加奈子さんの同名小説が原作でとてもファンタジックなもので、あおいさんはその帯コメントに「いつか、この小説の『ツマ』役を演じてみたいです」とメッセージを寄せていました。
ここでの“ツマ”役、難役で、原作の雰囲気を醸し出すようあおいさんが、ほとんどノーメイクで、天真爛漫な少女から大人の女性までの揺らぐ感情をリアルに、20代で演じるべきこと(ヌードも含め)をすべて演じ切っています。
とてもよいお話なんですが、幻想的すぎて、人を選ぶ作品になってしまいましたね。
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物語は
ツマとムコの若い夫婦は、カエルの鳴き声が聞こえるような静かな田舎の古民家風な家に住んでいて、突然ツマが「あいつ(沢蟹)が来ている」と裸で風呂場から出てきて、ムコに窘められるシーンから物語は始まる。ドキリとさせられ、あおいさんのこの作品に賭ける気概が伝わってきます。
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ツマは、直物に水をやりながら動物や植物に話しかける。あおいさんフアンのみなさん(柄本佑さん、高良君、安藤さくらさん、大杉蓮さん)が動物や植物の声で参加して、ツマの特別な感性を表現しています。
昨夜現れた沢蟹を埋葬し、トマトを摘むツマとムコ、とても満ち足りた生活が伝わってきます
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(わけあって田舎に来ている)小学生の大地君に出会ってトマトをあげるとチーズと交換するという、これを機会にこの子との触れ合いが始まる。
朝、しっかりした食事をしている。そこにカンユさん(犬)がやってきて、ツマはちくわを与える。ここでのツマは子供っぽいしゃべりで、天真爛漫、幼さを残しています
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二人は、たわいもないはなしで食事を済ませ、ムコは軽トラックでシラカバ園(老人ホーム)に出勤。彼は、老衰で記憶食欲の無くなった足利さんの介護を担当している。

隣に住むアレチさん(柄本明さん)が回覧板を持ってきて、ツレの「お茶でも・・」に「いや冷たいのがいい」と昼から二人でビールを飲む。アレチさんが「小説家は金持ちか(ムコは小説家)、なんできたん」と問うので「こっちのほうがスムーズにでる(感情が)とか、うんことか」と答える。
そうしているうちに「雨が降る前に帰る、ばあさんのセイカ(松原千恵子さん)が耳がかゆいというてたから。あれはよう当たる。でも、あいつはあかん、呆けてる」とアレチさん。「でも可愛い」とツマが褒めます。

雨が降り出す。「あめ」というあおいさんの発音がいい。雨の中で、ツマは動物や直物とはなしをする。「きいろいゾウ」を読んだ幼いときの記憶「どうか身体を元気にしてください」を想い出しながら昼寝。ムコが帰てきて「ツマ、死んでしまうで」と声をかけると、ツマは起きだして結婚してくれてうれしいとムコに甘え、おやつのパンを食べる。

夕食時、TVを見ながらのはなし、お互いに通じない。ムコさん、何かを考えているようで、ツマの話を逸らす。ツマはムコさんの食べてるご飯にミロをぶっかけ怒りを顕にする。

ツマは、月を見上げ、コーヒーを飲みながら植物のソテツにはなしかける「満月になると不安になる。満月には精神がおかしくなる」
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ムコは、その日の日記に「ツマはまた扇風機の風邪に当たっていて心配だ。お父さんの夢を見たようだ。いまもツマはだれかに話している。ツマが遠くに行ってしましそうで心配だ。今日はもう書けない」。

その夜、破れた蚊帳のなかで、二人は愛し合う。ムコの背中に大きな入れ墨がある。ツマは蚊帳が破れていることが気になる。
イメージ 1朝食時、ツマはムコさんに「学級委員やったことある」とパンを食べながら聞く。「私は病気してたから何もやってこなかった」と言う。
ムコは「これまでそんなこと何も聞いてない」と心臓の病気知らされず結婚していることが心配になる。

ツマが納屋に入り、破れた蚊帳修理のための網を探す。ムコさんは、ホームに出勤して「今朝急にこんな大切なこと言うんですよ」と足利さんに話す。
ムコさんが帰宅すると、一通の手紙が届いていて封を切らず机の引き出しにしまう。

ツマは手紙のあったことを知っていて、とても不機嫌になっている。夕食時、ツマが怒っていると分り、「どないしたね。あす海に行こう」と誘う。日記に「心臓病のこと、大切なことを言わない、小説が書けない」と書くが、手紙を開けることは出来なかった。

車で海に出掛ける。ツマの「なに書いてるの」に「日記、小説書いてるよ」とムコさん。テレビで見たクイズ番組のアプシンベル神殿の不思議の話をするが、ツマが不機嫌になっている(日記の話を聞きたい)。マは「蔵のなかで。蚊帳の網をさがしていて写真を見つけた」と怒っている。「落ち着け」というムコさんに、「うちの話を聞かない、うちはただ蜘蛛が・・」、感情が高ぶり、「うちより日記の方が大切なんやろ」と言い、悲しみ、怒りで目に血が上り・・。「いやや!」とツマ。ふたりが黙ってしまう。長い沈黙。あおいさんの感情の変化を長回しで撮ったこのシーンは秀逸です。
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このシーンについて、あおいさんは「ツマさんのなかでは、もちろん感情がつながっているんだけれど、傍から見たら、あまりにも唐突に怒ったり、泣き始めたりする。自分のなかでも辻褄が合わないので、なかなか本番でも泣くところまでたどり着けず。やっていくうちに、自分ができないこともはがゆいし、悲しくもなってきて。でも、その感じが、あの時のツマさんのモヤモヤとリンクしたのかなと思うんです。結果的に良かったと思えるシーンになりました。」と語っています。

海に到着すると満潮時で潮の引くのを待つ。「大丈夫や」。ツマは「ムコさん、海や。海や」と甘える。
二人で海に、ムコさんの背中に大きな極彩色の鳥の入れ墨が。ツマ、鳥のことをもっと知りたい!!
ムコさんが自分の身に起こったことを話し始める。叔母のない姉ちゃんが首を吊って亡くなったこと。もしかしたら俺に見つけて欲しかったのかも知れないと悲しむ、ツマが慰める。(ムコはこのことで何が起こったかは喋らない、このことはもう少し先で・・・)

夜、ツマは頭が痛いと泣く。ツマは満月に生理で身体の具合が悪くなる、圧倒的に月に支配されてしまうらしい。
ツマ、ムコ、アレチさん、セイカさんに大地君の5人で「どんじゃら」を始めるが、この面子ではなかなかゲームが進まないところに、女の子が大地君を訪ねて来くる。名を聞くと「わたしはジェニーよ」という。大地君は、(この子のストーカー行為に)困惑してるようで、ゲームはお仕舞にしてしまう。
ムコは日記に「ツマは大地君と気が会うらしい、友達ができてうれしい」と書く。

ツマは、大地君と野菜取に出かける。大地君が学校を休んでるのは、学校での大失敗、国語の時間に“お姉さん”を間違えて読んだ“あねさん”で呼ばれることがはずかしくって、これからどんどん恥かくことが怖くってもうと身動きができないと言う。
ツマは「大丈夫よ、うち満月に弱い。その時、アルバイト先にムコさんがやって来て、欠けていってるから大丈夫と言い、そして結婚してくださいと言われた」と励ます。

夜、ソテツ(声優として大杉蓮さん)と、奇跡について話す。彼は「奇跡とは日常ですね」と言う。
ムコさんが帰宅し、シラカバ園でお祭り会をやるのでクレヨンで絵書いて欲しいと言う。着替えで裸になると大きな入れ墨がある。ツマが抱きついて、ベッドに・・。
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ツマは、森を散歩中にハチに刺されアレチさんの手当てを受ける。痛い痛いと子供のように泣き叫ぶ。きろいゾウの話、アフリカからやって来て僕の背中で乗ってという夢をみる。

大地君が来たので、きいろいゾウのはなし、乗ってアフリカに行く夢の話をしているとジェニーも来て、三人で森に出かける。ジェニーに名前はだれが付けたのと問うと「おとうさん、お母さんは悪い男と東京に出て行った、この村では誰でも知っているよ」と言う。お父さんのこと聞いてかんべんな。みな大人やなと思う。もっと大人にならないと!!

しらかば祭がやってきて、ムコさんがしらかばボーイズのボーカルとして、調子外れでグンナイトベイビーを唄う。これにツマは大笑する。
この歌で、結婚したときのことを思い出す。ムコさんが結婚申込みにやってきたが父母は「娘はやらん」と結婚に反対した。
それで二人は家出、電車のなかで男が歌っていた曲。ツマは思い出して泣いた。ムコはツマもあの日のことを覚えている、これからも強く生きて行こうと決意。
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大地君との別れの日、辛かった。大地君から「ムコさんの小説読んだ。ツマさん、ぼくはツマさんが好きです。はやく大人になりたいと思います。ムコさんのおかげで、恥ずかしいと思うことははずかしいことではないことが分った。これはラブレターです、破ってください」という手紙をもらった。

足利さんが亡くなった。ツマと参列。夜、思い出して淋しくなった。ツマがどんじゃらしようと言い出す。「二人でできるかな、お姉ちゃんとようやっていたから」とお姉ちゃんの首吊ったのを思い出す。どんじゃらを楽しめない。「足利さんもお姉ちゃんも死んだ。おれやったら助けてあげられたのに」と泣く。
ツマが優しく抱いてくれ、朝まで抱き合っていた。足利さんが死んだ、”ない姉ちゃん”も死んだ。もう何も書けないと思った、妻が力一杯抱いてくれた。机の引き出しにある手紙をだして読む。

「蛇口が壊れている」と言ってもムコは返事しない。ソテツとはなしをする。ソテツ「秋は淋しいね」、「ムコさんには忘れられない恋人がいるんだよ」、「知らなかった」とソテツ。「小説は、そのひとのために書いているんだって」。

ムコは休暇をとって小説の打ち合わせに東京に行くと言うが、ツマは、嘘だと思っている。ムコは、足利さんが亡くなった夜から、ツマがこの日記を読んでいたことを知る
ツマに「小説の売れ具合がいいんだ。いま描けるときなんだ」と言うと「頑張ってな」という。ツマは僕が日記を書いていることを知っている。読んでいる。そして会話がなくなった。いつからこんなことになったんだろう。わたしたちは、日記を読むことでした話せなくなっているこんな異常なことは終わらせないといけない。
仕舞っておいた手紙をだして読むと「かってなお願いごと・・・会いにきて欲しい」と書いてある。

夜食時、ツマは黙ってパンを食べる。「あした東京に行ってくる。いっぺん出て来いと言われているので、一週間ぐらいで帰って来る」。ツマは、おみやげ何が良いかと聞いても無視して、洗い物を始める。(カメラの長回しが続く)水を出しっぱなし。ムコさんが水道を止めようとするとツマがこれを阻止。二人でこれを繰り返す。ツマがコップで泣きながら手を叩き、コップが壊れる。叩いて叩いて、もうムコは戻らないのではと心配になるが、叩く。耐えるムコ。「血が・・」と大きな声でムコ。ツマはやっと叩いていた手を止める。痛々しいほど叩き続けることで愛情を伝える“ツマ”。稚ないツマの愛情表現、みごとに原作のもつ情感をあおいさんならではの演技で描きだしています。

翌日、ムコは無言で家を出て東京に行く。ツマは、二階に上がり、泣く。ムコとの出会いが奇跡であったことが信じられなくなる。アレチさんがやって来たが、今日は忙しいと断る。もうムコは帰って来ないかもしれない!
ムコは過去の出来事について日記に残していた

「20才の時に東京で彼女に会った。彼女は美しい鳥の絵を画き、”ない姉ちゃん”に似ていて、その瞬間に惹かれた。彼女は著名な研究者の妻で重度の障害のある子を持っていて毎日涙を流していた。彼女に頼まれて訪ねるうちに僕の背中と絵を画くようになり、精神病院に。旦那さんから別れて欲しいと一枚の絵が渡された。
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ツマは森を通って海にでて、ジェニーに会った。「私海きらいなのかな。でも、海は大地の思い出の場所だから。大人は、なんで好きでない人と結婚して、だめになるの。早く大人になりたい。母は海が好きで洋子と名前付けたの、だから大嫌い」とジェニー。
「ジェニーは性格悪くて嫌いだけど、洋子は好きだよ」とツマ。「意味わからん」とジェニー。

「ソテツは一人で淋しくないの」と言いながら、机の引き出しを引こうとするが辞める。ムコが居なくなってその存在の大きさが分ってくる。

そして今日、ムコは旦那さんに会っていた。
「妻は化粧して娘の病院に行っていた。本屋であなたの本を見つけて、捨てようと思ったが、それでは彼女は死んでしまうと買って妻に渡した。妻はなんどもなんど読んでいた。そして病院にいかなくなった。わたしは妻の心を開くことはできない。でも、妻を愛している」と言う。

アレチさんが「妻が病院に行っててな」とやって来た。雨が降ってきたが、お月さんでている。「セイカがいないと雨が分らん」とアレチさん。二人で雨に濡れる。「セイカはあかんかもしれん」、「アレチさんのせいではない、絶対戻ってくる」と励ます。

ムコは彼女に会い、「貴方を助けて欲しいという手紙をもらったから来た」と、書き終えたばかりの小説を渡す。
「これはムコとツマの夫婦の物語です。僕にはもうあなたを助けることはできません、ご主人がなぜ僕をよんだか考えてあげてください」と言い、裸になり背中の入れ墨を見せ、「あなたの最後の絵です。身体に刻み込んだんです。この鳥は飛ぶのを止めてうずくまっていると思っていたが、違ってて、羽を広げ飛ぼうとして羽を拾っていたのです。そんな時にツマに会ったのです。これで、私は救われた。私もあなたと同じで、過去のことに絡め取られていた」と話すと、彼女は崩れ落ち、夫が駆けより彼女を抱き抱える。
この時、「月、欠けていってるから大丈夫ですよ、結婚してください」と妻に言ったことが蘇った。

夜、ツマは「セイカさんの身体を治してください。どうかムコさんを返してください」と泣く。遠くを見ると美しい羽が飛んできて、「ムコさんの羽や!」、月にかざしてよろこぶ。「ムコさんはこんなに愛しい人だったんだ」。

ツマに、大地からの手紙が届いた。
「東京でムコさんに会った。きいろいゾウの話をしていた。くやしいけど、ツマさんを守れるのはムコさんしかいない。僕の一番言いたいことはツマさん幸せでいてくださいということです」と書いてある。
「お手紙ありがとう。アレチさんはセイカさんにやさしい、あんな大人になりたいです洋子はにくたらしいけど、大目に見て。カンユに子供が出来ました。カンユは女の子だったんです」と返事を出しました。

老人ホームにムコさんが帰って来た。僕が帰ってもツマは何も言わないけれど、日記を読んでいたのかな、最終頁に羽があった。もう日記は書かない。僕の側にいて、泣いたり笑ったりでちょっと面倒だけど、大好きな僕のツマです。
「ただいま」
「お帰り」
ツマの笑い声・・・