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「スポットライト 世紀のスクープ」(2015)

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シネマクレー
88アカデミー賞の作品賞、脚本賞受賞作品ということで観ました。賞にふさわしい風格のある作品でした。ボストン・グローブ紙の記者たちが、カトリック教会の一大スキャンダル神父による幼児への性的虐待に立ち向かった実話をもとにした本作、映像に虐待の現場が出てくることはなく記者達の取材現場主体に描いたもので、取材対象者との膨大な会話で出来上がっています事実が実によく整理され、論理的で、事件を追い詰めて行く緊張感がとても良いです
記者たちの悪戦苦闘ぶりが見どころですが、特に編集局長の編集方針を貫こうとする姿勢、われわれジャーナリストは暗闇の中を常に歩いている。まちがった道を歩いていてもわからない。スポットライトに照らされたときに、ようやく、まちがった道に気づくのだ。まちがった道なら、また、正せばいいと記事公開に踏み出すことばに心打たれます。
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物語
冒頭、この物語が事実に基づくものであることから始まります。20017アメリカ東部の新聞社ボストン・グローブに新たな編集局長マーテイ・バロンが赴任します。着任早々に「ゲーガン事件”を追い、教会の内部に切り込み、教会を訴える。半年で記事2本」を指示する。
“ゲーガン事件”とは地元ボストンのゲーガンという牧師が、30年間に80人もの児童に性的虐待を加えたとされる疑惑。カトリック教会が全面否定しており、裁判所に封印されている文書の開示要請も教会を敵に回すことになり、地域の定期購読者の53%がカトリック信者であるグローブ紙にとってはリスクが大きいが、バロンがユダヤであるためあえてこの難題に挑戦することになる。
これを実行するのは編集デスクのウオルター“ロビ”ロビンソン(マイケル・キートン)をリーダーとするスポットライトチームの4名
チームは、まず、この手の訴訟に詳しい弁護士、かってこの種神父を弁護した弁護士から話しを聞こうとするが、守秘義務を盾に口を開かない。ゲーガン事件担当弁護士には相手にもされない。
局長も枢機教に会うがノーコメント。この状況に、バロンは今までの筋を捨て新たな対象を追うことする。
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そんなとき聖職者による虐待の被害者団体メンバーサヴィアノから、性的虐待を犯した神父がボストンだけで13人いることそしてその手口を明らかにされる。すでに5年前に新聞社にデーターを送っていると言う。何故見落としたかとショックを受けながら映像にくぎ付けになります。
さらにメンバーが複数の被害者に接触し、貧しい家の子には教会が大切で誘われれば断ることが出来ずむしろ有頂天になる彼らが標的にされている事実を掴む。ここでの聞き取りは具体的で、現場の映像はないが、やり取りを聴いていてだけで取材に付き合っている感覚になり、十分に忌まわしさが伝わってきて、うまい演出です。
とりわけマイク(マーク・ラファロと、紅一点の女性記者サーシャ(レイチェル・マクアダムスの言葉を選んで具体的に聞き出していく演技が見応えがあります。
ここで、同じタイプの子に被害が集中していることに気付き、年間で足取りを掴もうとすべてのデーターを洗い直す。4番目の紹介になるがメンバーのマット、データー分析担当、が協会の公式年鑑から虐待を疑われる神父が病気休暇、休職、緊急対応の名目で短期間のうちに教区の転属を繰り返していることに気付く。ここにきて組織ぐるみの犯罪であることが疑われるが、教会はいっさい口を開かない。疑惑神父に突撃取材をするが、精神病の治療中でと、追い返される。
丹念に記録を拾っていくとボストンで87人の疑惑神父が見つかる。この数にについて弁護士に確認するが資料が残っていないという。しかし、かって教会の療養施設で働いていた元神父で30年にわたって神父の性犯罪を研究してきた心理療養士にあたると彼の推定値とほぼ等しいことがわかる。ここで、ロビーはかってグローブ紙が虐待事件の情報を得ながら見落としていたという過ちに気付く。チームは個々の神父を糾弾するのではなく教会という組織による隠蔽システムを暴くことを方針とする。
しかし、2001911日の同時多発テロが発生し教会が全面に出てきて教会への期待も高まり、取材が困難となるなかで、チームは教会の罪を裏付ける決定的な証拠を追い求める。
マイクはこの種裁判を傍聴中に、弁護士資料のなかに疑惑神父の記録が添付されていることを見つけ、資料の提供を求めるが、判事が渋る。「君の探している文書は機密性が高い。これを記事にした場合、責任は誰がとる?」「では、記事にしない場合誰がの責任は?」と彼の機転でこの資料をコピーする。
マイクは「決定的な証拠を掴んだ神父の罪として早く記事を公開して子供を救うべきだ他社にスクープされるかもしれない」と公開を主張するが、バロンはあくまでも教会をターゲットとして、ここで公開をせず、6週間先送りしてさらに的を絞って精巧な資料作りを指示する。クリスマスソングの鳴る中で彼らの面接作業が続く。
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ロビーは教会の内情に熟知しているがこれまで頑なに協力を拒んできた親友である弁護士ジム・サリヴャンを訪れ協力要請をする。が、お前は何をやってきたか、これまで見落としてきたではないかと非難するが、遂に疑惑神父名簿を認める。
この時点で、バロンは「われわれジャーナリストは暗闇の中を常に歩いている。まちがった道を歩いていてもわからない。スポットライトに照らされたときに、ようやく、まちがった道に気づくのだ。まちがった道なら、また、正せばいい」とメデイアだけの力だけでなく、読者の力をも使って、教会の罪を暴くことにし、メンバーに今日はゆっくり休んで明日から仕事だと公開に踏み切る。果たしてどんな反応があるのか不安で堪らない一夜を過ごし出勤してみると、そこで見る光景はひっきりなしの電話の対応に追われる編集室。このエンデインが鮮やかです
(結果は2006年には教皇も虐待を認め、2013年にはベネデイクト16世が辞任追い込まれるに至っている)
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記事1 20160504
映画「スポットライト 世紀のスクープ」はプロのジャーナリストを知るための素晴らしい教科書だ[茂木健一郎