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「蘇えりし者」(2015)

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「蘇えりし者」(2015
20160503
MOVIX
88アカデミー賞で、レオナルド・ディカプリオの主演男優賞をはじめ、監督賞、撮影賞を受賞した作品
物語は、アメリカの開拓初期、西部の未開拓地ミズリー川沿いで息子とともに毛皮ハンターたちの案内人を務める男が、先住民に襲われ逃げる際熊に襲われ瀕死の重傷を負うて、残置される彼の見張りに息子と2人の男が付き添うが、その一人が彼を見殺しにして逃げるため息子を殺害。さいわいにも彼は生き返り、殺人者に復讐するために厳しい自然、先住民への恐怖を克服し遂に彼に対峙し・・・というものです。
ストーリー展開が単純で・・という所見を目にしていて少し観るのが遅れましたが、とんでもない、人間の生きる目的の根源に迫るすばらしい作品でした。
監督アレハンドロ・イニャリトウ、撮影監督エマニュエル・ルベツキの「バードマン」コンビによる独特なカメラワークで描き出される映像で物語に引き込まれ、主人公とともに生きるためのサバイバルを体験し彼の現在と過去の心象を行来しながら復讐心を確認し、相手と対峙しどう生きるかを模索するという深みのある作品になっています。
彼は壮絶な戦いのあと、逃げる相手を追うことを止めその先を「神に委ねる」と決意します。
彼はこれまで復讐することが生きる目的であったが、自然の恵みそこで出会った人によって生かされ、復讐より大切なものを見いだし、自然の節理(神)に任せることにします。いじめ問題で子供を亡くした方々の心情に見る思いでした。
デカプリオのアクション演技そしてサバイバルで、言葉はなく表情だけで感情を見せる演技はすばらしい。
 
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物語の見どころを追ってみますと、
○物語に引き込む出だしと映像
炎が上げる先住民の村。子供に話しかける「大丈夫だ息子、お父さんがいる。ずっとそばに。あきらめてはいけない。息が続く限り戦うんだ、息をしろ」の声の流れるなか、この景色は主人公の心に常にある心象をしめしていて、ひたひたと水が流れる森の中を歩く二人、現地のガイドを務めるラス(レオナルド・デイカプリオ)と息子ホーク(フォレスト・グッドラック)。突然銃声、矢が降ってきて、森の中の毛皮ハンターの一団が応戦、大混乱。この状況を這うように長回しで追うカメラもう一気に画面の中に引き込まれます。“船に乗れ”で船着き場に殺到する一団、そこでみる鹿の毛皮剥ぎ現場の混乱の映像が生々しい。そして川を下るが土地に詳しいグラスが「アリカラ族は待ち構えている」と判断し陸路に変更を進言するが、ハンターの一人フィッツジェラルド(トム・ハーデイ)異を唱える。彼は、ポニー族の女性との間に生まれた息子を連れて歩くグラスに、先住民の標的にされていると敵意を持っていた。隊長はグラスに従って陸路を行くことにする。
 
○ハイイログマとの格闘
陸路を進み始めて間もなくグラスが子連れのハイイログマに会うが、自分の境遇に似ていると油断したか、突然襲われ、背中に圧し掛かり、振り回され、頭に爪を掛けられ、顔を舐められるという迫力のある格闘シーンがワンシーンの長回し映像で見せてくれます。
瀕死の重傷を負い担架で運ばれるが、雪が降り出した険しい山越えは無理とグラスの残置が決定され、お金に釣られてフィッツジェラルドとホークを慕ってるジム・ブリジャー(ウイル・ポールター)そして息子ホークが臨終を看取ることになる。
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○グラスの甦生
グラスは妻の残した言葉を想い出しながら懸命に生きる。これにフィッツジェラルドはしびれを切らし、「息子のことも考えろ」と言い「行かせてやるから瞬きで合図しろ」クラスは目をつぶる。フィッツジェラルドはこれを見て首を絞めるが、この状況を息子に見られ、息子を刺し殺してしまう。この状況に見て、グラスは歯を食いしばって怒る。壮絶なシーンです。訝るフリージャーをそそのかし、グラスを埋葬して、雪の道を逃げる。
どのくらい時間が経ったか、グラスが土の中から出てくる。土の中の暖さに助けられる。グラスが息子の亡骸を見つけ、「父はここにいる」と泣くシーン、デイカプリオの演技に涙です。最愛の息子を失った悲しみと絶望、フィッツジェラルドに対する怒りと憎しみを原動力に死の淵から蘇ったグラスは、一人雪のなかを匍匐前進で、逃げるふたりを、“格闘したクマ”の毛皮(命を奪おうとしたものに命を救われる)を被り、死肉を喰いながら、追い始めます。壮絶です!!
 
○激流を泳ぐ!
匍匐で河にたどりつき喉を潤す。持っていた火薬を首の傷口に塗り火をつけて焼く。杖で歩きだし、薬草を食べる。岩にクマの爪でフィッツジェラルドの名を刻む。ここで、アリカラ族に発見され激流の中に逃げる急流、滝を泳ぎ切って陸地に上がる。流れに流されるクラスの小さいこと!彼が生きていることは運命(熊の毛皮が浮き)としか言いようがない。彼は生かされています。再び歩き始め、隕石の落下を見て、フランス人に襲われたこと、息子と暖を取りながら寝ていたことを思い出す。過去の家族の思い出フィッツジェラルドへの復讐につながり彼の生きる意欲の根源になっている。河に鮭が泳いでいるの見つけたグラスはこれに食らいつく
 
○先住民ハイカックとの出会い。
バッファローの大集団に会う。これを襲うオオカミ。火でオオカミを追い払いこの肉に食らいつく男。近づくと矢を向けられるが拝み倒して肉にありつく
この男パウニー族でハイカックという。クマにやられたはなし、息子が殺され復讐する心算だと話すと「おれも家族を殺されたが復讐は創造主に委ねている」と言う。
ふたりは、一頭の馬に乗り旅を続ける。彼は傷を見て腐っているから死ぬぞと治療してくれる。こうして二人の間には友情が生まれる。
雪吹の中を進むなか馬から落ちて、意識を失い、妻の言葉を思いだし安らいだ気分で夢を見る。妻は廃墟の教会にいて、息子にも会う。これまでの炎で焼かれて追われる夢とは違っている。彼はハイカックに会ったことで心が癒されている。
眼覚めてみると枯れ木で風避けがなされており、リュックと水を残して彼は去っていた。
 
○内臓を抜いた馬の腹のなかに寝る。
そんは優しい彼が「こいつは野蛮なり」と書かれ吊るされているのを見る。その先に馬と人の集団を見る。クラスは馬を失敬しようとしていると、白人の男にレイプされそうになっている女を会う。咄嗟に男を脅して馬で逃げるが、追われ、崖ぷっちから下の森の中に落ちる。グラスは雪に救われるが、馬は死亡。解体して、内臓を出し、全裸になって中にもぐりこみ休眠を取るこれがなんとも生々しい。デイカプリオの熱演です。イメージ 4
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朝になり、馬の死体から出てきて、衣服を付け、馬にちょっと感謝の挨拶をして歩き始める。足の良くなっていて、氷付いた河を歩く。氷にフィッツジェラルドが息子を殺したと書いて復讐を誓う。やっと砦に着く。
 
フィッツジェラルドとの激しい格闘
傷の手当をしてもらい、砦の隊長と逃げたフィッツジェラルドを追う。彼に見つかり隊長が狙撃され死亡。グラスは難を逃れ、剥き出しの20億年前の地層・雪崩のなかで、直接彼と向い会うことに。ふたりの決闘を神の目線で見るようなこのロケ地がすごい。追い詰められたフィッツジェラルドは「あの時お前は承諾した。ホークに言った、お前と俺は話がついたと」「あの山でのことは神が知っている。お前は息子を殺した」。
お互い血だらけになり、グラスは耳を喰いちぎられ、フィッツジェラルドの腹にナイフを立てるという激しい格闘、ここでのデイカプリオのアクションも見どころです。
フィッツジェラルドが言う「けちな戦いのためにここまで来たのか、息子は還らない」。これを聞いてグラスは泣くのでした。
 
○蘇えりし者
フィッツジェラルドは河を渡り逃げようとするが、その先に、大勢の先住民が近づいてくる。グラスは、憎いけれどもういい、自分にはもっと大切な家族の思い出とともに生きねばならぬと“復讐は神に委ね”、もう追わない。
先住民は彼を刺し、川に流す。この一団はグラスに眼もくれず去っていく。彼は幻の妻に支えられながら歩き始めます。
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