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「64-ロクヨン-前篇」(2016)

イメージ 164-ロクヨン-前篇」(2016)
原作はミステリー小説として高い評価を得た横山秀夫さんの警察小説「64ロクヨン)」
映画は前後編、2編からなり「前篇」で事件の背景や人間模様が、「後編」でロクヨンの究明が描かれます?
ロクヨン」とは昭和64年1月5日に起きた少女誘拐事件。1月7日天皇崩御によりたった7日間でしかない昭和64年に起きた忌まわしい未解決事件の呼称。
前編では、
事件当時刑事部刑事として捜査に係った三上(佐藤浩市さん)は事件から14年を経て総務部広室に移動し、ある交通事故の加害者名の秘匿を巡り記者たちと対立状態にあるところに、「ロクヨン」の捜査員激励のため警察庁長官が視察に訪れることになり長官の被害者家族慰問、記者取材の取り計らいを任される。
三上は被害者家族雨宮(永瀬正敏さん)を訪れるが慰問を拒否され、なぜかと追っている間に、事件当時の警察内部に不祥事(組織的隠ぺい)があったこと、長官慰問を巡り県警内部に対立があることを知る。このような状況下で任務達成に苦悩する広報官三上の葛藤を主体に事件に係る人間関係が描かれている。
この作品、かなり複雑な人間関係ですが、冒頭で「ロクヨン」事件の概要を描くことで、物語に登場する人たちと事件との係わりが明らかになりスムースに物語に入って行けるよう配慮されていてとてもいい。
前篇では刑事物特有のアクション、サスペンスはないが、捜査の不祥事事案がテンポよく明らかにされる様子記者団との緊迫した関係は見どころです。
圧巻は、三上が記者団に長官慰問の取材要請するシーン。三上は、苦悩するなかで、警察官として自らの生き方を見出し敢然と理不尽な上司の指示や声高に自己主張する記者たちに挑む姿には感動します。ここでの佐藤浩市さんの演技は、人間としての誠実さがでていて、役を超えたすばらしい演技です。出演者みなさんのセリフは少ないですがしっかり表情で演技し、それぞれの人物がしっかり描かれています!!
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物語の概要
○冒頭での「ロクヨン」事件の概要
6415日朝、フル回転の雨宮漬物工場、可愛い児童祥子ちゃんが行ってきますと手を振って、これを見送る父親の雨宮芳男(永瀬正敏さん)。その夜、雨、祥子ちゃんが誘拐されたようで松岡刑事( 三浦友和さん)が駆けつけ雨宮夫妻に挨拶、部屋に録音機を取り付け犯人からの連絡を待つシーンこの事件に係った面々が映し出されており事後の物語を追うに重要な映像でみずき刑事(鶴田真由さん)望月刑事(赤井英和さん)幸田刑事( 吉岡秀隆さん)日吉技師(窪田正孝さん)ら多くの実力俳優が登場ですが、とても覚えられません。()
三上の到着時期は、はっきりしない。犯人から「約束したものを受け取りたい」と電話が入り、準備した金をスーツケースに入れ雨宮が指定場所フルーツパーラに、これを追う捜査員達。松岡と三上は連絡をとりながら雨宮の車を追う。指定場所が変更になり、純喫茶ジュリーに、さらに変更、これを追う捜査員。指示により琴平橋の水銀灯のある位置からスーツケースを投げ入れる。この追跡劇は見応えがあります
1月7日スーツケースを拾いに来た男を逮捕するが、中身は空。悔しがる三上の顔。スリリングな展開で事件の概要が掴めるうまい演出です。
半旗が並ぶ街並み、昭和の終わりを印象つけるさびしい風景ですが、CG映像が悪るすぎ。()
イメージ 2祥子ちゃんは殺害されて発見、この現場の臨場感がとてもよく、雨宮の永瀬さんが泣き叫ぶ姿は圧巻です。
○三上夫妻の長女失踪
物語は一気に平成1412月に飛び、三上とその妻美那子(夏川結衣さん)がとある田舎の警察署を訪れます。事件後三上はここに勤務していたのではないでしょうか? 遺体安置室に通され、失踪した娘かどうかの確認をします。娘ではなかった、夫妻の表情は微妙です。失踪の原因は三上でしょうか。二人が雪の降る小さな駅のプラットホームで見せる夫婦の距離感がこの夫婦のいまの状態、そして三上の家庭を犠牲にした勤務ぶり・人柄が見て取れます。

○加害者名秘匿(匿名問題)を巡る記者クラブとの対立
娘かどうかの確認を終え出勤すると、いきなり記者たちから「逃げていたのか」と責められる。相手の事情などお構いなしの記者たち。
主婦が老人に怪我をさせたという交通事故、この主婦名を明かさないことへの抗議(秘匿問題)三上は県警の決定だと拒否を続ける。なにか隠されているという事案の匂いがし県警の隠蔽体質が出ていて、三上はこれを担がされている。「あんたは変身したのか、県警ではなく広報官として釈明せよ」と攻め続けられる。記者の秋川(瑛太さん)らの三上吊るし上げのシーンはなかなか迫力があります。
総務部長赤間滝藤賢一さん)に呼び出され、この人はキャリアー組で、横柄な態度で「もっと情報だしたら」などと我関せずの態度。見ていて腹が立つ、うまい演技です。()
「近々長官が来県し「ロクヨン」の捜査状況を視察する。1週間しかない。被害者のアポを取り、これを報道させろ。マスコミは力でねじ伏せろと指示する。「娘さんの歯型をよく調べておけ、協力する」などと刑事あがりの三上に恩を売るこの厚顔部長には呆れます。

○被害者家族雨宮の長官慰問拒否
三上は早速、被害者雨宮を訪ねるが、14年ぶりに見る雨宮の風貌、事件当時の面影はない。この永瀬さんの演技もすごい。「広報の仕事できた、長官の視察があり時効1年前の捜査の士気高揚になるので協力して欲しい」と申し出るが「お偉いさんに来ていただく必要はない」と断られる。雨宮の態度に恨みのようなものを感じて退席する。
署に戻ると、記者たちが「本部長に抗議文を出す。あすまでに返事しろ」と騒いでいる。帰宅すると妻は娘からの電話を待ち電話機を握ったままで寝ている。これを見て、自分のどこに落ち度があったのかとこれまでの生活を想い出してみる。こうして、仕事に家庭の問題で四苦八苦している。

○記者団との対立激化
三上、出勤すると匿名問題で記者たちの相変わらずの抗議を受ける。総務部長に会えば、「あんたは刑事部に戻ることなどない。あの老人は亡くなった、老人だから記者に話すことなどない」と記者たちの要求を突っぱねるよう指示され、新聞社の編集長に会って部長抗議取り下げを依頼するが、「それでは記事はどうなるんだ」と皮肉られ、このことで一層現場の記者たちの反感を買うことになり、彼等は本部長に直接抗議することになるここでの記者たちとこれを止めようとする三上と広報室勤務の諏訪(綾野剛さん)、蔵前(金井勇太さん)らの攻防戦はすざましい。三上が秋山の持つ抗議文を取り上げ破ることで一件落着するが、記者団は収まらず、「今後県警には協力しない」として来週の長官巡察取材のボイコットを発表する。これを見て総務部長は「なんたる醜態、無能は県警は不幸という以外ない」と三上を罵倒する。

○雨宮の長官慰問受諾
127日の祥子ちゃんの命日に元同僚の望月(赤井英和さん)に出会い、専従班と雨宮の間になにかあったのかと聞くと「警察を怒っているのはあたりまえ、“幸田メモ”を知っているだろうが、二渡に聞け」という。同じ部の二渡(仲村トオルさん)がこのメモを探しているという。三上は、部長が何故このことを知らせないのかと激しい怒りを覚える。
第1刑事課長から電話があり、会って幸田メモの事を聞くと「幸田メモは犯人逮捕に辿り着く過程では内容は喋れん。いまのお前は部外者だ」ともう昔の関係ではなくなったことを知る。
三上は、ここからは、自分が該当者に会い内容を確認する以外にないと気付く。当時録音技師であった日吉に会おうとするが母親雅恵(烏丸せつさん)から「息子は人の役に立ちたいとNTTから転職したのに無能よばわりされている」と抗議され「息子は引きこもりだ」と会うことを拒否される。
帰宅すると妻が「みずきさんに会ったでしょう、みずきさんのところにも松岡参事官のところにもうちの実家にも無言電話あった」と言う。三上の顔色が変わる。「三回もあったのか」。
専従班の柿沼 (筒井道隆さん)のところに幸田のことを聞きに訪ねると、彼は大型店舗店の警備をしている幸田を見張っている。嫌がる彼から「あの時、三上さんが着く前にもう1本電話があったが、レコーダーの故障で星の声を取り逃がした」ことを聞く。誰が隠蔽を指示したかと聞くと当時の班長漆原(菅田俊さん)だという。彼は警察署長の漆原に会うが定年まえだからと言い逃げるので大喧嘩となる。幸田にあって事実を聞き、雨宮が全てを知って長官との面談を拒否していることを知る。
すべてを知ったうえで、雨宮を訪問。祥子ちゃんに焼香するが、これまでの雨宮の苦労や苦しみが忍ばれ、自分の娘の姿が重なり涙が止まらない。焼香を終え、長官との面談を言い出そうとするができず帰ろうと外にでると、雨宮が追っかけてきて、面談を受け入れるという。このシーン、佐藤さん、永瀬さんお二人の感情の籠った演技がすばらしい。
署に帰ると、広報班は記者たちと一杯やりながらの懇親会をやっていて、これに女性刑事の美雲( 榮倉奈々さん)が参加しており、「女性がでる幕でない」と咎めると「部屋にいれば班長の苦しみは全部わかる、何か役にたちたい。記者たちと話してみて、彼等は敵ではない。いま、広報班は窓になっていない。記者達を信じては」と訴えられ、三上の心を捉える。

刑事部と総務部の対立
刑事部荒木田(奥田瑛二さん)に呼ばれ、「ここに帰してやるから記者たちを怒らせ取材をボイコットさせろ」という。長官視察は刑事部長に中央から人材を送り込むための方便だと言う。これを聞いた三上は「星を上げるには、現地のわかる人」という持論から直接県警本部長に会い意見を述べるも、いい加減にあしらわれる。退室するとTVで総務部長が「ロクヨン」事件の未解決について謝罪している映像が飛び込んでくる。「ずっとてめえが可愛かった」と三上の怒りは頂点に達しTVを殴りつける。

長官慰問取材要請
幸田の悔しさ、警察署長漆原の言った「これは隠せ」、妻の「あなたは人のこと他人のことを自分のことのように考える」のことばを胸に、匿名問題に決着をつけると諏訪らの反対を押し切って記者たちの前に立つ。イメージ 3
「匿名の新しい方針、原則実名だ」というと「原則とはなんだ、先ず交通事故の件から公開せよ」と要求してくる。「加害者は公安委員の娘、妊娠8か月だ。妊婦が大きな精神的打撃があるので名を伏せてくれ。そして死亡した男、焼酎を飲んでの帰り・・」、記者はもういいと言うことに「警察を脱ぎ捨て、首を賭けてここに立っている」と老人の暮らしぶりを細かく発表する。この老人夫婦の暮らしぶりが映るなかでの、三上の口上は、記者たちを飲み込むほどの迫力で、細かく愛情に満ちたものです。最後に雨宮さんはいまだ64年の7日間に取り残されている。彼の想いを叶えさせて欲しい。これは俺からのお願いだ・・。
佐藤浩市さんの演技は圧巻でしたが、一言もない老夫婦の演技が心に残ります。
○後編に向けて、
長官視察1日前出勤すると、刑事部室に人が居ないと言う。誘拐事件が発生、「ロクヨン」に似ている、全員が講堂に集合し捜査会議中。駆け付けた三上に「報道協定を」・・・。
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記事1 20160510
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