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「殿、利息でござる!」(2016)

不条理にも伝馬役(お上の物資を隣の宿場で受け取り次の宿場まで運ぶ仕事)を自腹でやらねばならない宿場町が、その経費に耐えかねて町が滅ぶと、お上にお金を貸してその利息で伝馬役を賄い町を維持しようとするはなし。250年前の実話で、そんなことができたのと、痛快です。
この物語には悪人がいません。あえて悪人と言えばこの仕組みが理解できない人たちでしょうか。

どうやってお金を作るか、お上とどう交渉するのかとその知恵と勇気、忍耐力が描かれます。その基本、町民たちの自分を捨てて人のために何かをしなければならないという想いが美しく描かれ感動です。

物語は、ユーモアがあって、時に泣け、テンポよく語られ最後まで飽きることがありません。特に登場人物のキャラが立っていてこれを演じる俳優さんのこれまで見たこともない演技に驚かされます。すばらしい作品です。阿部サダオさん、瑛太さん、妻夫木聡さんに注目です。
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物語
冒頭10年前のこの宿場町(吉岡宿)の状況、造り酒屋「佐野屋」先代の甚内(山崎努さん)が金壺にちゃりんちゃりんとお金を投げ入れており、宿場から逃げ出す町民が映し出すシーン、この物語の大きな伏線になります。

○1000両(3億円)で町を救おう!!イメージ 2
お茶を生業とする菅原屋篤平治(瑛太さん)が京でめとったよめなつ(山本舞香さん)と馬を伴って町に帰ってくると、いきなり馬を召し取られ、知り合いの造り酒屋「穀田屋」十三郎(阿部サダオさん)に会うと「死を覚悟で上訴したい」という。
智恵者の篤平治が「ばかなことを、もの入りのお上に1000両(3億円)貸付、その1割の利子をいただこう」と提案。このシーンから笑いが絶えません。瑛太さんが面白い。

○どうやって資金をつくるか。
まずは節約と十三郎は銭湯通いを止め日銭を浮かし始める。しかしこんなもんではどうにもならない。有志10人なら一人500貫文(3000万円)で達成可能と十三郎の叔父重兵衛(きたろうさん)が言い出し、十名を募ることになるが、ことを始める前に町のエライ衆大肝煎、肝煎を説得し賛同を得る。が、有志がなかなか集まらない。そこで、・・

○私財を投げ打つ。
肝煎の幾右衛門(寺脇康文さん)は売るなら価値あるものからと高価な皿、掛け軸など、大肝煎(千葉雄太さん)は田畑を、篤平治は妻なつの後押しで田を切り売る。十右衛門(きたろうさん)は大切にしていた春画そして十三郎は亡き妻の着物まで売り払う。

○あと5人の有志を募るが・・。
両替屋遠藤寿内(西村雅彦さん)が金儲けになると2口加わる。町全体(上町、下町)にも加入者を広めようと説いて回ると、下町の雑穀屋早坂新四郎(橋本一郎さん)が参加表明、上町の造り酒屋「浅野屋」当代の甚内(妻夫木聡さん)は500貫文出すという。実は甚内と十三郎は兄弟で十三郎が兄でありながら養子にだされており、弟甚内の500貫文ならおれは500貫文にすると言い出す。

両替屋が金儲けになるのかと疑義を挟む。早坂は200貫文にしてくれという。すったもんだの末、不足分は浅野屋が出すということになり、5000貫文を達成。今後のために、秘密裏にすすめ仲間割れが起きないようにと「つつしみの掟」を作る。
・喧嘩、口論はつつしむ
・嘆願について、その名をだすことをつつしむ
・往来を歩く際は、礼を失しないようつつしむ
・寄合では上座に座らず、末席にてつつしむ

○銭ではなく金で納めよ!!
5000貫文が出来て、代官、郡奉行、藩奉行へと上申をしなければならない。当初、郡奉行は「こんな願いは聞いたことがない、こんな大肝煎は初めてだ。必ず上に取り計らう」と言うが、藩奉行からの返事は吟味なしの返事であった。
1000両の金を自分たちで回してみてはどうかという意見がでたが、出来るわけがないと、篤平治の強い意見で何年掛かってもやり遂げることが確認される。

ここで、冒頭にでてきた夜逃げの町人が借りた金を返しにきて捕まり、実は先代は守銭奴ではなく貧乏人には無利子で貸してくれたということが明らかになり、「貯めた金はお上に上納し伝馬に要する金を免除してもらうものだったこと」をおばば“きよ”(草笛光子さん)から聞く。

十三郎は「親子は似るもんだ、人に言うな、褒められたくてやっているんではないんだ」と言い、父の志を継ぎ再度上申を大肝煎に申し出る。
そして弟甚内が弱視であることに気付き、自分が養子に出された理由を知り、泣きます。

この上申もとり下げになるが、50年まえから浅野屋が金を貯め、今回に及んでいることを申し述べ再考を促すと、藩奉行萱場杢(松田龍平さん)は5000貫文のところを金1000両に書き改めよという。やっと通ったが、実はお上が銭を作り始めたおかげで金と銅銭のレートが変動し、金1000両は5800貫文に高騰しており、さらに800貫文の工面を強いられる。もうやめようという者もいたが、十三郎は「命は繋いだ、これでいい」とこれを申し受けることにする。

○800貫文の工面
十三郎はこの話を甚内のところに持っていくと、500貫文出すというが、酒の匂いがしない。奥を見ると酒蔵が空っぽになっている。おばばが「覚悟できている、出させてくれ」という。おばばは大したものです、上の出方を読んでいたんですね。

父十三十郎のこれまでの金策に苦労する姿を見てきた息子の音羽左衛門(重岡大毅さん)が仙台に奉公を志願して給与を前借する形で250貫文を捻出する。また、煮売り屋とき(竹内結子さん)が伝馬人夫に頼んでツケの50貫文を回収する。

これをもって再び上申すると、藩奉行萱場杢はもう取れる限界とみてこれを認め、吉岡の面々を呼び付け申し渡そうと各々の名を確認するに浅野屋甚内がいない。何故だと聞くと十三郎、おどおどしながら、「弟は目が悪いので馬か籠を使うことになるが、父の教えで人は万物の霊長で馬を苦しめてはならぬ、また籠は人の手を借りることになり籠かきを苦しめることになると・・・」と言い訳をすると「この仙台で一番籠を使っている者は誰か知っておろうな」「ご苦労であった」で帰させられる。

○藩主伊達重村(羽生結弦さん)の裁定
「そちら、馬にも籠にも乗らぬというから会いに来た」と藩主がやってくる。
「当家に金がないのはわしのせいだ。春風、寒月、霜夜をもって酒名とせよ。店をつぶすことならん」と言い渡し、「わしは馬にも籠にも乗らん、歩いて帰る」と去っていく。
ここは羽生さんの演技、落ち着いて、なかなかのものす。(#^.^#)イメージ 3
彼らは時間をかけ見事にやりとげました浅野屋の酒はとぶように売れ、木材は民の救済に使われ、念願かなって茶は名産になり、ときさんと十三郎は・・?? ()


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