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「団地」(2016)

イメージ 1「団地」(2016
坂本順治監督、岸辺一徳石橋蓮司大楠道代さんの名前に藤山直美さんの名前を見て、「大鹿村騒動記」を思い出し、団地に越して来た夫婦にまつわる噂が引き起こす大騒動、大阪の人情物語ということで観ることにしましたが、予告編とは違っていて冒頭から変な男佐藤工さんが出て来て、雰囲気が違っている?。
おばちゃん達が喋る大阪弁に、隠されたセリフがおかしくてクスクスと笑いが絶えないが終盤になって“なんだこれは、この結末は“と笑いは止まりあっけにとらわれる展開です。
この物語は初老にさしかかり子供を失った夫婦がお互いを思いやる情愛と亡くした子への限りない愛情が、団地での身勝手な噂話で翻弄され、ユーモラスに描かれている。不条理な噂に耐えられずこの夫婦が採った行動はSF的だが、監督の死生観や宇宙観が加わり、深みのある物語になっている。
藤山さんと岸辺さんの夫婦、本当に息の合ったおもろい夫婦で初老にさしかかった男女の深い愛情を読み取ることができ、また藤山さんにはどこかに息子への悲しみが隠され押さえた演技がすばらしい。
斉藤工さんの、真面目で浮世離れしたどこか不気味さを持つ宇宙からきた青年役?、とても雰囲気がよく出ています。
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物語、
古い団地が映しだされ、「人生はサバンナだ」と浜村淳さんのラジオ放送が流れるなかで、山下ヒナ子(藤山直美さん)が三階から棒を振り回している少年を見ていると、真城(斉藤工さん)が現れ、壊れた鉢植えをハンカチに包んで「花が怪我なくてよかったですね」とおばあちゃんに渡している。家にやってきて、「五分刈りです」(ごぶさたです)と挨拶する、おかしな男です。「いつも山下さんの漢方薬を宅急便で取り寄せている」という。ちょっと貧血というので漢方を飲ませると「効果しきめんです。ぼく日本語は難しい。はさみました」と出ていってしまう。床下の収納庫には薬局を畳んだ時のたくさんの原料や調合器具がある。ここで幕が開き、配達員が「宅急便です。トイレ貸してください。はずむと3分もたない」と便所に駆け込む。とにかく分けわからん物語のスタートです。
「引っ越して3年の東京人。何でも相談して」という自治会長夫人行徳君子(大楠道代さん)が「新しい人が入るといろいろ言われるが気にする必要はないよ」と教えてくれる。
ヒナ子の夫清治(岸辺一徳さん)は薬局をやめてここに来てからは森の散策に出かけキノコの写真を撮って図鑑で調べたりして過ごしている。ヒナ子はスパーで働いていて「薬局は廃業。もうすぐ(息子の)3回忌」とつぶやきながら仕事中。客の面倒見はいいが仕事がさばけず店長から文句が出ている。こんなふたりの生活が4ヶ月が経った。
 
○ヒナ子が夫を殺したのではと噂がでる。イメージ 2
団地の噂の4人組、東(竹内都子さん)、南(原田麻由さん)、西(濱田マリさん)、北(滝裕可里さん)。引っ越してきたばかりの北が「山下さん離婚したみたいで、旦那が殺されている?」と言い出す。そこにヒナ子が「腱鞘炎です」と通りすぎるものだから、「旦那殺して、自分も死に損ねた」と噂さを煽る。これが団地!!
自治会のゴミの区分けを話し合う集会であったのに「人が殺されるや子供の虐待などの問題が出て会長を止めたい」と会長の行徳正三(橋蓮司さん)が突然発言する。そして、ゴミ袋を開けて仕分けしているゴミ管理人行徳君子が清治に「会長を申し送りたい」と言い出す。
 
○清治、自治会長選挙に落選する。イメージ 3
噂を耳にした清治が「お前恨んでるやろ、廃業させてしもうたから」とヒナ子に言葉をかけるとヒナ子が「真城さんが頼りにしている」と伝える。ヒナ子はダンスを楽しんだころのことを思い出し涙ぐむ。「何が悲しいのか」と清治が問うと「涙ではない、これ水や、何もかも終わったんや」と言うので「しんどいのはお前だけではない」と慰める。
朝になるとヒナ子は元気に掃除。清治はここで元気を出してみようと自治会の改正案を検討し選挙にでる決心をする。「何でも要領いい女なら結婚してません」と清治。「もうよろし、直也が笑うてるわ」とヒナ子。ふたりが直也のことに心を痛め慰め合う、とても心温まるシーンです。
選挙には行徳、清治、住吉将太(宅間孝行さん)が立候補。清治がせき込むと「いい歳して辞退しなさい」住吉に嫌味を言われ、結果は行徳の圧勝。清治はいたく傷付く。もう耐えられん!!
ヒナ子は夜、団地の灯を見てうわさのコインロッカーや、おもしろいな!」と感嘆する。
 
○清治「死んだことにしてくれ」と収納庫に隠れる。イメージ 4
朝、将太が喜太郎を殴ったらしい。清治が森を散歩していて「地球はひとつやガッチャマン・・」と歌っていて喜太郎に会い「何してんや」と喜太郎を慰めてやる。喜太郎に息子直也の姿を見ているようだ。家に入ろうとして清治にまつわるウワサが耳に入ってくる。これを聞いた清治、押入れに身を隠そうとするが無理で「(もう噂に耐えられん)死んだことにしてくれ」と床の収納庫に入る。
君子がやってきて近所の噂はなしをし始める。清治は小便を我慢し懸命に耐える。笑いの渦です。
ある日、君子は店主に叱られ「ぴっぴっ、こまかいのお持ちでないですかか。私の息子も」と一人芝居でうっぷんを晴らしているヒナ子を見る。
君子は噂の四人組が「遺体は腐敗する。すでに捨てたのではないか」と噂するのを聞いて「ヒナ子さんがそんなことしない」と否定する。
 
○真城が訪ねきて、漢方薬の大量注文を出す。
「ごぶじですか」と真城がやってくる。清治は挨拶かわりにここに引っ越したわけを話す。「(直也に)衝突したトラックから何も言ってこない、会社に言うこともある、ニュースにも取ありあげられん。泣くにも泣けん。店舗処分してここに来た」と。
イメージ 5真城は「同郷人5000人分の薬が欲しい。化学薬品は自分たちは受け付けない。いろいろ試して山下さんの薬が一番会っている。中国にも行ってが値が高過ぎる。同郷人を救えるのはあなたしかいない」と言い、宅配便の男は弟だと言う。5000万円を置いて帰る。??
 
○清治とヒナ子の漢方薬つくり。
清治とヒナ子の漢方作りが手際よく始まる。夫婦の呼吸がぴったりで、にぎり飯を食べながら時間を惜しんでの作業、居眠りもでるなかでの作業でつくりあげる。つかれてふたりで寝る。とてもユーモラスなシーンでこれまでに築きあげた仲のよい夫を見ることができる。保管のためにドライアイスを購入する。
 
自治会長・行徳のヒナ子への疑い。
噂の四人組がドライアイスが運び込まれるのを見て、「人を細かく切ってタッパーに詰めてる、殺人だ」と噂する。ヒナ子のごみ出しを見て「主人が行方不明なのに平然としていておかしい」と言い、行徳が噂の確認にヒナ子を訪ねる。行徳が「漢方薬を作り保管にタッパーが必要であったこと。訪ねてくる人は真城といい雲南省の人だということ」を確認しイメージ 6自治会の集会でこのことを説明すると、「冷蔵庫は臭くなかったか、もぅ一度匂いを嗅いで来い」ということになる。
再度行徳がやってきて匂いを嗅ぐ。「私を殺人者にしたいのか、国際電話しますよ。どうでもよろし、人殺しでもどうでも」とヒナ子は遂に切れる。
集会では「ヒナ子さんがそう言ったの。(殺人者に)きまりや」ということになる。行徳が「ヒナ子さんが人殺しに見えるか」と言うと「見える、私が阿呆だった」と君子。君子の変心ぶり、空気に流されるのが団地。
行徳がヒナ子に「今晩妻を泊めて欲しい」と言うてくるので「そんなら警察も報道の人も呼んで」と返事する。藤山さんのぶちぎれ演技が面白い。
         
○清治、ヒナ子が団地を去る決心をする。
真城が妻子を連れて薬の受け取りにやってくる。ヒナ子が子供を抱かせてと顔を見て卒倒、鼻が大人のものだった。自宅に警察がやってくる。「なんの恨みがあるの」と行徳夫婦に限って部屋に入ってもらう。君子は死んでるはずの清治を見て卒倒する。君子は「お花畑がきれいだった」と目を覚ます。
ヒナ子が「真城が初めて会った日『私たちを信じてください、何故漢方が利くか、心臓が電気で動くのか』と訪ねてきたこと。それから『死んだら神秘が無い身体になるから直也には会えない会うには貴方たちにヘソの緒があればいい』と言ったこと」などを君子に話す。君子はヒナ子に同情を示す。
清治が真城に「床下に籠っていては会えない。いや、生薬の匂いで身体が消える感じがした。そこに直也がいる感じ」と話すと「肉体を意識しないことは誰にもある。生きているのに意識しないのは私たちもです」。

清治は話を整理してくると森に出かけここで喜太郎に会う。喜太郎は「遠いところに行く。本当のお父さんのところに行く」と言う。そうやったんか!!(俺も遠いところに) 
ヒナ子も森にやってきて「真城さんと話したら頭が痛うなった、私はこの世にさらばする」という。
 
○団地を“脱出”、宇宙に。イメージ 7
清治とヒナ子は行徳と君子と一緒に仏壇拝んで「直也に会える」と別れの挨拶を済ませる。団地では様子が変だと警察もやってきて大騒ぎになる。清治とヒナ子は薬を持って真城家族と一緒に団地を出て行く。団地の皆がこれを見送りに出てきて、最後に清治が出てきたのを見て“生きている”と驚く。バッグの中身は?に「星屑や、お前らに見えるか」と言い捨てて出て行く。
空に大きな宇宙船が現れ、真城が「あれは私たちの故郷です」と言う。「そんなことありえない」「ありうるのが団地」。
森の中を抜けて宇宙船に乗って宇宙に!! 「ヒナ子さん」という君子の声が。ここでヒナ子、“へそ緒”忘れていることに気付く。
「どうしたらよいか」と真城に聞くと「もう木星近くで境界を越えているので時空を戻せば会える」という。「2~3日戻して」とヒナ子。
 
団地の清治とヒナ子、“何やろ”と空を見るときらきら光るものが落ちてきて“何かいいことがありそうだな”と。
「ご飯にしよう」、(息子が帰ってきて)「おかえり」。わけわからん!!(これが団地、息子も思い出してやれん)(笑)