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「20センチュリー・ウーマン」(2016)

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人生はビギナーズ」(10)のマイク・ミルズ監督が、自立心旺盛だった自身の母親をモチーフに描いた作品。アネット・ベニンググレタ・ガーウィグエル・ファニングビリー・クラダップらの共演で、本年度アカデミー賞脚本賞にノミネートされています。
舞台となるサンタバーバラの風景と三人の美女の演技を観ようとこの作品選定を選びました。が、作品を観てこんな性教育は日本にないと驚き、また美しい映像を楽しみました。
1979年、米カリフォルニア州サンタバーバラに住むシングルマザーが、思春期を迎えた15歳の息子についていけないと、ふたりの女性に「どんなときでも自分を保ち、より良い人生を送れるようになってほしい」と協力を依頼した。そこで何が教えられたか、母と子の絆、母親と彼を取り巻く三人の女性の生き方が描かれます。
 
1979年はアメリカに、サンタバーバラにとって特別な年。ジミーカーターが大統領として過ごした最後の年。この時代、おおきなうねりのなかにあるフェミニズムやパンクロック熱が米西部に達するなど社会やカルチャーが大きく変容する時期で、このことを知っておくともっと楽しめたのではないかと思います。冒頭、父の形見のフォード・ギャラクシーがオーバーヒートで燃え出すというシーンは1979年という年を象徴する皮肉、知識が少なすぎました!
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あらすじ:
母親ドロシア
ドロシア(アネット・ベニング)は1924年生まれの55歳。少女時代に戦争を経験し空軍パイロットに憧れ、映画「カサブランカ」を繰り返して見てハンフリー・ボガートが理想の男性。40歳で息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)を産みシングルマザーとして育てている。大手製造メーカーの製図担当者として働き、毎日株価をチェックし、セーラムを大量に吸う。過去を絶対に否定しない意地硬さと戦中育ちの勇ましさ前向きさを持つ頑固な女性です。結婚生活については「私の見た人とは違っていが、良いところもあった。彼は左利き、私は右利き。毎日株価を点検するだけだったが、それだけでよかった」と多くを語りません。
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息子ジェイミーが大音響で聞くザ・レインコーツに「きれいな演奏できないの?」と文句をつけるとジェイミーは「きれいな音楽は社会の腐敗を隠す」と答える。「自分が下手だと知ってやっているってこと?」と聞くと、一緒に聞いていた、間借りしている女性アビー(グレタ・ガーウィグ)に「強い感情があれば技術は必要ない」と言われショックを受けた。トロシアは若い人に感覚にはついていえないと思った。
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最近の息子は学校をさぼりたがり、ロスのパンクロックライブに出かけ薬に手を出し「気絶ごっこ」というばかな自傷行為を繰り返す。息子には誰かの力が必要だが、男ではだめだと考えた。
そこで目をつけたのがアビーと近所に住むジェイミーの女友達ジェリーエル・ファニング)。「ジェリーは、ジェイミーをよく知っているから、見守ってやって欲しい。アビーにはあなたの生き方や興味の対象を見せてやって欲しい」と協力を依頼します。
 
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1962年生まれ17。近所に住むジェイミーの幼馴染。セラピストの母親にグループセラピーへの参加を義務付けられている。母の再婚で、新しい父親と脳性マヒの妹に馴染めず、夜はジェイミーのベットに潜り込み過ごすことが多いが、絶対にセックスは許さない。ヘビースモーカーでドラッグやセックスの経験が豊富。
ジェイミーは彼女がクラスメイトとセックスして避妊に失敗したと聞けば、妊娠検査薬を買って救おうとします。が、もやもやが残る。(笑)
 
アビー
1955年生まれ、24歳。ドロシア家の部屋を間借りしているバンクな写真家。かってニューヨークのアートシーンに憧れ、アーチストを目指していたが、子宮頚がんでサンタバーバラに帰ってきて、がん経過観察を続けながらイメージ 5カメラマンとして生活している。バンクロックが大好きでデヴィッド・ボーイに感化され髪を赤に染めています。そして、フェミニズムの旗手。
 
アピーはジェイミーの教育を任されたとバカ正直にバンクロックから女の扱い方、男友達の付き合い方まで指南する。
がん検診にはジェイミーを同行し、ときに将来への不安を口にして生き辛さを漏らす。ジェイミーはこんなアピーに憧れ、励ますようになった。
 
ある日、アビーが「フェミニズムにはこれを読みなさい」と「からだ・私たち自身」(1971)「連帯する女性たち」(1970)を渡す。このような本は、この年齢ならもうバイブル、読んで読んで読みまくる。(笑)ジェイミーは「オーガスムスの中心は直接刺激すること。・・・・・」と急進派フェミニストのアビーが勧める知識にかぶれ、アビーに勧められたTシャツを着こむことで友人からART FAG(アートかぶれのオカマ野郎)とデイスられる。
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母トロシアに「良い男になりたい、女を満足させたい」と訴えると「あんた大丈夫!」と注意された
トロシアは、車にART FAGとペインテイングされる騒ぎが起き、「もうほっとけない!」と同居している元ヒッピーの“なんでも屋”ウイリアムビリー・クラダップ)をドライブに誘い、ニューウエーブでダンスを始めた。家に帰ってジェイミーを誘い「頭で考えてはだめ」と二人で踊った。
 
ジェイミーはジュリーを誘い「からだ・私たち自身」で学んだ「オーガムス」の感じを彼女に聞くと「感じない、あの声よ、それに相手の身体が隅々まで見れるのが快感。2回に1回は後悔する」と喋る。「じゃなぜやる!」と怒りをぶつけた。
帰宅して母に「この本に興味をもったら!」と話すと「興味はあるが、私には本はいらない」断られた。
 
ドロシアは「15歳の子には過激すぎる」とアビーを責めるが、「彼は大丈夫」という。
 
カーター大統領のTV演説「クライシス・オン・コンフィデンス・スピーチ」(自信喪失の危機)を皆で聞いていて、ドロシアは「美しいと思う!」と感想を述べた。一方アビーは立ち上がり「生理よ!男が女とやるなら生理ぐらい知らないと!生理知ってる?」と男たちをなじり始めた。
すると、ジェリーが「”カッコーの巣の上で”を観ながらやった」と言い、14歳のときの初体験を話し出した。「くだらない」とドロシアが止めた。
その夜、ジェイミーは部屋に来たジェリーに「そんなんじゃ誤解される。もう喋るだけなら泊まるな」と言うと「海辺に行こう」と誘うのでした。
 
ジェイミーはジュリーと旅に出て、モーテルで「このままではだめになる。協力するから乗り越えよう」と迫ると「あなたはただしたいだけ!他の男と同じ。あんたは普通の男、今風にしているだけ!」と言われ、モーテルを出て行方不明になった。
 
ジェイミーの行方不明を聞いたドロシアはあわててアピー、ウイリアムと一緒に捜索した。ジェイミーは朝になってモーテルに戻ってきた。ドロシアが「ジュリーって、複雑な子よ」と話しかけると「あっ、そう。僕の世話にうんざりした」と言う。「私のようになって欲しくなかった。私ひとりでは教育できなかった」と答えると「僕はおかあさん一人でいい」という。ドロシアは「今後はなんでも話してくれる」と諭した。
感想: 
最後に、20年後に亡くなるドロシアのこと、ジェイミー、アビー、ジュリー、ウィリアムのその後が語られています。うまくそれぞれの時代を受け入れ、自分らしく、豊かな人生を送りました!中でも、一番むつかしいかなと思ったドロシアの生き様、すばらしかった!
 
ふたりの女性が教えたことはとても破天荒なものだった。ジェイミーは男の自尊心を打つ砕かれるほどのショックを受けたが、母親の人としての強を知り、強いやさしい男に成長していった。
イメージ 820世紀、「大恐慌時代」「ベビーブーム時代」「ベトナム戦争時代」に生まれた3人が、1979年という米国にとって大きな変革時期のなかで、お互い反発し受け入れもがきながら生きる女性たちが愛おしい。演じる三人が美しくすばらしい演技です!
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