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「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」(2016)

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本作で主要役クワガタ(声優)を演じるピエール瀧さんが舞台挨拶で空席があることに「ここまで熱量をかけて作ったものをスルーしていいのかなっていう感じ。見てもらいたい、というより見る義務があると思いますよ」とは話したというニュース。これが、本作鑑賞の動機です。
コピーは「古き日本を舞台にした圧巻のストップモーション旅絵巻」。サムライ時代を舞台に、日本のおとぎ話をモチーフに、日本の文化・風習がしっかり取り入れられ、日本人のもつ宗教感や死生観がしっかり描かれており、これが外国人によって描かれたことに驚きです。
アカデミー賞2部門、ゴールデン・グローブ賞をはじめに世界の映画賞83にノミネイト、27賞を受賞。これほどに日本が世界に紹介された映画はそうないでしょう。すばらしいことだと思います。ピエール滝さんの仰るように「観ないわけにはいかない!」です。(#^.^#)

本作は、ストップモーションアニメで最高技術をもつスタジオ「ライカ」作品。監督は同社CEOでもあるトラヴィス・ナイト。前作「コララインとボタンの魔女」(未観)に次ぐ2作目。
ストップモーションアニメを観るのは初めてです。小さな人形を美術セットの前に置き、ポーズや表情を少しずつ変えて1秒に24コマ撮り、映像へと仕上げていく気の遠くなるような技法。1週間で作製できる尺が3.31秒だと言います。仕上がった映像は息を飲むほどに美しい。特にキャラクターの顔に感情がしっかり出ています。物語には、少々疑問をもつところもありますが、この美しさですべてチャラです。(#^.^#)
主人公クボが三味線の名手で、その魔力で折り紙を操るというキャラ発想に驚きまあす。その顔が松田翔太さんに似ている。母親が木村多江さん、クワガタが渡辺健さん、月の帝が田中泯さん、闇の姉妹が壇蜜さん似という、これでは感情移入しやすいですね!
物語は、
幼い頃にサムライの父を殺され、母と2人で追手の目を逃れてひっそりと暮らしている少年クボ。三味線の音色で折り紙を自在に操る不思議な力で大道芸を披露し、病気がちな母に代わってわずかなお金を稼ぐ日々。そんなある日、ついに刺客に見つかってしまったクボ。間一髪のところを母が身を挺して彼を逃す。一人になってしまったクボだったが、そんな彼の前に厳しいけれど世話好きなサルと陽気な弓の名手のクワガタが現われ仲間となる。こうして自らの出自と一族を巡る秘密を探り、両親の仇を討つべく過酷な旅へと出たクボだったが…。(allcinema
 
主人公がサルとクワガタを従え親の仇を討つために必要な武具を探す、童話「桃太郎」モチーフ物語のように進みますが、なんのために、どこになど曖昧でわかり難い。
実は自身が追われる理由が母が犯した罪にあり母と父に何があったかを知り自らが成長していくという物語になっていて「竹取物語」に近い世界感の物語だと思います。
「その人の物語はいつか終わる。でも、継ぐ人の思いの中に生きる」という人の命が永遠に繋がれているという死生観が強くでた作品になっており、とても感動します。
上記物語の他に。「桃太郎」「浦島太郎」「ゲゲの鬼太郎」「一寸法師」「ミツバチハッチ」等たくさんの物語が絡んで日本人の心がよく描かれていると思います。() 外国人が作る作品に見られるとんでもないものはありません。
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冒頭、小舟で、子ずれで三味線を抱え、闇の刺客から逃げる女。月が出て、仕掛けられた大波、葛飾北斎が描く「神奈川沖浪裏」に翻弄され、陸地に放りだされる。「この子はクボ、片目を祖父に奪われたがそれは始まりでしかなかった」で始まる物語。数年を経てクボが少年に成長し、この間に母から父親の武勇伝を聞き、三味線と折り紙を習い、いまでは身体の弱った母を看病しながら、村に出て大道芸で稼いで生活しています。
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折り紙で武士であった父ハンゾウ三船敏郎がモデル)、鳥や蜘蛛など作り、三味線の音で「ハンゾウは英雄、目を奪われたが武具を求めて歩いていた。そのひとつ目は折れずの剣、二つ目は刺されずの鎧、三つ目は破れずの兜」と父を語り、折り紙を操る。ここでの折り紙の動きは圧巻です!
夏祭りの日、“炭鉱節”の聞こえる盆踊。灯篭流しが始まり、知り合いのおばちゃん(小林幸子さん)から「灯篭には話せば、亡くなった人と話せる」
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と聞き、母から強く言われている「月のでる前に家に帰る」約束を守れず、月の帝から遣わされて闇の姉妹(川栄李奈さん)に追われる。母の助けで羽をつけてもらい遠い地に脱げます。灯篭流しが美しく、炭鉱節の盆踊り、まさに日本人の心に染みる風物です。このように死者にかかわる日本の風物、風習がしっかり描かれます。
 
羽で飛んだ場所がなんと雪国。なんで雪国と思いますが、“じょんがら節”ですかね?
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傍に、いつも懐に入れていたお守りの木製サルが、生きたサルになっていて「あんたのお母さんは死んだ。私にその命を吹き込まれている。三つの武具を探す以外に生きる道はない」と言い、二人で武具を探す旅が始まります。道案内はクボが折り紙に命を与られハンゾウ
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道中で、クボが穴に落ちるとそこにクワカタ(虫)の甲冑を着けた武者クワガタに会う。クボの家紋を見て「自分の家紋と同じ、家臣にしてくれ」とせがまれる。「桃太郎」伝説です!

ハンゾウの案内で洞窟内の巨大ドクロの頭に突き刺された剣を見つけ、このドクロとの格闘、非常に動きがスムーズでストップモーションアニメとは思えない出来です!
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巨大ドクロは歌川国芳が描いた「相馬の古内裏」だという。剣を抜くとドクロは一気に崩壊、その圧で三人は湖辺に吹っ飛ばされる。旅を続けるうちに三人は家族のように結ばれていきます。これも見どころです。
 
湖を渡るために落ち葉を集めて、三味線の音で船を造る。集められた落ち葉イメージ 8
がなんと250000枚だという。船の上では釣りをしてサシミを食べます、() 
クボが母の言葉に「海底に鎧がある」を思い出し、話すといきなりクワガタが湖に飛び込み、これを援助しようとクボが飛び込む。船上のサルには、闇の姉妹が襲いかかる。
海中では鎧を守る“目玉のお化け”がいてこれとの格闘が始まる。クボが窮地に追い込まれるがクワガタに助けられる。
サルが瀕死の重傷を負うことになり、クボに母(化身)だと名乗り、「父:月の帝から武士を殺すために派遣されたが、自分を気に入ってくれたハンゾウに暖かさを感じ一緒になったことで、父から追われている」と告白します。自分の命はもうすぐ消えるというサルに「そなたの命はクボの中で生きている」とクワガタが励まします。
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クボは夢で月の帝に会う。そこで兜はハンゾウの家にあると告げられる。三人はカラスや雁(死者の魂に導いてくれる)に導かれ、富士山の見える平原を、竹林の中を通って()家に急ぎます。
家のなかには見事な襖絵があり、奥に進むと、そこに闇の姉妹が待っていて、格闘となる。闇の姉妹は「クワガタは姉を奪った罰として魔法にかけられたハンゾウだ」という。ハンゾウは闇の姉妹の格闘で斬られ、折り紙となって飛び散ります。クボが激しく三味線を奏でて戦い、闇の姉妹を始末します。
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一枚の折り紙に兜の在処が書いてあり、クボが村の神社に走る。そこには月の帝が待っていて、「ここには憎しみや嘆きがありいずれ死ぬ。月に戻らぬか。家族と一緒にそなたの永久の物語になる」と誘うがクボがこれを拒否。月の帝が巨大竜となり、クボと格闘。これ「荒神神楽」です!
 
クボは吹っ飛ばされ、墓場に落ちる。「ここにはつらいこともあるがそれ以上に美しいものがある」と、弦の切れた三味線に母の髪と父の残した弓の弦そして自分の髪を三弦とし、激しくかき鳴らす。
 
祖父が「ここはどこか、助けてくれんか」と現れる。祖父が蘇ったのです!!


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村の人々が「あんた優しい人だったよ」と迎えます。みんなで灯篭に灯を入れて流します。クボが「父上、母上。僕の物語は続きます。お二人に会えて、やさしさに触れてとても幸せ者です!この世界はよく分からないからお二人に会えればもっと幸せかも・・」。金色に輝く灯篭に、僕と母と父が・・。こうして永遠に続く命の物語、すばらしい出来でした。
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