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宮﨑あおいさんを応援します

「勝手にふるえてろ」 (2017)

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松岡茉優さんの初主演作品、これがうれしくて期待していました。松岡作品との出会いは、NHKドラマ「銀ニ貫」(2014)。公開日午後一番での鑑賞、座席はほぼ満席。高年齢の方も多く、銀二貫で松岡さんを知った方達かなと。(#^.^#)

彼女の喜怒哀楽の感情が爆発した、おばさん面から可愛い子までのアクセントのある演技が見事で、松岡さんだから生まれたといえる作品。コメデイエンヌとしての才能を存分に見せるという大きな成長を見ることができました。

原作は芥川賞作家・綿矢りささんの同名ベストセラー小説、未読です。監督は「恋するマドリ」の大九明子さん。渡辺大知・北村匠海石橋杏奈古舘寛治片桐はいりさんらが共演です。

物語は、中学の同級生に10年間も片想い中の恋愛経験ゼロのヒロインが、初めてできたリアルな彼氏と妄想彼氏の間で勝手に二股恋愛を繰り広げる暴走の顛末をコミカルに描くというもの。

24歳のOLヨシカ(松岡茉優)は博物館からアンモナイトを払い下げてもらうほど絶滅した動物が好きなオタク系女子。
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恋愛経験はゼロで、中学の同級生“イチ”(北村匠海)への片思いを10年間も脳内で育て続けていた。そんなある日、会社の同期“ニ”渡辺大知)から突然告白されたヨシカ。
それなりにテンションは上がったものの、元々タイプでないニが相手ではどうしても気持ちが乗っていかないどころか、反対にイチへの想いが募っていく。そしてある出来事をきっかけに、もう一度だけでもイチに会いたいと、同級生の名を騙って同窓会を計画するヨシカだったが…。<allcinema

ヨシカが理想と現実について理解していく過程が、ドラマッテイックに、コミカルに描かれます。しかし、そこには誰しもが体験した思い出があり、リアルで、最良の「恋愛指南書(映画)」です。
会話劇になっていて、良いセリフが沢山あります。「にせコド」(長い列をなしていました)よりこちらを観てと思うのですが・・・(#^.^#) 
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冒頭、松岡さんのアップ顔で、「・・・(イチなら)結婚式当日も彼の監視でたまらん。ニイならほったらかして波と戯れ遊べる。だけどイチが好き」というセリフが流れます。
これが本作のテーマです。ここに“でかい”松岡さんの顔をもってきたことが面白い。()

ヨシカの妄想ぶり10年前の中学生時代、イチが忘れ物をして先生から罰として黒板に99回「僕は忘れものをしません」と書き反省させられているのを見たヨシカが「シンプソンのアニメでは毎回違うよ。一回ぐらい欠かしたら!」と声を掛けると、イチが一つだけ「僕は忘れものをします」と書いたことに「この変なところが彼と繋がっている」と、もうこの記憶が忘れられない。
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そして運動会で「こっち見て、俺を見て!」と言われたことを、10年間会話もないのに、「天然王子」として思い続けるヨシカ。中学生のころの思い出は、ヨシカほどではなくても皆さんお持ちでしょうか。() 

この思いを周りの人達、釣りおじさん(古舘寛治)、ファミレスの金髪店員(趣里)、同僚の月島久留美石橋杏奈)に語って、さらに妄想を膨らませます。(笑)
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関心事は趣味のパソコン検索による古生物研究。巨大アンモナイトを見つけて注文するという、本当に男女関係についてはアンモナイトのような女の子です。()
そんなある日、同期会で営業課のニ(名前など知らない、ヨシカにとってはランク2の男)に出会う。

二の空気の読めなさがまた面白い。同期会で会ってシャメ交換で知り合い、クラブにデートし酔っぱらって吐く。そこで「付き合って欲しい」と告る。()
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ヨシカは「ニはタイプでない」とイチのことを考え、そのせいでストーブ火災を起こしてしまう。(笑)
このままでは危ないとイチに会うため、同窓会を企画しイチを誘う。
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ニは告白の返事を聞こうとヨシカを奥多摩の釣りに誘う。トイレを聞かれて、「そこの岩影で済ませ!」という無神経さ。() 糸を絡ませて困らせ、告白の返事を求める。() ヨシカは、怒り心頭して、一気にイチに傾く。
夜、ニは「お詫びにクリスマスプレゼントだ」と“赤い付箋”を小箱に入れてヨシカに贈る。この付箋がラストで生きてくるんです!

ふるさとでの同窓会。イチは大変なモテ方で、ヨシカが近づくと別の女の子にさらわれる。ここでのヨシカの涙ぐましい奮闘、松岡さんの熱演です。() 東京で会おうと上京組会を作ってイチを誘います。

上京組の集まりに出かけるヨシカの盛り上がりは、「ラ・ラ・ランド」気分です!やっとイチと話せることになり、「こっち見て、俺を見て!」の意味を聞くと「君だけが見ていなかったから。見て欲しかった」という。これにヨシカが舞い上がる。

朝、アンモナイトの話で盛り上がる。「君と話していると自分がよく見えてくる」という。ヨシカは「君というのは誰れ?」と聞くと、「ごめん。名前は?」と名前(ヨシカ)が返ってこない。ここからのヨシカの落ち込みが凄い。()
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これでは、イチはファミレスの金髪店員と同じと「この人と話したことがないんだもの。話をしてみたかったけど、綺麗な髪だから、触ってみたかったんだけど、そんなの怖くてできません。だって迷惑でしょう」と歌い出す。

松岡さんが歌うミュージカル仕立です。「金髪店員と私の距離は透明、だれにも見えない。悲しい」と激しく泣くヨシカ。「絶命すべきでしょうかアンモナイト、教えてよ。どんだけねじくれたら生きやすくなるの」と歌う。()

こんな時、二が「自分の好きなところに」と誘う。ピンポンをしていると笑顔が出てくる。
動物園に誘われ、弁当をもって会いに行く。
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ヨシカが「これは現実!付き合おう」というと「現実だよ。両親が見ても違和感のないことが大切だ。しかし、おれは付き合っても結婚しない。男として成長するために」とニが答え、キスを求めたがヨシカが断る。
翌日、ニがヨシカに「久留美さんから、ヨシカは経験がないから急にチュとかは駄目といわれていたのに悪かった、俺諦めた」と詫びると、これにヨシカが大キレてこじらせ女になります。(笑)


出勤しても仕事にならない。久留美の話にも「久留美はクルクルパー」と無視。() 天然王子を思い出して泣く。遂に「産休」を取って有給休暇に入る。ここでの落ち込んだ松岡さんの演技は面白い!()

誰からもメールが来ない。久留美から謝りと見舞いのメールが入る。ニにメールしようとするが着信拒否されている。あまりの孤独感で、遂にニの勤務先に電話する始末。

雨の中、ヨシカのアパートにやってきたニ。
「しょうがないから来た」
「来てくれてありがとう」
「顔色が悪いよ、病院行こう」
「妊娠しているのは嘘」
ヨシカは胸に赤い付箋を着けている。これがポロリと落ちる。二人が「弄ぶな!」「被害者面するな!」と言い争う。二が「耐えろとか、すげえことだぞ。ヨシカに耐えてみる!」というと「ふるえが来たよ。これ異常」とヨシカ。
「異常でもないし、異人でもないよ。一緒にいたい、分からないことだらけだよ」と二。
落ちた付箋に雨水が滲んで、赤くなっていくというラストシーン。やっとふたりは、本気で相手のことを考えるというスタートに立てました。
この作品、松岡さんでなければ演じられません。代表作になりますね!
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