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「嘘を愛する女」(2018)

イメージ 1長澤まさみさんと高橋一生さん主演、共演吉田鋼太郎さんによるミステリアスなラブストーリー、「ある日突然、愛していた恋人の素性がすべて偽りだと知ってしまったヒロインが、絶望に打ちひしがれながらも恋人の真実を追い求めていく旅の行方」。これは観ないわけにはいきません。楽しみに待っていました。脚本・監督:中江和仁37歳)さん、本作が長編映画初作品です。CMやミュージックビデオで活躍、本作は「SUTAYA CREATORS PROGRAM FILM 2015」に企画を応募し、グランプリ受賞作品です。作品はヒューマンストーリーで、サスペンス風につけたタイトルのネイミングには、違和感があります。

観賞所見ですが、「自分たちの過ごした時間が本物だったか、愛を確かめる旅」というテーマはとても良い。夫婦の人生のなかでとても大切なプロセスです。このストーリーを長澤さん・一生さん、そして鋼太郎さんの演技と美しい瀬戸内海の風景をそれなりに楽しみました。が、ストーリーが、物語設定に突っ込みところが多くて感情移入し難く、平凡な作品に終わったように感じます。

監督はこの物語を辻仁成さんのエッセイで読み、感動してエッセイのモデルとなった新聞記事で捜し出し、大学に入ったころに映画化を考え、脚本は10年間で100編書いたといいます。あまりにも思い込みが強くなり、作り過ぎたのかなと思ったりします。
物語は、
食品メーカーでキャリアウーマンとして活躍する川原由加利(長澤まさみ)は、震災のときに運命的に出会った研究医の小出桔平(高橋一生)と同棲5年目を迎えていた。彼の運転免許証や医師免許証はすべて偽造されたもので、職業はおろか小出桔平という名前すらも嘘だったことが明らかとなる。ショックを受ける由加利だったが、肝心の桔平は意識を失ったまま病院のベッドで眠りつづけていた。彼は何者で、2人が愛し合った日々も嘘だったのか、由加利はその答えを知りたくて私立探偵の海原匠(吉田鋼太郎)を頼ることに。やがて彼が書き残した未完の小説が見つかり、その内容を手がかりに、彼の秘密を追って瀬戸内海へと向かう由加利だったが…。
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冒頭、2011311の東北大震災の日。由香里は電車を降り気分が悪いと座り込んでいるところに、汚れたスニーカーの男(小出桔平)が躊躇したのち、近づき、「大丈夫ですか。すこし休みましょう」と上着を取って呼吸を整えさせます。医者ということが分かります。東北地震の日の東京の描き方がよくない。
偶然知り合ったふたりの5年後、夜酔っぱらってタクシーで桔平の待つマンションに戻り、スポンサーがくれたプレセントを“ハイハイ”と渡し、彼の胸のなかに。
朝、のどが痛いと由香里。桔平、口を開けさせ「アルコール摂取病、痛風になるよ!」と優しい。夜の夕食メニューを伝えて出勤。桔平は趣味のマジンガーZのフィギュアで遊ぶ。
会社では「ゼリー」の商品テストで自信たっぷりなひとこと。インタビューに応じ「半歩さきを見るのが私の仕事」と宣う、自己中の嫌な女性です。() 

医者だといいながらこんな生活にハイハイと5年間も続ける桔平、何かあったとしてもあまりにも不自然。5年間も、昼間、桔平が何をしているのか知らないという由香里も異常です。

結婚を決意し母に合わせる日に、桔平が“くも膜下出血”で倒れ意識不明に。そこで初めて彼について何も知らないとことに気付く?警察に相談しても「あんた結婚前で幸運だった」と、私立探偵に相談すると「結婚詐欺だろう」と言われる。イメージ 3
免許証の住所、医療免許は偽物、愛した彼は何者か。一人で寝てみてその虚しさに、「君は元気だね!でも、仕事に疲れているのではないか」という桔平のやさしさを思い出す。
病院に彼を見舞っても、言葉もかけず戻ってしまう。「脳は生きているのでしっかり声掛けしてください」と言われているはずですが、何もせずに退室。彼への愛があったのか。
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そこに心葉(川栄李奈)という女性が見舞いにきて彼の顔剃りをする。「桔平とは出会い系で一緒になった」と言い「あんたセックスレスでしょう。先生、小説を書いていた」という。桔平にとって心葉は気軽に話せる子で、由香里は失いたくない人。しかし、心葉の役割がいまひとつはっきりしない。
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探偵事務のハッカー腕のある木村(DAIGO)によってPCから取り出してもらった小説を読んでいて眠り、会社を遅刻し上司から「しばらく休め」と仕事を失う。小説には700ページに及ぶもので家族について書いてあるらしい。「瀬戸内海を渡ってくる春は寒く・・」で始まり、完結していない。
 
さすがにこの事態、心葉への嫉妬もあったかもしれない、由香里が単独で小説を頼りに桔平の過去を知ろうと瀬戸内海の旅に出ます。「ユウタは小さな灯台の根元にフィギュアを隠してた」という記述から小さな灯台を目安に、しまなみ街道沿いに灯台を捜索すると小説通りに根元にフィギュアが見つかり、これは本当のことが書いてあると探偵の海原を呼び出し、ふたりで桔平の過去を探すことになる。
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妻の不義を疑った苦い経験から「秘密を知らないほうがよい」と考える海原との旅。知ったほうが良いのか知ってしまったときどう対応しようかと悩み、海原と対立しながら、旅を続けます。

島の飲み屋(女将:黒木瞳)で酔っぱらって吐き、介護してくれた桔平の優しさを。靴擦れで、震災で気分が悪くなったとき靴を貸してくれたこと、そして再会して直ぐに同棲すると決めたこと。暴言を吐き彼が家を出たときのこと。少しづつ記憶を辿りその意味を問い始め、彼が自分を消したわけを知り、彼に対する本当の愛に辿り着くという結末。記憶を思い出す切っ掛けがなんとも、作り過ぎ。
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長澤さんの、プライドだけで生きてるキャリアウーマンから、自信を失墜し苦悩し、やっと見つけた幸せに泣くという長回し演技。フッションと合わせて楽しめます。そして高橋一生さんが、桔平の隠れた本心を、表情と雰囲気で見せてくれます。
吉田鋼太郎さんは、これまでのイメージと異なって、由香里との掛け合いをユーモラスに演じ、後半の物語を盛り上げます。(#^.^#)

桔平は自分の過去を消そうと書き出し、過去と決別するためにもうひとつの自分を書いていたという結末は面白い、惜しい作品ですね!
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