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宮﨑あおいさんを応援します

「リバーズ・エッジ」(2018)

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久しぶりの二階堂ふみさん主演作品。監督は「ピンクとグレー」(2016)の行定勲さん、曰く、二階堂さんに背を押されて撮った作品とのこと。これだけで、もうどうしても観なければならない作品と期待していました。(#^.^#)
原作は1993年~94年に雑誌「CUTiE」に連載された岡崎京子さんの伝説的名作コミック、未読です。脚本は「アズミ・ハルコは行方不明」(2016)の瀬戸山美咲さんです。

河原に放置された死体という秘密を共有する若者たちの欲望と焦燥を鮮烈に描き出す“青春ストーリー”。
主演は二階堂ふみさん、共演に吉沢亮上杉柊平SUMIRE・土居志央梨・森川葵さんです。
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作品のテーマは、タイトル「リバーズ・エッジ」は登場人物たちの“川っぷち”の意で、暴力・SEX・ドラッグ・孤独で行き場を見失った若者たちの生きる感覚「生」を問うています。
彼らの生は異常ではみ出し者ですが、時代背景や家庭環境を思えば、愛しい若者たちだと思えるから不思議です。(#^.^#)
結末はとてもさわやかで、若い人たちに観て欲しいと思うのですが、残念ながらガラ空き!

あらすじ:
若草ハルナ(二階堂ふみ)は彼氏の観音崎上杉柊平)にイジメられていた山田(吉沢亮)を助けたのがきっかけで、彼の秘密の宝物を教えられる。それは河原に放置された死体だった。ゲイであることを隠して生きる山田は、彼を愛するカンナ(森川葵)と付き合いながら夜の街で売春をしていた。ハルナの後輩で摂食障害を抱えるモデルのこずえ(SUMIRE)もまた、死体の秘密を山田と共有していた。そんな禁断の秘密を共有するハルナ、山田、こずえの3人は、やがて歪んだ絆で結ばれていくのだったが…。<allcinem
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冒頭、ハルナの「いまだ縫いぐるを手放せない」というインタビュー、ライターで火を着け二階から火だるまになって落下する人? 旧校舎美術室の倉庫に裸体で縛られている山田を救出するハルナ、岸壁で釣りをする男たち、夜間の河口で山田が「若草さん海の匂いがしない」と語りかけるシーン。ハルナと山田に起こった出来事を時系列に関係なく並べたシーンから物語が始まります。“川っぷち”のハルナが何を契機に生きる感覚を掴んだかという作品のテーマを暗示しています。
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暴力・SEX・ドラッグ・孤独に浸かった登場人物たちの日常エピソードが交互に描かれ、これらの映像から、キャラクターの心理や相互関係が浮かび上がってくる。
そして、ある事件を切っ掛けに各々の行動がテーマーへと収斂するよく出来た脚本です。登場人物に対するインタビューがところどころに挟まれ、若者の行動にリアリテイを感じ理解しやすい工夫がなされています。

浮かび上がる人物像は、
ハルナは、よくネコの死骸が転がったりするという川原のある街に住む高校生。授業をサボることが多い。同級生の彼氏:観音﨑とはSEX関係にあるが好きで付き合ってるわけでもなく、すべてに実感のない日々を過ごしている。
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山田が観音崎に暴行され美術室に閉じ込められたことを知ったハルナが彼を助け出し、これが契機で山田の秘密(宝物)を知り彼に興味を持つようになる。
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山田は暴行されてもそのまま、抵抗することはない。ゲイで売春をし、下級生に好きな男の子がいるが眺めるだけ。死体を観ることで現実逃避でき、生を感じる。

山田の秘密を知るもうひとりの一年後輩の吉川こずえ(SUMIRE)は過食症。モデルをしているが仕事という実感はなく、自虐趣向で現実逃避に生を感じる。

観音崎は暴力的でSEXに生を感じる。ハルナの他に同級生の小山ルミ(土居志央梨)ともSEX関係にある。ルミの時は薬を使うが、ハルナにはそうはしない、好きだという感覚がある。
 
ルミは放縦で性的衝動が強く、SEXに生を感じる。見知らぬ男ともお金のために寝る。引き籠りの姉とは関係を持ちたくない、自己中心です。
 
田島カンナは山田がゲイであることを知りながら交際を望んでいる。自己愛の強い女性で、優越感に生を感じる。山田とハルナの仲を見て、学友に「これ見て!」と言わんばかりに山田のためのスカーフを編む。
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彼らの生は異常ではみ出し者ですが、時代背景や家庭環境を思えば、愛しい若者たちだと思えるから不思議です。今の時代にも続いていますね!

ハルナが山田の秘密を知ることで山田に興味をもち、ふたりの関係が観音崎・ルミ・カンナに大きな嫉妬心を生み、これが大事件につながる。
ルミが、妊娠し責任を観音崎に押し付け、首を絞められて死亡する(実際は失神)。これに動転する観音崎観音崎の動転を自分の身体で受け止めてやるハルナ。ルミの流産、ハルナへの嫉妬でカンナが焼身自殺(冒頭の映像)。

観音崎は自分の暴力性が、実は、弱さの裏返しだということを悟り優しくなる。
ハルナはルミの流産とカンナの死で、生きたいことに生を感じるという。山田は亡くなったカンナを思い出し「生きているうちに好きになってあげればよかった」という。

彼らは、友の死という大きな犠牲のうえに、生を感じることになる。山田の「生きている若草さんが好きです」にハルナは「これでよかった!」と涙を流します。
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ここに小沢健二さんの曲「アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)」が被さる。キラキラと輝く川面とこの曲に救われます!

出演者の演技は、みなさんすばらしいです。演技映像から受ける印象とインタビュー(アドリブ)が一致しており、このことを良く示していると思います。
二階堂さんは、作品制作の言い出しっぺということもあり、作品に対する責任感が感じられる演技でした。タバコをふかし、デニムのラッパズボンでよたってる女性がこんなに優しい女性であったかと思わせるシーンには泣け、体当たり演技で一段と大きな女優になりましたね! 次作を楽しみにしています。
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