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「空飛ぶタイヤ」(2018)

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大手自動車会社が起こしたリコール隠し事件をモチーフに描いた池井戸潤さんの大ベストセラー同名小説の映画化。未読ですが、結末はわかっているしどうしようかと迷いましたが、長瀬智也さん、ディーン・フジオカさん、高橋一生さんの共演に魅かれて観ることことにしました。( ^)o(^ )
 
監督は「超高速!参勤交代」の本木克英さん。主演は長瀬智也さん、共演にディーン・フジオカ高橋一生寺脇康文深田恭子笹野高史岸部一徳佐々木蔵之介さん他とても豪華です!
 
ある日、突然起きたトレーラーの脱輪事故。整備不良を疑われた輸送会社社長・赤松徳郎(長瀬智也)、車両の欠陥に気づき、製造元である大手のホープ自動車販売部カスタマー戦略課長・沢田悠太(ディーン・フジオカ)に再調査を要求。
同じころ、ホープ銀行の本店営業本部・伊崎一亮(高橋一生)は、グループ会社であるホープ自動車の経営計画に疑問を抱き、独自の調査を開始する。
それぞれが突き止めた先にあった真実は大企業の“リコール隠し”、男たちはどう立ち向かっていくのか。正義とは何か。守るべきものは何か・・という展開。
 
観る人が、それぞれの作中人物の対場で考え、決断を下すという作品。それぞれが抱える苦難を、己の志と“少しの勇気”で、青空の下で起きた事件なら必ず解決すると行動する姿に、勇気をもらえる作品でした。
イムリーに公開された社会派エンターテイメント作品。連日のごとく報じられる公文書書き換え問題、某大学の不祥事など、もやもやが蔓延するなかで、正義が勝という結末に拍手です!
 
物語は赤松、沢田、伊崎の行動を追う群像劇で、三人が出会うシーンは少ない。そのなかで、事件が解決に向かっていくという、何が三人を結びつけているのか。“人がひとり死んでいる”という人命の重さでつながるというのがよい。そして、3人のほかに、部下、週刊誌記者、同業者、刑事などの一歩踏み出す勇気に心打たれる。

出演者みなさんの演技に、そのときどきの感情がよくでて、TVドラマで十分と思われる単調な展開の物語をしっかり支えています。お気に入りは、寺脇博文さん演じる刑事の「おれ、プライド捨てた!」と大手自動車会社常務を挑むシーンで、いいところを全部持って行くところです。() 
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物語は、
冒頭、事務所の前でキャッチボールをしている小さな運送会社「トラック赤松運送」。中では、社長・赤松が「家族を守るのが俺の役目」と言い、「整備要員を育てるために銀行に頭を下げてくる」と専務・三代直吉(笹野高志)に、あの頃の苦しかった思い出を語るシーンから始まる。

事故を知って、運転手を見舞い、現場を確認、そして被害家族の葬儀で罵られ、整備員門田駿一(阿部顕嵐)の整備不良を疑う。しかし、それが誤りであると知れば謝るという部下思いの社長。
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しかし、刑事・高幡真治(寺脇康文)から「整備不良が事故原因」と決め付けられ、悪徳業者のテッレルを張られ経営不振に追い詰められ、遂に涙するに至る。
 
妻史絵(深田恭子)に「ここが社長としての真価を問われる」と励まされ部下のため、家族のためにと、自ら事故真相を明らかにしようと踏み出す。悩み苦しみのなかで信念を曲げない長瀬さんの社長ぶりは、これまでの長瀬さんの演技にはなかったもの。役者として、すこし大きくなったなと思えます。
 
沢田に、何度電話をしても留守居で断られるが、諦めないで電話をし続けることで、本人が気づかないが、沢田の心にざわめきを起き、すこしずつ事態が変わっていく。赤松の藁にもつかまろうとする気持ちが伝わりました。

沢田は、この会社で自分の描く車を世に出したいという夢を持つ、仕事一辺倒の男。これが離婚の原因なのか、独り者。大手会社の横柄さで、赤松のクレームなどに応じる気はないが、品質保証部の課長・室井秀夫(和田聡広)から「赤松に関わるな!」と言われ、彼がこの社の技術に期待しているだけに、嫌な臭いを嗅ぎつける。
 
赤松の志が彼を動かし、同僚の車両製造部の小牧重道(ムロツヨシ)と品質保証部の係長・杉本元(中村蒼)に働きかけ、社のT(タイヤ)会議で赤松のトラックに関わるリコール隠しを検討していることを知る。
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沢田は、これを部長宛て文書で抗議し、社の姿勢を正そうとする。栄転の形で現職を離れ開発部で新車開発企画に携わるという条件で、部での最後の仕事として1億円で赤松を説得することを命ぜられる。彼はこれを飲む。
沢田役は、3人のなかではもっと難しい役だと思いましたが、ディーン・フジオカさんの佇まい、真摯さ、熱意がみごとで、役に嵌っています。
 
ホープ自動車への融資を担当する井崎は、高いレベルからホープ自動車の経営を分析しており、3年前から同社が引き起こす事故を自分なりに分析しているという冷静で切れる男。物事を多面的に見つめる癖があり、ホープ社からの融資依頼に、系列であることや人のつながりで応じることはない。

元恋人で週刊誌記者・榎本優子(小池栄子)から、「事故で、人がひとり死んでいる。何かある?」というホープ社の悪い噂を耳にする。
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彼が簡単に融資に同意しないことが、ホープ社への圧力になり、リコール体質という社の悪弊をあぶり出すことになる。
 
井崎は自分が正しいと思いながら、常に反省をするという思慮深い男。銀行員らしいですね!出番は少ないですが、この演技を、高橋さんならではの演技で魅せてくれます。

始めて赤松と沢田が会って、沢田が1億円での解決案を示し、赤松には喉から手の出る思いの金に悩む。
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しかし、四十九日の法要で被害者の夫・柚木雅史(浅利陽介)から「なんで謝る!口先だけで自分のことしか考えていない、自分の身を守りだけ。ただ歩いていただけで、あんたは人間か。家族がいないことを想像してみろ!」と言葉を投げ掛けられる。
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浅利さんの熱演でしたが、この言葉、誰かに聞かせてやりたいと思いました。( ^)o(^ ) 柚木の息子さんから亡き母への手紙を手渡される。
 
赤松は沢田を訪ね、この手紙を添えて、1億円を断り、戦うことを誓う。
 
沢田は移動した開発部で新車コンセプトを作成して部長に報告するが、無視される。これでは会社にいる意味がない。そこに関西に飛ばされていた杉本がT会議資料の記録が残されたパソコンを持ってくる。

池井戸さんの大逆転劇はこれかと、この突飛でもない展開に驚いたが、今日の財務省の次々に出てくる隠し資料をみて、この設定もありと、池井戸さんの先見眼に感服しています()
 
沢田は、人生の淵に立ち、肌で事故を知ろうと現場を訪れ、そこで赤松に会う。赤松の執念を間のあたりにし、この事故で初めて人が死んだことを実感し、赤松は大嫌いなやつだけど、“やらないといけないことがある”という連帯責任を痛感する。
 
赤松は、記者榎本が書いた記事は、市場の原理ということで公にされることはなかったが、無念な気持ちが彼女を動かし、ホープ社の該当事故リストを
赤松に譲る。
赤松はこれでポープ社の不正を暴く証拠集めを始める。そこで会った富山ロジステイック元課長・相沢寛之(佐々木倉之助)の協力で、決定的な証拠を手に入れる。ここでの佐々木さんの熱演が凄い。
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高幡刑事が、相沢の資料と沢田は提供したパソコン資料で、ホープ社常務・狩野威を追い詰める。
決して大きくはないが、それぞれの正義のつながりで、この大事件が解決するという結末。痛快でした!!
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