映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

ドラマ「あにいもうと」(2018)

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特別企画ドラマ(TBS系)。新婚の宮﨑あおいさん、今年は出演なしかと思っているところにこの作品。うれしいですね!あおいさんにとっては「ゴーイングマイ ホーム」(カンテレ・2012)以来6年ぶりの民放ドラマ出演です。どんな演技をみせてくれるかと楽しみにしていました。
 
室生犀星原作で兄と妹の複雑な情愛を描き、過去に何度も映像化されている名作。本作では、石井ふく子さんがプロデュース、山田洋次さんが脚本担当です。監督は清弘誠さん。
なんとなく古臭い感じがしなくもないですが、大きな愛にあふれたひとつの家族の物語で、家族のあり方を考えるきっかけにもなる作品です。
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主演は、宮崎あおいさんに大泉洋さん。石井さんと山田さんだから実現できたキャステングです。山田さんいわく、「再ドラマ化にあたり、この兄妹キャストは2人以外考えられない」と言い、石井さんも「おそらくTBSに入って60年になりますが、その間に(2人に)出会えなかったことを後悔した」と述懐されています。
共演者は瀧本美織・太賀・西原亜希七五三掛龍也一路真輝・シャーロット・ケイト・フォックス・笹野高史波乃久里子さんらです。
 
物語は、父で棟りょうの忍(笹野高史)の下で大工職人として働く兄の赤座伊之助(大泉洋)と、大型トラックの運転手をしている妹の桃子(宮崎あおい)を軸に、家族の愛を描くというもの。

あらすじ: 
ある日、桃子が恋人との間にできた子供を流産したと家族に打ち明ける。伊之助は、恋人のことを何一つ話そうとしない桃子に激怒し殴ってしまう。行き過ぎた愛情を迷惑に思う桃子は、翌日、家を出て行ってしまう。それから半年後、赤座家で忍の古希の祝いが開かれる。計画したのは伊之助だ。忍のお祝いは表向きの理由で、実はそれを口実に桃子を帰宅させるのが目的らしい。そのことを妹の佐知(瀧本美織)から聞かされた桃子は仕方なく帰宅することを決める。
半年ぶりに家族が顔を揃える赤座家。誰もが心待ちに桃子の帰りを待つ中、突然、桃子の恋人だった小畑裕樹(太賀)が訪ねて来て…。
 
テーマは、絆が薄くなったと言われる家族関係にあって、野性味にあふれ本能的に生きる一家、兄と妹の狂おしいほどの情愛を通して家族の在り方を見つめるというもの。ふたりが本気で喧嘩し、ぶつかり合うからこそ、互いの思いが繋がるというもの。心に刺さる言葉も多く、お互いを思いやる気持ちが伝わってきて、泣かされます。
 
見どころは、これまでの結末と異なる山田さん渾身の作品です。エンデイングが秀逸で、終わりよければ全てよしです。文句をつけるな!()
そして、今まで見たことがない宮﨑さんと大泉さんの派手な大喧嘩、この喧嘩でふたりの思いが結ばれていくところ。
ハイライトは、桃子が、結婚式にお兄ちゃんの参加をお願いするシーン。
宮﨑あおいさんの芯のある生き方、賢さと優しさがちりばめられた作品になっています。( ^)o(^ )

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喧嘩した翌朝。朝食のテーブルで、桃子(モンチ)が「兄ちゃんが顔をぶったから家を出る」と言い出し、伊之助(イノ)が「偉そうな口きくな、帰ってくるな!」と言い争う。イノが箸を投げれば、モンチが投げ返すというバトル。()
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母きく子(波乃久里子)が「喧嘩しないで!」と泣いている。

仕事に出て行く父に「身体に気をつけて」と挨拶して出て行こうとすると、父は指でモンチの顔を撫でて送る。父の愛情、寂しさがよく伝わります。
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そして半年後、ここから物語が始まります。
妹の佐知(瀧本美織)が、大学で心理療養士を目指している、兄イノの気質について説明します。まあ、今日では、それほどにめずらしい気質ということ。()
「人は集団や社会の中で、人間関係に苦しみながら大人になって行くのだが、兄はその大切な時期にまるで自分の娘のように姉を愛してしまった。自分は大人になり切れず、一人前の男としてのアイデンテイテイが確立しておらず、自立できていない。エリクソンの発達段階説によると、兄は40歳に手が届く大人でありながら、いまだ青春期、青年期なんです。」

そんなある日。イノは大工見習の三四郎七五三掛龍也)と建築現場で作業中、デザイン事務所の海外研究生パテイ(シャーロット・ケイト・フォックス)から説明攻めにされる。
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パテイはイノに気があって質問しているが、イノは全く気づかない。イノは、明るい性格で仕事はまじめ、気っぷがいい、責任感は強い。三四郎をしっかり鍛えている。しかし、女はモンチだけでいいという男です。()

同じころ、モンチは長野の某SAで食事中、休暇も取らず仕事熱心。大型トラック運転手として、化粧気もなく、“運転手らしく”なっています!あおいさん、大型免許を取っての出演です。
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そこに妹・佐和から「こんどの日曜日、父の誕生会をやるので来て!」と電話が入る。これは、お兄ちゃんがモンチと仲直りしたいために計画したという。
 
イノは、この日の作業を終えて帰宅し風呂に入り、三四郎も加えて、5人で夕食。父からイノに「嫁を貰え」という話がでる。よくしゃべるイノです。() 父は、モンチとの喧嘩の一因はこのお喋りにあるとみている?

一方、モンチは行付けの居酒屋「しま」で食事。女将(一路真輝)から、別れたモンチの恋人・小畑祐樹(大賀)が研修を終えてロンドンから戻り、訪ねてきたと言い、流産したことを伝えたという。
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これにモンチは不満顔。彼女は妊娠したが、彼のロンドン研修派遣に影響すると、このことを知らせず、身を引いたらしい。「もう終わったこと」というが、モンチには心残りがありそう。店を出て行くときの表情にでている。
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父の誕生会当日
妹・佐和が花とケーキを買って帰ると、母は祝い寿司を作っており、父はノミを研いでいて「引退の時期だ、あいつに譲る」という。
そんなおり、モンチの元カレ・小畑が訪ねてくる。これには父・忍が対応。
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小畑は、「何もしらず迷惑をかけた。このままでは自分の気持ちが収まらない」と平謝り。忍は「あんたの気持ちなどどうでもいい。帰ってくれ」と追い返す。母・きく子がお茶を進めると、小畑がお金を差し出す。が、受け取らない。きく子は「思っていた人と違う」と感じます。
小畑は、腰が低く、実直そうな人。モンチによれば「あるものみんな好きな人。会えば生ぬるい人」だという。そういう感じの人です。()

小畑が帰り始めると、ばったりとイノに出会う。イノは小畑を川原に誘い、小畑の不誠実を罵る。小畑は「知らなかった。教えてくれなかった。モンチに会いに来た」という。
「俺がどんなにモンチを可愛がったか、兄弟より仲が良かった。そんなモンチの腹に子供ができたときの気持ちは分かるか。我慢しろ!」と投げ飛ばし、殴る。
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しかし、帰り始める小畑に「その道を真っすぐ行ったら大通」と帰り道を教える。きっと殴っているとき、小畑のモンチに対する気持ちが分かったんでしょうね!

モンチは、花屋に寄って、店主で兄の同級生・咲江さん(西原亜希)から花を買って、家に着く。この時、咲江さんから離婚したという話を聞く。
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帰宅したモンチは母から小畑が来たことを聞く。「お兄ちゃんは会った?」と問い返すが、「しらない!」。母はこの時、イノが小畑に会ったことを知らなかった。
祝いの席。イノがモンチに「親父と母ちゃんに詫びしろ」という。「お兄ちゃん、会ったの!」「ちょっと、可愛がった!」。
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モンチが「スゴロク大工のへっぽこ大工!よくもやったな。弱い者虐めするような男は許せない。げんこつ一つや二つで気分が変わる女ではない!」とイノに飛び掛かる。ふたりが激しくもみ合う。母が「こんな恐ろしい喧嘩をする兄妹だったとは」と泣く。モンチの小畑への愛情がこうさせたんですね。
 
妹の佐知が、怪我したモンチの手当をしようとすると、「私はいい、お兄ちゃんの傷をみて」という。イノはモンチに殴らせ、そのことをモンチは知ったのですね!泣けます。

親父・忍が「ヤメロ」と一喝してイノを張り倒し、荒川を見に外に出る。川辺で男がトランペットで吹く映画「道」(1954)の「ジェルソミーナ」の曲。これを聞いた忍が、モンチがゼルソミーナに思えた。「悲しい女の話」、面白いですね!
追ってきて、「高校までは仲が良かったのに」と嘆くきく子に「あいつは、自分が悪者になれば、みんながモンチの味方になると思っている。
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腹を痛めた娘を可愛がる俺に似た不器用なやつなんだよ」と。高野さんと波乃さんの夫婦役、父親の威厳と母親の涙がよかったですね!
 
この日を境に、父が体調を崩し仕事を休むようになる。
トラック運転中のモンチのところに父が倒れたという知らせがくる。家に帰ると、父は床に就いている。皆を集め、イノに“ノミの箱”を渡し、親方を譲ることにする。
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が「イノが嫁を貰って、孫をつくり、抱かせてやりたい」と言ったことから、モンチは、「花屋の咲江さんはどうか」と勧める。
イノは「相手がどう思っているかが問題だ」と言い、モンチは彼女から聞いたと「昔、高校のころアプローチしたけど駄目だった」という咲江さんの話を、何度も何度も「怒らないで」と断って話すと、イノがまんざらではないという顔をする。

早速、咲江さんを招いて“うな重”を一緒に食べることにする。一体、あの大喧嘩はなんだったのか? 喧嘩して、イノはモンチが小畑を深く愛していることの気付いたのでしょう!
 
モンチが、居酒屋「しま」にやってくると、そこに小畑がいる。小畑がモンチの側に座り直し「申し訳ない。このままでは死にきれない。腹に子がいたことを知らなかった」と謝り、イノに殴られたことを「生まれて初めて殴られた。映画のなかにいるみたいだった。
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目のなかに星が見えた。殴られるじゃないんだ、あの体全体から妹への愛情が溢れているのが嬉しかった。殴られるのを懸命に耐えて、こんなに愛し合う兄弟がいるんだなと感動した。これを言いたくて、追っかけ待ち伏せし、悪かった」と謝り、雨のなかを帰り始める。

モンチはこの話のなかに、兄の大きな愛を感じるとともに、話した小畑が愛おしくなり、「小降りになるまで私のアパートで雨宿りしたら、夜は長いよ!」と声を掛ける。( ^)o(^)n 
モンチは家族のこと、とりわけ兄のこと、将来のことをしっかり話したでしょうね!
 
そして1年後。
父はなくなり、モンチは仏壇の父に挨拶して結婚式場に向かおうとするが、お兄ちゃんが、「先方は学者でインテリで、こんな小さな料理屋での結婚式なんどに行けるか!」と言い出す。その頑固さに、母・きく子は「家で留守番していて」と言い、「そうする」とイノ。
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モンチは兄の前に座り「来て欲しい、家族席に座っているだけでいい。小畑さんのお父さんがしゃべったあと、お兄ちゃんが母と並んで、一言だけ、出来の悪い私の妹モンチを可愛がってくださいと挨拶してほしかった」と涙を見せて訴える。イノの頬に涙が流れるが、行くと返事しない。モンチはそっと兄の肩に手をおき出かける。
 
残されたイノが、仏前の父に「俺にもプライドがある。あんなインテリに、可愛がった妹をやるのに、行けるわけがない。絶対に行かない」と涙を流すと、「モンチの幸せはなんだ」と(親父の)声がする。
 
披露宴の最後の挨拶は、お兄ちゃん。本日は・・であとが続かず、お姉ちゃんが、小畑さんが、そして参加者全員が泣き出した。大変、感動的な式だった」と妹・佐知のナレーション。秀逸なエンデイングで、一杯泣けました。すばらしいドラマでした。思いを伝えることの大切さ、家族の暖かさに溢れた物語でした。
 
あおいさんは、この出演で、しばらくお休みになりますね。再びお会いできる日を楽しみにしています。
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