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「億男」(2018)

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原作は人気プロデューサー川村元気さんの同名小説で「本屋大賞2015」にノミネートされた同名作品。
宝くじで3億円を当てた図書館司書の一男を主人公に、人間にとってお金とは何か、幸せとは何かを描くマネー・エンタテインメント作品です。
監督は「るろうに剣心」「3月のライオン」の大友啓史さん。主演は佐藤健さんと高橋一生さん。共演は黒木華池田エライザ沢尻エリカ北村一輝藤原竜也さんらとても豪華です。
 
原作よりわかりやすく、映像だから伝わるリアル感と映像美で見せてくれます! 
 
あらすじ:
失踪した兄がつくった3000万円の借金返済に追われ、妻子にも逃げられてしまった図書館司書の一男(佐藤健)は、幸運にも宝くじが当たって3億円の大金を手にする。
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しかしネットの記事で高額当選者たちの悲惨な末路を目の当たりにして恐ろしくなり、大学時代の親友で今は起業して億万長者の九十九(高橋一生)に相談することにする。
ところが、九十九と一緒に豪遊した翌朝、一男が目を覚ますと、九十九は3億円とともに消えていた。途方に暮れた一男は、九十九の手がかりを求めて、かって彼とともに働いていた億男と呼ばれる億万長者たちを訪ね歩く。
そこで見る彼らの生き方に、金とは一体何なのか、金があれば幸せになれるのかと疑問を抱き、何としても九十九に会って問いただしたいと思っているところに彼が現れる。そこで知る、真の金の価値、金との付き合い方というストーリー。
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冒頭のモロッコの砂漠の夕日にたたずむ一男と九十九。
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男女が踊り飲む乱痴気騒ぎ。これにはびっくりでした。
会場(九十九の部屋)に入ってくる一男が佐藤さんとは気づかず、金に苦しむ疲れ顔にびっくり。
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会場にワインを2本持ちこんで飲んだそうですが、飲みっぷりがよかった。() ここで撒いた紙幣が500万円、実物とのこと。
 
なぜモロッコの砂漠なのか。一男が飲み過ぎて寝ている間に、3億円が消え、九十九が一体どんなやつかとミステリアス。これがラスト近くで明かされ、彼の吐くセリフに感動させられます。
 
一男が九十九を訪ね、どう3億円を使うかと、銀行から引き出した3億円をバックから引き出し床に並べ、重量が30Kgだというシーンは実感が持てました!
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酔いが冷め、昨夜一緒に飲んだ億男好きでパーテイ好きの女あきら(池田エライザ)から、九十九の居場所を突き止めようと、かって会社“バイカム”の共同経営者三人を訪ねます。
ここで現れる三人が、とんでもない個性の主たちで、とても面白い。
 
脚本の渡辺辰城さんは、本作が初めての脚本だそうですが、DeNAの執行役人をやっておられたとのこと。このことが、「バイカム」という会社がリアルに存在していると思え、リアル!に描こうとする監督の苦労が伝わってきます!
 
最初に会った男・百瀬栄一(北村一輝)。元バイカムではスーパーエンジニア。
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現在が3つの会社をもつ百万長者。しかし、毎日競馬場で金を転がし、あやしげな関西弁をあやつるうさん臭い男。() 北村さんだと分からなかった!
金のない一男に、金を貸して競馬に参加させる。一度は1億円を手にするが、再度の挑戦で負け、ゼロになる。「金は行ったり来たりだけだ。金で家族が元に戻るなど幻想」、「俺がいたからあいつが能力発揮できた」という。いま、あなたの能力はどうなったのと尋ねたいです!
 
次に、元バイカムの最高財務責任者であった千住清人藤原竜也)会う。
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宗教家のような風体で、巧みな話術で「必ず夢はかなえられる。大きな夢をかなえるには諸君自体が解放される必要がある。こんな紙切れはすてろ!」と一万円札を捨てさせる。() 
千住役・藤原さんのぶっとんだ演技が見もの。「捨てろ!捨てろ!」コールに押されて、捨てたくなります!()
これが億万長者のやることですか?() 彼の考え方はよくわからなかった!
しかし、九十九について「彼の意思に反して会社を潰して金にしたことを後悔している」という。彼の今は、九十九への贖罪かもしれない。
 
最後に会ったのが元バイカム広報IR担当だった安田十和子(沢尻エリカ)。10億円を手にして現在は公営住宅に住む専業主婦。
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エリカさん、「ヘルタースケルター」(2012)と違って、スッピン登場です。疲労感が一杯で、これにもおどろきです。
「何でも金で解決するのが嫌になった」と言い、夫に隠して10億円を襖や床下、押し入れに隠している。しかし幸せそうには見えない。
九十九について、「バイカルの夢は金では買えない」と言い、これには執着が見える。そして「九十九は、あなたとモロッコ旅行でこの仕事を見つけたと言っていた」と語ります。
 
一男と九十九のモロッコ旅行の回想。
落研のふたりがモロッコ旅行に出かける。迷路のような路地で道案内を申し出た男の子がチップを要求するが、ガンとして拒否。その反面、インテリア店で熱を出した一男がよろめいて皿を数枚割ったことに346千円を払う。回復した一男が「高い!」と言えば、「一男の命が大切だ!」と。
何が大切なのか、金の使い方、金の値段はその人が決めることを教えてくれます!
そして、ネットを利用してお金をやりとりするサービス会社を創るという。
 
砂漠の砂丘の上で、九十九が一男に落語「芝浜」を語る。緊張すると吃音になる九十九が、やわらかく語る落語がいい!高橋さんの演技力です。
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地の端てで友情を確認する意義あるシーン。鳥取砂丘で撮ったら意味がない。ここがお金の使いどころ!()
 
浜は、仕事嫌いな魚屋が大金の入った財布を拾い大騒ぎをするのを見かねた女房がそれを隠して夢だと思わせ、亭主を立ち直をさせるという小話。この落語が、この物語のモチーフになっていることが明かされ、唖然とします! しかし、良いはなしですね!
 
一男は、娘・まどかの年一度のバレー発表会に別居中の妻万佐子(黒木華)とともに参加。
黒木さんは、一男との出会いから離婚までを、出番わずかで、演じますが存在感を残しています。
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妻からは正式に離婚届を求められる。「3億円が入れば、謝金を返済し、家が作れ、まどかのバレー練習も続けられる。幸せになれる」と諭すが、「あんたはお金のことで人が変わった」と言われ、受け入れられない。
 
3000万円の借金返済で、金に執着し過ぎ、まどかのバレーを続ける経費が出せないと断ったことが別れることになった要因。
 
電車で、妻との馴れ初め、幸せだったころを思い出していると、九十九がやってきて3億円の入ったバックを返す。
「どういうことだ」と問うと、
「この金、いまどう見える」
「全く別物だ。これですべて解決すると思ったが、本当に大切なものは取り返せない。金の正体は分かったのか?」
「・・・・・・・」
「九十九、バイカムではいろいろあったのでは?」
「彼らはすっかり変わった。金は人を変える。しかし、君は金が消えたのに俺を信じてくれていた。ありがとう」と言い、電車を降りて行く。
 
一男は、まどかの念願の自転車を買い、「あの金を使った最初の買い物。気に入るかどうかはわかりませんが」と文を付けて届けます。
 
あ金とは何か、家族と信頼できる友がいて、慎ましく生きられれば十分。その結末は平凡なものでしたが、モロッコの砂漠やキャストの熱演技で楽しめました。
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                 主題歌