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「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018)

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奇妙なタイトルと予告編での大泉さんの“つんでれ”演技に誘われて観ることにしました。「こんな夜中にバナナか」、これがちっとも奇妙でなくなるという作品でした。( ^)o(^ )
原作は渡辺一史さんの著書「こんな夜更けにバナナかよ筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」。未読です。
監督は前田哲さん。主演は大泉洋さん、共演に高畑充希三浦春馬・荻原聖人・綾戸智恵さんらを配しています。
筋ジストロフィーにかかりながらも自らの夢や欲に素直に生き、皆に愛され続けた実在の人物・鹿野靖明さんと、彼を支えながらともに生きたボランティアの人々や家族の姿を描いた人間ドラマ。
 あらすじ(ねたばれ):
茶店で働く美咲が、田中の誘いで鹿野邸を訪ねると、玄関に数十足の靴が散らばっている。鹿野が秒単位で「ラーメン、ふうして!」「水ちょうだい」「今日は風呂!」と喋る声が聞こえる。彼の側には砂時計が置いてある。
身体が利かないから全部ボラに頼らねばならず、手足を使うようにしゃべる。明日の命にも保証はないだけに、やりたいことは全部やりたがる。この鹿野の気持ちが分かるかどうかが、このボラ活動の決め手でしょうか。
美咲が顔を出すと「カラオケに行こう」。ボラの人たちが帰って、田中と美咲が当直。午前2時に「バナナが食べたい」と言い出す。美咲が街にでて、苦労して開いている店を探し買ってくるが、「なんでこの時間にこんなことを」と頭にくる。「ぐっとくる」と鹿野さん。
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「そんなことは承知している。みんな、多くの人に迷惑を掛けながら生きているんだよ!」と。
ボラのチーフ高村(荻原聖人)の指示で、「食事の支援」「床ずれ」「ひげそり」「食事」「部屋の掃除」等々介護の手伝いを覚える。
ところは一方的な鹿野の要求に耐えられず、「何様、来てやってるのに」と言ったもんだから、「二度と来るな」と追い出される。ボラに“来てやってる”はない!
鹿野は田中に「反省している。おれのことも理解してほしい。君に恋してしまった」という美咲へのラブレターを預けます。() 
ラブレターを受け取った美咲が「ボラって何?」と田中に聞くと、「自分の意思を試すこと」という。
美咲が「彼女を差し出すのがボラなの!」と怒るが、田中の頼みなら仕方がないと鹿野邸に出向くことにする。
こんなときに行われたバーベキューハイクで、鹿野が食べ過ぎて腹を壊し、トイレを探す。
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失敗でお漏らし! 美咲が「ウンチぐらいで!私にも経験がある」と嘘をつき平然と処理する。これには鹿野が男泣きです。美咲は真っすぐで嘘のない嘘をつける女性です。
シンポジューム「障碍者の自立生活を考える」での鹿野。
「夢はアメリカに行き、アメリカの自立センターを見たい。自立生活は誰かの助けを借りなければできない。思い切って力を借りる勇気が必要だ」と主張する。彼がボランテアに頼るのは、自宅での自立は家族に大きな負担をかけ家族の自由を奪うという。母親がこの病にどれほどの責任(関係ないが)を感じているかを知っていてのこの発言。
母親が顔を見せにきても怒って会いません。( ;∀;) 大雑把な人に見えて、実はとても繊細で、母親のために嘘がつくんです。おそらくこれもボラに好かれる理由でしょう。
ある日、デートで、美咲は高野から「親に会わせたい」と言われ、「教育大学は嘘!先生になりたいというのは本当」と言ったとたんに冷たくなった高野を見て失望する。美咲は嘘をつかない。高野は見栄で付き合っていたのか!
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美咲がこの話をそれとなく鹿野にすると「その嘘を本当にすればいい。俺なんか、一杯嘘ついてるよ!」という。この言葉が美咲にはぐっと来たようだ。
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鹿野は、全てを人に頼らねばならないから、嘘を言えない。冗談で騙しはするが、そこに嘘はない。本音を晒す人です! 鹿野は大学受験資料を美咲に贈ります。
 
美咲は喫茶店の仲間に「田中より鹿野さんの方がしっくりくる」と告白する。
 
鹿野の部屋で受験勉強を始め、本棚を見ると大人のビデオがある。なんでこんなものが必要なのかと聞くと、「海綿体だからそこは関係ないんだ」という。()
「なぜそんなこと聞く。普通の男ならここは抱き寄せるところ」とそっと手を握ってくる。美咲はそっと鹿野を抱いてやる。
美咲は、空気が読める人、鹿野のために嘘がつける。ここに田中が顔をだしたのがまずかった。
 
この件で、美咲は鹿野のところには行かないことにした。運悪くボラが不在の僅かな時間に、鹿野がベッドから落ちて入院するはめに。
 
検査の結果、炭素濃度が高いので人工呼吸器をつけると担当医(原田美枝子)がいうが、声が出なくなるのは困ると鹿野が拒否。
 
田中は父親(佐藤浩市)から、ボラをすることより病院を継ぐことを考えろと叱責されている。この田中、
ここは出番と、親父に頼み込み、人工呼吸器によらない治療ができる父の病院に入院させる。しかし、鹿野は「ここでは英検2級の受験勉強ができない」と無断退院。田中は、面目まるつぶれになり、ボラに自信を無くしてしまう。鹿野の生甲斐は何かと考えられない、親切なようですべてが自分の都合だ!
 
鹿野は「助けてくれ!」という事態に陥り担当医のところで連れ込まれ、手術。人工呼吸器を着けることになる。
美咲が「人工呼吸器をつけても話せる方法」という雑誌記事を見つけ、これを担当医には内緒でやってみる。鹿野が必死に訓練をして、話せるようになる。人工呼吸器の痰の吸引も、禁じられているが、ボラはやってしまう。これがボラの力です。
のちに法律で、看護師でなくても講習を受けたものは実施できることになる。
ここからの自宅での自立はボラでなければできない。「鹿野さんの命を預かる」と、ボラたちが家族になっていく。
 
田中は「鹿野さんのような生き方はできない。自分のことばかり考えている。偽善者だ。医師になっても人と向かえない」と医者になることを諦める。
 
これを知った鹿野が大学に田中を訪ね、「生きるために何が必要か、友人だろうが、本音で話せ。正直に生きているか?」と説得にあたった。
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しかし彼は「振り回される側のことも考えてください」と逃げ回る。田中は自分の殻に閉じこもったままだった。
 
鹿野は退院祝賀パーテイで、「12年前に自立生活を始めた。毎日が闘いで、沢山喧嘩し傷つけあった。本気で付き合ったからこそ理解し私のことも知ってもらった。こうして生きているのは一秒とも欠かさず僕の側にいてくれたことです。本当にありがとうございました」と挨拶。( ;∀;)
 
美咲のテーブルにやってきて「ふたりだけのプロポーズはできないから、ここでする」と指輪を差し出し求婚します。参加者が驚いている。
美咲は「ごめんなさい。私には好きな人がいて、いまでも忘れられない。受け取れません」と断った。これに鹿野は微笑む。美咲は本音でぶつかっていく。
 
今のうちにやれることをやっておこうと鹿野とボラメンバーは美瑛への旅に出ることにする。宿で鹿野は倒れる。知らせが美咲と田中に伝えられ、ふたりは鹿野の元に馳せ参じますが、なんと鹿野が仕組んだ罠・嘘でした!
「田中、美咲ちゃんの気持ちに気付け」
「自分の気持ちに正直に生きてみます。医者になります」
ふたりがボラで得たものは、美咲は教員になるきっかけを、田中はここで自分の殻を開放し、医者になるという覚悟を決めるきっかけを得たのでした。
 
鹿野さんの口は悪いが誠実で前向きな生き方は、ボラの皆さんには自分を見直す糧となり、お互いが信じ合い大きな家族になっていました。
感想: 
テーマは、鹿野さんはとても純粋で面白い人だけど、おれは自由に生きる権利があると主張し、周囲に迷惑を垂れ流す。しかし、それでも鹿野さんの周りにはいつも大勢のボランティアが集まって楽しくやっている。何故この関係がなりたつのかということです。
この関係とは、人と人が付き合う際に、何が大切かという普遍的なことを問うています。秀作です!
体で動は手と首だけの鹿野(大泉洋)さん。誰もが彼の人間的な魅力の虜になっていた。そんなボランテイア(ボラ)に医大生の田中(三浦春馬と田中の恋人・美咲(高畑充希が加わり、鹿野さんの生き様とボラとの日常生活が、またこのボラ活動を通じて、田中と美咲がどう成長するか、涙あり、ユーモアありで描かれ、決して難病物にはなっておらず、正月らしい作品になっています。( ^)o(^ )
鹿野さんはよく人を騙すんです。観ている我々を騙しますから、しかしこの嘘に泣かされます。( ^)o(^ )
鹿野さんを演じる大泉さん。口の達者な大泉さんには適役でした。今回は目の演技が加わり、しっかり泣かせてくれました。
高畑充希ちゃん、ちっちゃいけれど、真っすぐで大きな心をもつ美咲を等身大に自然に演じてくれました。
特筆すべきは鹿野さんの母親・光枝を演じた綾戸智恵さん。このキャステイングは憎い、説得力のある演技でした。( ^)o(^ )
高度障碍者と健常者という関係ではなく、人と人との関係で結ばれる、壁を取り去ことがいかに大切かということがしっかり説かれていました。( ^)o(^ )
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