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「十二人の死にたい子どもたち」(2019)

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原作が冲方丁さんの同名小説、監督は堤幸彦さん、そして杉咲花さん出演ということで観ることにしました。原作は未読です。( ^)o(^ )
タイトルは不気味ですが、とてもミステリアスな物語で楽しめ、暗くなることなく、むしろラストシーンは清々しい気分にしてくれる、
若い人の自殺防止への示唆に富んだ作品で、終わると泣いてる方がいて、訴えるところのある作品です。
 
安楽死を求めて廃病院に集まった高校生の男女12人が、みんなで楽に死ねると思っていたら、目の前に横たわる13人目の死体を発見。この中に殺人者がいるのではと疑心暗鬼に陥り、自らの潔白主張のため、ここにやってきた理由を語り、死を望む自分と対峙することになるという物語。
 
 
物語は、現場が病院内で、そのほとんどを地下の密室内の会話劇になります。
テーマは「なぜ死ななければならないか」。退屈するのではと思われますが全く心配なしです。物語は、死体が何故この密室にあるかの解明が主体で、その中で死を望む理由が語られるからです。
12人もの男女を覚えられるのかと心配しましたが、実は数人しか知らなかったのですが、くっきりした個性のキャラクター、個性にあったファッションと工夫がなされ、見間違えることがありません。
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脚本は演劇界で活躍されている倉持裕さん。すばらしいです。
 
そして撮影は多重カメラによる長回しで、40分にわたるものもあるという、演者の表情を的確に追い、緊張感があります。
 
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冒頭、タイトルまでの導入のしかたがとても面白い。ズルズルという物を引きずる音。廃病院にやってくる参加者。何事かが病院内で起こっているラッシュ映像。場所も時刻も繋がっていないが、これからの物語の進展に伴いれらが繋がってくるという秀逸なオープニングです。
 
1200からの集会の開始、定刻に全員が集まったが、なぜかそこにひとりの死体が横たわっている。
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「信用できないものとは一緒に死ねない」「犯罪の可能性がある」という反対意見で、12人全員一致で死を選ぶという集会の趣旨にしたがい、先ずはこの死体の謎を解くことにします。
全員全員一致になるまで皆で話し合うという設定は、「十二人の怒れる男」(1959)にあります。集団で安楽死するか否かをこの考え方によるというのは面白い発想だと思います。しかし、結果が分かってしまいます。( ^)o(^ ) 
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どう話合いが進展するか。集の主催者は1番(札)サトシ(高杉真宙)ですが、ほとんど表面で出て来ず、ラストでしっかりと役割を果たします。このあたりうまい設定です。
話合いは5番シンジロウ(新田真剣佑)が死体の謎を推理していきます。彼はガンですでに死の世界にあり、冷静で客観的にこの事件を観ることができる立場にあり、うまい設定です。演じる真剣佑さんも、よく雰囲気が出ていました!
 
死体がどのようにしてこの密室にあるかを解明するため死体のそばにある車椅子、無くなっている靴を手掛かりに病院内を点検して、事件を追っていく。特に各人がこの病院に集まってきたときの動線が問題になってきます。
 
犯行の痕跡・論議のなかに、不可解なことが出てきて、自分が犯人と疑われるのではないかと疑心暗鬼に陥り、自分の潔白を示すように死にたい理由を語ります。
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各人の死にたい理由は、
2番ケンイチ(浜野右登):“うざい性格”へのいじめ。 3番ミツエ(吉川琴音):ミュージシャンの死による厭世感。4番リョウ(橋本環奈):女優、自分の意志を貫くため。6番メイコ(黒島結菜):父親への不満。7番アンリ(杉咲花):よくわからない、ラストで明かされます。8タカヒロ萩原利久):吃音障害による厭世感。9番ノブオ(北村匠海):過去の事件にまつわる厭世感。10番セイゴ(坂東龍沙):母親への反感。 11番マイ(吉川愛):変なオヤジとの交際で病気を貰った() 12番ユキ(竹内愛紗):事故後遺症への責任。
 
この中で、本当に死にたいと思える人は数人です。実にその理由は曖昧、これが実態なのではないでしょうか。ここでは詳しい理由は描かれませんが、観る側が最近の報道などで補足することで十分。ドラマのテーマに良く合っていると思います。
 
参集者は、議論で死にたい理由が自分では絶対的なものだと思ったが、人によってはそうでないことに気付いていきます。
 
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死ぬほどの理由があるのかとの声が挙がり、「安楽死中止」を評決することになる。
次々と手があがりますが、最後まで手を挙げなかった7番メイコ:黒島さんがポロと涙を見せて手を挙げます。この涙こそが、死にたい大きな理由だったように思います。うまい演技でした。
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死にたい人を演じるなんて、とても難しい演技だっただろうと思います。皆さんの演技はしっかり伝わりました。よかったと思います。
 
死を選択する前に、一人で抱え込まないで誰かに打ち明けてみませんか。今の時代に求められる作品でした。
追記:エンドロールに謎解きがあります。( ^)o(^ )
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資料 20190129
「十二人の死にたい子どもたち」3日間で興収3億円超え!20億円突破も視野