「結果が全て」の中堅メーカーを舞台に、ひとつのパワハラ騒動を巡る不可解な人事が発端となり、会社の不祥事が徐々に浮かび上がり、その対応、責任の取り方を描くというもの。
現在日本の大きな社会問題に直結する企業の不正隠しを取り上げ、「働く事」の正義を問い、日本企業の体質に迫るという、テーマ性の高い企業エンタテイメント作品になっています。
結末は、毎日のように報じられるこの種不祥事に、大声で鉄拳をくれているようで痛快な気分で観ました。ちょっと大げさな!という人がいるかもしれませんが・・( ^)o(^ )
キャストは、香川照之・及川光博・片岡愛之助・北大路欣也・役所広司さんら福澤さんの池井戸ドラマ常連出演者さんが大挙して出演です。( ^)o(^ ) TVドラマと異なって、どのような演技をするかも楽しみです。
そして、派手な顔演技の出来る人たちが、ドアップでスクリーンに登場し、語ることのない心情を分かり易く観せてくれます。(笑)
物語の場は、会議室。スクリーン一杯に映し出される会議室に圧倒され、観る人をしてここから逃げだすことなど考えられず、会社のいうなりになる会社人間にしてくれます!(笑)
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物語は、東京建電社の営業部長北川(香川照之)が主催する定例会議から始まります。部長が登場する前から、部屋が緊張で静まり返り、登場と同時に立ち上がり挨拶。まるで軍隊です。後方には親会社ゼノックス社の常務・梨田(鹿賀丈史)がいてにらみを利かしている。
梨田の顔色を伺いながら、月間販売目標を吊り上げ「売って、売って、売りまくれ!」と部長が怒号を飛ばす。鹿賀さんと香川さんのド迫力の顔をみれば、社員が怯えていることが分かります。(笑) この“怯え”が、会社にもの申せない体質をつくり、とんでもない会社になっていくことを暗示しています。
これを聞いたか聞かないか、大きないびきが聞こえる。たまりかねた営業1課長・坂戸(片岡愛之助)、営業部のエース課長が、この社員、通称「いねむり八角」(野村萬斎)を起こし、激しく叱責する。本人は、皆の笑いものになったことで、パワハラで坂戸課長を訴えでる。「訴えるなら北川だろうが」という声が聞こえる。(笑)
なぜ訴え出たか? これを観る側に任せ、物語はテンポよく進み、すべては最後の会議で種明かしされる。この疾走感がいい。
訴えがすんなり通り、後任に凡才の営業2課長・原島(及川道博)が就任したことで、この人事に疑問をもつ者が現れる。
ここから、情報の集まり易い優衣と原島がタッグを組み社内秘密に迫るという物語の進め方は、原作がオムニバス形式だと言いますから、うまい演出です。
ゼノックス社常務・梨田からゼノックス製の型落ち商品を一方的に押し付けられ、社長・宮野(橋爪功)はこれをすんなりと受け入れる。
このようにして、親会社ゼノックズとの主従関係、社内各課・社員相互間の妬みなど東京建電の体質、自己の主張というものを持たない、異論を吐く者は排除されてしまう体質が浮き彫りにされます。
新田と佐野が社内秘密解明に動いたことで左遷させられ、坂戸の課長解任も含めて、三人の身上変化に八角が関係していると、新田の調べ上げた接待経費、佐野のクレイムリストも加え、原島・優衣が八角を追い会社の不祥事隠ぺいに迫っていく。
ここからが、本作の核心部。ゼノックス社長徳山(北大路欣也)が主催する御前会議において、不祥事隠ぺいの経緯、会社の隠ぺい体質が論ぜられる。
さながら法廷劇を見るようで、濃い顔芸のみなさんの熱演を観ることになります。ここでの萬斎さんの語りに注目、何故萬斎さんでなければならないのかが分かります。( ^)o(^ )
八角は顧問弁護士・加瀬(役所広司)から、二度と不祥事を起こさないための意見を求められ、「この世から不正はなくならない。日本では自分の命よりも会社の命の方が大切だと思っているから」と返事し、この会社にいて居眠りを続けることにする。この“おち”が味わい深いですね。( ^)o(^ )
八角の元妻の淑子(吉田羊)が「会社ってむずかしいね!」と言いますが、その通りで、この問題は難しいです。
皆が少しずつ勇気を出して、大きな勇気にすることが求められるように思います!
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主題歌、ボブ・ディランの「メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ」