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「ファーストマン」(2019)

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ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督&主演ライアン・ゴズリングのコンビが再びタッグを組み、人類で初めて月面に足跡を残した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を描いたドラマ。これはもう見逃せないと出かけました。( ^)o(^ )
 
脚本は「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」のジョシュ・シンガー。共演にクレア・フォイ、ジェイソン・クラークカイル・チャンドラー、コリー・ストール、パトリック・フエジットらが参加です。
今年のアカデミー賞には、美術賞、視聴効果賞、録音賞、音響賞の4部門にノミネイトされています。
 
何をいまさらアームストロングの物語かと思うのですが、今年は彼が月面に立って50年という節目の年。彼は月に着陸した際、「人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である」という名言を残していますが、実は極めて控えめで自分を語る人ではなかった。そこで、厳しい訓練、家族そして宇宙をめざした仲間の視点から、アメリカ色を脱色して、改めて宇宙飛行士としてのニールの真の姿・偉業を問うというもの。
 
ニールは未知への強い好奇心をもつ人。「訓練で失敗して成功を掴む」という堅固な考えの持ち主で、“失敗を恐れない強い使命感”こそが彼を偉人たらしめたと思います。そして、そんな彼を支えた続けた家族に涙しました。
 
月に立ったニールの想いは、長い訓練の苦しみと多くの仲間の犠牲で、万歳でなく、亡くなった仲間・失った娘への哀悼と、世界に向けた宇宙への夢だったように思います。あの名言が、すこし変わって見えてきました!!
 
物語は、1961年のX-15のテストパイロットの時代から、ジョミニ計画参加のためにNASAに入り、苛烈な訓練を経て、月面に立つまでが描かれています。
 
その大半は、熾烈な息の詰まるような訓練。宇宙船の内部で活動するニールに付き合うことになります。これまでの宇宙ものにない試み。宇宙船を外部から写すことはほとんどない。
閉塞した宇宙船内の描写は、閉鎖恐怖症のわたしにはかなり厳しい。() 発射時の衝撃をカメラを大きくぶらして撮っていて、宇宙酔いになります。()
 
ニールとともに宇宙船に乗り、月に降り立つ。そこは静寂の白黒の世界、とても美しい映像で出来上がっています。
音楽や雑音の音響効果で、臨場感を高めてくれます。これは「ラ・ラ・ランド」の監督ですから、すばらしい仕上がりでした。( ^)o(^ )
 
ニールは無口で表情を表に出さない。冷静・沈着で愚直に月に着陸する使命を突き通す。しかし、苦難のなかに光を見つけたときの笑み、ひとりで仲間の死を悼み涙する姿は涙を誘います。これをライアン・ゴズリングが見事に演じてくれます。
 
そして、クレア・フォイが、本当は普通の生活をしたかったが、ニールの変わった夢を懸命に支えるが、時に癇癪を起すという演技を見事に演じています。ニールが月に飛び立つときに見せる表情と帰還した彼とガラス越しに笑みを交わすシーンには、のちのふたりの人生選択が出ていて、とてもうまい演技でした。
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冒頭、1961年、“ガタガタ“という音。実験機X-15がはげしく揺れ衝撃波の壁をやぶり、超音速飛行での機体と人体に及ぼす影響を調査している。ちらっと青い宇宙を覘くという無謀操縦、一時機体のコントロールを失うが無事着陸。
「良い技術者だ」という声がある反面「処分すべきだ」という意見もある。ニールは航空技術者として未知の領域に強い好奇心を持っていた。
一方、家庭では、試験データーの整理を優先しながら脳腫瘍で苦しみ長女カレンを労わっていたが遂に亡くなってしまう。彼は、カレンに十分尽くしてやれなかったことに涙し、これをバネに、宇宙への夢にのめり込んでいく。
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1962年、宇宙開発競走で大きく水を開けられて米国は、月に行くことを計画する。その一環として、ジェミニ計画パイロット募集に応募する。
試験官の質問に「X-15試験から、この計画はもっと先に進めておくべきだった」と月に行くことに強い意思を表す
試験官の「娘さんは気の毒だった」には「影響を与えないと思うのは難しい」とカレンへの想いを口にした。
 
妻ジャネットは「新たな出発」と喜びますが、テストパイロット以上に過酷な仕事だとは思わなかったでしょう。家族はヒューストンに異動し、選ばれた宇宙飛行士らと家族のような交わりの生活が始まる。
 
1964、本格的な訓練が始まる。宇宙船がコントロールを失い回転運動しても正常に操作できるよう三軸回転体験訓練がはじまる。ニールは失神するし、吐く。このシーンはきつかったですね!
そして、サターンロケットの講義。ニールは家に戻ってもジャネットにロケットの話。「なかり面白そうね」と笑うジャネット。ふたりはダンスを久しぶりに楽しむ。
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1965ソ連が宇宙で船外活動に成功したと伝わり、訓練は一層厳しくなって行く。

ニールは隊長のデイーク・ストレイン(カイル・チャンドラ)からジェミニ8号の船長を命じられたが、その任務から外れた同僚のエリオット(パトリック・フュシット)が訓練機事故で亡くなる。これにニールは激しく落ち込む。以後、彼は多くの訓練で亡くなった仲間を背負って、月の土を踏むことを目指す。妻のジャネットはこんなニールに「彼は苦しんでいる」と寄り添う。
 
1996.3月、ニールとデイヴィット・スコット(クリストファー・アボット)が先に打ちあがられた人工衛星アゼナとドッキングし宇宙遊泳するという訓練が始まる。狭い宇宙船に乗り込み手を縛り重い扉が締められ、暗黒の室内で自分の呼吸音しか聞こえずリフトアップされるシーンには、ちょっといたたまれない気分になります。そこに蠅が一匹迷い込んでいることにホットです!
映し出されるのは船内のふたりと、計器のみ。激しい揺れに見舞われる。ドッキングに成功して、地上コントロール室は沸き、ニールはめったに見せない笑顔を見せます。しかし、衛星船がコントロールを失い回転し始める。訓練で経験したとおりの異常事態の発生。ニールは冷静に対処するが止まらない。ニールはこのとき死の淵を見るという体験をした。
遂に、ドッキングを解いて、起動修正して地上にみごとに帰還する。彼の適切な処置でアポロ計画へと移行することになった。
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妻ジャネットは、NSSAから船内会話が伝えられる仕組みになっており、突然の無線停止に、何があったかと涙を流し、遂にNASAに出向き「回線を直して!私が庭から話す」と毒つく。彼女の神経がずたずたにされていくさまは痛々しい。

宇宙遊泳の失敗は、世間から叩かれ、計画に遅れがでる。さらに、宇宙計画反対運動が激しくなる。ニールはこの対策のためにホワイトハウスに派遣されるが、アポロ計画の船長に指名されたエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)が訓練中アポロの内線電源の発火事故でなくなり、ニールはアポロの船長を務めることになる。

月に飛び立つ直前、月運搬船の着陸訓練に失敗。大爆発を起こすがパラシュートで脱出してことなきを得るが、大怪我。これを決して明かすことなく目標にまい進。
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月に飛び立つ直前の記者会見でも、月に立つファーストマンになることを聞かれても、無言。私物に何を持っていくか質問にたったひとこと「予備燃料が欲しい」。
 
出発前夜、丁寧に身辺整理するニールに気付いたジャネットは、不安を隠せない。子供に説明して欲しいと子供を起こし、彼の口から「リスクはあるが戻る」と不器用な返事。子供たちが寂しそうに手を差し出した。これ以降、ニールが帰還するまで家族の状況は描かれない。
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いよいよアポロ11に乗り込み月への旅に。ここではジャエミ8と違って、宇宙船の内部も広く、すべてがしっかり準備された感じ。もっとも興味あるシーンがと思うのですが、実は短い。これまでの物語に、すべてを費やしたという感じ。訓練こそがアポロ計画成功の要因であったということを示しているようです。
 
アポロはほぼ順調に月に接近、月着陸用の小型運搬船に乗り移ってトラブルが発生するが、燃料ぎりぎりのところで着陸点を選定し、着陸できた。
 
全くの静寂のなかで、淡々と作業を実施。ここに星条旗を立てるシーンも、TV中継で観る市民の姿もない。
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なすべき作業を終えたニールは亡くしたカレンが身に着けていたブレスレットをクレーターに投げ、哀悼して帰還の旅に就く。
 
帰還したニールは、隔離室でやってきた妻ジャネットに会う。ふたりはガラス越に手を重ね微笑むのでした。
 
この作品は、「ラ・ラ・ランド」より先に計画されていたと言い、「セッション」に次ぐ、男くさい、会話の少ない、斬新な発想と映像で見せるチャゼル監督らしい作品でした。すばらしい!!
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