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「ROMA ローマ」(2018)

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91アカデミー賞で、最多10部門にノミネートされ、監督・撮影・外国語映画賞3部門の受賞作。日本ではNetflix配信のみでしたが劇場公開となり、さっそく足を運びました。
監督は「ゼロ・グラビティ」のアルフォンソ・キュアロン。政治的混乱に揺れる1970年代メキシコを舞台に、ある中産階級の家庭に訪れる激動の1年を、若い家政婦の視点から追うヒューマンドラマ。
 
あらすじ:
70年代初頭のメキシコシティ。医者の夫アントニと妻ソフィア、彼らの4人の子どもたちと祖母が暮らす中産階級の家で家政婦として働く若い女クレオは、子どもたちの世話や家事に追われる日々を送っていた。
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そんな中、クレオは革命家を目指す青年フェルミンと恋に落ち妊娠するが、彼は自分が親であることを認めない。
一方、アントニオは数週間の予定でトロント出張し行方不明。帰国したアントニオが愛人と生活していることを知った妻ソフィアは・・・・。
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こんなに悲しい、男に翻弄される女性の話は久しぶりで、モノクロ映像だからこそ伝わってくる力のある作品でした。
テーマが似ていてアカデミー賞で競った是枝監督の「万引き家族」と比較すると、格差社会という時代背景の描き方、そして両作品にも描かれている海辺で家族が絆を取り戻すシーンのいずれも圧倒的に本作の方が胸に迫ってきます。
さらに本作が、作った感ありの是枝作品と比べて、ドキュメンタリー風でとてもリアル。受け入れやすい。
 
物語は、クレオが邸宅への取りつけ道を何回も打ち水で洗った溜り水に上空を飛ぶ航空機が映っている映像から始まります。この映像は、ラストでは溜り水ではなくクレオが洗濯ものを干す先に航空機が飛ぶ映像につながり、クレオの視界が広がり、ソフィアの家族と新しい関係に入ったことを暗示します。
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夫アントニが米国の大型乗用車で帰宅しますが、車庫が狭く、庫入れに苦労するシーン。これを執拗に写して、メキシコ経済にいかにアメリカ経済が大きな負の影を投げているかを暗示しています。
この他にも火事、地震、波が時代のメタファーになっていて、映像で語られる物語となっているところがすばらしい。

そして、家政婦クレオ役にヤリッツァ・アパリシオをキャステイングしたことがすばらしい。
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クオレは、土着民族の出で夫妻の言葉とは異なります。朝早く起きて取り付け道をきれいに掃除し、子供たちを起こして食事、寝具の整理・整頓、洗濯、子供の遊びについ会い、本を読んで寝かせるなど母親役全てをこなしている。
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母親のソフィアは夫のネクタイがどこにあるのかもわからないという主婦。()
 
こんな彼女の恋人フェルミン、休日にモーテルでフリチンで棒術を見せて彼女とSEX()。後日映画館で彼女が妊娠したかもしれないと話すと、トイレに行くと言ってとんずらかってしまう。()
 
彼女は、ソフィアに相談して検診、妊娠三か月と分かる。フエルミンの気持ちを確かめようと、郊外に住む彼を訪ねる。住まいは貧民窟で、この国の大きな貧富の差を見せつけてくれます。この映像で、何がこの国に起きるかは想像できるというもの。映像に力があります。
 
フエルミンは、「日本の精神を学べ」と日本の空手のような武術を集団で鍛錬している。クレオが妊娠の話を持ち出しても、親は俺でないと拒否し、デモ車に乗って去って行く。
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クレオはソフィアの母テレサと一緒にベビーベッドを買いに出かる。この日は政府に対する大規模なデモが予定されていた。町の異様な空気が伝わってきます。
 
家具店でベビーベットを見ている時、店外で警官とデモ隊が衝突。激しく衝突するデモは、70年安保時の光景そのもので、冷めた目でしっかり撮られています。石が店の窓にあたり、恐怖を覚えます。
デモ隊の一部が家具店になだれ込み、拳銃を持ったフェルミンがクレオの前に現れ、これに驚いたクレオが破水してしまう。
 
大混乱の道路をテレサクレオを支え病院に急ぐ。病院も怪我人で大混乱していて、クレオ盥回しされなかなか診察が出来ない。苦しむクオレ。やっと受診した結果、緊急手術を受けることに。
生まれた子に脈がなく、懸命の人工呼吸も効果なし。白布にくるまれた我が子抱き涙するクオレの長回しの映像が生々しく、ただただ痛々しかった。
 
一方、ソフィアは、所在不明の夫が帰国し女と暮らしていることを知り苦悩するが、ある日、これまでの車を小型車に変え、髪を切り、ミニスカートになって出版社に勤めると決意。荷物を引き取りに来る夫と会うことを避けるため、子供とクレオを誘い海に出かける。
 
荒々しい波のある海。波の映像に美しく迫力がある。ふたりの子が波にさらわれる。
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泳げないクレオが、これを見て躊躇なく海に入り波にのまれながら、ふたりを救い出す。陸に上がると、家族全員が「私たちはクレオが好き」とクレオに抱き着く。するとクレオは「子供は生まれて欲しくなかった」と泣きながらソフィアに訴える。
このシーンは、クレオを含めて新しい家族ができたと実感させる美しくて力のある映像でした。帰りの車のなかでクレオが安堵の表情を見せます。
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家に戻ると、夫が荷物を持ち出した後で、すっきりしていて、ここでの家族の新しい生活が始まることになります。暗い物語ではありましたが、先にすこしばかり光が感じられる結末でした。
 
この作品はネット配信作品ですが、劇場で観るに値する作品で、観ることができて本当によかったと思います。
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