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「岬の兄妹」(2019)

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300人収容の劇場で観ました。大きな作品になりましたね。きっと片山慎三監督も驚いているでしょう。ラストシーンでは、大きな糞をぶつけられた感じでした。()
障がいをもつ兄妹の生きる姿を、これほどにリアルに描いた作品をしりません。とまどっています!

あらすじ:
片足に障害を持つ兄・良夫(松浦祐也)が、小さな港町の造船所の工員をリストラされ、やってはいけないとは知りながら、ポケットテイッシュの袋詰め内職では食っていけないと、行きずり男とセックスで嬉しそうにする自閉症の妹・真理子(和田光沙)を見て、妹に売春させ生活費を稼ごうとする。
街で客引きをしたがやくざに痛められ、手製の黄色いチラシを配って客からの電話を待つというデリバリー方式に切り替え、繁盛するようになる。
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これでひとときの生活安堵を得たが、妹は下半身に障害をもつ男・中村(中村祐太郎)に惚れ、そして誰が親なのか分からない子を宿す。・・・
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出だし、この兄妹に他に打つ手はなかったのかと驚きました。しかし、これまでのふたりの状況説明はなく、妹は施設に収容され戻されたかもしれないし、兄が仕事を持てばこの程度の症状なら引き取らない、それ以上に兄の妹への愛情を考えれば、この兄妹の生き方が現実的だと、ふたりの生きる姿に感動しました。
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いろいろな考え方があるでしょうが、これが現実だ! 障がい者の生活苦、性の問題、偏見、暴力などの大きな問題が提示されており、これから先のふたりの生き方は、自分には分からない。何としても生きて欲しい!!
 
監督はポン・ジュノ監督作品や山下敦弘監督作品などで助監督を務め、いつか監督作を作りたいとの思いで、自ら脚本を描き、撮影の池田直矢さん、主演の松浦祐也さんの手を借り構想を固め、2年をかけて作った、経費は全部自分持ちの作品だと言います。しかし、すばらしい大きな作品になりました。
 
この暗い物語をユーモアで笑わせてくれ、あるところではホラーになり、またあるところでは泣かせてくれ、最後に大きな宿題をくれると言う観る人を引き付ける脚本が凄い。さらに、映像で語ることに徹して、つまらないセリフがなくテンポがいい。
 
海や街、花火や祭りなどの映像が美しい。池田さんが木村大作さんに師事したことによるものでしょう。
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そして、妹・真理子(和田光沙)が、頑なに断る青年・さとし(平田敬士)の部屋に押し入ってから多くの男と交わる表現は、時の変化と商売繁盛を見せる上手い表現法だった。
 
松浦祐也差さんと和田光沙さんの演技、熱演でした。何か賞をあげたいですね! 特に和田さんの体当たり演技、あるときは正気なのか、またある時はいっちゃっているのかという自閉症演技には魅りました。
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もうひとり、下半身に障害をもつ男・中村を演じた中村祐太郎さん、自らが同じ障がいを持ちながらこの役を演じたことで、この作品に現実性を与えました。監督、俳優をやっておられるとのこと、期待しています。
 
真理子の妊娠を知った良夫は、真理子が愛していることから中村に結婚を申し込むが、「俺を障がい者だから結婚してもらえると思ったか」と断られる。そこにやってきた真理子が泣き崩れ暴れる、これを連れて帰る良夫の無念。
そこにリストラをした造船所社長白木(岩谷修司)がやってきて、「あいつが辞めたから戻ってくれないか」という。良夫は「お前ら、殺す気か!」と吐き捨てた。おそらく世間に向かって言いたかったのではないでしょうか。悪い脚を地面に叩きつけて悔しがり、家に戻った。
 
そして、遊園地で遊んだ楽しかった思い出から覚めた良夫は、寝ている真理子の枕元にブロックを持って立ったが、振り落とせなかった。ただただ良夫は泣いた! そして、真理子は堕胎手術を受けた。

朝になると真理子がいない。良夫はいつものように唯一の友人である警官・肇(北山雅康)に「またいなくなった」と伝えて浜辺に出ると、磯の岩の上に真理子を見つける。「真理子!」「何で・・」と振り向く。このとき、良夫の携帯が鳴った。良夫は耳に携帯をあてた。生きてくれることを念じています。
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