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「ちいさな独裁者」(2019)

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予告編で面白そうだと観ることにしました。ところが、とても重い作品でした。
ドイツ敗戦まで1か月。偶然に軍服を拾った若き脱走兵が、ナチス将校の威光を手に入れ(なりすまし)、サデイステイックな暴君になったという実話にもとずくサスペンスドラマ。原題は「Der Hauptmann」(陸軍大尉)
監督は「RED レッド」「ダイバージェント」シリーズのロベルト・シュベンケ。
 
あらすじ:
19454月。敗色濃厚のドイツでは、兵士による略奪など軍規違反が相次いでいた。そのような環境でのなかで、脱走し飢えで民家に押し入り食べ物を探すが、殺されて吊るされた脱走兵を見て“腰を抜かして”走り去る脱走兵士ヘロルト。
偶然、脱輪で放置された軍用車に置かれたスーツケースの中からナチの軍服を発見しそれをまとうと、そこに通りがかった上等兵フライタークが敬礼して「はぐれたから同行させてくれ」と申し出る。
 
酒場に入り、店主の求めで略奪者を射殺。これですっかり気が大きくなり、次に出会った粗暴な兵士キビンスキーとその仲間を「後方の動態を調べる特殊任務」と架空の任務でっち上げて仲間に引き入れ、さらに対空機関砲を曳くハグレ兵士2名を加え「ヘロルト親衛隊」として行軍。軍服の威力で、ガソリンが切れると彼らが下車して車を綱で曳いてくれる。()
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憲兵の検問も軍服の威力でなんなく通過。さらに脱走兵として自分を追っていたユンカー大尉に会うも、気付かず?ガソリンを調達してくれる。()
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辿りついたところが脱走兵や略奪者の収容所。警備隊長のシュッテは「やつらを生かしておく必要がない。即決処分」の信奉者。しかし上から「処分せよ」の指示がない。そこにやってきたヘロルトが、軍服姿で“処分が適切”と言い出せば、シュッテは「彼が言うならやっていい」と所長を無視してゲシュタポと話をつけ、ふたりで1390人の虐殺を始める。
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ヘロルトが持ってきた対空機関砲に射殺を命じ、自らも拳銃で射撃。その惨さにシュテッツもヘロルトの言いなりになる。
連合軍の航空攻撃で収容所が壊滅すると、なにも証拠がないと、生き残ったヘロルト親衛隊は近隣の町に移動し、即決裁判所となり暴走していく。
 
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なりすましが何時バレるかと、ハラハラドキドキの展開。「こんなバカな、どこかで発覚する」と思っていたが、遂に虐殺という暴走が始まる。このシーンが結構長く残酷。なぜこれほどにひつこく描くのかとうんざりでした。何が言いたいのか?と整理にかかっていると、エンドロールでヘロルト親衛隊が現在の町に現れ、市民に身分証明書の提示を求め、引っ張て行く。
そういうことかと作品のテーマがわかり、ヒトラーの亡霊に慄くドイツの苦悩を知ることになりましたが、ここで描かれた権威と服従の問題はいたるとことに転がっています。
脱走兵として逃げ回っていたヘロルトがナチ将校の服をつけ、これに服従する者たちを見て、彼の権力・暴力が雪ダルマ式に大きくなっていく。これはヘラルトにも問題はあるが、ヘラルトに服従する者、利用しようとする者に大きな責任があります。おかしいと思ったら、従わない勇気が必要です。
 
90名の処刑を終え、その打ち上げの祝宴で、座をにぎわす役者にヘロルトは「殺人者を演じてみろ」と命じると「殺人者は無理。泥棒ならできる」と役者。ヘロルトが「おれは軍服を盗んだ」と応じると「大尉は名演技者です!」と褒める。恐ろしい話だと思いました。
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監督:ロベルト・シュベンケ
キャスト:
マックス・フーバッヒャー:ヴィリー・ヘロルト
ミラン・ペシェル:フライターク
フレデリック・ラウ:キピンスキー
ベルント・ヘルシャー:シュッテ
ワルデマー・コブス:ハンゼン
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