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「新聞記者」(2019)

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「とんでもない作品が現れた」という話題の作品。観なければと駆けつけました。
原案は東京新聞記者・望月衣塑子さんの同名ベストラー小説。望月さんはモリカケ疑惑、辺野古移設問題など政権にとって不都合な事実について、官邸記者会見で鋭い質問をぶつけるジャーナリストとして知られている方だという。

望月さんの姿勢にインスパイアされたオリジナル作品ということで、これら問題を臭わせる表現やシーンが出てきますので、大きな感心を呼んでいるのだと思います。今日的な政治問題を扱うという作品は、日本ではめずらしいので話題になるでしょう。( ^)o(^ ) 

 
しかし本作は、政府筋からリークされた秘密情報の真相を明らかにしようとする女性新聞記者と「闇」の存在に気付き選択を迫られるエリート官僚の姿を通じて、「権力とメデイア」「組織と個人」の在り方を考えるという今考えねばならない大きな問題提起を狙いとしたエンターテイメント作品で、テンポよいサスペンシフルなストーリーの展開・カメラワーク、そしてすばらしい役者さんたちの演技が楽しめます!「記者たち 衝撃と畏怖の真実」(2018に近い作品だと感じます。
 
監督は藤井道人さん、初めてお目にかかります。主演は「サニー永遠の仲間たち」「怪しい彼女」のシム・ウンギョンさんと「不能犯」「孤狼の血」の松坂桃李さん。共演に本田翼・北村有起哉田中哲司高橋和也さんらです。
 
あらすじ:
東都新聞社会部の若手死者・吉岡エリカ(シム・ウンギョン)。ある日、彼女のもとに「医療系大学の新設」に関する極秘文書がファックスで届く。首相きもいりの懸案らしい。が、誰が何のために送ってきたのか分からない。許認可先の内閣府を洗い始めた吉岡は、神崎(高橋和也)というキーパーソンの存在に気付くが、まさにアプローチしようとした矢先、彼は投身自殺を遂げてしまう。
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一方、内閣情報調査室(内調)に努める杉原拓海(松坂桃李)は苦悩していた。外務省から出向してきたエリート官僚だが、その任務は政権を守るための情報操作やマスコミ工作ばかりだ。有能な公務員としてひたすら上からの指示を遂行してきた彼もまた、外務省時代の尊敬する上司・神崎の死を通じて、官邸が強引に進める驚愕の計画を知ることになる。内調がかけてくる有形無形のプレッシャーと、誤報を出すことの恐怖。愛する妻子を抱えた一生活者としての立場と、本当の意味で国民に尽くすという人間としての衿持。それぞれのキャリアと全人生を賭けたふたりの選択とは・・・。(HPより)
 
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冒頭、吉岡は自室でTV番組「メデイアの危機?」を見ながらメモをとるシーンから物語が始まります。彼女は父は日本人、母は韓国人、育ちはアメリカという多元的なアイデンテイテイをもつキャラクターの持ち主。
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父は新聞記者で政府がらみの不正融資について誤報を出し、責任を追及され自殺している。「メデイアに殺された」と言われているが本人は「真相は分からない」と父の無念を晴らすよう記者になった。権力に対して物申すが、メデイアにも厳しい目を持って、レイプ被害者を取材する記者たちに苦言を呈することもある。
真実は何か、知りたいと執念に燃える女性。ここでは政治的な色はついていない設定で、この役に韓国女優のシム・ウンギョンさんを当てたキャステイングがよかったと思います。日本語の発音に少し難点があるが、問題ない。
美人ではないが、目が澄んでいて目力がある。上司・陣野(北村有起哉)や杉原に見せる強い意思、神崎の死に父の想いを重ねての悲しみや悔しさなど細かい感情の演技がすばらしい。物語のラストシーンの吉岡と杉原のアップで見せる表情は、その意味が読み取れるという秀逸なものになっています。父親と同じ運命をたどるのは悲しい? 彼女の記者活動を評価するようなツイッター文を流して欲しかった!
 
吉岡が自宅でニュースを見ているころ、杉原は内調で「文科省元トップによる女性スキャンダル発覚」ニュースを見ていた。内調の情報収集活動状況が描かれ、映画「スノーデン」(2016で膨大な量のチャット、SNS監視システムを見ているので、エリート官僚が残業してこんなことをやっているのかと驚きました。
内閣参事官・多田(田中哲司)から「野党がらみの事件というゴミ情報をSNSで流せ」と指示を受け、外務省では国のために働いてた俺が一体何をしているのかと苦しむ。このような情報操作を内調がやっている。
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妻は妊娠中で間もなく出産予定。しかし、こんな仕事のために十分に面倒も見てやれないという苦しさを抱えている。
こんななかで杉原の死は、彼が関わっていた「医療系大学の新設」文書のリークを内調が内偵していたことが原因で、それを知らされなかったことで大きな衝撃を受け、神崎が死に追い込まれても守ろうとしたことは何かと組織のやりように激しい疑念を覚える。
 
松坂桃李さんの、家族への愛と公僕しての理想の間で苦悶する演技がすばらしい。生まれたばかりの我が子を抱き、自分がこれからやろうとしていることを思い涙するシーンやラストのアップで見せる表情は秀逸です。
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やっと協力者を得て記事を書いても、その根拠を明らかにできない記者の苦悩。不受理に立ち向かい自分の将来、家族を犠牲にしてもよいのかと苦悩する官僚。この厳しい決断を観る人に問いかける作品でしたが、答えが見いだせない! 
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