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「凪待ち」(2019)

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白石和彌監督作品ということで楽しみにしていて、やっと観ることができました。「ギャンブルで堕ちるところまで堕ちて、再生されてくるはなし」、白石監督でなければ描けない男の話は大好きです。この男が、これまでに見たこともない汚れた、狂気の顔の香取慎吾さん。見応えがありました。( ^)o(^ )
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物語の背景地が東北大地震の被害地・石巻。復興に立ち向かう石巻に重なるようにこの男の再生が語られ、それを演じる香取さんのゼロから立ち上がろうとする姿が重なり、とても感動的でした。
「誰しも人生に失敗し墜ちていくことがあるが、立ち上がるには何が必要か」がしっかり描かれています。白石監督と香取さんの出会いが、いい作品になりましたね!
                                                                

脚本は「クライマーズ・ハイ」の加藤正人さん、オリジナルです。共演は、恒松祐里西田尚美・吉澤健・ 音尾琢真リリー・フランキー・三浦誠己さんらです。

 
あらすじ:
競輪にのめりこみ、人生の目的が持てない、もう若くはない男・木野本郁男(香取慎吾)。競輪ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓(西田尚美)と彼女の娘・美波(恒松祐里)とともに亜弓の故郷石巻に移り住むことに。
亜弓の父・勝美(吉澤健)は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所のに住む小野寺(リリー・フランキー)が世話を焼いていた。小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上(音尾琢真)と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。
 
ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見された。
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亜弓を殺された挙句、同僚からも疑われる郁男。次々と襲い掛かる絶望的な状況から郁男は再び競輪ギャンブルにのめり込み、自暴自棄となっていく・・・。
 
演出、映像、俳優さんたちの演技もすばらしいですが、特に脇役の勝美、小野寺の出番はそう多くはないですが、セリフの裏を読ませる脚本、演出がすばらしかった。勝美の変化してくる心境、あっと驚かされる小野寺の隠された行動は圧巻でした。おふたりの演技がすばらしい。( ^)o(^ )
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****(ねたばれ)
郁男は川崎競輪に渡辺(宮﨑吐夢)と出掛け、石巻に移転するため最後のギャンブルを楽しむ。「これでギャンブルをやめる」と固く誓って、いつも競技場移動に使っていた自転車を渡辺に贈る。郁男が優しい心の持ち主で、おそらくこの性格が亜弓を惹きつけたようです。5年前から付き合っており、郁男はよくできた年上の亜弓には頭が上がらないらしい。仕事もないのに結婚は言い出せないという心境。娘・美波は福島から転校してきた女で汚染されていると友達が出来ず不登校となっている。郁男とは一緒にゲームをするなど、とても仲がいい。
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亜弓は石巻ではとても人気がある女の子であったらしい。小野寺もそのひとり。
石巻に戻る際、郁男と美波が一緒の車で移動、亜弓がひとり先行したのには訳がありそう。
 
石巻にやってきた郁男は自分の技術を生かして印刷工場に就職。そこで出来た仲間が競輪ギャンブルをやる。最初はノミ屋についていくだけだったが、賭けるようになる。この悪性からは容易には抜けられないらしい。() 郁男と亜弓はベッドを共にし、とてもいい関係になっていた。
 
亜弓は美容院を開業。小野寺が開業祝に花をもってくる。狭い田舎町でのこと、過去に、ふたりには深い関係があったかもしれない。リリー・ファランキーさんが、とぼけたいい演技をしてくれます。
 
美波は幼友達・翔太(佐久本宝)と再会、昼間は製氷会社で翔太と一緒にアルバイトしながら夜間高校に通学。翔太がタバコを吸うのを注意して取り上げたたばこを持ち帰ったことで、母親・亜弓と衝突。このころの娘は扱い難いですよね。
美波が母親を困らせてやろうと家を出る。驚いた亜弓が、郁男を急かして捜索開始。美波が見つからず、ふたりが言い争いに。亜弓の「あんたが本当の親でないから、本気で探さない!」に、いつも穏やかな性格の郁男が怒った。こんな些細なことで喧嘩別れし、亜弓は命を落とした。
 
葬儀が終わって、小野寺が「郁男には亜弓との戸籍がないから、美波は郁男とは一緒に過ごせない。おじいちゃんと一緒に住むのがいい」と言い出す。
 
郁男は「亜弓を殺したのは自分だ」と自分を責め、愛が強かっただけに亜弓の喪失感で競輪ギャンブルに深入りし、金を暴力団(組長・黒司:麿赤兒)から借り大きな借金になっていった。
また、「かって競輪ギャンブルで口論が絶えなかった」という理不尽なリ理由で亜弓殺人容疑者とされ、仲間が会社の金を盗むという事件もあり、会社を追われる。
 
郁男は会社で、またノミ屋で、さらに町の夏祭りで暴れに暴れまくる。
 
荒れる郁男に救いの手を差しだしたのが小野寺。「もう一度生きてみないか!」と自分の勤める製氷工場で一緒に働き始める。よく出来た人でしたね!()
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勝実は亜弓から、生前、美波は郁男を信頼していると聞かされていた。勝美の名が示すように美波を慈しむ気持ちが強い。美波のためにどうすべきかを考え始めていた。
勝美は若いころ乱暴者で黒司とも付き合いがあったが、妻に会って人が変わった。しかし、この震災で妻を失い、失意のなかで懸命に生きようとしている。今の郁男と相通じるものがある。しかも、郁男は亜弓の愛した男だ。
 
津波のせいで全がダメになったんじゃない、津波のお陰で新しい海になった」と、船を売った金を郁男の人生に掛けることにする。
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この金を手にした郁男は、妻の殺害された現場で妻に感謝し、泣いた! そして暴力団に借金を返済したが、郁男を手放したくない彼らはお釣りと称して一部を戻してきた。郁男は、ノミ屋でこの金全額を賭け勝ったが、騙されて換金してもらえなかった。雨の中で涙する香取さんの顔はすごかった!
 
全てを喪い、勝実と美波がここに居て欲しいというのを断り、原発の除染作業に向かう駅で、かっての職場仲間の渡辺が借金トラブルで殺人を犯したというニュースを見て、渡辺を見捨てることはできなかった。彼は、ノミ屋に引き返し大暴れし、機材を悉く叩き割った。
 
暴力団に捕らえられた郁男を、「こいつは俺の倅だ!」と勝美が組長に掛け合う。
組長は「あんたには助けられたお返しだ」と郁男の束縛を解き、金も支払ってくれた。
この金で、郁男は船を買い戻し、凪のおさまった海に、勝美と一緒に漁に出る。
 
どん底まで堕ちると、底だからこそ見えてくる光、愛がある。そんな人に手を差し伸べる人でありたい! この作品では、郁男より勝美の生き方に感動しました。
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