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「アルキメデスの大戦」(2019)

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戦艦大和好き”で観に行きました。() 「大和」がノタウチまわり沈んでいくシュミレーション映像、初めて観ました。よく描けていると思う反面、何故僚艦がいない、対空火器がほとんどなく敵に思うがままに撃たれ、船体を横転させさらに船首を突き上げて沈む姿は、悲しかった。
 

実はこの悲しい結末を知っていた男がいた。この男は何故これを止めなかったのか。これが本作のテーマで、現代にも通じる日本が背負っている、大和魂という精神的構造が悲惨な戦争を引き起こしたと訴えているところがいい。史実を巧みに追いながらのフィクション、反戦エンターテイメント作品です。( ^)o(^ )

 
原作は三田紀房さんの同名人気コミックス。未読です。監督・脚本は「永遠の0」などVFX大家の山崎貴さん。
主演は菅田将暉さん。共演に舘ひろし小林克也・国村隼・小日向文世橋爪功浜辺美波柄本佑笑福亭鶴瓶田中泯さんら重厚な布陣です。
 
物語は、
1933年、日本がワシントン海軍軍縮条約から脱退した年。脱退により主力艦建造に設けられた制約がはずれ、海軍は新型戦艦の建設を主張する「大艦巨砲主義派と、これに対し今後の海戦は航空機が主流になると主張する海軍少将・山本五十六館ひろし)をはじめとする「航空主兵主義派」が激しく対立していた。
日露戦争以来の伝統にすがる大鑑巨砲主義者を「戦闘効率」で説得することは難しいと見た山本は巨大戦艦をつくることがいかに国家予算の無駄使いか、独自に建造費を見積もり、計画の欺瞞を指摘して建造を阻止しようと目論む。そのために目を付けたのが、100年に一人の天才と言われる元帝国大学の数学者・櫂直(菅田将暉)。しかしこの男、筋金入りの軍隊嫌いで、変わり者だった。
 
山本少将は「巨大戦艦を作るとアメリカと戦争になる。これを避けるためにはこの計画を葬ることだ!」と戦争嫌いの櫂を説得した。
 
機密である巨大戦艦設計図など手に入るはずがない。探求好きで怖い者なしの櫂が、軍機密に触れて新戦艦を推定し、建造会社から資料を入手して建造費算定方程式を見出し、大艦巨砲主義派と対峙するが、その決着は二転三転? そして「大和」が建設された謎が明らかになるというサスペンスエンターテイメント作品。
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二転三転する結末を田中泯さんと、菅田将暉さんの圧倒的な演技力で魅せてくれます。ミステリアスでとても面白い作品でした!
 
***(ねたばれ)
冒頭、194547日、14時過ぎごろの坊の岬沖の大和。ヘルダイバーの猛攻を受け、左舷が15度ほど傾き始め、甲板が喫水線となるも前進。こんな姿、見たこともない。わずかな高射砲がぶっ放すが、こんなもん当たるわけがない。弾幕が張れるほど必要だ。狙って撃つなどの発想がおかしい。なぜ多くの高射砲を乗せなかったのか。近代戦感覚がまるでない!
そのうち、アベンジャーによる機雷攻撃で傾斜がますます増してゆく。壁のようになった甲板からずり落ちる兵士たち、甲板を流れる赤い血。腕がふっとんでいる。スクリューが海面に現れ空転。1423分転覆、中央部に大爆発を起こし、船体が真っ二つに断裂した後、沈没。
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全く戦になっておらず、あまりにも痛々しい。腹立たしい! 
この印象のなかで、なぜこうなったのかを解き明かすという5分間あまりの野たれ死の大和の映像は、テーマにも良く合って、見事でした。
 
1933(昭和8)年、第1回新造艦検討会議。戦艦か空母か、まとまらない。ここで大鑑巨砲主義者派が主張したのが、戦艦の方が空母より安価で建造できるというもの。戦艦8900万円に対し空母9300万。
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山本はおかしいとこのカラクリを暴くために、芸者のおっぱいを計っている変わり者の天才修学者・櫂の説得にあたる。安いか高いかで決めると言う日本人の悪弊!(笑)
 
櫂は山本の要求を断り渡米して勉学しようようとするが、恋人の造船大手尾崎財閥令嬢・境子(浜辺美波)が戦火に逃げ惑う姿を想い描き、山本の申し出を受け入れる。櫂は境子の美しい顔の黄金比率を求めていて、父親(矢島健一)に見つかり家庭教師を首にされていたのだ。()
いきなり少佐に任命され、「2週間で結論を出せ!」と、協力者として田中少尉(柄本佑)が付けられた櫂。経費見積もりには「戦艦の設計図」が必要だと、山本の名を借りて横須賀に停泊中の戦艦「長門」に乗り込み、艦長宇野大佐(小日向文世)を騙して設計図を手帳に書き写し、細部数値は手持ちの巻き尺で艦内を計測した。(笑) 「長門」のCGがすばらしかった!
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そして、寝食を忘れての設計図の作成。「この部分が美しくない、曲線方程式通りでない」となかなか進まない。() 味方だと空母設計者の藤岡(山崎一)に援助を申し出るが断られる。「藤岡さんも、俺が2週間で計算したら面子が立たない!」と読み切る櫂は、それなりに人が読める男。
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あと8日。
設計図が完成するが、経費計算には使用部材、工賃、日数などの基礎資料が必要だ。尾崎造船にお願いするが断られる。境子の提案で大坂にある下請け会社・大里造船の社長・大里(鶴瓶)を訪ね、資料提供をお願いするが断られる。座り込みで粘る。境子が直接説得と櫂の作成した設計図を見て、大里はその精巧さに驚き、将来の商船にと協力することになった。
戦艦が安くて、軽い巡洋艦が高いのは何故かと問うと「抱き合わせ!」と大里。このやりかた・体質は、今日の官民癒着構造に繋がっており大問題を生じている。
 
突然会議日程が変更され、残り14時間となる。
 
櫂が取った手段は、沢山の設計書から艦の鉄量を算出し建造価格を抜き出し、その相関関係を数式にすること。東京への列車の中で、車のなかで計算しまくる。
 
海軍大臣・大角大将(小林克也)の司会のもと、会議が始まる。この会議がドラマの見せ場。
永野中将(国村隼)がもう一度空母か戦艦かの論議をやろうと発言するが、大角は受け入れず、藤岡に計算結果の報告を求めた。9300万円を9140万円と修正。この人はばか正直だ!これを聞いた大角は「少しでも安い方がいい、ここは長野さん、俺を立ててくれ」と結論を急ぐ。
 
ここで、計算を終えた櫂が「戦艦の建造費を求めてみた!」と黒板に方程式を書き、式の正しさ検証のため相手に艦名を選ばせ、チョーク紛を飛ばしながら計算するという、菅田さんの独演場でした。建造費のピークは1500トンクラス。潜水艦が一番高い、次いで巡洋艦駆逐艦で、戦艦は安い。「何故か?抱き合わせだ!」と言い切り、新戦艦の価格を17,564万円と明かす。これで勝ったと思ったが・・・ 
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新戦艦の設計担当・平山造船中将(田中泯)が「1億、2億は問題でない。本当の値段を明かしたら国益が守れん。相手がこれ以上の艦を作る。ごまかすところに正義があるんだ!」と発言。田中泯さんのオーラのある演技に全部もっていかれました!
 
大角大臣はこれで会議を打ち切ったが、櫂は自分が製図した図面を示し、平山に「あなたの案では100年に一度クラスの台風の30m波高に耐えられない」と反撃した。平山は技術者だけにこの指摘を受け入れ、潔く戦艦案を引っ込め退席。田中が「勝てた!」と歓声を上げるが、この平山の行動を見た櫂はさびしそうに会場を後にする。櫂は技術者としての平山の人としての大きさに引き込まれた。
 
結果的に、空母案が採用された。山本は「櫂少佐には悪いが、空母を作って航空機でハワイ真珠湾を叩く」と永野に腹のうちを語った。戦争嫌いだった櫂が、本人気づいていないが、山本の日米開戦の協力者になった。面白い!
 
1か月後、櫂は平山の要請で研究所を訪れると、1/20の模型を示しながら、「数字を教えてくれ!あなたも戦艦を完成させたいはずだ」と協力を求められる。
櫂は「戦争へ向かう感情を作ってはいけない。美しい艦を作ってはいけない」と申し出を断る。
平山は「日本はいずれ戦争に向かう。日本は負けを知らない国だからとことん戦うだろう。これでは日本は滅ぶ。君と同じ考え方だ。絶対に沈まないという戦艦を作ったらどうなるか?これが沈んだら、このことに目覚めさせてくれる。「大和」という名の戦艦を造って、日本の身替りに大海に沈んでもらう。これで戦を諦めるだろう」と協力を求めた。櫂は納得した。
 
9年後、真珠湾攻撃から2か月後、山本が連合艦隊司令長官として大和に乗り込んできた。櫂は中佐として長官を出迎え、離艦して桟橋から呉港に浮かぶ巨艦「大和」を見て涙ぐんだ! ここでの大和のCGは、人形が見えすぎて興ざめだった!山本長官の後姿が弱弱しいのがいい。館さんの名演技です!
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櫂は艦建造資金の計算では大鑑巨砲派に勝ったが、平山の人格に魅せられ、彼の説く大和魂を阻止して戦争終結することに知見を貸すことにした。呉港桟橋で流した涙は、「大和」の運命に対する涙だった。この精神構造が今も続いていることへの警告でしょうか。山本元帥の人となりを知ると、櫂は元帥の化身のように見えます。非常にうまい脚本でした!!
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