映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「犬も食わねどチャーリーは笑う」(2022)夫婦とは“うなぎ“のようなもの!なるほど!(笑)

今週の新作選び、ちょっと迷いました。ということで、結果が出てるようなタイトルですが、香取慎吾さんと岸井ゆきのさん主演の本作に決定。劇場は女性のみなさんで埋まっていました。(笑)

監督・脚本市井昌秀撮影:伊集守忠、編集:木谷瑞、音楽:安部勇磨主題歌:never young beach

出演者:香取慎吾岸井ゆきの井之脇海浅田美代子余貴美子的場浩司、マルちゃん、他。


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あらすじ

ある夫婦の互いにゆずれないバトルをコミカルに描いたブラックコメディ。

 結婚4年目となる裕次郎香取慎吾)と日和(岸井ゆきの)は、表向きは仲良し夫婦に見えたが、鈍感な裕次郎に日和は不満を募らせていた。そんな日和が鬱憤を吐き出さすツールとして出合ったのが、SNS「旦那デスノートだった。そこには世の夫たちが見たら驚がくするであろう、妻たちが投稿する本音の数々が書き込まれていた。

ある日、裕次郎はそのSNSの存在を知り、自分について書かれていると思われる投稿を見つけてしまう。書き込んでいるのは、チャーリー(マルちゃん)というハンドルネームの人物だった。チャーリーとは、裕次郎と日和が飼っているフクロウの名前だった。

裕次郎はチャーリーの呟きに行動でいちいち反発、家で飯食うのやめて、「家事やるのはお前が決めた」「あなたは自分のことしか考えない」と口論になり、遂に日和はソファーで寝るようになった。(笑)

日和にはある秘密があった。「旦那デスノート」SNS参加メンバーの集いで、酔っぱらって裕次郎の同僚・蓑山さん(余貴美子)にしゃべっちゃった。これに同情した蓑山さんが会社で裕次郎をいじる。

裕次郎は同僚の若槻広人に「俺2年半セックスレス」と秘密を明かし、「旦那デスノート」見て結婚を不安がる若槻に、セロトニンを摂ればいい!肉喰え!」と教えた。(笑)実は裕次郎は若槻の結婚披露宴スピーチを引き受けていた。

ふたりはなんとか若槻の結婚式まで持ち堪えて参加。ところが裕次郎は準備したスピーチ原稿をタクシーに置き忘れてステージ上に立往生!見かねた日和が、かって裕次郎から教わったリラックス法を「肘は絶対に舐められない!」をサインで送ってリラックスさせ、裕次郎が円満な結婚生活の秘訣は「ふたりで気にいった家具を買うこと」(笑)と話し、参加者の大喝采を得た。

これでふたりは元の関係に戻れるかに見えたが、アパートに裕次郎の母(浅田美代子)がやってきて、「1回の失敗でやめたらダメ、子供をつくりなさい」と言い出す。日和は「あなたが喋ったの?」と離婚届けを置いて家を出た。はたして裕次郎は日和を連れ戻せるか?

夫婦のみなさん、ここで描かれるのはみなさんが経験していること。分かっていて実行できない(笑)

旦那をデスるセリフに、はっちゃかめちゃかシーンに大いに笑えます!特に女性は溜飲を下げたでしょう。(笑)旦那さんたちはしっかり反省する作品になっています。(笑)

市井監督の「同棲1年目とか結婚1年目の夫婦ではなく、ある程度時間を経た夫婦の危機」を経験に基づき書き上げたのがこの脚本。若槻の結婚式後にひとひねりあるという凝った演出、ここが見どころです。また、香取慎吾さんと岸井ゆきのさんの演技も!

感想(ねたばれあり:注意):

夫・裕次郎(38歳)はホームセンター勤務。毎日筋トレで身体を鍛え、店では丁寧に商品をお客さんに説明し、力仕事を一気に引き受けてとても頼りがいのある副店長だが、家庭では脳天気な生活!一方、妻:日和(32歳)はコールセンター勤務。「いい意味で!」の言葉が嫌いで、お客さんの難題対応に「システムの問題ですから」と断れず悩むが、家庭では笑顔で家事を引き受けている。

日常のふたりの朝食・出勤風景が描かれますが、どこの共稼ぎ夫婦にもある風景ですが、コールセンターの仕事を持っている日和は旦那に食事を作って食べさせ、昼はキーマカレーが食べたいと能天気にしゃべられ、フクロウのチャーリーの世話をしないのが癪にさわる。(笑)ある秘密がるからこれが限界近くになっていた。

そこで不満を吐き捨てるために始めたのがSNS「旦那デスノート」。一方通行で“ナイス”目当で書く文章だから過激!しかし読み手には堪らない笑いがある。どんどん過激化していく。しかし、これを読んだ旦那は堪らない!(笑)

しかし、日和にはブレーキがかかっていました。出版社から「本にしませんか?」と勧められたが、「主人に言いたいだけ!」と断った。これがなかったら復縁はない!

夫婦関係がSNSで崩されていくという視点、その対処法が提起されているのがいい。

なんとか夫婦として若槻の結婚式に参加することができ、「結婚当時の記憶を取り戻し再出発できるか」に見えたのですが、ふたりの間には深い問題が残されていた。

日和が流産をしたとき裕次郎がそこにいなかったことに対する日和の拘り!

裕次郎はいつものように店でお客様に商品案内をするが、耐震支柱“ふんばり君”の説明では泣いてしまう。日和との最初の出会、日和の探しものがこの商品で、説明すると即買ってくれ、これが縁でふたりは付き合うことになったから。

蓑山さんに「夫婦って何ですか?」と聞くと「うなぎのようなもの。掴んでもす~と逃げられる。また掴みにゆく!」という。

失ってみて、失ったものの大切さが分かる

商品開発のきたろう(きたろう)が店にやってきて「家具は労りが大切!」という。これを耳にした裕次郎は日和が置き忘れたソックスを持って、日和の職場に急いだ!

裕次郎は走りながらコールセンターに電話するが、「シシテム上・・」を切られてしまう。とうとう「システムが悪い!」と叫びコールセンター室に入った。するとセンター管理課長の葛城(長島秀和)に「システムに問題はない」と注意を受けた。これを見た日和は日ごろの鬱憤が爆発!コールセンター室内全員の鬱憤が爆発して課長を攻撃しだす!(笑)

そんな中で裕次郎が「(結婚)システムが悪い、何で俺が慰謝料を払う!システムなんか糞くらえだ!」と叫んで倒れた。離婚届けを相手に突きつけて話もぜず別れるシステムなんぞ馬鹿げている。(笑)

裕次郎は立ち上がり、「自分は逃げていた!俺は日和のことを見ていなかった!」と告白した。日和も「怖くて言えなかった!」と応えた。

「システムだから」とシステムを逃げ場にする風潮はありますね!システムより人間理解が大切です。

ふたりは結婚時、掴めば幸せになるという空に舞うビニール袋を掴めなかったが、今度はしかりふたりが協力して掴むことが出来ました。いい終わり方でした。

私は、蓑山さんが入院中の夫を励ますために「旦那デスノート」に投稿して、それを読んだ夫が喜ぶという蓑山夫婦の細部を観たいですね!(笑)

平凡な結末でしたが、実行は難しい! この作品では裕次郎と日和の甘ったるい馴れ初めが何度も映し出されますが、これが一番大切なことかもしれませんね!

香取さんは見たことのないほどの鈍感な裕次郎でした。(笑)岸井さん、生っぽい演技で、日和でした。(笑)そして蓑山さんの余さんが、とぼけた演技で全部持っていきましたね。(笑)ずいぶん笑わせていただきました!

                ***

「サマーフィルムにのって」(2021)好きだと、斬って!斬って!斬りまくる1分間。これぞ未来に残る青春映画!

元「乃木坂46」の伊藤万理華さんが主演を務め、時代劇オタクの女子高生が映画制作に挑む姿を、SF要素を織り交ぜながら描いた青春ストーリー。元「乃木坂46」の伊藤万理華さんと聞いてもぴんと来ない年齢なんです(笑)しかし、「桐島、部活やめるってよ」(2012)っぽい作品のようだとWOWOWで鑑賞しました。

驚きました!すばらしいの一言。ラストシーンだけでもいい、観て!!

監督:松本壮史、長編映画初監督作品とのこと。脚本:三浦直之 松本壮史、撮影:岩永洋 山崎裕典、編集:平井健一、音楽プロデューサー:剣持学人、主題歌:Cody・Lee(李)。

出演者伊藤万理華、金子大地、河合優実、祷キララ、小日向星一、池田永吉、他。


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あらすじ:

高校3年生ハダシ(伊藤万理華)は時代劇映画が大好きだが、所属する映画部で作るのは好きというセリフだけのキラキラ青春映画ばかり。好きを映像で見せる時代劇で撮りたいが、武士役にぴったりの理想的な男子が見つからない。

そんなとき映画館で時代劇を観ていて、涙している男の子に出会った。追っかけて無理やり主役猪之助を演じてもらうことにしたのが凛太郎(金子大地)。脚本を読むと意見を言ってくれる。なんかいい感じで撮影を開始した。

タイトルは「武士の青春」。ラストシーンはまだ決まっていないが、「決闘しない!どちらにも感情移入して殺せない」結末にしたい。

撮影:天文部のビート板(河合優実)、殺陣指導:剣道部のブルーハワイ(祷キララ)、音響:ボールの音を聞いて投手があてられるという増山(池田永吉)と駒田(小日向星一)、照明:変な自転車乗りの小栗(篠田諒)(笑)、凜太郎の相手役“ねのすけ”:ダディボーイ(板橋駿谷)。

今年の部の製作作品は花鈴監督(甲田まひる)に決まっているので、ハダシにはお金が回ってこない。それでもメンバーでアルバイトして資金を作り、文化祭でゲリラ上映して花鈴作品に挑戦したいと考えていた。

ハダシは「お祖母ちゃんが勝新の映画を観て喜ぶ姿に見て、映画は過去に繋がる。私は未来に繋がる映画を作りたい!」と皆に自分の考えを話すと凜太郎が、口が滑ったか、「俺未来からハダシ監督の映画見たくってきた」と言い出した。「未来の映画は5秒がスタンダードで1分は長編、映画館はない」と凜太郎がもってきたタイムマシーンが語る。未来の映画を撮りたいハダシは悩む。「今はまだパラドックスは起きてない!」というビート板の意見で、映画を撮ることにした。

そんな中で、夏の合宿を迎えた。花鈴組は順調に進んでいるみたいだ!焦るハダシ。遂に合宿旅館を抜け出して行方不明。      みんなで必死に探すと、陳太郎とハダシが海岸で佇んでいた。いや佇んでいたのではなく、映画が撮れないハダシを懸命に凜太郎が「おれが未来で残してみせます。未来を変えます!」と説得していた。ふたりを見たビート板とブルーハワイは「凜太郎に失恋した」と泣いた!しかし、すぐにふたりは、凜太郎をハダシに譲り、立ち上がった。(笑)

ブルーハワイはこの経験を生かし、花鈴に請われて彼女の映画に出演して大喝采を得た。(笑)ハダシも花鈴組から支援を得てラストシーン「猪之助はねのすけを斬らない!さよならと言わない。ふたりは未来で生きる」をなんとか撮り終えた。

ビー板とブルーハワイはタイムマシーンから「作品は終わったら捨てられる。凜太郎はそっちに行ったらいけない人間だ。未来ではいなくなる」と聞かされた。ふたりは文化祭が終るまでハダシには言わないことにした。

しかし、花鈴が撮ったブルーハワイの演技を見て「自分の作品に愛はあるのか?」とラストシーンが気になる。

編集作業で、「さくらと果実」作品をふたりで観て、花鈴が「何度観ても泣ける、思いを伝えないのがいい、でも私なら捨てる!」と言う。ハダシは「撮った作品で行ける!」と判断した。

文化祭。ビート板がハダシに「好きと言ったら!」と勧めたが、「私、言えない」と。ハダシは凜太郎と文化祭の各部出し物を見て廻り楽しんだ。
いよいよ映画部の作品上映。先に花鈴作品が上映され、ブルーハワイの出演シーンで涙を流す子が多かった。

いよいよ「武士の青春」の上映が始まった。が、ハダシは映写室に走り込み上映を止め、ステージに駆け上がり、スタッフ・キャストをステージに上げ、「愛があってこそ真剣勝負になる。ラストシーンを取り直す!」と観客生徒に詫びた。ねのすけ役のダディボーイが「俺の役ではない」とその役をハダシに譲り、ハダシと凜太郎が「好きだ!」「好きだ!」と叫ぶながら、ステージ上で斬り合った。お互いが斬り違えたところで幕。

感想

座頭市」は私にはたまらない青春映画。本作で座頭市を演じる主人公ハダシの青春が分かる。伊藤万理華さん演じる座頭市、素晴らしかった。

サマー“フィルム“というタイトルの意味。この作品は未来の作品ということ。本作のテーマは「未来の映画」。私にとっては当時から60年後に出会った作品となり、未来で観ていることになります。十分楽しめました!

「女学生がスカートでちゃんばら演じて興ざめ」という意見があるようですが、全くそれはなし。青春のエネルギーと愛を感じました

ラストのステージ上で撮り直しするちゃんばらシーン。斬って!斬って!斬りまくって、好きだと告白するこの1分間。これこそが未来に残る作品だと思いました!

ただの青春背映画だけではなかった。映画界の抱える問題をぶつけるという若者の熱意、未来に届くといいですね。

ナイスキャステイングでした

主人公の伊藤万理華さん。座頭市の居合抜き、眠狂四郎円月殺法、見事でした。それに可愛かった。ブルーハワイの祷キララさん。剣士姿がりりしく、凜太郎に失恋したて花鈴監督の作品に幽霊役で出演して愛を告白するシーン、わずか数秒でしたがすばらしかった。

天文オタクの河合優実さん。凜太郎が好きだったがそれを表情に現さず、カメラマンとして懸命にハダシを支える姿。文化祭ではちゃんと恋人に出会ってうれしい表情。だれかに恋されるという、これも青春です!

篠原悠伸さんはまだ高校生が演じられる。(笑)これが恰好よかった。宮本武蔵を演じ恰好よかった。ギャグがたまらなく好きです。

イトマンの篠田諒さん。自転車こぐ姿がもうおかしくって、がんばりましたね!

はっちゃかめっちゃかのストーリー展開、これが面白かった。しかしこのなかに、本音でぶち当たって行く、青春の友情や怨嗟が混じっていて、当時の気持ちがこみあげてきます。

なんども脚本を考え直しやっとたどりついたラストシーン。愛を叫びながらの好きな人との斬り合い!これぞ未来の映画をめざした「武士の青春」映画でした!(笑)

青春とは何か?「悩みと情熱!」、こんな簡単なことをこんなに面白く伝えてくれました。

              *****

「ヘルドッグス」(2022)闇落ちした男たちのブロマンス、その結末が切ない!これぞ新フィルム・ノワール!

岡田准一さんが「関ヶ原」「燃えよ剣」に続き原田眞人監督と3度目のタッグを組んだクライムアクション

原作は深町秋生さんの小説「ヘルドッグス 地獄の犬たち」、未読です。原作はかなり変更されているようです。原田監督は自分の主張を作品に乗せる人だからそうなるでしょうね!「それがちょっと・・・」と思うこともあります。(笑)

原田監督は潜入捜査官の話を映画化したいと常々考えていて、やっと想いがかなった作品のようです。映画地獄の黙示録」「東京暗黒街・竹の家」米TVドラマ「タイトロープ」をオマージュしながら、1950年代のフィルム・ノワールの世界感をデジタルで描くというもの。(笑)

フィルム・ノワールと言われても何のことだか分かりませんが、裏社会の映画、ダークヒローの話は、現実のもやもやを吹っ飛ばしてくれるので好きです。

監督・脚本:原田眞人撮影:柴主高秀、編集:原田遊人音楽:土屋玲子スタントコーディネーター:小池達朗、技闘デザイン:岡田准一

出演者岡田准一、坂口健太郎松岡茉優、MIYAVI、北村一輝大竹しのぶ金田哲、木竜麻生、酒向芳、他。

物語は、

愛する人が殺される事件を止められなかったことから闇に落ち、復讐のみに生きてきた元警官・兼高昭吾(岡田准一)。その獰猛さから警察組織に目をつけられた兼高は、関東最大のヤクザ東鞘会への潜入という危険なミッションを強要される。兼高の任務は、組織の若きトップ・十朱(MIYAVI)が持つ秘密ファイルを奪取すること。警察はデータ分析により、兼高との相性が98%という東鞘会のサイコパスなヤクザ・室岡秀喜(坂口健太郎)に白羽の矢を立て、兼高と室岡が組織内でバディとなるよう仕向ける。かくしてコンビを組むことになった2人は、猛スピードで組織を上り詰めていく、・・・・。

キャッチコピーは「相性98%。狂犬注意 これぞ日本の映画革命!」というもの。

監督作品特有のセリフの速さ、観る人を放っておいて進んでしまう、それにやたらと英語が出てくる。(笑)もうこれには我慢、我慢! 物語の背景となる風景、建物、美術、料理が凝っていて、これがフィルム・ノワールの世界感かと楽しむことです。(笑)

ストーリーは、監督の描きたいフィルム・ノワールの人間関係(ブロマンス)に主体を置き、アクションを見せ場にしている。テーマは岡田さんが番宣で協調している「セクシー!」、これです。原田監督と岡田さんの関係かもしれませんね!(笑)ということで、「潜入捜査官という身分がいつバレるか!」というヒリヒリ感が薄くなっています。

ラストで明かされる彼らの運命に、フィルム・ノワールとはそういうことかとサプライズがあり、目が離せません。


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あらすじと感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、墨だらけの兼高密林を抜けて養鶏場に現れ、襲い掛かってくるマッドドックを葬って「眠れる俺、アリチアの森」と呟く。そしてコンビニで恋人がヤクザに殺されるシーンで「この森を捜し、殺さんとするものを殺し・・」と回想する。これは「地獄の黙示録」のカーツ大佐の愛読書”金技編”からの引用とのこと。この描写で兼高がサイコキラーに落ちた説明は終わりということになります。(笑)

兼高は、失踪して10年後、秘密場所に勾留され警視庁組織犯罪対策本部特別捜査官・阿内(酒向芳)から「潜入捜査官として東鞘会に派遣する。こいつと一緒にやれ!7代目会長は十朱・・・仕事が・・」と説明されるが、これが鉄砲弾のようなスピードで喋られる!(笑)

物語は1年後から始まる、

廃墟と化した植物園にモグラを呼び寄せ、兼高と室岡で銃を使わず小道具で殺害して森林内に埋める。手始めに岡田さんと坂口さんの格闘演技、サイコっぷりが披露された。相手に絡みつくような体に動かし方、見事でした。岡田さんが開発した技?

兼高は上司の東鞘会の三羽烏の一人組長の土岐(北村一輝)に任務終了をスマホで連絡すると土岐の女・恵美裏(松岡茉優)がこれを取り継ぐ。土岐に注射で健康管理している。(笑)背中に入れ墨を背負った松岡さんにびっくり!恵美裏は兼高とも関係を持っている。何故か彼女は象牙に興味を持っている!

 兼高と室岡が東鞘会本部に挨拶。その後、ヒーローの歓迎と豪華レストランでの食事会。豪勢な食事、これは羨ましい!(笑)ちらっと見せる東鞘会の三羽烏のひとり・熊沢(吉原光夫)の妻・佐代子(赤間真理子)が経営するSMバー、闇の世界につれて行ってくれる。赤間さんのリーゼント髪型に黒グラス姿、圧巻でした。(笑)

その後、兼高はマッサージのため衣笠典子(大竹しのぶ)の店にでむく。ふたりは親しい関係のようだ。典子は「息子が東鞘会に殺され恨みがある」という。典子は東鞘会の三羽烏のひとり組長・大前田(大場恭正)に出張サービスを行っていた。

一方の室岡は幼馴染の杏南(木竜麻生)に会っていた。

兼高と室岡は会長の警護要員に選ばれ、十朱のチェックを受けた。会場は東鞘会本部ビル内のスタジアム。要員をA、Bチームに分け防弾衣をつけてリングに上げ、いきなり十朱がマシンガンで射撃!倒れ込むと「起きろ!」と起こされ、ABチームの格闘。覇気が試されていた。この後、兼高は会長に呼ばれ会長室に。十朱は「ヤクザの闇営業とは何だ!7歳の女を捕まえて絞殺か」この記事読め!と新聞を投げ、「久しぶりに気分が昂る!お前といれば退屈しない」と声を掛け、回し蹴りでウイスキーグラスをぶっ飛ばすという切れっぷり、この色気がいい!

杏南は犯罪者遺族の会に顔を出していて、室岡を誘った。ここで室岡は「被害者にお金を送って来る警察官がいる話を聞き「良い話だ」と答えた。このころ兼高は昔居た新宿交番あたり歩いていて、お回りから「吾郎じゃねえか!」と声を掛けられていた。このシーン、兼高の身元が割れるかとハラハラドキドキの面白いシーンだった。杏南は室岡にヤクザを辞めて自分と結婚することを勧めた。

十朱は絵が趣味で美術館に出向くが、これにも兼高は警護員として供しらくちんだと思っていた。そこに、東鞘会の三羽烏のひとり・熊沢(吉原光夫)の仲立ちで、十朱が対立する神戸泰岡組幹部・俵谷(田中美央)に泰岡組のスパイを依頼する席に警護員として室岡ともに立たされた。会談はVIP室で、ホステスを入れて、熊沢がオペラ曲を歌う中で行われた。(笑)

兼高は俵谷に酒を勧めるホステスに異変を感じ問い詰めると刺客(中島亜理紗)だった。兼高の機転で取り押さえることができた。ここでのふたりの絡みつくようなクロバットアクションが見どころ!

十朱は俵谷に土下座で謝罪し大金を持たせて返した。十朱自ら地下の拷問室で女刺客を拷問、刺客の頭に発信機が隠されていた。時すでに遅し、敵に襲われた。土岐はこのことを予期して屋上で待機していた。

激しい銃撃戦が始まり、熊谷がショットガンで対応していたが、息を吹き返した女刺客に熊谷が撃たれて亡くなった。十朱は熊谷に「悪かった」と侘びた!

熊谷の葬儀がスタジアムで聖歌隊が入り盛大に執り行われた。土岐は大前田から警備責任を問われ指を切り落とすことになった。このとき恵美裏は何ひとつ文句を言わなかった。

土岐組の若頭・三神(金田哲)のところに子分のお歯黒(吉田壮辰)が「兼高が新宿で歩いていて警官から“吾郎”と呼ばれていたのを見た」と報告した。三神は室岡に近づき「真っ先にお前が指を落とせ!サイコボーイ、兼高は警察の犬かもしれんぞ!」と挑発した。これが引き金になり、三神ともみ合いになり、階段から突き落として死なせた。これに三神の子分が室岡を追った。ビルから街に出たところで室岡が相手を刺し自分も負傷した。そこに兼高が駆け付け「俺と同じ運命だ!逃げろ!」と指示した。室岡は自分の隠れ家に戻り、“癒しのテント”に入って治癒を待った。

恵美裏は阿内に会い「東鞘会が外国勢と組んで象牙ロンダリングをやる」と知らせた。ここにきてこの話、びっくりです。(笑)

久しぶりに阿内が兼高のところに現れ「十朱をやってくれ!」という。

阿内は教会で典子に会い「長い間辛抱したな!3人殺す!」と告げた。典子は大前田邸にマッサージで訪れることにした。

恵美裏が土岐のところに現れると、「なんであいつに金貸した!お前とあいつのことは知っている」と責められた。恵美裏は土岐を眠らせた!

兼高は会長室の外でBクループのメンバーと警備についていた。上手く言いくるめてメンバーを殺害し、会長室に入った。十朱はヨガの最中だった。「お前と秘密を共有したい。俺のアンダーカバーだから!今、ここを出よう。犬は辞めろ!一緒にやろう」と誘った。兼高と十朱が撃ち合ったが、急所をはずしていた。兼高が十朱の首を絞めて殺害した

室岡は包帯姿で恵美裏の前に姿を現し「兄貴は大変だった!」と拳銃を突きつけた。恵美裏が「彼は私の男よ」というのを聞いて撃つのを止めた。そして兼高に「恵美裏と一緒に飯食おう!」と電話した。

兼高は阿内に秘密文書の入ったバッグを渡した。阿内が「もうひとりやってくれ!十朱の死体を確認する」と去って行った。

兼高が恵美裏の部屋を訪ねると室岡に「俺とこの女のどちらか選べ?」と拳銃を突きつけられた。兼高は・・・?

まとめ

ラストシーン、兼高が室岡を撃って自分も死のうとした兼高は「マッドドックに始まってヘドドックに終った」と言い、カーツ大佐の愛読書“金技編”の一節を口にして大佐と同じ闇に落ちた。

エンデイングで冒頭の空白の1年、兼高がタイで土岐組に出会い、ひとめで兼高と室岡が絡みつくシーン。このシーンを見て、ふたりの関係の切なさに泣いた!室岡は美しくって純真な心の持ち主・杏南を振っての行動だった!

十朱との最後の戦い、ふたりは的をはずして撃ち合った。十朱は当初から兼高の素性を見抜いて傍に置き続けた。これも泣けますね!

3人のヤクザ、いずれもイケメンでもう昔のヤクザのイメージがない鈴木亮平は出てこない。(笑)

闇落ちしたカーツ大佐は兼高と思った。が、今では特捜部の阿内だと思う。酒向さんの「検察側の罪人」(2018)で見せた怪演がここでも光っていました。

兼高に一片の正義が残っていたことが、とても爽やかだった。

おんなたち、恵美裏、典子、杏南、佐代子、そして刺客の女ルカ、どの女性も強い!これも新しいヤクザ映画の方向かもしれない!

闇の社会で生き残ったの女性だけ!黒澤監督の「七人の侍」(1954)のラストで島田勘兵衛が呟く「農民は強い!」に通じる結末でした。黒澤監督を崇拝してやまない原田監督らしい結末だと思いました。

キャストのみなさんの演技はすばらしく、楽しんで演じているように見えました。テーマとしてもう少し今の社会に繋がる何かを出して欲しかった!

                ****

「LOVE LIFE」(2022)人生の孤独の中で妙子が見出した絶妙な愛と人生を「LOVE LIFE」の楽曲で味わう!

「淵に立つ」(2016)「よこがお」(2019)の深田晃司監督作品。矢野顕子さんのアルバム「LOVE LIFE」(1991)に収録された同名楽曲をモチーフに、「愛」と「人生」に向き合う夫婦の物語を描いたという。

つい先ほどのベネチア国際映画祭(2022)コンペティション作品に選出され注目を浴びた作品です。

監督・脚本:深田晃司撮影:山本英夫美術:渡辺大智、編集:シルビー・ラージェ 深田晃司音楽:オリビエ・ゴワナール、主題歌:矢野顕子

出演者:木村文乃永山絢斗、砂田アトム、山崎紘菜、嶋田鉄太、神野三鈴、鈴田口トモロヲ、他。

物語は

再婚した夫・二郎(永山絢)と愛する息子の敬太(嶋田鉄太)と、日々の小さな問題を抱えながらも、かけがえのない時間を過ごしていた妙子(木村文乃)。しかし、再婚して1年が経とうとしたある日、夫婦は悲しい出来事に襲われる。そして、悲しみに沈む妙子の前に、失踪した前の夫であり敬太の父親でもあるパク(砂田アトム)が戻ってくる。再会を機に、ろう者であるパクの身の回りの世話をするようになる妙子。一方の二郎も、以前つきあっていた女性の山崎(山崎紘菜)と会っていた。悲しみの先に妙子が見つけた愛とは?人生とは・・。

本作は家族の物語。前段、二郎の父親・誠(田口トモロヲ)の誕生祝いを軸に淡々と描かれる人間関係・想いが、敬太の死を境にしてどう変化していくか

機微な会話の中に、どんな気持ちで喋り、相手はどう解釈するのかとこれを追うのがこの作品の醍醐味、基本は会話劇です。「人はいろいろ!分からない」、うまくできたプロットです。感情を描くためにオセロ、猫、雨、CDプレート、水、音楽の使い方が絶妙で、これを楽しむことができます。

特に手話を言語として取り入れ、二郎、パク、妙子の三角関係を描いて見せ、物語に深みを与え、面白くしています。

ラストは人生で全てを失った妙子が下した絶妙な愛と人生を「LOVE LIFE」の楽曲で味わうことになります。これまでの監督作品とは違って、円熟味のある結末になっています。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

冒頭から敬太が亡くなるまでのシーンがとても大切なシーンなので、すこし突っ込んで書きます。

二郎の父親・誠(田口トモロヲ)の誕生祝いの準備から物語が始まる。二郎が父の誕生祝いの飾りをひとりで壁に取り付けている。が、妻の妙子が6歳の息子・啓大とオセロゲームをやっている。妙子と啓大は手話で話ができる。この映像だけでこの夫婦に異様なものを感じる。

妙子の携帯に電話、「仲裁なの!」と二郎に声をかけて出かける。市民生活相談センター勤務の妙子は、ボランティアの炊き出しで起こったトラブルの仲裁に出かけ、妙子は顔だけでその場が収まるという“できる職員”です

市の福祉課勤務の二郎が恋人の山崎(山崎紘菜)を振って妙子に乗り換えたのは、妙子のこういうところなのかなと思っていましたが、後に分かりますが、そうではなかった。「人は見かけでは分からない!」これもこの作品のテーマのひとつです。

妙子が仲裁を終えてアパートに戻ると、二郎は祝いの料理を作っていた。なんで二郎はここまでするの?

ふたりは結婚して1年になるが、両親はふたりの結婚をよく思っていない。そこで二郎は何とか両親に理解してもらうために必死に準備をしていた。この努力を妙子がどうとらえていたか?

結婚式場の控室?で山崎が「あいつが二郎がふった女だ」という話を耳にして式参加を止めて帰って行った。妙子がその夜、二郎に「山崎さんは特別な人」と聞くと「病気で休んでいる、何だその話!」と遮り妙子を抱擁した。妙子はこの結婚に拘りがあった。

福祉課の職員たちが「大沢さんが来た!」と机の下に隠れる映像、誠は県福祉部長だが、あまり部下たちには人気がないらしい。

 こんな映像がメインの誕生日準備の映像の中に差し挟まれるのでわけ分からない。(笑)「よこがお」でも同じでしたから、これが深田監督のやり方なんでしょう。(笑)

二郎は職場の人たちに誕生会が始まると、職員一同で父親に「おめでとう」と書いたボードを掲げてもらい父親に喜んでもらおうとサプライズを準備していた。

二郎たちのアパートの向かいのアパートに住む誠と妻の明恵(神野三鈴)がやってきて、啓大がオセロゲーム大会で優勝したお祝いとプレゼントを渡した。植物図鑑と飛行機のおもちゃだった。

妙子が夫婦は上手くいっていると言わんばかりに、「二郎の釣りにつき合っている。海吊りにも行く、浮は中古だけど」と話し出す。誠が「中古でも良い物と悪い物がある」と喋った。これに妙子が「中古とは何ですか?取り消してください!」と食い下がった。明恵が仲介して収まったが「早く孫を抱かせて!」と付き加えた。

ここで交わされる会話にヒリヒリします。しかしオセロゲームのように裏返せばすべてが褒め言葉になる。これがこの物語の秀逸なところ!ラストで全部ひっくり返してみせるというすばらしいプロットです。

誕生会の開始。二郎の合図で職員一同からの「おめでとう」のプラカードがアパートの広場に掲げられ、これを見た誠は大満足で飲んでカラオケマイクを離さなかった。アパートの部屋は職員やボランティア仲間で溢れ、啓大は遊ぶ場所がなかった。水を張った風呂場で、飛行機で遊んでいて風呂に落ち亡くなった。発見したのは妙子だった。ふたりの結婚を父親に認めてもらおうとした誕生会で啓大は亡くなった。

解剖で検視し「溺死」と判定され、遺体を引き取ることになったとき、妙子が「アパートにつれて帰りたい」と主張。これに義母の明恵が「斎場に!」と反対した。義父のとりなしでアパートに連れ戻ることになったが、妙子の辛さがわかり泣けました!彼女の心情に大きな影響を与えたと思いますよ。

皆が「誰も悪くない!」と妙子を慰めたが、妙子は「自分が風呂水を抜かなかったのが原因」と自責の念に苛まれていた。

参列者が啓大の棺に別れの挨拶をしているとき、よれよれ服の前夫・パクがやってきて、啓大の棺を覗き激しく泣き、妙子を見つけてぶん殴った

葬儀が終わり、二郎が「大丈夫か?」というのも無視して、妙子は夜のホームレスたちへの見回りに出た。

終わって、ひとり公園にやってきてベンチで休むパクに会った。葬儀でのお礼を言い、残して出て行ったパスポートと韓国の家族からの手紙を渡し「もう会わない!」と別れた。

ところがパクが福祉課に生活保護申請にやってきて、韓国人で手話でしか話せないということで、妙子に通訳の役目が回ってきた。

二郎は、どんな気持ちだったか分からないが、「しっかり面倒を見てやれ!」という。妙子はパクが仕事に就き自立できるよう面倒を見ていた。

義父母が田舎に引っ越すことになった明恵は妙子をアパートに呼んで風呂に入るよう勧めた。ベランダに出て、ふたりはタバコを吸いながら話した。妙子が「二郎さんが居るのに引っ越し?」と聞くと、「二郎が居ても一緒には死ねない。ひとりで死ぬのが、それが怖い!」と言う。

二郎は父母の引っ越しを手伝い、ついでに仕事を休んでいる山崎を見舞った。そんなときでも、妙子が地震で怯えていると二郎から安否確認の電話が入る。傍には山崎がいるにも関わらず!

山崎は「振られ悲しい思いをしたが今は恨んでない。しかし、妙子さんの顔を見ると腹が立ち、あなたたちがめちゃめちゃになればいいと願っていたら、こんなことになった」と泣く。二郎はそっと抱いてキスした。すると「こんな時にも、あなたは目を見て話さない!」と言う。

妙子は義父母が出て行ったアパートに「ここに住んでいい!」とパクを連れてきた。パクは猫を連れてきてとても喜んだ。

翌日、妙子はパクを自分のアパートにつれてきた。パクは啓大の位牌を丁寧に拝んだ。妙子は「協力して!見ていて!」とパクを風呂場に誘った。

妙子はこれまで入れなかった風呂に入り顔を沈めた。鏡でこれをパクが見ていた。「あなたは葬儀で涙を出して泣き、悔しさで私をぶん殴った。私はこれで生かされる」と話した(韓国手話)。

二郎がアパートに戻ると、父母の居たアパートのCDプレートの反射光が眩しく、そちらを見ると妙子とパクがベランダで洗濯ものを干しながらふざけていた。

二郎が急いで父母が居たアパートに行くと、パクはひとりで荷物を整理していた。妙子の姿はなかった。二郎はパクと話したいが通じない。二郎は「パクさんあなたはずるい。4年も捨てておいて帰ってくる。妙子が必死に探すのを見ていた。葬式で泣けなかった、悲しくなかったわけではない。啓大を見て、早く子供を作りたいと思っていたからだ」と独り言ちた。そこに妙子が入ってきたので抱いた。

パクが「猫がいないと騒ぎ出す。三人で団地内の猫探し。探し出したのは二郎だった。「猫は飼ってもらいたい人を知っている」とパクが二郎に渡した(妙子と同じだ)。(笑)

そこに郵便配達員がパクへの転送郵便を持ってきた。「父危篤」というものだった。パクは「釜山に帰りたいから、金を貸してくれ!」と手話で話す。

二郎が車でパクを港まで送っていくことにした。これに妙子も同乗。妙子が「パクは弱い人だから心配、ついていく」と言い出す。二郎が「やめとけ!」と促すと「結婚する直前に、あなたと啓大と一緒に公園で遊んでいたときパクを見つけていた。だから私はあなたを一度捨てていた!」という。二郎は「違う、お前がその前に敬太を捨てていた」と言い返した。

この会話で啓大が亡くなる直前のふたりのぎぐしゃくしていた関係が明かされます!

パクが「(二郎に)君が啓大のこと忘れていいが、妙子は啓大を忘れてはダメだ」と手話して車を降り、乗船場に向かった。これを妙子が車を降りてパクを追う。二郎は{車に乗れ!帰ろう!}と車をバックさせながら妙子を呼び戻そうとするが、妙子は聞く耳を持たなかった。混雑する乗船場で、妙子は手話で「一緒に行く!」とパクに伝えた。

釜山のふたり、派手な車で女性が出迎え、「結婚式場に行く!」という。妙子は驚いた。式場ではパクの息子が待っていた。(笑) OPPA、OPPAと叫び(笑)、「OPPA」の曲で大歓迎。

パクが皆と一緒に式場に消え、妙子は雨の中に取り残され、ただただ放心状態だった。妙子は自分のアパートに戻ることにした。

感想

啓大が亡くなって、妙子は啓大への贖罪の旅が始まる。前の夫・パクが現れ啓大の棺に泣き伏し自分の責任を責めたことで、「救われる」とパクへの想いに傾いていく。父の危篤で国に帰るというパクと一緒に渡韓した妙子がそこで見た真のパクの姿。圧巻のOPPAの曲の後、雨の中に佇み帰国の決心。戻ったアパートには、CDプレートの反射光が舞い、オセロが机の上に、猫が出てきて、敬太のゲーム機に触り、何にも今までとは変わりのない世界、ここに二郎が戻ってきた。妙子はこの風景に愛を見た!

何の変哲もない生活。妙子が見つけたのは「どんなに離れていても愛することができる(歌詞)」という敬太への愛。そして二郎には、人生で全てを失って知った「この世界は愛に満ちている」というこれまで見出せなかった愛「もう何も欲しがりませんから、そこに居てね。微笑みくれなくてもいい、でも生きていてね!(歌詞)」ではなかったかと。まるでオセロゲームの黒が白に変わるように妙子の見方で世界は変わっていく。

ふたりが散歩にでるラストシーン、これから人生が始まるという秀逸なシーンでした。

 二郎の母・明恵が漏らすセリフ「死ぬのは怖くないが、一人で死ぬのが怖い!」が胸に刺さった。

妙子役の木村文乃さん。大きく感情がぶれる、ちょっと理解しずらい感情をしかり演じました。結婚式の雨の中でどう生きるかと呆然と佇む姿にすべての心情が詰まってように思います。

二郎役の永山絢斗さん。感情を出さないがしっかりした妙子への愛情を持っていて、妙子に振り回されながらこれを貫いていく、後段での聞こえないパクに漏らす言葉、埠頭で車をバックさせながら妙子を説得する演技に二郎の心情が溢れていていい演技だと思いました。

圧巻はパク役の砂田アトムさん。手話を巧みに使って、とてもいい人に観えましたが、ラストの変貌に驚きました。(笑)

字幕が聾者用になっているため、聾の方々と一緒に鑑賞しました。どんな感情でみられるのかと気にしながらの鑑賞、こんな経験は初めてでした。さらに、集合住宅、ホームレス、在日外国人、障害者など時代の闇をあぶりだしていく作品となっていて、大きな意義のある作品だと思います。

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「耳をすませば」(1995)

清野菜名松坂桃李耳をすませば」公開に合わせての放送。今回が12回目だったとのこと。監督は宮崎駿さんと思っていましたので違うと知ってびっくりするほどの、予備知識なしでの「金ロー」鑑賞でした。(笑)

原作は1989年柊あおいさんの少女マンガ雑誌「りぼん」に連載された同名漫画。製作プロデューサー・脚本・絵コンテ:宮崎駿監督:近藤喜文、プロデューサー:鈴木敏夫音楽:野見祐二、主題歌:カントリー・ロード」(本名陽子)/オープニングは「Take Me Home, Country Roads」(オリビアニュートンジョン)

声優:本名陽子(月島雫)、高橋一生天沢聖司)、立花隆(月島靖也)、室井滋(月島朝)、露口茂(フンベルト・フォン・ジッキンゲン男爵:バロン)、山下容莉枝(月島汐:雫の姉)、小林桂樹(西司朗:聖司の祖父)、佳山麻衣子(夕子)、中島義実(杉村)、他。

 

読書が大好きな中学生の女の子・月島雫が、夢に向かって生きる男の子・天沢聖司に想いを寄せていく青春アニメ。


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あらすじ

読書好きな中学生3年生の少女・月島雫は、自分が図書館で借りてくる本の貸し出しカードの多くに「天沢聖司」という名前があるのを見つけ、それ以来、顔も知らない天沢聖司の存在が気になっていた。夏休みのある日、図書館に向かう途中で遭遇した一匹のネコに導かれ、雫は「地球屋」という不思議な雑貨店に迷い込む。やがて店主の孫の少年が天沢聖司であることを知り、2人は徐々に距離を縮めていく。しかしバイオリン職人を目指す聖司は、中学を卒業したらイタリアへ渡ることを決めていた。その姿に刺激を受けた雫は、本を読むばかりではなく、自らも物語を生みだそうと決意するが……。

感想

読者カードが縁で結ばれる恋の話。この話、宮崎駿さんと同年代だから分かる!なんとも直線的な青春恋物語で、これはもう宮崎さんの年代の人でなければ描けない!(笑)

柊あおいさんの少女マンガ雑誌「りぼん」に連載された同名漫画で、人気がなくて4回の連載で止めた作品とのこと。

天空の城ラピュタ」(1986)は宮崎さんが小学生時代に考えていた作品を骨子に作った作品、おそらく図書館の本から生まれた物語だった。それだけに読書カードに絡む柊あおいさん作品を引き取り、自分が少年だったころの想いを描きたかった。

1989年はバブル絶頂期。のんびり過ごしていた雫が、同じ本好きの聖司がバイオリン職人になるという具体的は目標を持っていたことに触発され、さらに聖司の祖父西史郎のいう「原石は磨かねば光らない」の言葉に押され、地球屋にあった仕掛け時計の王女とバロン男爵像をネタに小説を書き始める。この物語はバブル世代の若者への大きなメッセージになっていますね。

“職人”と“原石”というキーワードは宮崎さんの人生経験から出てきたもの!

とても感動的にとらえることが出来ました。

雫と聖司の恋物語に、ちょっとしたエピソード程度の話ですが、雫が作った「耳をすませば」と西史郎の失恋物語バロン男爵を介して重なるというこの発想が面白かった。そしてバロン男爵が「猫の恩返し」(2002)で登場してくる

近藤喜文さん(当時43歳)にとって本作が初監督作品でしたが、3年後の1998年に亡くなり、この作品が唯一の監督作になっている。このことに涙しました!

この作品は宮崎駿さんの宮崎色一色。近藤さんはずいぶん苦労しながら仕事をしたでしょうね。(笑)ということで、「猫の恩返し」は宮崎さんから後藤さんへの恩返しだと思っています。(笑)

冒頭の街の風景、黒い雲から雨に変わる空模様、川面を走る風、雲海からあがる朝日など、風景の美しさに魅入りました。それは新海さん以上でしょう。それだけに近藤さんの早世が悔やまれます!

耳をすませば」と言えば「カントリーロード。オリビアニュートンジョンさんが亡くなった(2022年8月8日)直後の放送ということで、特別なものとなりました。

さて、10年後の「「耳をすませば」、これは見逃せない作品となりますね!

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「グッバイ・クルエル・ワールド」(2022)久しぶりの激しい銃撃戦、そこに映し出される若者の鬱憤に監督らしさが一杯!

スタッフとキャストで観ることにしました!(笑)しかし、劇場が小さく、1日2回しが上映されない!

観て、その謎が解けました!(笑)

監督:大森立嗣、脚本:高田亮撮影:辻智彦、編集:早野亮、音楽プロデューサー:田井モトヨシ。

出演者(役職)西島秀俊(安西)、斎藤工(萩原)、宮沢氷魚(矢野)、玉城ティナ(美流)。宮川大輔(武藤)、大森南朋(蜂谷刑事)、三浦友和(浜田)、奥野瑛太(飯島 )、片岡礼子(みどり)、螢雪次朗(県知事)、モロ師岡(不動産屋)、奥田瑛二(杉山組組長)、鶴見辰吾(杉山組幹部)、他。

物語は

年齢もファッションもバラバラ、互いに素性も知らない5人組の強盗組織が、ラブホテルで秘密裏に行われていたヤクザの資金洗浄現場を襲い、1億円近い大金の強奪に成功する。強盗たちは金を山分けし、何食わぬ顔でそれぞれの日常に戻っていった。しかし、金を奪われたヤクザが裏金で現役の刑事を雇い、強盗組織を本気で追い始めた。騙されて分け前をもらえなかった強盗組織のひとりも、ラブホテルの従業員を巻き込んで立ち上がり、金に群がるクセ者たちの大波乱の物語が始まる。

社会の歪を描く監督作品を期待しての鑑賞でした。どこか観たぞ!聞いたぞ!という話や映像が出てきますが、話が進むにつれて大森監督の「世相を斬る!」語録が並び、ラストシーンで「あなたの感想は」と聞いてきます。ハチャカメッチャかの作品ですが、痛快でした。(笑)


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あらすじと感想(ねたばれ:注意)

冒頭、派手な外車(フォード・サンダーバード)に乗って、大音響のソールミュージックで、これから始まる大仕事を鼓舞するように、資金洗浄が行われているラブホテルに駆けつける1日限りの5人組ギャング団の面々が描かれる。元政治家秘書の肉体労働者(浜田)、なんでもありの犯罪者(萩原)、元暴力団員(安西)、借金だらけの元会社員(武藤)、風俗嬢(美流)の社会に居場所のない者たち

強盗は大成功だったが、武藤と美流には分配されなかった。武藤が恋人の美流の取り分も含めて、借金の返済として荻原に支払ったためだった。

金を奪われた暴力団(杉山興産)オガタはお抱え刑事の蜂谷に犯人捜しを依頼した。蜂谷は洗浄現場に乗り込み「犯人に知らせたやつは杉山組にはいない、外部だ!」「1億を2億ということにして、犯人たちの中で抗争を起こさせる」と提案した。

ギャングの面々のその後の金の使い方、

安西は妻みどりの親父さんが保有する簡易ホテルに出資し、真面目にホテル業に取り組み家族の信頼を取り戻すことにした。

浜田は「なんぼ働いても金は国に吸い上げられる」とキャバクラの女性に託する!(笑)次の獲物と狙っていた。(笑)

荻原は「お前、2億の仕事をしたろ!」と不動産屋に見透かされ、仕方なく「不動産を買う」ことにした。そこに美流と武藤が「仕事を紹介して!」とやってきた。

荻原は美流と武藤を巻き込んで、宝石店を襲った。荻原は獲物を独り占めするため美流を車で轢いて逃亡、誰もいない丘で武藤を殺害した。

蜂谷刑事はラブホテル受付担当の矢野を観覧車に乗せて事情聴取。(笑)「ホテルを利用する美流に同情し、金が必要なら二階で洗浄やっているから・・」と教えたという。蜂谷は「殺されるかもしれない」と怯える矢野を杉山興産の雑居ビルのバーにかくまった。蜂谷はオガタから礼金を行け取った。

そして、美流を追い、病院で発見して雑居ビルに連れてきて矢野に会わせ、ふたりの処分を杉山組長に任せることにした。

蜂谷はふたりに「お前らは大人にいいように使われ、捨てられた」と伝えた。これを聞いたふたりは強く手を握りあった!“復讐してやる!”

杉山組長は、よく分からなかったが(笑)、「海の臭いがする、ぶっ殺してこい!」とふたりに命令した。奥田瑛二さんのドスの利いた演技は怖かった!(笑)

 

安西は、ホテル業が軌道に乗りかかったところに元舎弟の飯島が現れ、「ヤクザであったことを明かすぞ!」と脅され「言うな!」と約束して彼を雇ったが、バーでヤクザであったことをばらされ、町内会から追われるという危機に陥っていった。ここでの奥野瑛大さんの安西を脅す演技がまた怖い!

 矢野と美流は蜂谷に車で送ってもらい、ビニールの雨衣をつけて散弾銃を持って、萩原が屯する喫茶店を襲った。ふたりがところかまわず散弾銃をぶっ放す!鮮血が飛び散る。美流はじらすように荻原を追い、ぶっ殺した。

ふたりを雑居ビルに連れ戻した蜂谷は、オサダの「安西をやる!」と聞いて、「この役を降りたい!」と言うが「吸い取るやつからは、必ず吸い取る!」と認めなかった。オガタは拳銃を蜂谷に向けたが、(まだ使えると)止めた。「もう嫌になった!」と矢野と美流が踊りだし、蜂谷もこれに加わった!ここでの点滅するライトには参った!気分が悪くなった!

浜田はかって自分が秘書だった県知事の汚職に目をつけ、「金を毟り取るためのリーダーになってくれ」と安西を誘った。安西はオガタから「戻らないか!」と圧力を掛けられていたが妻子と別れ、浜田の誘いに乗った。

県知事から金を受け取る山梨県の石油スタンド。浜田は安西に先んじて乗り込み屋上から見物することにした。

安西が白い車で乗り込んできた。そこに、浜田のチンピラが乗り込んできた。安西が金を受け取り車に積もうとしたところを浜田のチンピラが銃を突きつける!そこに、オガタの命令で矢野と美流が黒い車でやってきて散乱銃をぶっ放す!美流が石油スタンドのガソリンを撒く

爆発!火炎の仲を逃げる矢野と美流の姿!

浜田が屋上から降りてきて「金は?」と聞く。安西が浜田を撃った。「誤解してないか?」と浜田。安西は「誤解しているかも」と応えた。浜田が「俺とオカダで、雲の上のあいつらを引き下ろす!」と言う。安西は「俺は家に帰る!邪魔するな!」とこの場を去った。

雑居ビルのバー。蜂谷はオサダに撃たれ、血まみれで転んでいた。起き上がりオガタを撃った。そして、安西を追った!

まとめ

久しぶりに邦画で激しい血の流れる銃撃戦を観た!後半は息を吞んで観た!

吸い上げる者と、吸い上げられる者。二極化した社会の中で、底辺の潰し合い。その中でも、数にも数えられない若者の悲哀。この国の現実。一本筋の通ったエンタメ作品だった。

ストーリーが面白い。物語の展開は予測不能!ハラハラドキドキ。エピソードが色々な映画や小説のオマジュになっているが、後段になって、安西がヤクザ組長のオガタ、知事の元秘書の浜田と対峙することになって、会話が家庭や地域問題からさらに国レベルの問題へと膨らんで、会話が楽しめ、監督らしい作品になってきます。

作品はあくまでもエンターテイメント。派手な銃の打ち合いが見せどころ。そして、札束が燃えるという石油スタンドのシーン。ふたりの必死に逃げるシルエットが実に美しかった。

その後の、ぐったりとした美流の姿に、脈を取って狂ったように跳ね、踊り、喚く慟哭の矢野。氷魚さんの熱演だった!

ラストシーン、まっさらの青い空の下、海辺で再会した安西と蜂谷。近づいてくる暴力団員たち。安西は「疲れた!」と持っていた拳銃を投げ出し笑った。蜂谷も笑った。カメラが引かれてふたりの姿は見えないが、1発の銃声。誰が誰を撃った!

「空を撃った!」と解釈!ふたりにはこれからやるべきことがある、死んでもらっては困ります。(笑)コロナ禍、カルト教と政治の問題やオリンピック収賄疑惑など我が国の現状を憂う。

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「キングメーカー 大統領を作った男」(2021)理念か、政権か!ソル・ギョングとイ・ソンギュンの演技に酔う!

第15代韓国大統領・金大中と彼の選挙参謀だった厳昌録を題材にした選挙戦物語。当地では今が初公開、小さな劇場でしたがほぼ満席でした。

韓国の政治情勢に疎いですが、KCIA 南山の部長たち」(2019)を観ていて、これは助かりました田中角栄早坂茂三が活動した時代とダブリ、韓国だけの物語ではないと、とても面白かったです。

監督・脚本:名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」のビョン・ソンヒョン撮影:チョ・ヒョンレ、編集:キム・サンボム。

出演者:韓国の名優ソル・ギョング、「パラサイト 半地下の家族」のイ・ソンギュン、ユ・ジェミョン、チョ・ウジン、パク・イナン、イ・ヘヨン、キム・ソンオ、チョン・べス、他。

物語は

1961年。韓国東北部の江原道で小さな薬局を営むソ・チャンデ(イ・ソンギュン)は、世の中を変えたいという思いから野党の新民党に所属するキム・ウンボム(ソル・ギョング)に肩入れし、ウンボムの選挙事務所を訪ねて、選挙に勝つための戦略を提案する。その結果、ウンボムは補欠選挙で初当選を果たし、63年の国会議員選挙では地元で対立候補を破り、新進気鋭の議員として注目を集めるようになる。その後もチャンデは影の参謀として活躍するが、勝利のためには手段を選ばないチャンデに、理想家肌のウンボムは次第に理念の違いを感じるようになり……

史実に基づいて描かれますが、「自分が正しいと考える目的を達成するために、正しくない手段を使うことは正当か?」を視点に、ウンボムとチャンデの人間ドラマが描かれソル・ギョングとイ・ソンギュンの熱演を楽しむことができます。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意):

父を無実の罪で殺害した北朝鮮から脱出、今は小さな薬屋で糊口をしのいでいるチャンデ。自由を標榜し4度の選挙に挑戦するも落選、金に窮している政治家ウンボム。チャンデはウンボムの理念に感動し選挙支援をしたいと手紙をしたためていた。そこに近所の男から「卵を盗まれた。村長に申しでても何もしてくれない」と相談され、「鶏に赤に糸を結んで相手の鳥小屋に放り込み、嘘ついて、盗まれたと申し出ろ」とコメントするシーンから始まる。このシーンがラストに繋がるので書き留めておきます。

チャンデはウンボムの演説、罵られ石を投げられても怯むことなく続ける長演説を聞いて、粗末な選挙事務所を訪ね、ここで長い時間待って、やっとウンボムに会うことができた。

チャンデが「金がなくても選挙で勝てる!1票を得るより相手の10票を減らす」と切り出すが、ウンボムに信用してもらえない。「目指すは青瓦台だ!」と叫ぶと「手紙の男か!」と興味を示し、国会議員補欠選挙の正式選挙運動員に加えられた。運動員に「先生のために、自分を犠牲にして働け!」と檄を飛ばし、この成果でウンボムは初当選を果たした。その後3回の選挙でも勝利するが、チャンデのやり方に批判が出て、選挙から遠ざけられた。

1967年の第7代国会議員選挙。ウンボムは木浦から出馬。パク・キス大統領は「5時間も演説するやつだから」と危機感を抱き、官邸が応援に乗りだすことになった。ウンボムの5時間にも及ぶ演説を数秒で見せてくれましたが。(笑)

官邸がまるで木浦に本部を置いて応援、衣類や小麦粉などを配るという金権選挙を始めた。

チャンテが選挙事務所に呼び返された。チャンテはが「真実かどうか(選挙演説文)は問題でない。勝たねば意味がない」と戦い方を明かすと、ウンボムは「世の中から疑問を持たれなくない」と反対しが、チャンテは「私を柿扱いしないでくれ!(使えるときだけ使って捨てる)それ以上にしてくれ!」と要求した。ウンボムは勝つためにこれを認めた。

チャンテは「先生のためではない!共和党を葬る!上品では勝てない!」と運動員を鼓舞。大きな倉庫に選挙事務所を構えた。運動員に芝居で対応を特訓して臨む。共和党員の制服を着て、酔っぱらい、アメリカタバコを吸い、女に悪戯し・・。(笑)不良品だからと共和党の配布品を回収して、新民党の名をつけて再配布。農村をターゲットに挨拶周り。田中角栄の選挙運動を思い出して、大笑いしました。

街頭演説会。相手候補者が「新民党はこんなものを配った!汚いことをする。木浦の恥だ!」と新民党を攻撃してきた。ウニボムは「金を配るのはおかしい、配ったなら私が謝る。金のない私にできるのは、この国の民主化に命を懸けて戦うことだ!」と演説する。これに市民の猛拍手が湧く!この状況をチャンテが見ていた。ここでのル・ギョングの演説演技が素晴らしい。私なら1票を投じます!

選挙に勝利した。が、「汚い手を使う。“影“という名がふさわしい、刑務所に入れたいほどだ」というものが出てくる。

1969、オリンピックに成功したパク・キス大統領の3選出馬がニュースとなる。ウンボムが「大統領選に出馬したい」と言い出す。長年ウンボムを支えてきたパク秘書(キム・ソンオ)が「勝ち目がない」というが、「逃げてはダメだ」とチャンテはこれを受け入れ、田舎の票集めを開始した。

新民党の大統領候補選総裁のインサン(パク・イナン)、若手の党内ナンバー2のヨンホ(ユ・ジェミョン)、それに若手のハンサン(イ・へヨン)、ウンボムが手を挙げた。ヨンホがインサンに「総裁席を約束する」と候補指名の協力を求めた。インサンは「隠居扱いするな!」と怒ったがこれを受け入れた。次にインサンがハンサンに「出馬を取り消したら役職を与える」と伝え、ハンサンはやむなく出馬を取り消した。

この状況に、ウンボムが弱気になり始め、チャンデは「勝てば私の人生は変わる。断れば夢が遠ざかるばかりだ。影の中で生きることはできない」と説得した。

チャンデはエロ雑誌に名刺をはさんでハンサンに「裏切らないでも総裁になれる」と持ち掛けた。

選挙の結果、白票が多く出て、ヨンホとウンボムいずれも過半数に達せず、ふたりの決戦投票になった。ヨンホがハンサンに自分への投票を依頼すると、ハンサンは総裁席の約束文書をくれという。ヨンホが出せるわけがない。(笑)

チャンデは再度ハンサンに「一度裏切ったやつは信用しない、ウンボムに投票して欲しい」と申し入れ、総裁席約束文を渡した。ハンサンは「君には負けた!」と投票を放棄した。

ウンボムが新民党の大統領候補に選ばれた。チャンデはウンボムと抱き合って泣いたが、「光が強くなれば影は益々暗くなる」と思った。

ウンボムはチャンデに室長のポストを与えアメリカに旅することを決めた。

大統領選挙のための公約インタビューがあった。ウンボムは「郷土予備軍の廃止」に触れた。それにKCIA室長が激怒し、チャンデに電話で「公約を撤回せよ」」と抗議してきた。チャンデは「不公平が噴出している!」と引かなかった。

ウンボムの事務所に硫酸が投げ込まれる事件が起こり、皆が戦々恐々とし始めた。ウンボムはチャンデに替えてパク秘書をアメリカに連れていくことにした。ウンボムがアメリカに発った日、ウンボム家に爆弾が投げ込まれるという事件が起きた。

チャンデはKCIAに逮捕され、「側近の陰謀」と報道された。ウンボムが帰国し、党でこの問題が審議され、「チャンテ追放」という意見が強かった。ウンボムは「事実を確認する」と結論を引き取った。

チャンテは「君の共和党に勝つという本読んだ。犯人はウンボムの甥だ」と釈放された。

チャンテはウンボムの自宅を訪ねた。チャンテは「自作自演を何故止めた!どんな取引をした」と切り出した。ウンボムは「君が動くたびに悪いことが起きる。目の上のたんこぶだ!」という。チャンテは「私の力で座につけた。演説だけでは勝てない!」と迫り、ウンボムは「傲慢だ!私は政治目標を大切にする」と返し、「爆発があったとき妻と甥がいた。君がやったのか?」と聞き、チャンデの「やった!」を確認して、チャンデを解雇した

パク・キスとウンボムの大統領選挙戦が始まった

パク・キスは1967年の木浦の敗戦を覚えていた。チャンテを支配下に置き彼の選挙戦術を採用し、さらに金を投入して慶尚道を手中に収めていく。これにウンボム陣営は全羅道を完全掌握にかかった。全羅道慶尚道という地域対立となり、韓国を東西に分けての戦いとなっていった。結果はパク・キスの勝利となったが、ウンボムの善戦が目立った選挙戦だった。

選挙が終わり、チャンテは協和党の選挙参謀ジンピョ室長(チュ・ウジン)に呼ばれた。慰労金が渡され、「役につかないか」と打診されたが、チャンテが断ると「クーデターでも成功すれば革命だ!」と言う。チャンテは「あの爆破事件はそのためか?」と聞き、市民の中に消えていった。二度と選挙の舞台に現れることはなかった。

1978年、ウンボムはびっこをひきながらチャンデの事業所を訪ねた。ウンボムは追放、投獄、拷問など、チャンデと別れた後の経験を話し「決してギブアップしない」と語った。チャンデは涙を浮かべて聞いた。そして「ある男が卵を盗まれ村長に相談すると断られたと相談にきた。貴方が村長ならどう答えるか?」と問うと、「次の日産んだ卵を渡す」と言う。「ウンボムという人はこういう人だった!」とチャンデは泣いた!

1997、ウンボムは民主的な政権交代をした初の大統領となった。しかし、そこにチャンデの姿はなかった(1986年56歳で死去)。

まとめ

前半の選挙運動の現場は「こんなバカな!」と笑えるシーンが一杯だった。笑いではない!本当にあった話。我が国でも同じで、早坂茂三さんの講演で、この種の話を沢山拝聴しました。(笑)

ウンボムが大統領候補になって、チャンデが室長となり政策に関わるようになり「理念を通すか、政権を取るか」と一気にふたりの関係が変化していく。

ウンボム邸の爆破事件はKCIAの陰謀だった。チャンテはこれを逆に利用して自分が犠牲になり、郷土予備軍廃止発言によるウンボムの劣勢をカバーしようとした。しかし、ウンボムはチャンデの自白を信じ込み、決別を決断した。同じ目的を追求してきたが、大統領という地位に就こうとするウンボムの正義には、もはやチャンテのような行動は受け入れられなかった。切ないシーンだった

しかし、時が経ち政治犯として追われ投獄され拷問を受け、「勝てば官軍」というチャンテの考えが分かってくる。これが、1978年のウンボムがチャンテを訪ねてふたりが邂逅したシーンではなかったかと思う。このシーンは監督のテーマに対する結論「政治の闇」を考えさせてくれる最高のシーンだった。

1960年から70年にかけての世情をロケや美術で再現するとともに当時の新聞記事・映像を使っての描写に、当時の世界感に浸り、感情移入できます。

ソル・ギョングとイ・ソンギュンの演技が凄い。さらにふたりの光と影という関係を、物語の進展に合わせ、際立たせていく光の演出がすばらしい。

こんな大きな政治問題を、実話という形で映像で問う韓国映画に、“すごさ”を感じます。カルト宗教と政治が問題となっている今の公開で、殊更にこの作品の意義を感じました。

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