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「聖地には蜘蛛が巣を張る」(2022)娼婦の連続殺人事件!この罪は誰のものか!正義を履き違えた人間の狂気と恐怖!

 

「ボーダー 二つの世界」(2018)のアリ・アッバシ監督が2000年~2001年イランの聖地マシュハドで起きた16人もの娼婦連続殺人事件に着想を得て作った作品。2022年・第75回カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞している

デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作作品

スヴェーデン映画で“蜘蛛”ということで「蜘蛛の巣を払う女」(2019)を連想して観ることにしたが、全く違っていた。(笑)

正義を履き違えた犯人とこれを支援する市民の狂気と恐怖、この狂気を子供による殺人現場の再現で描くラストシーンが衝撃的だった。なぜ正義を取り違えたか、これがテーマだった

監督:アリ・アッバシ、脚本:アリ・アッバシ アフシン・カムラン・バーラミ、撮影:ナディーム・カールセン、美術:リナ・ノールドクビスト、編集:ハイデー・サフィヤリ オリビア・ニーアガート=ホルム、音楽:マーティン・ディルコフ。

出演者:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ、アラシュ・アシュティアニ、フォルザン・ジャムシドネジャド、他。

物語は

2000年代初頭。イランの聖地マシュハドで、娼婦を標的にした連続殺人事件が発生した。「スパイダー・キラー」と呼ばれる殺人者は「街を浄化する」という声明のもと犯行を繰り返し、住民たちは震撼するが、一部の人々はそんな犯人を英雄視する。真相を追う女性ジャーナリストのラヒミは、事件を覆い隠そうとする不穏な圧力にさらされながらも、危険を顧みず取材にのめり込んでいく。そして遂に犯人の正体にたどりついた彼女は、家族と暮らす平凡な男の心に潜んだ狂気を目の当たりにする。(映画COM)


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あらすじ&感想

冒頭、字幕で「人は避けたいことに出会うものだ!」(イマーム・アリの“雄弁の道より”)と示される言葉から始まる物語。何を暗示するのかよくわからない!

娼婦殺人事件が発生

ひとりの娼婦が半裸で化粧して着替え、子供に「朝には戻る」と言い聞かせ商売に出かける。イスラムの国でも大胆な映像が作れるんだと思った。ところが実情はこうではないというのがテーマらしい。

TVからアメリカ同時多発テロ事件を告げるニュースが流れるなかで、この売春婦が「あそこを割いてやる」と男に責められる声。“この時代”に “この声”が大切らしい!

この娼婦は街に出て老娼婦に出会い「最悪の気分だ」と薬タバコを吸って、男を拾って車の中で稼いだ。次にバイクの男が金を見せて、「乗れ!」と誘う。誘いに乗ると、アパートに連れ込み首をビジャブ(イスラム教徒の女性が頭や身体を覆う布)で締め、絞殺。男は遺体をバイクに乗せ途中で捨てた。

娼婦連続事件取材に、本社記者のラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)がやってきた

娼婦の遺棄死体現場に急ぐ。現地のシャリフィ記者(アラシュ・アシュティアニ)と落ち合った。彼曰く「ひとり殺す度に電話を寄こす特殊なやつだ」と彼から届いた電話メモを見せた。

『ある時は明るい犯人だが、ある時は凄い剣幕で「書くな!」と怒る犯人だ。宗教的な話は避けたほうが良い。ここは宗教都市、忖度が必要だ』という。

建設現場でコンクリートの壁破砕作業している男サイード(メフディ・バジェスタニ)

仕事帰りに新聞販売店に立ち寄り“9人目の犠牲者!蜘蛛の巣殺の犯人は誰か”の新聞記事を読む。アパートに戻ると妻ファテメ(フォルザン・ジャムシドネジャド)が「父のところに顔を出して欲しい」と伝える。夫婦には息子のアリ(メスバフ・タレブ)と幼い娘がいる。サイードはアリをバイクに乗せイマール・レザー廟を見せる子煩悩な父親だった。

ラヒミは警察署で事件担当のロスタミ刑事(シナ・パルヴァーネ)に会い、事件簿の開示を求めた

ロスタミは「単独犯だ、ミスを犯したときに逮捕する。余計な批判をするな!」

と拒否し「どこかで会おう!」と言い出す。

ラヒミはシャリフィとともの判事を尋ね、事件簿の開示を要求

判事は「ある者は殺人、ある者は違うという。これは殺人ではない!イスラム法を実行しているのだ」という。ラヒミが「売春は死に値しない」と問うと「売春は社会問題だ。困窮しなければ身体を売ることはない。政府が市民を守るべきだ」と言う。判事は「この事件を醜聞に替えたら許さない!」と事件簿の閲覧を断った。

ラヒミは「10人を同じ手口で殺し、同じ地域に捨て、まだ見つからないのは誰かが頑張っているから」と考えた。その人はまさに判事だと思った。ラヒミが「娼婦と話してみたいし、自分が囮になる」とシャリフィに告げると、「君は編集長と噂になっているから、その挽回か」と皮肉を言う。ラヒミは「彼のセクハラを訴えて首になった」と応えた。

イードは息子アリを連れて義父のハジ(フィルーズ・アゲリ)を訪ねていた

ハジは「サイードは戦場の英雄だ」とアリに語る。そしてザイードに「何故軍人会に出てこない!態度が変だ、落ち着きがない」と問う。ザイード「戦争に行ったが殉教者にはなれず、何者にもなり得ていない」と打ち明けた。ハジは「殉死は神が決めること。しっかり家族を養え!家族サービスでもしろ!」と乗用車を貸した。

イードはハジから借りた車で家庭サービスにとドライブに出かけた。帰りに家族をハジ宅に預けて、「職場に道具を獲りにいく」とオートで出て行った。

夜、ラヒミは食堂で娼婦のソグラに出会い、一杯奢った。店を出て歩いているところで、バイクの男につけられが逃げ切った。

イードはソグラをアパートに連れ込み、リンゴを食べさせその隙を狙って首を締め絞殺した

死体を捨てて戻って来たところに、妻のファテメが戻ってきた。彼女は「実家であなたが女性と一緒にいたのを見たというから、子供を置いて、戻ってきた」と言う。(笑)サイードは「好きな女はお前だけだ!」とセックスをした。これをしっかり映像で「時代はここまで来ているんだ」と言わんばかりに描く

ラヒミはシャリフィとソグラの遺体検証現場に出掛けた

ラヒミは「まさか!」とソグラを見て吐いた。シャリフィが「事件は底なしの沼だ!危険だから忘れろ」と忠告した。

ラヒミがホテルで休んでいることころにシャリフィ刑事が訪ねてきた

シャリフィは「きつい現場をみたろうから、訪ねて来た」と言い、「俺は見かけはタフだが中身は繊細だ、一緒に飯を食べたい」と誘う。ラヒミが断ると、ドアを閉めて「お前は尻軽で新聞社を首になった。淫乱で誰の前でも煙草を喫う」と罵倒した。ラヒミは泣いた!

ラヒミは貧民街に住む売春婦ソグラの親を尋ねた。父親から「犯人は役所に雇われた清掃員だ。広場にいる」と聞き出した。しかし、「街を浄化しているものを警察は捕らえない」という。

ラヒミはシャリフィに協力を求め、濃い化粧で街に立った

イードはデブの女ソマイエを拾ってアパートで絞殺しようとして失敗。ハンマーで殴り殺した。ラヒミは母から「バカなこと止めて!」と言われるが、街に立ち続けた。

そこにバイクの男が近付き誘った。これをシャリフィが追った。

アパートに入ると男が首を締め始め、ラヒミはナイフで抵抗しトイレに駆け込んだ。ラヒミは警察に逮捕され連行された。

検事は警察が犯人サイードを捕らえたことを喜ぶ。しかし、シャリフィは「まだ陰謀がある」と言う

イードの妻ファテメは息子のアリに「お父さんは腐った女たちを懲らしめただけ!心配はない必ず神が守ってくれる」と教えていた。町の人々はこんな親子を支援してくれる。

裁判が始まった

イードは「道徳の乱れを糺す責任を感じてやった」と主張した。

ラヒミは殺害された娼婦ソマイエの両親を訪ね「死刑を望むか?」と聞く。両親は「死んだ者は戻らない」と賠償金を求めた。サイード「遺族の貧しかにつけ込んでいる」と感じた。

ファテメが弁護士にサイードの無罪を訴えた

弁護士は「選挙間近だから、その前に判決する」と言う。ファテメは「夫は大勢の支持者がいて、皆に愛されている」と無罪をお願いする。弁護士は「精神鑑定で無罪にする」と応えた。

ファテメの父ハジは「軍人会の仲間が協力する。神の助けで上手く行く」と慰める。ファテメは「なぜ夫は英雄を演じたの?」と聞く。ハジは「嘆願書の署名を集めている。世間は無罪で判事が死刑の判決など出せない」と説得した。

法廷でサイードは判事から「戦争の最前線で623日も闘いトラウマになり、その前から精神疾患があった。この論旨を指示するか」と問われた。弁護士も医療記録があると証言した。これにサイードは「俺が異常だ!イマーム・レザーに憑りつかれている。街の浄化だ。この狂気のどこが悪い」と反論した。ファテメはあっと声を上げた。

ファテメが留置場のサイードに面会した

ファテメが「弁護士の言うことを何故聞かないの」と責めた。サイードは「当たり前だ!俺は正常だ、支持者が狂人の味方をするか?」と反論。「支持者って誰れ?」と聞く。「ここや街の連中だ」という。この答えに泣くファテメに「息子のアリを呼べ」と指示した。

イードはアルを呼び寄せ「父さんは無実だ!神のためにやった。子供には早いが殺し方を教える」と売春婦を家に連れてきて首を締める過程を具体的に教えた

ラヒミはサイードのアパートを尋ねファテメに取材した

フェテメは「夫は使命を果たした。街の浄化が使命だった。前線で戦った殉教者の血筋を引く者はあんな女性を放っておけない!」と話した。ファテメはこのあとアリから話を聞いた。

イードに「死刑」の判決が下った

「サイードは無実だ!」と叫ぶ市民デモの声が響く中での判決に、フェテメは「すぐに日常に戻れる」と安堵した。

ラヒミは独房のサイードに面会した

イードは「仕事が残っている。聖堂付近には少なくとも200名の娼婦がいる。俺は終ってない、俺には民衆がついている」と言う。

最終判決が言い渡された

「16人の殺人、恐怖で公共の安全を犯した罪で12回の死刑。4人の遺族に賠償金を払う。加えて14年間の禁固刑と鞭打ち刑100回」と下された。

イードの独房に義父のハジとハガニー検事が訪れ「死刑執行の日、中庭を通って車のところに行け、そしてシャバへ直行だ」と言い渡した。ハガニー検事は「厳しく責めてすまんかった。演技だった」と謝った。

ラヒミとシャリフィが立会人として訪れている中での刑の執行。

イードが立会人の前を通り過ぎようとするので、ラヒミが「鞭打ち100は?」と問うとハンガー検事が「執行にミスがあった」とサイードを鞭打ち部屋に連れて行き鞭打った(芝居)。部屋から出て来てハンガー検事が「遺体は後で見せる」と言い、サイードは死刑執行室に連れて行かれた。サイードは車が来ると思っていたがそうではなかった。サイードは無理矢理に死刑台に乗せられ首を吊られ足場が外された

イードの死刑執行を終え本社に戻るバスの中で、アリから話を聞いたときの映像を見ていた。アリが幼い妹を娼婦として絞め殺す証言映像だった。

まとめ

犯人サイードの法廷での言い分には驚いた!完全に狂っているが、これが通用する社会がまだ存在していたとは

イランのマシュハド市は首都テヘランに次ぐ同国第2の大都市で、イスラムシーア派の聖廟に多数の信徒が訪れる巡礼地だ。イスラム教聖地だからこそ生まれた物語だった。サイード・ハナイひとりに課せられない罪だった

ラヒミの犯人捜し

警察、判事、マスコミ、売春婦に当たっても犯人像が明かされない。遂に自分が娼婦に成りすまし、犯人サイードを挙げた。これが事件解決の糸口となった

犯人逮捕が出来ない原因はイラン社会に深く根付く女性蔑視の風潮だった。時代に無関心だった市民たちの罪だ!「関心領域」(2023)に似たところがある。これがメッセージだった。

この風潮を子供による殺人現場の再現で描くラストシーンが衝撃的だった

死刑判決が出た後、果たしてそうなるかと、二転三転する物語の面白さ。そして最終結末。あっと言わされるその種明かしのラストシーン“子供はすべてを知っていた”。宗教問題が絡む作品を見事なエンターテインメント作品に仕上がっていた

イラン国内での制作は許されなかったようだが、イラン生まれの監督だから撮れた作品。監督の勇気を称えたい。

主演のザーラ・アミール・エブラヒミ。編集長のセクハラを訴えたことでこの事件を取材するラヒミ記者の役。実際にスキャンダルでイラクを追われた彼女の生き様が役に重なっていることを知って、彼女のリベンジのような作品だと驚いた。

メフディ・バジェスタニの演技犯人がサイードだということは早い段階で明かされるが、弱弱しい感じで極悪犯人には見えない。物語が進むにうれて、強い宗教心によるものだと分かる演技がすばらしい

クライム・ミステリーというよりイランの社会を描いたような作品だった

             ****

「関心領域」(2023)音響ホラーで!無関心の罪を問う!

 

第96回アカデミー賞(2024)で作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞した作品。いかなる作品なりやと覗くことにしました。

ホロコーストを取り扱う作品にあって、ちょっと視点が違う。

冒頭から3分にも及ぶ嫌な音響、ラストでまた数分に渡る嫌な音響。何んの音か!!終始赤ちゃんが泣き続ける!この音の中にテーマが隠されている作品

原作:イギリスの作家マーティン・エイミスの小説、監督・脚本:「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のジョナサン・グレイザー撮影:ウカシュ・ジャル、美術:クリス・オッディ、編集:ポール・ワッツ、音楽:ミカ・レビ。

出演者:白いリボン」「ヒトラー暗殺、13分の誤算」のクリスティアン・フリーデル、「落下の解剖学」のサンドラ・ヒュラー

物語は

タイトルの「The Zone of Interest(関心領域)」は、第2次世界大戦中、ナチス親衛隊がポーランドオシフィエンチム郊外にあるアウシュビッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉で、映画の中では強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所のルドルフ・ヘス所長とその家族の暮らしを描いていくというもの。


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、タイトルが表示され、これがフェードアウトして約3分間真っ黒なスクリーンに奇妙な音響が鳴り響く。そのうち鳥の鳴き声があって、明るいルドルフ一家の水辺で遊びのシーンから物語が始める

妻のヘートヴィヒが赤ちゃんを抱いている。多くの子供たちがいる家族だ。2台の高級車で館に戻る。これだけで幸せな一家に見える。

ルドルフ誕生日

朝、ルドルフは目隠しされて庭に出ると、家族から「アウシュビッツ収容所所長おめでとうございます」とテーブルの上にプレゼントのカヌーが置いてある。お祝いの言葉で食事をとり、ルドルフは馬で収容所に出掛ける。所長在任4年になる。収容所の特徴である三角屋根の塔が見える。

子供たちが学校に出て行く。ヘートヴィヒは赤ちゃんに庭の花や虫の名を教える。

家族の生活は楽園だ

そこに、収容所の囚人が手押し車に囚人らの遺品を乗せて持ってくる。食べ物は厨房に、衣類がテーブルの上にぶちまかれる。

ポーランド人の家政婦たちが「ダイエットが必要かしら」などと品定めしなから選ぶ。ヘートヴィヒは毛皮のコートを持って化粧室で試着してみる。ポケットに口紅がありこれを試してみる。幼い子供らが遺品の中から人の歯を探し出す。

彼等の生活はこれで成り立っていることなど考えたこともない

出勤したルドルフが収容所から戻り、執務室に入る。靴は下男が洗い、磨く。

焼却炉の業者が訪ねてきて、二重窯で温度が1000度にもなる効率のよい窯を勧める。ルドルフはこれを採用する。収容所で働く将校たちが誕生日の挨拶にやってくる。ルドルフはナチス将校冥利に尽きる仕事だと思っている

ルドルフが息子を連れて馬で邸内を散策。にぶい嫌な音が響くが気のもしない!

夜になると、家族で豪華な食事を楽しむ。赤ちゃんが泣き続ける。消灯の前、ルドルフは煙草を吸いながら収容所を眺める。ゴーという音がする。煙突から赤い炎が上がる。

嫌な音の中で、ルドルフは1階の部屋の灯りを消して、2階の夫婦の寝室に入る。子供部屋では、電池をつけて人の歯で遊んでいる

ルドルフが小さな女の子に本を読み聞かせる。夫婦の会話、ヘートヴィヒが「イタリアの温泉に連れていってほしい」と話し、笑い声が絶えない。

そのころ、ユダヤ人の若い家政婦が収容所の塀に沿った土盛に、見つけて食べて欲しいと、リンゴを埋めている。邸内ではこのことに気付かない。犬でさえも!(笑)

収容所の兵士の騒ぐ声、呻き声、何かが焼かれる気配を感じるが、邸内の人は何も感じない。何故か?

ルドルフの耳に転属の噂が入って来る。彼はしっかりやっているとこれまでの成果をヒムラーに送る。

ルドルフが子供たちと河で遊んでいて、収容所から出た灰が流れているのを見て、子供らを連れて邸に走り込む。子供たちを風呂で洗う。ヘートヴィヒは庭の花の手入れで気付かない。

ルドルフがラジオでサッカーの試合を聞いているところに電話が入った。転属の話だった。幼い息子が収容所から伝わる音に合わせてドラムを叩いていた。

ヘートヴィヒは母親を邸に呼び寄せた

母に準備した寝室を見せ、庭に連れ出し、プール、花壇、温室、菜園などを見せる。母親が隣の壁を気にするが「全て私のもの。塀は蔦で覆っている」と気にしない。母親は「これだけの生活が出来るとは!あなたは幸せ!」と褒めた。このとき銃の発射音で犬が哭くが、ヘートヴィヒは全く気にしない。

家族が庭にプールで遊んでいた。ルドルフがヘートヴィヒに「よそに行くことになった、オラニエンブルダ、副指揮官だ」と伝えた。(降格だ!)

ルドルフは一度邸に戻り、川辺に出て行った。「何で?頭にくる」とヘートヴィヒが彼を追った。川辺でふたりは話し合う。ルドルフは「編成替えの移動だ」と説明するがヘートヴィヒは「総統の世界。彼のいう通りにしている。ここに残る!」と言い出す。ルドルフは「頼んでみる」と話を治めた。

庭にはひとり残された母親がプールサイドの椅子で異変に気付き考え込んでいた。

夕食時、ルドルフは転属を匂わせる話をしたが子供たちは眠いと寝室に戻った。邸の灯が消える。ヘートヴィヒは寝室で赤ちゃんが泣く中で、酒を呑んでいたゴーゴーと嫌な音がする。カーテンが赤く染まる

ルドルフは上司から正式に辞令を受け、ヘートヴィヒをここに残れるよう要請した。

夜、ルドルフは子供の本を読み聞かせていた。そのころユダヤ人家政婦がバッグを持って収容所の外柵に食べ物を並べて設置していた。彼女は邸宅に戻り、ピアノを弾き、苦しみを乗り越え、陽が見つかると唄っていた。ルドルフはユダヤ人の家政婦を犯してここを去ることにした。

ルドルフは子供たちに見送られ、オラニエンブルダに異動した

朝、ヘートヴィヒが起きると母親が見えない。お手伝いに探させるが、母親は手紙を残し邸を出ていっていた。お手伝いを呼び「あなたたちも夫に言いつけて焼き殺す」と言い出す始末。

強制収容ユダヤ人の取扱いについての最終会議

強制収容所所長が一堂に集められ、ルドルフもこれに参加した。全体の20%をアウシュビッツで焼却。残りを各収容所で行うとして編成替えが行われた。ルドルフはマイダネク強制収容所所長に任命された。

参集者は会議の後、大ホールでパーティーをやる。これも異常だが誰もそう思わない!単身のルドルフは二階から眺めていた。

ルドルフはヘートヴィヒに「全員をガスで殺すことに決まった」と電話すると「もう寝る!」と返事してきた。ルドルフはマイダネクで起こる悲劇を想像し2度吐いた。ここではアウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所の歴史遺産を提示して描かれる。これには圧倒され、目を覆いたくなった。

なぜ、彼らはアウシュビッツで楽園のように生活ができたのか 

まとめ

何げない日常と地獄が隣り合う異常な空間を目の当たりにした。彼らは関心領域で無関心だった。何故彼らが異常兆候に気付かなかったか。彼らはヒトラーの世界に嵌り、全てのものを手にしていた。人間の欲望だ。普通の人が嵌る悲劇を見た。ということは、未来にも同じことが起きる可能性がある。これがメッセージだった。

「今の世界に無関心ではないか」と問われる!日常に慣れることの恐ろしさを衝く作品だった。

壁の向こうの暴力や惨殺は一斉描かれない。見えない看守の怒鳴り声、囚人の叫び声、銃声、ボイラーの唸り音だけだ。異常に気付いたのは赤ちゃんと母親のみ。“なるほど”と思った。音響でテーマを描くという面白い作品だった。

          ****

「帰れない山」(2022)どう生きるか?森羅万象の仕組みから解いてくれる!

 

タイトルから山岳遭難の話かなと思っていたら、イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説が原作で、深い意味のある作品だった。未読です。2022年・第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した大人の青春映画とのこと。

ある事情で百名山を88座で止めざるをえなくなった人生を嘆いていたが、この作品を観て、これでよかったかもしれない。また、「悪は存在しない」(2023)を観てよく分からなかったが、この作品に出会い分かる気がする。そんな作品だった。

作品の鑑賞をお勧めします

小難しいことは嫌いでもトレッキング趣味の人には堪らない映像がありますカメラは「TITANE/チタン 」(2021)のルーベン・インペンス。そして音楽に癒されます。

監督・脚本:「ビューティフル・ボーイ」で知られるベルギーの俊英フェリックス・バン・ヒュルーニンゲンと、「オーバー・ザ・ブルースカイ」などで脚本も務める俳優のシャルロッテ・ファンデルメールシュ、実生活でふたりは夫婦。

撮影:ルーベン・インペンス、編集:ニコ・ルーネン、音楽:ダニエル・ノーグレン。

物語は

北イタリア、モンテ・ローザ山麓の小さな村。山を愛する両親と休暇を過ごしに来た都会育ちの繊細な少年ピエトロは、同じ年の牛飼いの少年ブルーノと出会い、一緒に大自然の中を駆け巡る中で親交を深めていく。しかし思春期に突入したピエトロは父に反抗し、家族や山と距離を置いてしまう。時は流れ、父の悲報を受けて村を訪れたピエトロは、ブルーノと再会を果たす。ふたりは再会を喜んだが、幼いころとは自然に向き合う姿勢が違っていた。ふたりが辿り着く運命は?


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

1984年の夏両親が借りた別荘で都会育ちのピエトロ(アンドレア・パルマ)が同じ年11歳の牛飼いの息子ブルーノ(フランチェスコ・パロンベッリ)に出会った。

ふたりは会ったとき直ぐに意気投合し、野を駆けまわる。父親のジョヴァンニ(フィリッポ・ティーミ)はトリノの街で仕事に就いていが、休日のこちらに来て山歩きを楽しむ。その相棒にピエトロを連れ出す。初めて連れて行かれた山から、マッターホルン、ウグン・トルナレン、ブライトホルン、リスカム(人食い尾根)を望んだ。忘れられない記憶になった。ジョヴァンニはケルンに登山記録を書き残した。帰宅すると大きな地図に歩いたルートを書き込む。

次の休み、ジョバンニはピエトロとブルーノを連れ雪渓のある山に登った。

ジョバンニは2人の子に小さなクレパスを跳び越えさせるが、ピエトロがひるんで飛び越せない。これで登山を諦め帰宅した。このことにピエトロは2度と山に登ると言い出さなかった。

ジョバンニはブルーノを気に入りトリノの学校に入れようとした。本人もその気になり、ピエトロも喜んだが、ブルーノの父親が出稼ぎに連れ出し、これ以降ふたりは会うことはなくなった。

思春期を迎えたピエトロは父親に反発、誘われても山には出かけなかった。15年間ブルーノと会うことはなかった。

青年に育ったピエトロ(ルカ・マリネッリ)は、ドキュメンタリーを撮ったり、小説を書いたりで大学に顔を出さず、ジョバンニから「人生を無駄にするな!」と注意を受け、ふたりの間には大きな壁があった。

そのような状況下、ジョバンニが62歳で急逝

ピエトロは別荘に戻った。暖炉に火が入っていた。ブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)の心使いだった。15年ぶりの再会。お互いの成長ぶりに驚いた。ブルーノはオートバイにピエトロを乗せ、徒歩4時間かかる高地に存在する廃墟に案内した

ブルーノは「ジョバンニが理想の土地と決めた場所だ」と言いと、「廃墟を山小屋に改造する」と言う。ふたりは麓から馬で資材を運び、泊まり込みで、ひと夏で山小屋を作り上げた。ピエトロが木を植えようとするとブルーノが「生きたところでは強いが、別のところではどうか」と言った。この言葉が最後まえ気になる。

ピエトロは父を偲び久しぶりに最初に登った山に出掛けた。父の匂いがした。父がブルーノと山に登ったことを思い出し、ブルーノに感謝の気持ちで一杯だった。今になって、大切なものを失ったと後悔した

ピエトロは「毎年、夏にはここに来る」とトリノに帰った。ブルーノは「俺は先祖代々の山の民だ!叔父の残した牧場を始める」と一生ここで生活することにした。

ピエトロはレストランの厨房で働きながら小説を書き始めた

休みにはティスコに出掛け、飲み踊る。そこでラーラ(エリザベッタ・マッズッロ)に出会った。

ピエトロはラーラら仲間3人とブルーノが始めた牧場を訪ねた。ラーラは牧場の風景にそして熱く「自然の中にエコ村を作る」と語るブルーノに惹かれた。しかし、ブルーノは「融資や銀行のことが心配だ」と言い「昔ながらのチーズは作れる」とこれに賭けていた。

厨房で働くピエトロのところにブルーノから電話があった。

「ラーラが牧場を手伝うとやってくる。君たちの関係を知っているが良いか?」と聞いてきた。ピエトロは「自分は今だ独身だ。小説も書けず、何物をも成し遂げてない」とピエトロブルーノの成長を喜んだ。

ピエトロがブルーノの牧場を尋ねると、ラーラが妊娠していた

ブルーノはそんなラーラに手しぼりに拘る搾乳を教えていた。ブルーノはまさに山の民になっていた。いかし、町への出荷はピエトロに任せる。ピエトロは小説を書くために山小屋を使った。

翌年、ラーラは娘アニータを抱いていた。ピエトロは「父はもうひとりの自分とは逆の息子を見つけていた」と自分が嫌になり旅に出て変化したくなった。

ピエトロはネパールのトレッキングに出掛けた

山間の村を歩いていて、「ブルーノはこの光景に何を考えるか?」と思った。「土地の利用法、女性の手、家畜と遊ぶ子供たち。世界中の山の民はひとつだ」と思うだろう。

ピエトロがブルーノの牧場を訪ねた

ピエトロはネパールで見たヤクのバターの話をした。あらゆる用途がり、鳥葬にも使われる。人が鳥葬で骨になると、これを砕いてバターと小麦粉で練り込み鳥に食わせ完全に遺体がなくなると。

ラーラは恐ろしいといったがブルーノは「鳥になって人生を終わりたい」と返事し「お前も本1冊で有名になった」と皮肉を言う。ピエトロはブルーノの生き方が心配になった。ネパールで聞いたもうひとつの話「真ん中に高い山・須弥山、その回りを八つの山が取り巻いている。よく学ぶ者はどちらの山に登る?」と質問し「俺は八つの山に登る、これが正解だ」と話して聞かせた。

ピエトロは再び旅に出た

この旅には、カフェテラスで小説を書いていて出会ったアズミ(ラクシャ・パンタ)が一緒だった。

ピエトロは旅を終え山小屋に戻ってきた

小屋を修理しているところにブルーノが顔を出した。ふたりで料理を作りながら話した。ピエトロは「いい女性が見つかり居場所を見つけた、もうここには来ない」と告げると、ブルーノは帰っていった。

父の登山ルートを辿りケルンからメモを取り出し読んだ。

1984年8月、11歳の息子と登山、息子に先導されて山に登る日も近い。最高の登山だった」「1994年7月、相棒と同じ21歳に戻った気分だ」と記されていた。そして父の最期の文「誰にも会わず、麓に下ることもなく暮らしたい」を見た。父は世界から離れた家を夢見ていたことを知った。自分にはふたりの父、20年間都会で同居したが他人同然に父とあまり会わなくてもよく知っていた父がいた。廃墟の再建は父からの大きな贈り物だと思った

ブルーノの牧場でラーラの不満を聞いた

「部屋を貸してグリーンツーリズムを開きたい。借金でチーズでは食っていけない」と言う。ピエトロは金の支援は出来ないのでここで働くことを申し出たが、ブルーノから「お前にはやることがある」と断られた。

しばらくしてブルーノから連絡が入った

「牧場が差し押さえられた。ラーラは娘を連れて実家に戻った。誰にも会いたくない、山小屋に籠る」というモノだった。ピエトロは「冬だぞ!」と注意したが「居場所がない」という。「俺も行く!」と伝えた。

冬準備の山小屋

ブルーノは薪を作り、羊を吊るしていた。ブルーノが「前の生活の方がよかった。が、これでいい」と言う。ピエトロは「お前はいい父親だ。ここでは嫁と暮らせない。この外にも世界がある。壁がそびえているのはお前の頭の仲だ。普通の仕事を捜せ!冬だけでも」と下山を勧めた。しかし、「帰ってくれ!出て行け!」と怒鳴られた。

ピエトロはトリノの戻りラーラに会った

ピエトロが「あいつを助けたい!」と切り出すと「無理!いろいろ選択岐があったが全て断った「。私より山を選んだ。山ってなんなの?」と泣いた。

ピエトロはブルーノ説得のため再度山小屋を訪ねた

雪山だった。ブルーノがスキーで出迎えた。ブルーノは前に会ったときの非礼を侘び「人間はいつか立ち上がり自問する時が来る。自分には何ができるのかと。俺は山で暮らせる」と言った。ピエトロは何も言わず抱いてやった。

ピエトロにラーラから電話があった。

「もの凄い積雪なので救助ヘリを要請。ヘリが出動したが、山小屋にブルーノの姿はなかった。これはあの人が選んだ道!」と伝えてきた。ピエトロは「違う!」と返事した。

春になって、ピエトロは「あの山小屋はすでに役割を終え長く持たなかった。人生にはときに帰れない山がある」と呟いた。

まとめ

モンテ・ローザ山麓の自然の中で育まれたピエトロとブルーノのかけがえのない友情。ピエトロが心の友ブルーノを失くした回想として描く物語。理想を追うか現実に生きるか。どちらの生き方を選ぶかはその人に任される。が、ピエトロの悔しさが伝わる作品だった

ブルーノは自給自足で生きる理想的な自然を愛する人生を選んだが現実の厳しさに負け、亡くなった。ラストシーンで鳥がついばむ肉片はブルーノのもの。彼は自らが選んだ鳥葬によって自然に還った。ブルーノにとって悔いのない人生だったと思う。

一方、ピエトロは愛する山を渡り歩きそれを糧に小説家として現実的な生き方をした。「一番高い最初の山で友を失くした者は八つの山を彷徨い続ける」とブルーノを偲んだ。親友を失った悲しみが伝わる言葉だ。

山好きのジョヴァンニが選んだ人生。彼は仕事に追われながら、楽しみをトレッキングに求め、最期は人里離れた山小屋で過ごしたかったが、叶えられず亡くなった。腹八分のような人生だが、理想的な人生だったと思う

ブルーノの妻ラーラは自然の中で暮らすのが好きだったが、子供が生まれ、経済的に成り立たないブルーノの生き方にはついて行けなかった。

アルプスの景観、トレッキング。この映像がすばらしい。また、ふたりの青春に会わせたテンポのよさや癒しの音楽よかった

人生や自然に対する名言が出てくるのが面白い。自然にどう向き合うべきかを考えさせてくれる作品でもあった。

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「ミッシング」(2024)張り裂けるほどの絶望に、生きる!石川さとみで見せる作品だった!

 

愛しのアイリーン」「BLUE/ブルー」「空白」「神は見返りを求める」とほぼ毎年立て続けに問題作を提供してくれる吉田恵輔監督作品ということで、楽しみにしていた。「メリちん」(2006)から見ているが、凄い作品を作る監督になったという感慨が真っ先にくる作品だった。

どの作品にも徹底しているのは、人間描写のリアルさ緻密さだ人間の心に巣食っているおかしみやいやらしさ、悲観、欲望、羨望を見せつける。それが観る人に刺さり、人生を考えさせてくれる。今回のテーマは「辛いことや耐えられないことがあったとき、人はいかに折り合いをつけるかだった。「ドライブ・マイ・カー」への挑戦だ!

今回もそうだった!絶望の中にあっても決して泣くことのない主人公の夫がラストで泣く。このことに、人は何のために生きているかが分かると思った

 監督・脚本:吉田恵輔撮影:志田貴之、編集:下田悠、音楽:世武裕子

出演者:石原さとみ青木崇高、森優作、中村倫也、他。

物語は、

森下沙織里(石原さとみ)の娘・美羽が突然いなくなった。懸命な捜索も虚しく3カ月が過ぎ、沙織里は世間の関心が薄れていくことに焦りを感じていた。夫の豊(青木崇高)とは事件に対する温度差からケンカが絶えず、唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田(中村倫也)を頼る日々。

そんな中、沙織里が娘の失踪時にアイドルのライブに行っていたことが知られ、ネット上で育児放棄だと誹謗中傷の標的になってしまう。世間の好奇の目にさらされ続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じるように。一方、砂田は視聴率獲得を狙う局上層部の意向により、沙織里や彼女の弟・圭吾(森優作)に対する世間の関心を煽るような取材を命じられてしまう。(映画COMより)

幼女失踪事件に絡む両親の苦闘を軸に、TVやSNSなど現代の情報社会の問題を絡めた壮大な物語になっているこれがまるでドキュメンタリー映画のようにテンポよく描かれ、登場人物の誰かに心が刺さる。そして張り裂けるほどの絶望の中で生きる力を見出だす。観てよかったと思える瞬間だ!


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

事件から3か月が経過した。森下夫婦が沼津駅でボランティアの支援を受けて娘の目撃情報収集ビラを配っているシーンから物語が始まる。

冒頭シーンから、石川さんのこれまで見たことのない壊れた表情を観る

 3か月経つと世間の関心も希薄になる。そんな中で地元TV局のクルーがこの状況を映像に納めていた。記者の砂田(中村倫也)、カメラマンの不破(細川 岳)、新米記者の三谷杏(小野花梨)だった。

砂田記者はこのニュースに色を付けるため、沙織里に弟・土居圭吾の取材を求めた

圭吾(森優作)はミキサー車の運転手で美羽の最期の姿を見たとされ、警察の聴取を終えていたが、ネットで??と話題になっていた。

沙織里は実の弟を犯罪者にするかもしれないのに圭吾のアパートに出向き説得、取材を受けさせた。沙織里の苦渋の選択で、彼女は精神的に追いこまれていた!

砂田は「圭吾が警察で一度は不審の白い車を見たと証言し、これを取り消した」ことを取りあげ、そのときの心境を問い質した。圭吾の回答は曖昧で、圭吾の風体があやしげだから、TVを観る人には悪い印象を残す。森優作さんの演技、雰囲気が凄い!

沙織は事件時アイドルのライブに参加していた。

このことでSNSに「育児放棄の母親、自業自得だ!」と書かれ、意気消沈、怒りを夫にぶつける。夫の豊は「便所の落書きだ!」と無視を勧めるが、沙織里のこの行動は止まらない、むしろ嵌っていく。今の世の中、これが1番の苦痛となり彼女を狂わしていった。

豊は沙織里の気持ちに寄り添う大人の対応に努める出来た夫だ。青木さんの感情を抑えた演技が光る。石川さんよりこちらの演技に惹かれた。

TVで“3カ月後の森下美和失踪事件”が放送された

「豊さんが異変に気付いたのは午後7時。警察に被害届を出したのは沙織里さんが帰宅した10時だった」と放送された。沙織の写真にライブ参加のものが使われていた。

放送を見た沙織里は「砂田に協力しても美羽に関する情報はなにもない。協力は放送のネタ提供でしかない」と砂田に激しく抗議した。

圭吾は幼児誘拐犯として街の不良の餌食にされ、会社から仕事を取りあげられた

この状態で、DMによる「蒲郡で美羽を見た」という情報が送られてきた

豊は「まさか?」と思ったが、狂気の妻にはこれしかないと従った。発見者は会えないと伝えてきた。心無い、いい加減な情報だった。これが又、沙織里を追い込んでいく。沙織里はホテルで出会った少女を「美羽!」と叫び駆け寄る幻覚を見るようになった。

地方局ではなんとかキー局を出し抜きたいという想いがある。記者はこれで出世できるチャンスだ

再度、砂田に圭吾取材の指令が出たが・・

砂田には同僚の駒井記者が市長の息子のスキャンダルをスプープしたことが、本人はそうでないと言うが、負い目になっていた。

そこに「圭吾が美羽と別れ家に居たというのは間違いで夜中、車で帰ってきたのを見た」という情報は局に入った。砂田は圭吾のアパートを尋ね、取材を申し込むが断られる。そこで不破から出たのが「詩織里たちの苦しみに寄り添う」という案だった。沙織は砂田に「なんでもするから撮って!」と懇願した

砂田は悲しみの沙織里を撮ることで世間に捜査協力を訴えることにした。

沙織里の希望を受けて美羽の7歳の誕生日をSNSを見て悲しみの中で迎える映像を撮ることにしたが、その日に他の取材予定があり、1週間前倒しで撮った。いわゆるやらせだ!豊はここまでやるかと非難したが、沙織は「砂田さんの言う通りにすれば美羽は見つかる」と応じた。

そして沙織は砂田の圭吾取材に協力した

沙織は圭吾を事件現場の公園に連れ出し、激しい言葉で強引に取材を受けさせた。もう完全に狂っているとしか思えない。

砂田は沙織里を引かせ、ふたりになり、「夜中にアパートに帰ってきた?その訳?」を聞き糺した。圭吾が「賭けのスロット」と告白した。砂田は唖然とした。圭吾の告白をそのまま記事にできるか?

チーフの目黒は「子供を車に残してパチンコする親もいる。そういう無責任な大人の行動で子供が危険になる視点で映像にしたらいい」と言う。「報道ニュースでない」と砂田は「半年先にして欲しい」と頭を下げた。

砂田は別の視点で事件を追おうとして沙織里のアパートを訪ねていた。そこに「美羽が見つかった!」というメールが来た。

沙織里は喜々として警察署に出向く。豊と砂田がこれを追った。沙織里は警察署の階段を勢いよく駆け上り村岡刑事に会った。刑事は「いたずらだ!ホームページに携帯番号載せるな!」と注意した。沙織里は呆然自失、失禁した。これを豊が支えた!

沙織里はラインで圭吾に「2度と顔見せるな!死ね!」と送った。圭吾は賭けスロットに誘われた仲間の木村(サトウシンスケ)と飲み屋にいた。圭吾は木村を守るために嘘ついていた。砂田の一線を越えた取材こそ批判されるべきだ。

彼女はミカンの収穫作業も心ここにあらずで、ミカンの選別もできない、自分の心を失った。

これから2年後

沙織里と豊は駅前で美羽捜索のビラ配りを続けていた。ボランティアの支援、ビラ印刷の経費支援も細くなってくる。そんな中で豊は勤め先の漁業組合に気兼ねしながら、印刷屋には印刷部数を押さえてもらうなど、沙織里の捜索活動を支えていた。

そんな状況の中で、小学2年生の宇野さくら誘拐事件が発生

TVが「午後7時ごろ沼津駅付近で行方不明」と報じた。沙織里は美羽もこの事件に関係していると村岡刑事を訪ねた。また、砂田記者をも尋ねた。村岡は「関係は薄い」と、砂田は「ゼロではない」と言う。

沙織里と豊は宇野さくらの捜索ビラを配るボランティア活動に参加した

ビラの余白に美羽の捜索もお願いした。小野さくらの誘拐犯人は元カノと報道された。この報道に沙織は「よかった!」と声を上げた

豊は「お前、凄いぞ!」と妻の変化を喜んだ

沙織里はボランティアとして学童の交通整理に参加することにした

 沙織里はミカン収穫作業でミカンに差す光を感じるようになった。この映像は、実際に自分を失った者にでないと分からない感覚かもしれない!

圭吾が白い車の男をつけ、不法侵入するという事件を起こした

圭吾は警察に逮捕されたが、不起訴で釈放されることになった。沙織里が迎えに行った。圭吾は「昔、悪戯された男だと思って後をつけ捕まった」と話し、「美羽には悪いことをした、あのときスロット博打でいなかった」と泣いて謝った。沙織里は「バカ者!」と怒ったが、とめどなく泣いた!姉弟の感情が戻っていた。

沙織里は虹色の光が当たる美羽が壁に残した落書きに手を添えていた

 豊はネットで沙織里を誹謗中傷したデーターを持って弁護士を尋ね、法で訴えることにした。

沙織里と豊は駅前で美羽捜索のビラ配りをしていた。そこに小野親子が訪ねてきて「手伝いたい!」と申し出た。豊はさくらちゃんを見て「よく生きていた!」と泣き出した。「人の幸せを願う人。この人なら世界を変えられる力のある」と思わせてくれる。この優しさが今の世には欠けている。

豊が訴えた「ネット誹謗中傷」が認められたというニュースの中で、沙織里は学童たちの交通整理をしていた。

まとめ

作品の大部で娘・美羽を失った沙織が絶望で自分を失って行く様が、TVの報道の在り方とSNSによる誹謗中傷で描かれた

他人への無関心と不寛容の世情にあって、この作品の意義があると思う

 一見、面白さはないように思えるが、文章にはならない細かいエピソードやロケ地、映像が沢山あって、決して飽きることはない。ワークショップで選んだ俳優さんたちの大活躍で、脚本にない描き方に、こういう見せ方もあるかと面白かった。

2年後、沙織里が光を取り戻す話あっさりと描かれたが、自分を失うほどの絶望を味わった人なら納得のいくものだった。絵の作り方が上手いと思った。

この難役を石原さとみさんが渾身の力で演じて見せてくれました

TVでは見たことのない石原さんだったが、宣伝が効きすぎていて、ちょっと不自然を感じるところもあった。(笑)

これに反して夫の豊を演じた青木崇高さん、沙織里の弟・圭吾を演じた森優作さんの演技が柔らかく自然で、私的にはこちらの方に強く惹かれた。ということで、青木さんのラストシーンの涙に「この人なら世界を変えられる」「人生は生きることに意味がある」と思った。

吉田恵輔監督の作品総集編という感じで、監督の作風がしっかり出た作品だった

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「快盗ルビイ」(1988)こんなキョンキョンと真田広之見たことない!和田誠さんのユーモアで1988年を楽しむ!

 

1988年度製作作品。手に入らない作品とか。NHKBSで放送された機会に録画キョンキョン22歳、自らをアイドルと称した時代の作品相棒に真田さん小泉さん主人公で真田さんを振りままわす傑作作品。監督はこれが2作目の和田誠さん

おしゃれで、子気味いい、とにかく可愛いキョンキョンの作品です。一方、こんなひょうきんな真田さんという作品でもある。(笑)確かに、今では貴重な紗悪品です。

ファッションに歌、宝石店にタワーマンション。1988年という年の詰まった作品でした

監督・脚本:和田誠原作:ヘンリー・スレッサー撮影:丸池納、美術:中澤克巳、音楽:八木正生主題歌:小泉今日子編集:冨田功。

出演者:小泉今日子真田広之水野久美加藤和夫、伊佐山ひろ子天本英世高見恭子吉田日出子斎藤晴彦奥村公延岡田眞澄木の実ナナ陣内孝則冨士眞奈美秋野太作


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あらすじ

母(水野久美)とふたりでアパートに住む林轍(真田広之)。ある朝、窓に写る美しい女性!上の階に引っ越してきた女性。気になりつけると“遊びにいらっしゃい”。

そこで聞く話。彼女は加藤留美というフリーのスタイリストだが、本当はルビイ(小泉今日子)という名の快盗だという。轍は驚いた!

しかし、轍は勤めるDM発送会社に出勤しても彼女が忘れられない。そこに電話で呼び出しが掛かる。係長(加藤和夫)を気にしながら会話して、早退して彼女の部屋に。徹はさっそく相棒として犯罪を手伝わされる。

まずは食料品屋の親父(天本英世)から売上げ金を盗むことにした

鉄が自転車で転び、それを助ける親父さんからバッグをすり替えるというもの。先ずが轍の自転車練習から始まった。 (笑)盗んでみたが中味は大金とは程遠くて経費を差し引くと赤字だった。バッグを返すことにして役目は轍。親父さんに感謝されてキャビアを戴いた。(笑)

次が銀行襲撃を計画したルビイは轍と盗むのが楽しくて止められない。

びびる轍に「ピストルでなく窓口で脅迫状を渡せばいい」と説得するルビイ。こんな可愛い子に説得されたら断れないよ!

身だしなみをしっかりと洋服を買うところから始まった。しかし、徹が脅迫の手紙を母親の買物メモと間違えて受付嬢(吉田日出子)に渡し、バカされて失敗。大笑い!

ルビイは凝りずに、宝石店詐欺を計画した

宝石店の店主(斎藤晴彦)に「イヤリングの片方を失くした」と探させ、同じものを見つけてもらい盗むというもの。「これで大成功する」とふたりで唄い踊る!ミュージカルになっていた。(笑)

しかし、持参したイヤリングが安物で、あっさり店主に見抜かれ失敗に終わった。(笑)

タワーマンションに住む富豪から大金を盗むことにした

犯罪計画を楽しむような二人は豪華マンションに忍び込む計画。2週間かけて実行。マンションで行われるダンスパーテイに参加するふりをして1週目に管理人(奥村公延)から鍵を盗み、翌週に実行。しかし、部屋には忍び込んだが、轍が浴室に入り自動ロックで閉じ込められた。そこに家主(岡田眞澄)と彼女(木の実ナナ)が戻り、いちゃいちゃが始まる。(笑)それも知らずに轍は入浴して失敗。ルビイは配管工事人になりすまして轍を救出。鉄がバスタオルで逃げ出すという大失態。

ふたりがルビイの部屋に帰ったところに、ルビイの彼氏がやっきた

彼氏(陣内孝則)が「風呂あがりの匂いがすると」ルビイを責める。ひと騒動起こりそうな雰囲気なので轍は逃げ出した。

次の日、ルビイから会社に「夜来て!」と電話があり、夜、アパートの屋上で会った。ルビイから「あいつと喧嘩になったのはあなたが原因」と言われ「恋人に泥棒とは言えない。今なら間に合う!あの人に出した手紙を取り返して欲しい」と言われた。「捕まったらどうする」と聞くと、「手紙にヴィールスがついていると言えば返してもらえる」と教えられた。

轍は彼氏のアパートの郵便ポストを見張り、配達された手紙を盗むことに成功したが、近所の主婦(冨士眞奈美)に見つかり、お廻さんに捕まった。

警察に捕まり、手紙のヴィールス検査が行われた

警察では轍の言い分を認めたが手紙を戻してくれず、確認のため手紙を鑑識課に廻された。その結果は「“カンゲワチ”菌だ、美人の姉さんかガールフレンドがいるのか?」と聞かれた。(笑)「いいやつか、バカなやつだ」と釈放された。

ルビイのアパートに戻りこの話をすると、ルビイは「 “カンゲワチ”という名が分かるお廻りさんはしゃれた人よ、逆に読んだのよ!他に何か言った」と聞く。「いいやつかバカなやつか?と聞いた」と返事した。

するとルビイは轍を抱いてキスした。

轍は「犯罪はもうやめる。一緒に住もう。指輪買おうか?」と言うとルビイが「無理しないで!」いう。鉄が指輪を盗む案を出す。(笑)

感想

この時代。松田聖子さんや中森明菜さんに囲まれた中で “私はアイドル”と宣言したキョンキョンらしい作品だった。(笑)

 しっかりもののルビイと気の良いすこし“おっちょこ”の轍の泥棒騒動。

キョンキョンのセリフと可愛らしさ。真田さんのちょっと間の抜けた演技で見せる作品。笑った!

小泉さんの喋り方に、可愛らしさと説得力がある。これに惹かれて犯罪につき合う真田さんの阿呆っぽさが面白い。とても今日では想像できない。(笑)金持ちのアパートを狙い、風呂に入りバスタオルで逃げ出すバカ泥棒の真田さん。「なんということをさせるか和田さんは!」と笑った。まだ携帯電話がない時代の話。こんな話が作れた、いい時代だった!

ラストで彼氏を振るのに手紙を盗ませ、それがラブレターになるという“落ち“

 ふたりがキスするシーンが良い。こんにち、こんなシーンが見られるとは思わなかった。次の作戦を練るふたりを、本のページをめくるように、窓枠で幸せそうに語り合う二人をとらえたエンデイングシーン。和田さんの洒落感がたっぷり出ていてこんな楽しい時代だったんだ。1988年を感じさせる懐かしい思い出作品になりましたね。

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「メリちん」(2006)人間のおかしみや悲哀、いやらしさを描く𠮷田監督の原点を観る作品

 

「ミッシング」(2024)公開に先立ち、WOWOWが本作監督の吉田恵輔作品を紹介する中で、TOPを切って紹介した作品。自主製作時代に手掛けた監督第2作目の作品です。

演技は下手くそですが登場人物に感情移入し“情けない”自分の厭らしさを見るような気持ちにして、その結末に泣ける。今では“人間描写の鬼”と呼ばれる吉田監督らしい初期の作品を味わうことが出来た。

ユーモアも欠かせない!“メリちん”のタイトルには深い意味がある。(笑)

多くの人は観ていないと思い紹介します

監督:吉田恵輔、脚本:仁志原了、吉田恵輔撮影:志田貫之、音楽:川原真一。

出演者:後藤飛鳥、仁志原了、平井詢子、他。

物語は

幼馴染のメリー、マチ、タラちゃん。ある日、東京で俳優をしているというタラちゃんが10年ぶりに田舎に戻ってきた。メリーとマチはつき合っているが、メリーは人に言えない悩みを抱え、マチにも今ひとつメリーを受け入れることができない。タラはふたりが付き合っていることを知らず、昔のままに自分の都合でふたりを引き回す。ついに3人は・・・という切ない友情物語。

あらすじ&感想

冒頭、カガシの立つ田舎道を走るベンツ。自転車で前を走る女性のお尻が突然目に入る。(笑)タラ(仁志原了)がマチ(平井詢子)に出会うシーン。これでタラがここに帰ってきた目的が分かる。(笑)

タラは俳優というがまともな俳優には見えない!マチは当初タラとは分からなかった。(笑)タラはマチを車に乗せ彼氏はいないこと、そしてメリー(後藤飛鳥)に彼女がいないことを確認して、メリーの家を訪れた。

タラはメリーのアパートで自分好みの料理を作らせる。これに従うメリーとマチ。幼い頃3人は一緒に遊ぶ仲でタラが大将だったから。

小便する女の子を見る男の子。男の子が小便するのを見る男の子の絵図。

この絵図にキャステイングが描かれる。こういう絵は滅多に見られない。(笑)3人の幼い頃の記憶で、今だにこの関係が糸を引いている。これがテーマだ。

食事は焼肉だった。タラが俳優でることが話題になるがタラはこれを話題にすることを好まない。タラはトイレを使って水の出が悪いとメリーにケチをつける。マチが帰ると言い出すと、タラも泊まるところがあると出て行った。が、相手に断られて行くところなく車中伯することに。

マチは戻ってきてメリーと一緒に寝る。が、セックスの方はマチが断る。メリーはいつもこれが不満らしい。(笑)

タラは夜明け前にメリーのアパートのドアのところで寝ていた。(笑)

タラはマチがアパートを出たのを確認し、メリーのアパートに入った。

メリーは絵日記を書いていた。タラが水槽の亀を見て「お前みたいだ!」と言う。

タラは昔を思い出して「川へ遊びに行こう」と誘い、マチに連絡して、車の中で彼女が来るのを待つ。タラはウンコがしたくなったとアパートに入り、室内を物色。女ものがないかを点検する。(笑)

3人で川遊び

タラは東京にはない遊びだと言い、明日は幽霊屋敷だと言い出す。メリーとマチはうんざりという感じ。だが、タラには通じない。アイスを食べているところに男が近づき「フアンだから写真撮りたい」という。これにメリーとマチがびっくり。

アパートに戻ってタラの出演作「いじわるマジンガー2」を観る。しかし、一向にタラが出てこない。タラはまだ芸名のないときに撮ったという。(笑)

夜半、タラが帰ると言って出て行った

タラは車でしばらく待機して、メリーのアパートにやってきてメリーとマチが一緒にいることを確認した。そして「月曜日の7時、乱交で大勢だから立たなくても大丈夫だ」とメリーに電話を入れた。

3人は電車で廃校に行くことにしてホームで出会った

しかし電車が止まっていたため、歩いて廃校に。じゃんけんで順番を決め暗い廃校の廊下を歩くことにした。じゃんけんにタラが勝ったため最初に歩いた。タラの思い通りにならない。タラがかくれんぼしようと言い出すが、ふたりが受けなかった。(笑)

アパートに戻った3人

タラがトランプ遊びだと言い出す。マチがトイレに。メリーがトランプを捜している間に、タラはメリーの日記を読んだ。そこには「ずうずうしく嫌になる。早く帰ってくれ!タラちゃんが帰ってきたことでまたおしっこしたくなった。出来たらあいつには死んで欲しい」と書いてあった。

タラは「トランプはもういい、花火だ」と言い出す。

メリーがトイレに立つとタラがついてきて一緒に。タラが「お前はなんでそんなに便器の前に立ち、隠す。おれを見ろ!」と注意する。

花火が終って、後始末をしているマチにタラがホテルに誘ったが、マチが断った。タラはこの夜も車中伯だった。

朝、タラはメリーが酒配達の仕事に出掛けたあと、アパートに入り、マチを氷川神社に誘い出す。マチは密かにメリーにメールで知らせた。

神社でタラはマチに襲い掛かった。が、マチが強固に抵抗これでタラは諦めた。駆けつけたメリーは泣きながら戻っているマチを見た。メリーは神社に行き、タラと対峙。当初、メリーはタラのなすままに殴られていたが、反撃に出た。ふたりの戦いに勝負はつかなかった。タラは去って行った。メリーは泣いていた。

タラもメリーの激しい怒りを知り、自分のしたことがいかにばかげたことかを知る、泣いていた。タラは会社からの電話に「俺は立たない!」と怒って断っていた。(笑)

メリは「原因は俺にある。幼い頃川で遊んだとき、タラが自分の下半身を見てめり込みチンチン“メリちん”だとバカにした」と告白した。マチは「もう二度とメリちんと言わない」と誓った。(笑)

メリーが「タラは大丈夫かな」と言う。マチが「タラちゃんは大丈夫」と応え、「逃げていて御免」と謝った。

まとめ

メリーの悩み、それにつけ込んだタラ。これが幼いころのオチンチンの話。こういう話を大人になって出てくる。人としての未熟というか愚かさを見せ、それで幼馴染の関係が崩れるか。そうはならない、どこかに思いやりが残っている。こういう感情がうまく描かれていた。

メリーの悩みは分るが、それで悩むマチの気持ち。何故タラが10年ぶりに戻ってきたか。トイレでの会話や水槽の亀、アニメで暗示しながら、これを最後まで気づかないように見せるところが心憎い!おもしろい作品だった

 人間のおかしみや悲哀、欲望、羨望、いやらしさを描く𠮷田監督の原点を観る作品でした

                ****

「猿の惑星 キングダム」(2024)猿の進化に視点を合わせ観る!人間と猿は共存できるか?

 

名作「猿の惑星」を観ていない。さらに本作は“完全なる新作”だという。それなら観ようと決めました。(笑)

ところが冒頭の「シーザーの死から300年後」という物語の設定(設想)が分からない!と言うことで当初物語に入れなかった。

初心者は「猿の惑星」リプート3部作「猿の惑星:創世記」「猿の惑星:新世紀」「猿の惑星:聖戦記」の最終作「聖戦記」(2017)の結末だけは押さえて臨んだ方がいいと思います。

ことが分かってくるととてつもない面白い話だった。当初映画「アバター」のような作品と思ったらいろいろなオマージュ映像が入り「風の谷のナウシカ」になってくる。(笑)

猿は時間とともに「人類の創世記」を巡るように進化し、一方人間は退化し野生動物化していく。猿の青年ノアが唯一人間として生存していた若い女性メイと出会い成長し、ふたりで猿の王国(キングダム)を崩壊させる話。猿の進化に視点を合わせ見る物語だった。

この物語はこの結末では終わらない!次作が「人類と猿の共存を問う作品」となると思う。まさに現代の問題に直結するテーマになってくる。

監督:「メンズ・ライナー」(2014)ウェス・ボール、未見です。脚本:ジョシュ・フリードマン リック・ジャッファ アマンダ・シルバー パトリック・アイソン、撮影:ギュラ・パドス、美術:ダニエル・T・ドランス、衣装:マイェス・C・ルベオ、編集:ダン・ジマーマン ダーク・ウェスターベルト、音楽:ジョン・パエザーノ

出演者:オーウェンティーグ、フレイヤ・アーラン、ケビン・デュランド、ピーター・メイコン、ウィリアム・H・メイシー、他。

物語は

猿の惑星:聖戦記」から300年後の地球。荒廃した世界で人類は退化し、高い知能と言語を得た猿たちが地球の新たな支配者として巨大な帝国「キングダム」を築こうとしていた。若き猿ノア(オーウェンティーグ)は年老いたオランウータンから、猿と人間の共存についての昔話を聞かされる。

ある日、ノアは人間の女性と出会う。その女性は野生動物のような人間たちの中で誰よりも賢いとされ、猿たちから狙われていた。彼女と一緒に行動することになったノアは、本当の人間を知るうちに、キングダムに違和感を抱き始める。(映画COMより)


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、ヴィールスが猛威を振るい激変した地球では人間の世界は荒廃し猿のシーザーが地球の支配者となった。そのシーザーの死を火葬で送るシーンから物語が始まる。猿が “火葬“する、これだけでも大進化だ!

シーザーの死から300年の世界が始まる

イーグル族の青年ノア、アナヤ、女性のスーナは3人の絆を確かめる儀式のためワシの卵を獲りに森に入った。

儀式とは3人がそれぞれ一つの卵を獲り、持ち帰ってひとつの巣で3つの卵を育て成鳥にする。彼らは森に入り、一つ目の巣には3個の卵しかない、ひとつ残して、険しい絶壁を這いあがり別の巣を捜す。ここでは枯れ木を道具にして巣に近づく。自然を破壊させない工夫と道具を使う

これだけでも凄い進化だ!ここからまだまだたくさんの進化を見る。何を見せられているのかと眠くなるから要注意です!(笑)

彼等は帰り道、トンネルに差し掛かった

これから先はエコーの世界(人間)として立入禁止。ところがここに馬が繋がれていた。彼らは馬で村に帰ってきた。持ち帰った卵を見てノアの父コロ(ニーナ・サンディランズ)はその勇気を称えた。長老が馬についていた布の匂いに疑念を持った(人間の匂い)。

彼等はワシで漁をし、魚を干して、食べる。これを他人に分け与える

 夜、火を焚きながら、ノアが寝ているとエコーが近づいてくる。ノアは慌てて卵を抱え込み潰してしまった。朝、スーナ(リディア・ベッカム)から「今日の絆の日は延期にしよう」と言われた。スーナの判断も人間並みだ!

ノアはひとり森に入り卵を採取した。その帰り、トンネル付近で面を着けた武士団に会う。死体が転がっていた。ノアは慌てて家に帰ると村が襲われ、父は「シーザーのためだ」とノアを逃がした後、殺された。ワシのサンを空に放った

ノアは「必ずイーグル一族を見つける」と馬と旅に出た

立入禁止のトンネルを抜けた。そこは廃墟となった人間の街だった。母ターが着けていたショールが堕ちていた。サンが上空から見守っていた。夜は火を焚いて眠った。朝、歩き出すと仕掛け穴に落ちた。(笑)

罠はオランウータンのラカが設けていたものだった。(笑)

ラカ(ピーター・メイコン)はノアから村を乗っ取られた話を聞き、「そいつはマスクたちだ」と言い、「生きのびるためにはこの本を読め!知恵がいる」とシーザー本を勧めた。ラカは「シーザーは人間から学んだ。人間はここにいる。人間はゴミを漁るが、人間とエイフは共存していた。人間はシーザーにとってとても大切だ。案内してやる」と歩き出した。

夜、焚火をしていると若い女が近づいてきた

若い女はラカに懐いて居た。ラカがノヴァ(フレイヤ・ノーラン)と名付けた。「賢い奴だ!」と言い、ノアに「母のショールをやれ」と言うが、ノアはその気になれなかった。

朝、人間が放置した天体望遠鏡を発見した。ラカは「光のトンネルだ」と説明した。ノヴァがこれを覗く!ノアはこの行動に驚いた!ラカが「この女は使える。強力な武器だ」と馬を与えた。

水飲み場に着いた。人間がシマ馬の一緒に水を飲んでいた。ノヴァは「シーザーの教えに従いここで人間になる」と言い出す。ラカは身に着けていたシーザーから受け継いだペンダントをノアの首に着け、ノアと別れることにした。

人間と一緒にいたラカとノヴァ。そこにゴリラの軍隊(シルヴァ)が襲いかかる

「帝国の王プロキシマス・シーザー(ケビン・デュランド)にこの人間を見せる」と捕獲にきた。大草原にノヴァが逃げ込んだ。ラカとノアでノヴァを救い出し、逃げ切った。

ノヴァが「私はメイだ。シルヴァの居ることろが人間が居るところだ。そこに行く。場所を知っている」と言い出す。ノアは「一緒に行く」と母のショールを譲った。

急流に掛けた橋を渡る

シルヴァに先回りされていた。網を掛けられ捕られた。ラカが急流の中に消えて行った。

ノアとメイは巨大な防波堤を持つ砦に連行された

ノアはエイブたちの収容所所に、メイは人間の部屋に収容あれた。ノアは母のター、アナヤ、スーナと会うことができた。しかし、ターが「餌をくれる」と喜ぶ姿に「奴隷にされている。シーザーの教えに反する」と違和感を持った。一方メイは同室の人間の男性トレヴェイサがいた。そして沢山の本があった。彼のプロキシマスに寄生した生き方に義憤を感じた。

朝、ラッパが鳴る。捕らえられたエイブたちが集められ、プロキシマスの号令で岩山に取り付けらた巨大な扉を開くために、掛けられた綱を轢かされるどんなに引っ張っても開かない。そこら中に血痕が飛び散るという厳しい作業を強いられていた。

プロキシマスはメイに貯蔵庫(人間の残した武器などの格納庫)の扉を開ける協力を求めた

ノアは「メイから貯蔵庫に入る方法を聞け」と命じられた。ノアがメイを尋ね「読んだ本は何だ?」と聞くと「人間が残した遺産。これを取り戻して使える」と答えた。これを聞いたトレヴェイサンが「何も変わらない!」と止めに掛かった。メイはトレヴェイサンの首を締めて殺し、海に投げ捨てた。これを見たノアは「メイと共にプロキシマスを倒す」と決意した。

ノアはアナヤとスーナをメイに紹介し、絶壁を伝って砦の上に出て上からの入口を捜すことを勧めた。

4人が絶壁をよじ登った。そこに穴があった!ここから貯蔵庫に侵入した。ノアたちは人間が残した本を見た。自分たちの先祖が檻に入れられた絵があった。人形もあった。

メイはコントロール室に入り、ボタンを押した。巨大な扉が開いた

そこにプロキシマスが入って来る。メイはもう一つのボタンを押した。大堤防が吹っ飛び大量に海水が流れ込んでくる。まるで津波だ!

メイは制御プログラムハードディスクを取り外して退避した。ノアと仲間は貯蔵庫に入って来るイーグル族を上層階に誘導した。

全員が崖(貯蔵庫)のテラスに逃げ切った

そこにプロキシマスが怒り狂って攻め込んできた。ノアが“ホ~ホ~”と唇を震わせる。イーグル族の皆がこれを真似る。大軍のワシが集り、プロキシマスを海に投げ捨てた。

ノアは村に戻り、破壊された村の再建を始めた

メイは地下の研究所員に制御プログラムハードディスクを渡した。これが作動し天体望遠鏡が作動し始め、他の惑星との交信が始まった。ノアたちも覗いていた。

メイは拳銃を隠し持ってイーグル村を尋ね、ノアに会った。ノアはラカから譲り受けたペンダントをメイに譲り「シーザーは正しかった。エイブと人間は共存できる」と話した。メイは去っていった。

まとめ

設想が受け入れられれば痛快なSFアクション物語だ猿の進化、ノアの成長と家族の物語だった。オーストラリアでロケ撮影したという、美しい壮大な絵物語となっていた。

冒頭の大森林内での猿のタカ卵採取行動、激流の橋梁でシルヴァ軍に追われ網にかかるシーン、ラストの大堤防の砦の戦い。しっかり楽しめた。音響もすばらしかった。

猿の進化を追うのが楽しい。彼らの動作・表情が生き生きとしていて、これには驚いた。アバターよりリアリティを感じた。

人間と猿は共存できるか。制御プログラムハードディスクで人間が生き返る。他の惑星も気になる。メイは何者か?

ノアがメイによって得た体験はいかほどの進化をもたらすか。

この先を描くことで、民族対立が激化する今の世界にメッセージが届くと思っている。続編を期待する。

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