映画って人生!

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「ばるぼら」(2020)手塚治虫が作り上げた理想の女性?

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原作は手塚治虫さんが1970年代に発表した大人向け同名漫画。稲垣吾郎さんと二階堂ふみさんのダブル主演作ということで観ることにしました

人気作家の美倉(稲垣吾郎)がフーテン娘の“ばるぼら”(二階堂ふみ)に出会い、やがて彼女なしでは小説を書くことができなくなってしまう。はたして“ばるぼら”は創作意欲を掻き立てる女神なのかという表現者の葛藤を描いたファンタジードラマです。

この作品、すべてが手塚治虫さんの幻想で、手塚治虫さんの葛藤を美倉に投影して描かれたものと思え、そう考えて観たほうが面白い。

作家の倒錯した世界がこのような形で描かれた作品は幾つもあり、本作品に驚きはない。例えば「人間失格」(2019)。しかし、手塚治虫さん作品だから、どう描かれるかという興味があり、すべてばるぼらがその鍵を握っています。

都会が何千という人間を飲み込んで消化し、垂れ流したような女、それがばるぼら」、二階堂ふみさんがどうばらぼらを演じてくれるか。撮影をクリストファー・ドイル担当で手塚作品らしい気品のある“愛と狂気の世界”が美しく描かれています。

二階堂ふみさんは「蜜のあわれ」(2016)と「人間失格 太宰治と3人の女」(2019)で作家の妻を演じており、本作で持てる力を出し切った作品のように思います。美倉は手塚治虫さんの化身のような設定になっており、黒メガネの稲垣吾郎さんにとても合ったキャステイングでした。

監督・編集:手塚眞。撮影監督:クリストファー・ドイル、脚本:黒沢久子、美術総括:磯見俊裕、音楽:橋本一子

出演者:稲垣吾郎二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河、美波、大谷亮介、片山萌美、ISSAY、渡辺えり


2020年11月20日(金)「ばるぼら」本予告

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、ニーチェの言葉が紹介される。「愛の中には常に幾分かの狂気がある。しかし、狂気の中にはつねにまた、幾分かの理性がある」と。

遠景の新宿の街が駅地下街に収れんし、人が去った地下階段にうずくまる女“ばらぼら”。この映像が美しい!そこにサングラスの美倉美倉(稲垣吾郎)が立ち止まって覘く。と、「ヴァイオロンのため息の、身に染みて・・」と呟く女。美倉は「君過ぎし日に何をかなせし・・」とヴェルレーヌの詩で返す。この女ただものではない!朝倉はワンルームのマンションに連れて帰った。

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部屋に入ると書棚を見る。美倉の作品ばかりだ。「売ったらいくらになる?」と聞いて来る。ソファーで酒を飲みだす。美倉が風呂に入れと勧めると真っ裸になって身体を見せびらかす!(笑)

風呂に入っている間に美倉はレコードをかけ、溜まっている原稿「・・まだ誰も見たこともない陰部を鏡に映し・・・」を書いた。風呂から出たばらぼらがこの原稿を見て「くだらん!」と一蹴。(笑) 美倉は怒ってばらぼらを部屋から追い出した。美倉は耽美小説のベストセラーを連発した小説家だが、今は異常性欲に駆られ、筆が止まっているらしい。

翌日喜多川賞授賞式に出席するが、作家仲間の四谷(渋川清彦)がベタ褒めされているのを耳にして、付き人・甲斐加奈子(石橋静河)の「スピーチがあります」の呼びかけを無視して街に出て、ブテイックの美しい女性(片山萌美)に見惚れて店に入る。女性に「先生好き、最高!先生の本、何にも考えずに読めるから好き!」と言われ「バカにするな!」とセックスを始めた。そこにばるぼらが現れ「先生なにやってる!」と女の首を飛ばし、脚をぶった切る。美倉が気づくとマネキンを抱いていたのだった!(笑)こんな美倉が立ち直れるのか?

路地裏の空き地。家具や廃材が散らばった空間で、ばるぼらと美倉が酒を飲みむ。「まともな小説を書きな!才能あるんだから」と促すばるぼら

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美倉は日課の水泳中。プールの中で「悪い女に邪悪な悪魔はいない。よい女ほど愚かな悪魔はいない」とばるぼらに興味を持つようになった。(笑)

美倉はばるぼらを部屋に連れてきて、小説を書き始めた。「コーヒー!」と言ってもばるぼらではコーヒーは出て来ない。(笑)台所も掃除もダメ。部屋がゴミだらけ!そんな部屋に加奈子が原稿を取にきた。

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加奈子は部屋の変化に気付く。ばるぼらはうまく部屋を抜け出し、「こんな女にはなれない!」と、酒を呷り街を彷徨していた。(笑)

美倉は代議士の里見(大谷亮介)に呼ばれ「都知事選に出馬するので手伝ってうれ」と要請される。つき合いのある里見の娘・志賀子(美波)にも勧められる。

乗り気でない美倉がトイレに出て志賀子に会って欲情。そこにばるぼらが現れ志賀子をぶった叩いた!志賀子ではなく里見家の犬“もふもふ”だった!(笑)

この一件で美倉はばるぼらの存在理由が明らかになり、気分が高揚し頭は冴えまくっていった。

ばるぼらが行きたいというバー。ばるぼるがひとりで踊り出す。ステージで歌っていた男・柴崎(ISSAY)が「お前がいないと!戻ってくれ」とばるぼらに言い寄る。美倉が柴崎を殴った。柴崎が「俺と同じ運命になるぞ!」という。このことがあって、美倉はばらぼらを主人公に小説を書くことにした。ばらぼらは万年筆を贈った。

四谷が訪ねてきて「あまえには献身的な加奈子が向いている」というが「谷崎曰く恋愛は血と肉で作られる最高の芸術である」とこれを無視した。

里見が心臓発作で倒れ、美倉が里見のための書いた原稿が不要となりゴミ箱に捨てた。するとそこに針に刺された人形があり、里見に似ている。ばるぼらに「これで政治家のコネが無くなった!」というとキスをしてくる。ここから延々とふたりのセックスが続く。そしてばらぼらが「結婚して!」と美倉に伝えた。

クリストファー・ドイルの腕の見せ処。実にきれいに撮っています!

加奈子が美倉のマンションを訪ねて詮索をする。「出ていけ!」と叱り飛ばした。加奈子は落ちていた針に刺された人形をバックにしまい、帰っていった。ばるぼらは台所に隠れこの騒ぎを聞いていた。

この帰りに加奈子は自動車事故の巻き込まれ入院した。ばらぼらの魔力!

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美倉がばらぼらと彼女の母ムネーモシュネ―(渡辺えり)が経営する骨とう品店に、結婚申し込みにやってきた。なんと土偶のように太った女で「小説家となにか?」と聞いて来る。「人生そのもの!ばらぼらは手の届かないミューズみたいなもの。美しく男を堕落させる」と答えた。ムネーモシュネ―が結婚契約書にサインせよと強引に血判させた!

里見代議士が亡くなり、娘志賀子は葬儀にも顔を見せない美倉の態度に怒り、秘書に「消せ!」と指示した。

美倉とばらぼらの結婚式。異様な雰囲気、薬を喫って美倉が全裸で祭壇で待つばらぼらの元へ。そのとき警察に踏み込まれ大麻使用容疑で逮捕された。

以後、ばるぼらが姿を消して会うことができない。加奈子がやってきて料理を作ったりしてくれるが、ばるぼらが忘れられない。

はじめてばらぼらに会った駅地下街の階段を訪れ、街を歩いていてばるぼららしき女に出会い、追っていくとばらぼだった。ふたりの結婚は母が許されないというので、車で別荘に逃げることにした。途中で車を停め、空を眺め、ばらぼらが「もう疲れた!」という。美倉が「このまま死んでしまって誰にも見つからん、身体が腐って溶けていく」とうと、ばるぼらが突然美倉の首を絞める。驚いた祐介がばるぼらを払うと、強く頭を打って血を流す。

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別荘に入って、ばるぼらが倒れた。美倉は懸命に心臓マッサージをするが反応がない。美倉はこんなばらぼらとセックスをし、胸の肉を食べるという幻覚に襲われる中で、ペンを取り出し「お前のことを書く!」と小説を書き始めた。

感想:

美倉が倒錯した世界に落ちていく様は、暗い猟奇な話であるが、手塚作品らしく、奇想天外で、ユーモアがあって、とても創造性に富んだ物語でした。

美倉とばるぼらの激しい性愛シーン。エログロに落ちることなく品格があって美しいと見ることが出来るのは稲垣さんと二階堂さんのキャラクターによるところが大きい。おふたりのすばらしい演技に何か賞をあげたいですね!

ばるぼら。おそらく手塚治虫さんが作り上げた理想の女性。こうして彼女を理想に仕上げることで自分を高みに上げたのだと思え、手塚治虫さんにこんな一面があったのかと驚きました。

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「日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ」(2020)未来の日本に辿り着いた!

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「映画アニメSF」と銘打っての作品。とても評判が悪い、何故?湯浅監督作品で、原作が小松左京さんなのに。特別料金というから安いのか思ったらその逆!(笑)

 Netflixで10回にわたって配信されたものを映画として監督自らが監修した作品です。Netflix版を観ておらず、ノベライズも未読。ダイジェストの本作を観た感想になります。

2020年、突然の大地震が発生。東京が壊滅的な状況になる中、中学3年生と小学2年生の姉弟は父母と一緒に東京からの脱出。行く先々でも巨大な地震が断続的に発生し、彼らを追い詰めていく。父母や友人を失いない、極限状態でさまざまな局面に立ち向かいながら、未来を信じ生きることを諦めないふたりが辿りついた世界は?

原作が政治家や科学者目線で描かれたものが、ここでは家族目線で描かれ、具体的な生きる術と原作にない脱出後の日本人の生き様が描かれています。

原作当時には考えられなかったインターネットやスマートフォン、SNSなどの情報アイテムに国際化が進む現代社会の特性を加味し、“この子ら”に未来を託すという想いで描いたものだと思っています。

湯浅監督だからどんな突飛でもない世界が描かれると思っていたから(笑)、この結末には驚きがありません。その過程がぶっ飛ばされていますが、再生日本はこういう世界感の国になると思います。

映像に創造性が溢れ、もっと力強くものを期待していましたが、すこし残念でした!

原作:小松左京日本沈没、監督:湯浅政明、音楽:牛尾憲輔、脚本:吉高寿男。


『日本沈没2020 劇場編集版 -シズマヌキボウ-』予告

あらすじ(ねたばれ):

歩は400mリレーの選手として、将来はオリンピック選手を目指してグランドで練習中に地震に遭遇。控室で待機していて激しい揺れに遭遇。周りの友人が助けて!という声を聞くも、脚を怪我していたがゲーム狂の弟・剛が心配で、倒壊家屋の中を走って帰宅。この行動は問題ありですね!コーチはマニュアルを点検しておくこと!

夕方になって、家は倒壊して弟は見当たらず、灯のある高台の神社に急ぐと、近所に住む三浦七海さんに連れられ避難していた剛に、仕事を投げ出し駆けつけた父・航一郎に会うことが出来た。

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フィリピン人の母・マリが羽田に不時着した旅客機から脱出し、駆けつけてきた。家族が全員揃って、ほっとして、家族写真を撮った。マリが「生きていることが嬉しい」と声にした。

マリはフィリッピン人で航一郎と結婚し、帰化せず国籍はフリッピン。若いころ水泳選手リゾートホテルに勤務していた。

ニュースから、津波を避けるために父の発意で、集団となって安全な場所への避難が始まった。「母が亡くなった」としょげ込んでいる隣に住む17歳の古賀春生も一緒にと誘った。三叉路を前に、どちらに行くべきか?剛のゲーム友達情報から、西に進みことにした。山道を通っていて、山芋を探しに出た父が不発弾に触れて亡くなった。こんなことがあるんですね!(笑) 

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この事故で歩が落ち込み退避が進まず、母からしばしば激励を受ける。途中で男が運転する車に拾ってもらったが、ガソリンスタンドで停車中にこの男に「やらせろ!」と七海が絡まれ、母と七海でこの男を叩きのめし、難を逃れた。(笑)

富士山を望む場所。歩と七海が野原でトイレを探しているところにユーチューバーのカイトパラモーターで降りてきた。彼は世界中の秘境や危険地帯を探検し、画像をアップしている若者。富士山噴火の瞬間に挑んでいたのかな?「危ない!」とガス発生の危険性を知らせてくれた、が、時すでに遅く七海がガス地帯に入っていて亡くなった。この種事故は磐梯山で登山客が亡くなった例があります。カイトは「ここで生きるのは至難の業だぞ!」と同行することになった。

取り残されたスーパーを見つけ、誰も居ないと入ってシャツを失礼しようとしたところ、監視ロボに見つかり、老人の店主咎められた。しかし、「泊まっていけ」と言われ、世話になることにした。朝食事時、歩は古い新聞で小野寺(田所博士が日本沈没を予言するための海底調査に協力した潜水艇操縦手)の記事を見た。カイトが地面が太平洋側に傾いていることに気付き、「即、退避!」と老人に忠告した。老人のトラックで避難を始めたところに、強い地震に襲われた。

避難途中でニセコからやってきたヒッチハイカ・ダニエルに出会い、同乗させた。彼が「シャンシティはだれでも暖かく食変えてくれる!」というので、ここに一時避難することにした。これまでの地震被災教訓として宗教団体施設はとてもよい避難場所です!

生誕10周年祭ということで、暖かく迎えられた。風呂や食事に安らぎを覚えるとともに、歩には父を失った悲しみが襲ってきた。10歳の教祖“大地“に対面すれば死者に会えるという教団。率いるのはマザーと呼ばれる女性。津軽の恐山みたいですね! 歩は教祖に会いたがったが、母が「大人になって!意味がない!」と許さなかった。剛はゲームとライトによるモールス信号を空に放ち父を偲んでいた。

歩はここで寝たきりで声も出せず、目と左手の指しか動かせない男の世話を任された。歩は当初気づかなかったが、しきりに瞬きと指で(モールス)信号を送っていた。「大きな地震が来る」というもので、有名な小野寺だと分かった。しかし誰も信じない。こんな姿での小野寺登場にびっくりしました。(笑)

生誕祝いの会場で母マリがこのことを告げるが誰も信用しない。そこに大きな地震が来て大混乱、教会のシンボル土遇の像が倒れ燃え上がった。マザーは退避を指示したが、「ここが天地」と巨大な土遇とともに運命を共にする者がいた。ダニエル、老人もこの中にいた。ここでは「生きるとは何か」が説かれていた。

抽選で選ばれた日本人を海外に脱出させるための船が出航することをカーラジオで知ったマリは港に急いだ。歩はそこにいたコーチの紹介で選ばれた人として乗船が許されたが、母がペースメーカーでしか生きられないことを考えて、「家族といたい」と乗船を諦めた。きちんと並んで乗船を待つところが凄い!我先にと暴動が起きるワールド・ウォーZ」(2012)を見てください。これが実態でしょう!

小野寺が「地震が来る!」とモールスを送ってきた。富士山が噴火!地震の発生、津波が押し寄せてきた。マリたちは車で逃げたが、噴火物で春生が怪我をした。

移動する一行は、とある港でメガフロートを目にした。しかし、「純粋な日本人でないと駄目だ」と乗船を断られた。漁船の船長が乗れというので漁船で脱出することにした。海底火山の噴火でメガフロートは沈んだ!漁船も沈没したが、救命ボートに脱出。このとき歩と剛、船長は母たちのボートと別れた。

船長が亡くなって、歩と剛のふたりは恐怖と孤独のなかで、父や母を思い、笛や発火信号を上げて救援を待った。ここはテーマの肝となる部分。ふたりの生きるための術がもっとしっかり描かれるべきでしたね!

捜索していた母たちの船に助けられた。より大きな船で、小野寺がいう残された島、瀬戸内海の岡山に進むために、無人の大型ヨットに乗り換える際、ヨットの錨を切るためにペースメーカーの母が水中に潜り錨を切り離したが、二度と戻ることはなかった。歩に「運動は続けなさい!」という言葉を残した。そこにカイトが軍用水陸両用車で駆けつけ、これで温泉の湧く海浜に辿りついた。

最後に沈む島に田所博士が隠した、沈没した日本が再び隆起する情報が残されているという。場所は小野寺が知っている。地球物理でこんな話を聞いたことがない!びくりです。(笑)

沈没する日本に、春生は「そんなに嫌なら勝手に出ていけ!」、剛は「沈んであたりまえ!」、歩は「ここにいる人が好き、生きて行ける!」とそれぞれの想いをラップにして歌った!

カイトが小野寺と水陸両用車で地殻の間隙にあるデーターを見つけ、戻ってきたが、津波でテーターが沖に流された。春生が「ここは俺の出番」と津波の間隙を縫ってデーターを拾い上げ歩に渡した。が、そこに津波がやってきて彼を連れ去った。

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ドラム缶でイカダを作り、隆起場所を探して漂流中に、カイトは気球を修理して「ひとつぐらいは生きている!」と上空に飛び去った。この気球で世界中と繋がった。

歩と剛、小野寺はヘリに救助された。歩はロシアの病院に収容され足の傷が悪化し骨髄炎と診断され切断した。そこに「15歳の誕生日おめでとう」とカイト、剛、古賀先輩、小野寺、マリのアーカイブ動画が届いた。歩は泣いた!

8年後、歩と剛は憧れのエストニアに居た。クラウドやSNSのアーカイブから家族の記録、かっての日本の姿を集めた。

沈没した大地は2年後から隆起しだし、世界中から日本の領土保全がなされ、避難者が戻り日本が復興した。二重国籍が可能となり、かっての日本の姿が集められた記念館が出来、田所博士の銅像が建立された。

剛はオリンピックに日本国籍でeスポーツ代表として参加した。歩はパラリンピックの陸上走り高跳びの選手として参加。観衆に「私が今、ここに立てているのは、そのなかにいあわせた賢明なる人々の恩恵からなる礎があるからだ。それは家族であるし、集団、大きくいえば国家ということかもしれない」と感謝し、地を蹴った!

感想:

歩と剛は父母特に母マリ、そして春生、カイト、小野寺の助けを借りて、大切な人の死を乗り越え、難民としてエストニアで、決して日本を忘れることなくオリンピック選手になるまでに育ちました。何年何百年かかるか分かりませんが、沈んだ大地が次第に隆起し、“日本は再建”。地形の姿は変わるが、そこに2020年の日本がアーカウブされるという結末。小松左京さんの描く未来日本に重なるのではないでしょうか。

歩と剛が生き延びたのは、“母マリの生き方”の影響が凄く大きい。そして剛がゲームで、カイトがユーチューバーとして世界の情報に繋がっていたこと。マリはフリッピンから日本に来て母国とは異なる社会で生きる術を身に着けていた。1973年以降国内の国際化が進み、小松さんが心配した「日本人が外国で受け入れられるか?」という疑念のうち精神的、体力的な面では準備されていたということ。

歩のパラリンピック参加時の体格を見れば母親の影響はあきらかです。(笑)

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小野寺の存在が大きい。小野寺(田所博士)が持つ科学的な予知力が、絶望でなく、“生きることができる”という希望に繋がっていた。

この物語では政府の姿は描かれませんが、インターネットやスマートフォン、SNSなどの情報アイテムが発達した社会で、個人の力でどこまでやれるかが提示されています。コロナ騒動における政府対策と国民行動を見るとき、この家族の物語は大きなメッセージを発していると思います。

家族の思い出、日本の記憶が生きる大きな糧になる。

このような社会においては自分のサバイバル能力が試され、いかに自分の能力が不足しているかを痛感しました。水と同様に電池が生命維持の必需品になり、心臓マッサージや応急治療などの基本的な医療知識などのサバイバル知識が要求されます。

「サバイバルファミリー」(2017)に、このあたりがしっかり描かれています。この作品、おもしろく観ました。が、ネットやSNSなどの活躍で死の恐怖や人としての痛みが感じられず、ことが予定線上で展開され、先が読めてしまっている。Netflixで細かくチェックしたいと思っています。

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matusima745.hatenablog.com

 

「さくら」(2020)家族の悩みを全て食べたサクラ、便秘は当たりまえ!

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原作が西加奈子さんの同名小説、出演者が若手ホープ北村匠海小松菜奈吉沢亮さん出演ということで観ることにしました。原作は未読です!

サクラと名づけられた一匹の犬と長谷川家の5人家族(長男、次男、長女)と、彼らそれぞれにとって大切な人たちと繰り広げる、日々の幸せ。そんな生活が長男の事故で崩れていくなかで、サクラの存在で再生されていくというハートフルな家族の物語。次男の回想として語られます。

西さんらしい突飛な?エピソードと感性で、“家族の絆や愛の本質”を衝く作風がよく出た作品だと思いました。初めて西さん作品に触れる人には違和感があるかもしれません。(笑)

西さんの世界を表現することは難しい!特に“独特のセリフ”。次男が語部として、小説の言葉?をそのまま持ってきたのはよかったと思います。

監督:「無伴奏」の矢崎仁司、脚本:朝西真砂、撮影:石井勲、音楽:アダム・ジョージ、主題歌:東京事変「青のID」

出演者:北村匠海小松菜奈吉沢亮寺島しのぶ、長瀬正敏、小林由衣(欅坂46)、水谷果穂、山本花純、加藤雅也、趙珉和、ちえ(犬)。


映画『さくら』予告(60秒)2020年11月13日(金)全国ロードショー

あらすじ(ねたばれ)

兄長谷川一(吉沢亮)が自殺で亡くなって2年。兄の自殺で家を出た父・昭夫(長瀬正敏)が年末に帰ってくつというので、大学生の次男薫(北村匠海)が実家に戻ってきた。玄関に父の靴があったが中に入らず、犬のサクラを連れて散歩しようとする。が、先に父が連れ出していた。ふたりは会っても話をしないが、サクラで繋がっている。家族全員がサクラと繋がっている。

サクラは12歳、狭い家から広い家に引っ越したときが春で、サクラの花びらに因んでサクラと名付けた。サクラは何も喋らないが家族の喜びも悲しみ全て知り、全てを受け入れて尻尾を振ってくれる!

夕食は鍋料理。父はビールを飲む。母・つぼみ(寺島しのぶ)が「お父さんにビール!」と促すが、薫がビールを注ぐことはない。が、長女の美貴(小松菜奈)が愛想よく注ぐ。これにはある秘密があった!

昭夫はトラック運送会社に勤務し、運転手に的確に進路を伝えるのが仕事。これがとても恰好よく、子供たちには自慢の種だった。

ここからは、薫による家族の回想という形で描かれ、ナレーションは北村匠海さんです。

昭夫が“つぼみ”をデートに誘って、出てきた料理が餃子だった。つぼみは「食べられるような関係になったら・・」と食べたいのを我慢した。この想い出から、長谷川家の元旦は餃子!(笑) “出来た婚”で、最初のセックスで出来たから長男が一(ハジメ)。美貴は美しく愛おしく生まれたので、頑固でわがままだ!(笑)

前の狭い家に住んでいたころ、美貴が母と父のあのときの喘ぎを耳にして、朝食時「あの猫みたいな声なんなの?」と聞く。母は「お父さんが好きで、ふたりが魔法を出し合って、あなたが生まれてきたの!」とかなり詳しく性教育します。(笑) これが西さんの面白いところ!

美貴が産まれたときには、兄と一緒に花をプレゼントし、大きくなって“変なおじさん”フェラーリ(趙珉和)に絡まれそうになると必死に守った。三人は同じ部屋で寝ていた。新しい家に引っ越して、それぞれに部屋が与えられたが、美貴は兄と離れるのを嫌がった。こんなときにサクラがやってきて家族の一員に加わった。

兄は少年野球で活躍。家族みんなで応援した。美貴が大きくなり、ある夜、兄がそって美貴の手を解いて自室へ出て行った。「大人になることはひとりで寝ることではなく、寝れない夜を過ごすことだ」と思った。

高校生になり、兄は野球部のエースで活躍し女生徒の憧れの的。薫は自分を隠したい気持ちだった。

兄が恋人・矢島優子(水谷果穂)を家に連れてくるという事件が起こった。矢島さんは母とふたり暮らしで、訪ねてくる男に暴力を加えられるという。ちょっと暗い感じの子だった。昭夫はきれいな子だと気にいっていたが、美貴は兄を奪われると徹底的に嫌がった。しかし、矢島さんもサクラに触れることで柔らかくなり、薫は恋という力を知った。兄が「矢島は初めてでない」というのを聞き、自分も女性は欲しいと感じた。

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こんなときにサキコという名の差出人から手紙。母つぼみが狂ったように夫・昭夫を問い詰めた。昭夫の同級生・溝口先史(加藤雅也)からのもので、彼はオカマだった。家族でオカマバーを見学。母は安堵し上機嫌だった。(笑)

このサキコから「父母より好きな人が出来るよ!いつか父母に嘘をつく日が来る。嘘をつくときは愛のある嘘を!自分も苦しい、愛のある嘘をつきなさい」と教えてくれた。オカマだからと偏見を持ってはいけないと思った。これ以来、矢嶋さんがやってくると美貴の嫌がらせは激しくなった。

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雨の日、帰校時足をくじいたという須々木原環(山本花純)に出会い、家まで送って初体験した。彼女はゲンカンというあだ名で学業トップの子。廊下で会うと「ワークアップして!」とカラーのコンドームを渡された。(笑) 兄に相談すると「おめでとう」と祝ってくれた。しかしこれは父に見つかった。

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突然矢嶋さんの引っ越しが決まり、兄は悲しい別れをした。薫は何か兄のためにと思ったが何も出来なかった。兄は矢嶋さんからくる手紙を生きる力にしていたが、届かない。兄は活気を失くし、大学の寮に入ると家を出て行った。この日、美貴は部屋から出てこなかった。

美貴はバスケ部に入り、大友カオル(小林由衣)と出会った。ふたりの意気投合ぶりは評判になり、「レスか?」と噂されるようになった。噂するやつを見つけると美貴がキックで攻撃。(笑) 

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夏休みに兄が家に帰ってきた。美貴が大喜び。「サキコさんに矢嶋のことで相談すると、自分で会いに行け!といわれ、バイトで稼いでいる」という。「電池を買ってくる!」と夜の町に飛び出していった。このとき美貴から女の匂い、切ない匂いを感じた。

この夜、サクラは世界中から危険が迫っているように哭いた!

兄が車に跳ねられ、顔面の半分と片足を失い車椅子生活という大事故に見舞われた。こんな兄に美貴は子供のようにまつわりついていた。薫はゲンカンに好きな人が出来たので別れた。

退院して家に戻り、兄は玄関までの石段を車椅子で上がろうとしたが、上がれず泣き、近所の子供が顔を見て逃げる姿に絶望した。笑うことが無くなって父とも衝突するようになった。

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美貴の高校卒業式。カオルが驚くことをやってのけた。壇上で卒業証書を受け取ったあと、マイクを持って「私は長谷川美貴が好きです!」と美貴への想いを語った。美貴は進学せず、車椅子の兄と一日中一緒だった。兄はいつも直球を投げるが、神はいつも変化球を返すと嘆いた!

兄は早朝にサクラを連れて公園に行き、サクラの鎖で首つり自殺した。

美貴がランドセル一杯の矢嶋さんからの手紙を持ってきた。美貴は矢嶋さんが引っ越した以後、兄に出した手紙を隠し持っていた。薫が美貴をぶん殴った

葬儀の席で、美貴が正気を失い、焼香で失禁する始末。こんな美貴に、会葬者のなかからきれいな子という声が聞こえた。薫はこいつを殺したいと思った!

父はランドセルを背負って家を出ていった。美貴は兄の思い出だけで生きていた。家族を励ましてくれたのが溝口先史だった。薫は母と美貴、サクラを残して東京の大学に進学した。

2年ぶりに戻ってきた父と薫。家族で一の墓参り。美貴は兄の墓に手を合わせない。家に戻り、母が夕食準備しているとき、サクラが異変。父の運転で、動物病院を探して街中を駆け巡る。車の中で美貴が「お兄ちゃんのようにならない。好きな人が出来たらすぐ結婚する。お兄ちゃんは笑って死んでいった。お父さんもお母さんもお兄ちゃんは死んだけど、やっぱり生まれてよかったでしょう!」と言い、みんな泣いた。

薫は兄の姿を思い出し、神様は打てないボールばかり投げて打てないと言うが、泣いたり笑ったりしてこちらが悪送球した玉を全て受けていた。受けていたのは近くに居るのではないか、サクラだ!と思った

スピード違反でパトカーに掴まった。その時、サクラが詰まっていた便を排泄!」(笑) 皆で笑った!

感想:

仲のよい夫婦、この夫婦から生まれたよく出来た長男・一とその陰にある薫、そんな一に憧れる長女・美貴。突然に自殺で亡くなる一。これで苦しむ家族の葛藤。こういう話はよくある話、それだけに自分を重ねて観ることが出来ました。この家族の物語は普遍的なものです。

一、薫、美貴の三様の恋物語も面白い。恋とはどうあるべきか、好きになったら即告白、沢山子供を産むという美貴の告白。オカマのサキコを出してきて、ジェンダーの問題に触れるのも西さんらしい。

ラストシーン、狭い車の中で、一の想い出に涙する家族、一はそれぞれの胸に生きていることを確認。このことが、本作が、薫の家族を回想する形で出来ている所以だと思います。

そして便秘の犬・サクラが漏らす糞とともに詰まっていたそれぞれが抱える葛藤を吐き出すという結末は爽快でした。何よりも家族の悩みを全て食べたサクラ、便秘は当たりまえ。(笑) 家族には犬でも猫でも良い、動物が必要です。

出演者の皆さんの演技とてもよかったと思います。特に夫婦の性を説くつぼみ、寺島しのぶさんだから何の違和感もない、適役でした。小松菜奈さん、大変難しい役でした。もう中学生は無理、高校になって本領発揮でしたが、制服はもう無理ですね!(笑) 西加奈子原作による骨太の家族の物語でした。

             ***

韓国映画「母なる証明」(2009)

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92回アカデミー賞作「パラサイト 半地下の家族」に因んでのWOWOW「ポン・ジュノン監督特集」。「ほえる犬は噛まない」(2000)から8作品が紹介され、その1本が本作です。ポン・ジュノン監督の描く母親像を覘いてみようとこの作品を選びました。

知的障害のある息子が女子高校生殺しの容疑で逮捕され、5歳のときから薬草と鍼灸師(無免許)で息子を育てたシングルマザーの母親は、息子が殺人など犯すはずがないと信じ警察や弁護士にすがったが、無駄と知り、自らの手で事件を解決しようと奔走。明かされた事実に母としての決意が求められるというサスペンス物語。

どんなことがあっても子供には幸せになってほしい!これが“母親の本姓”!」、ましてや障碍者の母、この結末に納得でした。

「パラサイト」と同様、脚本、演技、映像に圧倒的な力のある作品。何よりも物語のリズム、テンポ”がすばらしい。

暗い作品ですが笑いもあって、ミステリアス! 物語の背景として現代韓国社会の闇にもしっかり触れており、とてもリアルなドラマでした。「パラサイト」と比べて、人を描くということではこちらが圧倒的でした。

監督・原案:ポン・ジュノ、脚本:パク・ウンギョ、ポン・ジュノ。撮影:ホン・クンピョ、美術:リュ・ソンヒ、音楽:イ・ビョンウ。

出演者:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン、イ・ヨンソク。


韓国映画 [母なる証明] 予告版

あらすじ(ねたばれ):

母親が枯れ野で無表情でぎこちなく踊り出すシーン。意味があるんでしょうが分からなかった。

薬草を調理しながら、表で遊んでいる28歳の息子トジュン(ウォンビン)とその友人ジンテ(チン・グ)をちらちらと見遣る母( キム・ヘジャ)。このシーンでどんなにトジュンのことに気配り、愛情の深さが分かります。黒いベンツがトジュンに接触して走り去った。これを追うトジュンとジンテ。さらに飛び出す母。

トジュンらはゴルフ場でこの車を見つけ“コンチキショウ“と蹴とばし、倍賞交渉するが、逆にサイドミラーを壊されたと請求された。夕食後トジュンは金をジンテに借りるとバー「マンハッヤン」に出掛けた。家の前で立ち小便するトジュンに「薬を飲め!」と勧め、おちんちんを確認(笑)、小便の後を消すという息子溺愛の母親。

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店仕舞まで待ったがジンテはやって来ず、酔っぱらって、暗夜のなかでの帰り道、女の子に出会って「一杯飲もう!」と声を掛けたが、「男は嫌い!バカ!」と断られた。道路側の小屋を覘いて、出たところで大きな石が投げられた。トジュンは、ゴルフ場で拾ったボールを投げて、家に戻り、パンツ一枚で母の横に寝た。

ジンテは深夜ゴルフ場に入り、金になると池に入り、客と揉めた際に投げ込まれたゴルフクラブを探していた。夜間の暗闇が深い濃いブルーで美しく描かれている。

翌日、廃屋の屋上で柵に掛けられた遺体が発見された。遺体はソリン女子高2年4組のアジョン(チョン・ミソン)で頭蓋骨骨折と出血多量で死亡と判定。アジョンは父母を亡くし認知症の祖母と暮らしていた。

刑事のジェムン(ユン・ジェムン)がトジュンを連行して取り調べた。トジュンは脅され、ゴルフボールの証拠と誘導質問で犯人と認定された。

母が刑務所にトジュンを尋ね「本当に殺したのか?」と聞く。「皆が殺したというから。罪が周り廻って俺に来た」という。母は「殺しても否定よ!バカだよ!」と叱ると「バカとはなんだ!」と母親にでさえ厳しい顔を見せた。

 トジュンは「バカ!」と言われると、激しく興奮する。

母親はよく知っているジェムン刑事に袖の下で近づくが、「もう終わった!」と取り合ってもらえない。

久方ぶりの殺人事件ということで、大勢の人だかりのなかで、廃小屋での現場検証が行われた。トジュンが石を持ってアジョン(モデル)の頭部を潰す映像を撮られていた。トジュンが見物客に手を振る仕草が痛々しい。

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アジョンの葬儀に母が参加し無罪を訴えた。しかし、大勢の親戚の人達から非難、暴行を受けた。絶対に犯人にしてはいけない!アジョンの祖母がマッコリを飲んで大暴れだった。(笑)

母は町で評判のコン・ソッコ弁護士を雇って、刑務所でトジュンに会わせると、「サイドミラーを壊したのはジンテ」と喋るだけ。弁護士は愛想つかして帰っていった。

母はジンテのいる小屋を訪ねると誰もいない。中に入りフロックコートを調べていると「マンハッタン」店主の娘ミナ(チョン・ウヒ)が、次いでジンテがやってきてセックスを始めた。(笑)息子にもやらせてやりたいと思ったかもしれませんね。ふたりがことが終わって酒を飲み寝込んだ隙に、血の付いたゴルフクラブを持って退出し、警察に駆け込んだ。

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ジェムン刑事がジンテを取り調べた。血はミナの口紅で、ジンテは事件とは無関係だった。(笑)雨の日だった。外に出ると廃品回収のリヤカーに古い傘があり、これを引っこ抜いて、その男(イ・ヨンソク)に金を渡した!

ソッコ弁護士は母をバーに呼び出し「精神病者の刑期は4年だ、精神病院で過ごせばよい。もう手を引け!」と酔った精神病院院長と検事を紹介し、話合いができていることを臭わした。(笑)日本も同じようなものです!(笑)

母はぐでんぐでんに酔払ってのバーからの帰り、幼いトジュン(5歳)が小瓶を持ち自分がゲロを吐く昔の出来事を思い出す。こういう映像が突然出てきて、何が隠されているんだと、次のシーンへと興味を繋ぐ演出が多い!トジュンの病気は自分に責任があると思った!

家に帰ると、ジンテが訪ねてきており、「犯人にするとはひどい。慰謝料を寄こせ!」と金を要求し、「痴情か恨みの事件。アジョンを洗え!協力する!」「遺体が屋上にあるのは不可思議だ。普通は埋めるよ。俺が殺したぞと言わんばかりだ」と協力を申し出た。ジンテも疑わしい人物と思っていたので、これには驚きました。

母は弁護士を首にして、ジンテの協力を得て、自分で犯人を見つけることにした。鍼灸に訪れる客、公園で遊んでいる子供たちからアジョンの情報を集めた。あだ名が「米餅」というのが気になった。 

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母がトジュンに「何か思い出せないか?」と尋ねると「お母さんは5歳のとき栄養ドリンクに農薬を入れて僕を毒殺しようとした」と責めてきた。「あの時は追い詰められていた!そんな悪い記憶は鍼灸で消そう!」と言うが、牢のなかではなす術もなく、泣いて刑務所を出た。母には大きなショックだった。

母は5歳のトジュンの写真をDPE屋で拡大して今の目と比較、変化はなく可愛い目だと「あの子は変わっていない!」と安心した。その店に顔に傷のある女生徒が現像写真を撮りに来て「携帯の写真現像できる?」と店主に聞く。店主がこういう子がいたと「アジョンがこの子と一緒に来たことがある。よく鼻血を出す子だった」と母に語った。

母はこの女生徒を帰校時、待ち伏せして話かけ、携帯で写真を撮るときのシャッター音を消す“変態電話”があることを知り、自分の電話もそうして欲しいと頼み、彼女の依頼で生理品を買いにいっている間に、彼女がいなくなった。

探すと2人の学生に囲まれ、「アジョンの携帯を出せ!」と脅迫している。母は電話でジンテを呼び寄せ、ジンテが脅して学生からアジョンについての事情を聴いた。「アジョンは売春をしていた。その悔しさに寝た男の写真を携帯で撮っていた」というもの。

 

母はアジョンの叔母を尋ね、金を渡して携帯の行方を尋ねると「バカ娘は出て行ったきり!」と米櫃から携帯を出してくれた。この携帯写真をトジュンに見せてると「この男!」と言い、廃品回収の男に行き着いた。

母は町外れの廃屋に住む廃品回収の男に「無料診断で鍼灸を!」と声を掛け、あの日の事件を聞き出した。男は「犯人はへんな男で・・・」と具体的に屋上にアジョンを引き上げるまでを喋った。母が「違う!夜中だから見間違ったのでしょう。まもなく釈放になる」と話を否定すると「俺が逮捕するしかないな!」という。母は背後から「息子をバカにするな!」と襲い、男の死を確認して火を放ち、山に逃げ、枯野を彷徨していた。

薬草の調理をしている母のところにジェムン刑事が来て「犯人が捕まった。精神病者のジョンバルだ」と伝えた。母は刑務所でジョンバルに会い、「お母さんいるの?」と聞くと「いない」と。母は泣き崩れた。

トジュンはジンテとミナに迎えられ、出所した。その帰り道でジンテの誘いで廃品回収者の焼け跡を尋ね、母の鍼灸具箱を見つけ持って帰った。

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家に戻って母と食事中。「ジョンパルは何で遺体を屋上に上げた?たぶんよく見えるようにして誰かが発見できるようにしたんだよな!」と母に聞いた。母は「うん」と返事したのみ。

ヨジェ商店会の親孝行ツアー。母とトジュンも参加。バスに乗ってトジュンが母に焼け跡で拾った鍼灸具箱を渡した。母は震えて、戸惑った!

バスの中で皆が踊っている。母は「私が忘れればよい」と悪い記憶を消す腿のツボに鍼を刺した。そして皆と踊り始めた。

感想:

とてもリズム、テンポのよいミステリードラマでした。当初ジンテ、次いで廃品回収男、トジュン、最後にジョンバルへと幾重にも犯人像が替わるドラマ、そのなかで結構怖いシーンも準備されており、ミステリーとして楽しめました。

母の犯人捜査がトジュンの「あんたが毒を飲ませた!」からに始まって、アジョンの携帯を経て、廃品業者に辿り着くプロセス。伏線の回収とエピソードの繋がり、見事でした。特にDPE屋で、幾つもの映像で、アジョンが浮かび上がってくる演出がすばらしい!

母が母としての本性を幾度にも試される脚本。「毒を飲ました!」とトジュンに詰め寄られ、「犯人はトジュンでない」と廃品屋を殺し、真犯人としてのジョンバルを慰問、焼けた廃品業者宅から回収した鍼灸具箱をトジュンから渡され、その都度母としての本心を試されましたが、「息子に幸せになって欲しい。私にも責任がある。犯人にしたらこの町では生きて行けない」とこれらすべてを自分の胸に納めました。“これが、母の生々しい本姓”だと納得です!キム・ヘジャの母役はドラマにぴったりの名演技でした!

ウォンビンの目の輝きと知的障害者としてときに見せる狂気の表情、トジュンの精神状態は正常と異常が“斑”で、そのバランスの取れた演技が絶妙で、すばらしかった!

最初の母親が踊るシーンがラストで明かされるという演出、驚きました!

映画の雰囲気に合わせた淡い青色の画面、カメラワーク、音楽が印象的でした。韓国映画の最高峰、すばらしい作品でした。

             *****

「ウォール・ストリート」(2010)今、観る価値がある!

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前作ウォール街」(1987)から23年後、ゴードン・ゲッコーの復活リーマン・ショック前後のニューヨーク、ウォール街を描いた作品。監督は前作のオリバー・ストーンです。証券詐欺罪で8年の刑務所暮らし。刑を終えたゲッコーが何を喋るかが作品のポイントです。(笑)

今日29年ぶりのコロナ株高。サブプライムバブルから10年目、株価にとってはひとつの節目になります。ということで、ゲッコーが何を喋ったか?ということで観賞。オリバー・ストーン作品としては評価が低い作品ですが、今観る価値があると思います。

物語は、サブプライムバブルで湧くウォール街に帰ってきたゲッコーがどうマネーゲームを仕掛けるかを軸に、疎遠になっていた娘との関係修復に挑む姿が描かれます。

本作が不評なのはマネーゲームが前作の範疇で目新しいものがなく、ゲッコーが金に執着するか娘を取るかというドラマも、盛り上がりに欠けているせいだと推測します。オリバー・ストーンが家族の絆を描くなど、そもそも似合わない!しかし、“ゲッコー語録”には考えさせられるものがあり、主役はこれです

監督:オリバー・ストーン、脚本:スティーヴン・シフ、アラン・ローブ。撮影:ロドリゴ・プリエト、音楽:クレイグ・アームストロング
出演者;マイケル・ダグラスシャイア・ラブーフジョシュ・ブローリンキャリー・マリガン、オースティン・ペンドルトン、チャーリー・シーン


映画『ウォール・ストリート』予告編

あらすじ(ねたばれ):
2001年ゲッコーはアジア株高のなかで、誰の出迎えもなく連邦刑務所を出た。バブルは突然やってくると考えていたところ、2008年6月ダウ平均株価指数が高値を付けた。

ゲッコーの娘ウィニーキャリー・マリガン)はリベラル派寄りの情報を扱うウェブサイトを運営しており、クリーンエネルギー投資に意欲をもつ投資銀行セイベルのトレーダー・ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と婚約していた。

ウィニーが目覚めTVを見るとゲッコーがゲスト出演して「欲は善か」の著者として紹介されている。すぐにTVを消したが、ジェイコブは会ってみたいと思った。

セイベルの株価が急落しはじめた。「セイベル社の損失は業界最大で、暴落が続いている。サブプライムローンで巨額の借金に喘いでいる」と報道されている。ジェイコブは何とか株価の下げを止めよう客に呼びかけるが駄目だった。

証券世界に引っ張り込んでくれた恩師で社主のルウに糺すと「どうでもいいんだ。お前はゲッコーの娘と家庭を持て!子供を育てるうちに何が大切かが分かる」と結婚を後押しされた。

ルウは連邦準備制度理事会に救済を求めたが、C・S社(チャーチル・シュワツツ)の社主ブレトン・ジェームズ (ジョシュ・ブローリン)とジュリー・スタインハルト(イーライ・ウォラック)の策謀でセイベルは政府支援が得られず実質的に倒産、ルウは電車に飛び込み自殺した。

ジェイコブはゲッコーの講演に参加した。彼は金融相場の裏を語り「銀行も消費者もひたすら金を使いまわし“テコ入れ”(レバレッジ)と呼んで自らにステロイド注射を打っているステロイド金融だ”」とサブプライム投資をこき下ろし、「一山当てようという考えが悪を産む。レバレッジ債務とは首まで借金に浸かることだ。正常な取引に戻れ!」と結んだ。

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ジェイコブはこの講演に満足し、「娘さんと結婚します!」と近づいた。ゲッコーは「娘は株屋を好かんぞ!最近の写真がないからツーショットでないやつを1枚くれんか?」と言い、一緒に地下鉄に乗って「セイベルを潰したのはブレトンだ!2000年のインターネットバブルでC・Sが瀕死の状態にあったときにセイベルが助けなかった恨みだ!」と語った。

ジェイコブが推奨している海水利用の水素発電を開発中のUF(ユナイテッド・フュージョン)社株価が“ローカスト・ファンド”に空売りされ、社長のマスターズ博士(オースティン・ペンドルトン)から支援を求められた。
「仕返しだ!」とC・S社が手掛けているハイドラ・オフショア(ギニア沖の海底油田開発会社)の株価を下げるために、「国有化される!」という噂を流しまくって18%下げ、C・S社株が8%下落した。

ジェイコブはブレトンから呼び出され、「1臆2千万の損害だ。国有化の有無を確認したらそんな計画はない。しかし、なぜ君は儲けないのか?」と問われた。「ルウが殺されたから」と白状すると、「負債には50%のレバレッジがあったから噂が事実になった!甘く見るな!度胸があるからうちで働け!」と逆にC・S社に誘われた。

ジェイコブはゲッコーに求められていたウィニーの写真を持って会い、ブレトンに誘われたことを話すと「8年も刑務所に入れられたのはブレトンの恨みだった。お前も危ないぞ!」と脅かされた。(笑)「証拠がない」と答えると、「お前も俺と同じムジナだ!」と。
ジェイコブが「ブレトンを破滅させたい!」と意中を話すと、「俺がブレトンとローカスト・ファンドの関係を洗ってやるから、君は娘と俺の中を取り持ってくれ」という。

ゲッコーのためにとサンリー・キャバレーにウィニーを誘ったが、ゲッコーが客と株の話を始め、彼女は怒って帰った。客はオリバー・ストーンだった。(笑)

中国の投資家からC・S社に新エネルギーの投資話が来た。社はババコ・ソーラー社を推奨したが、中国側は長期的な投資視点からジェイコブが押すUF社に興味を持った。ブレトンがこれで決まりだというので、資金不足で瀕死に喘ぐマスターズ博士に伝えた。

ゲッコーからローカスト・ファンドはブレトンの個人ファンドだと連絡あり、チャリテイーデナーで会うことになった。

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チャリテイーデナーには多くの投資家が参加、この作品のなかで最も見どころのある豪華なデナーシーンです。バド・フォックスチャーリー・シーン)が美人をふたりも連れても参加していた。(笑) ブルースター航空機会社をプライベートジェットのレンタル会社にして売却したという。これは昔ゲッコーがやっていたこと、バドも悪徳投資家になったようだ。(笑)

ゲッコーがブレトンのテーブルにやってきて、「サブプライムは“くず”なのにスワップ(信用保険)を買い続けている」とブレトンの投資姿勢を批判し「俺に関する嘘は言うな!お前の本性は他言しない」と言って、この話を聞いて会場の外に出ていたウィニーのところやってきて、「昔いろいろあったが許して欲しい」と謝罪した。

TVニュースが「ウォール・ストリートに死の嵐。大手株が軒並み大暴落。米国の金融界の破綻が投資家を飲み込んでいる」と伝える。ブレトンは連邦準備制度理事会に救済を求めたが、ジュリーが余りにも規模が大きいと救済に反対し、保留になった。
バブル崩壊!とジェイコブはゲッコーの言う通りになったと思った。この時ウィニーから妊娠を告げられ、自分の責任を感じた。

ブレトンの誘いで別荘を訪ねると趣味の“オートレース”をやろうという。山岳路でのレース、この映画での唯一のアクションシーン。レースが終わって中国投資家の案件はババコ・ソーラーに決まったと明かされた。ジェイコブは倫理観欠如(モラルハザード)だと激昂して別荘を去った。

ジェイコブはゲッコーを尋ねC・S社を辞めたと告げた。ゲッコーは「ブレトンには勝てない。あいつはサブプライム空売りするような男、悪の帝王だ!次のバブルがはじけるまで混乱が続く。このバブルが怖い!手を引け!」と言い「スイスに娘名義の1臆がある。降ろして俺の口座に振り込め!洗浄のためだ、金はUF社に送金してやる」という。

ジェイコブな乗り気でないウィニーを説得してスイスに渡り、ゲッコーのいう手続きを終えたが、UF社には入金されておらず、ゲッコーの事務所を訪ねると蛻の殻だった。ジェイコブはウィニーから「あんたもパパと同じ!」と家から放りだされた。

ゲッコーはロンドンで下値の株を買い漁っていた。

ロンドンから事務所に戻るとジェイコブが待っていた。ジェイコブがウィニーの腹の中の子のレントゲン写真を見せて、「娘のために1臆をウィニーに返せ!」と迫ったが、ゲッコーの頭にはマネーゲームのことしかなく、これを断った。

ジェイコブは「ブレトン・ジェイムスと資本主義の没落」という論文を書き、ウィニーに「サイトで公開して欲しい、ビッグになれ!」と渡した。マスコミや市長の目に止まり、これが連邦準備制度理事会で取り上げられた。

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ゲッコーは1臆の投資で11臆稼ぎ、大手投資銀行家ジュリー・スタインハルトと組むことになった。さて、ゲッコーはこの稼いだ金でウィニーとの仲を取りもどせるか?

感想:
ゲッコーは娘ウィニーを尋ね「人間には許しが必要だ!孫が産まれお前がいる。色々あったが父親にできないか?お前は取らないと思うから、UF社に1臆振り込んでおいた!」と告げて去って行った。どうやらふたりは邂逅したようです。(笑)
ゲッコーの投資方針はバブルがはじけた最低価格で買うでした。こんなこと言われなくても分かっていること。しかし、難しいことですよね!(笑)

マイケル・ダグラスはまり役でしたね!楽しかったです!ゲッコーは本当に改心したんですかね。“欲は善”ですから!(笑) 念のためゲッコーのバブル論を書いておきます。

バルブの元祖はカンブリア紀爆発だ。前例のないことが一瞬に起こった。これを機に数えきれない新種の生き物が出現し、我々が生まれた。人類なのだ、つまりバルブは進化をもたらすものだ。進化のバルブは自然界を淘汰し決して死なず別の形で蘇る。それは弾け、新しい時代を創る。変化に終わりはない。次のバブルはエコ・エネルギーだ。さて、バイデン登場でどうなるでしょうか?
                              ***

「461個のおべんとう」(2020)“食は人なり””人と人を結ぶ”

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弁当作りを3年間=461個、毎日欠かすことなく作り上げた人気ミュージシャンの父親と息子の心温まる物語。原作は音楽ユニット「TOKYO NO.1 SOUL SET」の渡辺俊美さんが息子さんとの実話を綴った「461個の弁当は、父親と息子の約束」。

NHKの朝の顔であった井ノ原快彦さん主演ということで、観ることにしました!タイトルからその結末は分かるような作品、料理と音楽が・・と思っていましたが、しっかりしたヒューマンドラマで、井ノ原さんでなければ描けないドラマ、「全部うまくいく気がする」がテーマです!(笑)

 “食は人なり”と言われますが、まさにこれをしっかりで描いた作品でした。シングルファーザーと高校生の息子が弁当を通して変化していく関係を、昔食べた弁当を思い出し、自分を重ねながら、楽しみました。美しい弁当に挑戦して作ってみたくなります!大したことはなんにも起きない日常が、それが人生だと、愛おしくなるような作品です。

監督は「キセキ -あの日のソビト-」の兼重淳さん。脚本:清水匡 兼重淳、撮影:向後光徳、音楽:渡辺俊美、主題歌:井ノ原快彦、道枝駿佑「Looking’4」。

主演は井ノ原快彦、道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズjr.)。共演は森七菜、若林時英、映美くらら工藤遥、坂井真紀、倍賞千恵子。多くの女性のお目当ては道枝駿佑さんでしたね!劇場を出る時にため息が聞こえます。(笑)


映画『461個のおべんとう』予告映像

あらすじ(ねたばれ):

冒頭でバンド「Ten4 The Suns」メンバーの鈴木一樹(井ノ原快彦)と専業主婦の周子(映美くらら)夫婦に長男・虹揮が産まれ、一樹がバンド活動、周子もアルバイトを始め、ふたりのすれ違いで遂に離婚。一樹と虹輝ふたりの生活が始まり、虹輝が高校受験に失敗したが、頑張って高校進学が決まったところから、「461個のおべんとう」の物語がはじまります。なぜ別れたの?虹輝はなんで父親を選んだの?と疑問が出ますが、本筋の物語のなかでちゃんと分かるので気にしないこと。むしろピンボケのスタートがこの物語「全部うまくいくように思える!」に合っているように思えます。(笑)

「Ten4 The Suns」メンバーがライブで唄う「Oh Baby!」で、一樹がいかに虹輝を愛し、離婚で罪悪感を抱いていたかが分かります。ライブもしっかり雰囲気があってよかったです!

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虹輝が高校生ということで、一樹はその生活に責任を持とうと、高校3年間休まず学校に行くことを条件に、毎日の弁当作りを約束した。

早速料理本と食材、弁当箱など必要品を揃え、弁当作りに入った。一樹の包丁の使い方も立派、揚げ物、煮物の作り方など手際よくやってしまう。どの弁当にも卵焼きを必ずつける。彼の食事を作る力は故郷福島で身につけたものだった。それでも461個作るのは大変だ!作った弁当を写真に撮って、インスタグラムに載せる。

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インスタグラムの乗せることで食べた虹輝を含む多くの人の評価を知ることができ、最大のメリットは弁当を作ることを止めることができず、自分で自分を励ましながら、料理の腕を上げることになっていった。空の弁当箱を見るとそれが励みとなり、さらに調理器具にも工夫を凝らしていく。

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最初に作った弁当がしょうが昆布。桜エビ・小松菜弁当は虹輝も喜んでナイスをつけた。ライブ開けに飲んで酔払って帰り急いで作った梅干しオムライス、虹輝は恥ずかしくって隠れて食べた。(笑)

1年遅れの高校生・虹にはプライドもあり、友達がなかなか作れなかったが、出汁のみで勝負の卵焼き弁当で、仁科ヒロミ(森七奈)と田辺章雄(若林時瑛)という友を得た。ヒロミはこの弁当を食べるために学校に来るみたいだった。(笑)

弁当を作るようになって一樹の曲作りにもいい影響が出て、レコーデイング担当・矢島真香(阿部純子)から良いアルバムが出来そうだと喜ばれる。

1年生の夏休み。北海道フェスに誘っても行かなと言い、「何でパパは離婚したの」と聞き、部屋に篭ってしまった。この年頃特有の精神感情が出てきたようだった。

虹輝は1年上で中学同級生の柏木礼奈(工藤遙)に会い、恋して、髪を染めダイエットが始まった。何度もヒロミに「やめとけ!」と促されたが止まらない。ダイエットのために弁当を残し、遂に父一樹に見つかった。一樹は「食べ物は大切にしろ!」と言う以外に叱らなかった。

一樹は虹輝のダイエットを心配し、食べて欲しいとダイエット弁当を考案。矢島真香を連れて飲んでいても、店主にメニューを相談してカウンターで作るという有様。一樹に好意を持つ真香もこの親子の関係に驚く。

弁当がカバンに入らないと持っていくことを渋る虹輝に、きちっとカバンを整理して弁当を入れ、「うまく行くと思えばうまく行く!嫌なことに後向きになるな!自分に自信を持て!」と励ました。が、虹輝が「父さんは上手くいっているのは周りに甘えているから、母さんにもそうだった!」と反発し、母親を尋ねて「俺には父親を選べる」と母・周子とその恋人と一緒に生活したいと漏らす。周子は当惑した。

虹輝の柏木への想いは柏木に彼氏がいることがはっきりして、ヒロミに救われ、柏木を諦めることができた。(笑)

一樹も虹輝の扱いに不安を抱き、純子さんに「息子に会ってくれないか!」とプロポーズするが、「私が一樹さんと一緒になったら、虹輝君がどうなるの!あなたは先を想像しないから怖い!」と一樹の申し出を断った。

一樹と虹輝の間に起こった分裂危機。一樹は初心に戻り、最初の弁当レシピから見直し、“父親の味”に賭けて弁当作り続けることにした。虹輝もいつものように弁当を持って登校した。

虹輝は3年生となり、大学進学を目指し予備校に通うが、学科の方も難しく、将来への不安から、追い込まれていった。ヒロミが息抜きに遊ぼうと言ったことに強く反発したことから、友達を失ってしまった。

こんな時に、一樹は福島のコンサートに出演するため、しっかり弁当を作って、メモを残して、家を出て、震災地を見ているところに、学校から虹輝が登校していないという知らせが入った。一樹は周子に虹輝と連絡を取るよう連絡してコンサートに出演し、久しぶりに実家に寄り母の菜津子(倍賞美津子)と姉の咲江(坂井美紀)に会っていた。

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母から「一樹はなんでも食べるから大きな男になる!」と言われ、食の大切さを再認識し、母の作る料理を手伝っていた。倍賞さんが喋る福島弁は心に沁みます!こんな母に育てられたら、一樹のような心の大きな男になれます。

虹輝はひとりになりたかった!ひとりになってみて友人の有難さを知り、ヒロミに謝罪した。

虹雄はヒロミ、章雄と一緒に遊びに出ての帰りに母周子のカッフェを訪ねると、一樹の弁当が話題になった。周子が「明日の弁当を作らせて欲しい」と一樹に電話してきた。

さて、一樹は母の作った弁当を持って学校に行ったか、父との約束が試されるときがきた。

感想:

虹輝は父の作る弁当で将来の友を手に入れ、不安な青春期をうまく乗り切り、大学生を目指す。一方、一樹も弁当を作りことで虹輝の心情を把握して強い父子の絆が結ばれ、バンド仲間との友情に恵まれ、一樹にとっても大きな成長でした。予想したとおりの展開ですが、臨場感のある音楽ライブシーン、鎌倉というロケーション、感情のこもった俳優さんたちの演技を楽しむことができました。

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全部うまくいく気がする」という人生観。福島の婆ちゃんが説く「何でも食べる子が大きく育つ!」という言葉。「食は人なり」です。一樹は大らかな人柄で、食体験から出た素晴らしい言葉を持って生きています。

卵焼きは弁当の基本。何度も見せてくれますので挑戦しなくてはなりません!

                                ***

韓国映画「無垢なる証人」(2020)自閉症者の証言を信じますか?

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家主を窒息死させた容疑の女性を弁護する弁護士が、唯一の目撃者である自閉症の少女の証言を巡り、検察と対決する韓国の法廷ドラマ

とても上質なエンタメ法廷ドラマで、日本での公開館が非常に限られたのが残念だったかもしれません。WOWOW初放送で観賞。

韓国映画をあまり見ないので、深いところは分かりませんでしたが、うまくできた作品だと思います。裁判劇を通じて、自閉症者への暖かい接し方、弁護士としての正義が描かれます。“お金より正義のためにと奔走する弁護士が今の日本にいるだろうか!”と感動しました。

監督は「戦場のメロディ」「優しい嘘」のイ・ハン。出演はチョン・ウソン、キム・ヒャンギ、イ・ギュヒョンチャン・ヨンナム、ヨム・ヘラン、キム・ジョンス、チョン・ウォンジュン、キム・サンユン注目はキム・ヒャンギです。


『無垢なる証人』予告編

あらすじ(ねたばれ):

人権団体弁護士のヤン・スノ(チョン・ウソン)は、年老いた父親の面倒を見ながら、46歳になるも平弁護士を続けていた。

そこに有力弁護士事務所長ビョンウ(チョン・ウォンジュン)から声が掛かり、「もうちょっと垢をつければ使える弁護士になれる」と「鼻腔閉鎖による窒息死」事件、自殺に見せかけて主人を殺害したという家政婦オ・ミラン(ヨム・ヘラン)を擁護する国選弁護士を命じられた。逮捕の決め手は自閉症をもつ少女イム・ジウ(15歳)が目撃者だということ。

ジウ(キム・ヒャンギ)はとても純粋な子。ゲームが好きで、ゲーム中に“異音”を感じて向かいのウンチク邸を見ると女性が「ぎゃあ!やめてください旦那さま・・」と叫び揉み合うふたつの影を見た。

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スノは刑務所でミランに会い事件を確認すると「主人キム・ウンテクは精神病で自殺だ」と言い“飴”を差し出すような愛想の良い女性だった。

ジウについては検察が証言を取ったビデオを見た。証言台に立たせれば誰も信じないからこうして証言を取ったのだろうと言われていた。

犯行現場確認にウンテク邸を訪ねると、近隣の人は「彼女はやっていない」という。部屋には息子のキム・マンホ(キム・ジョンス)が居た。会計事務所を経営していて「ミランを弁護する気はない」という。部屋の窓からジウの家を確認した。

特別児童養護学校を訪ねジウの症状を聞いた。「ジウの自閉症は一般的な自閉症とは異なり、知能が高く、話の筋が通っている。自分の世界を持っていて、開くのが大変だ」。

帰りに「発がん性ナプキン被害者」訴訟を担当している大学同期の女性弁護士キム・スインを訪ねた。訴訟裁判の先行を聞くと「想像以上に腐っている、壁の高い国だ!」と嘆く。「訴訟は長引くから保証金に焦点を絞れ!現実を見ろ!負けるのも必要だ!」と諭した。というより自分に言い聞かせていた。(笑)

刑務所でミランと打ち合わせ。現場にあったブタンガスはウンテクが買い自分で使ったことを確認した。

 公判準備。

弁護士のスノと検察担当のイ・ヒュンジュン検事(イ・ギュヒョン)が判事に呼ばれ、ジウの証人喚問について意見を求められた。判事裁定でジウが証人台に立つことに決まった。

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 スノはジウの証言能力を知るため、下校時のジウを追うと、学友のチェ・シネ(キム・サンユン)と一緒だった。ジウが犬の鳴き声が激しく反応するパズルやクイズが好きだった。

 第1回目の裁判。第1次公判では国立科学軍事検査研究所のコ・ジュホン研究員に対する尋問だった。ミランがウンテクにビニール袋を被らせブタンガスを注入して殺害したことを立証するために検事側が用意した証人。

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 ウンテクが袋を破ろうとする力とこれを阻止するミランの力のどちらが強いかの論議。スノがジュホンの論文を逆に利用してウンテクの抵抗力が強いことを主張し、ウンテクがブタンガスを販売店で購入するビデオを提示して、ミランが殺そうとしたのではなく自殺を止めようとしたことが立証された。判事から次回公判にジウが召喚すると告げられた。

 スノは下校するジウとシネを掴まえて、数学パズルをしたり、ラーメンを食べたりでジウの心を掴むよう過ごしていた。

 所長ビョンウからキャバレーに呼び出された。同席していた生理ナプキン社のイ・ジュンがホステスに金を配っていた。彼女たちを使ってインチキ情報をばら撒いているらしい。ビョンウから「キム・マンホが顧問弁護士を探しているので君を推薦した」と告げられた。

 夜、スイン担当の訴訟裁判がうまく行ってないことを知り彼女に電話しようとしているところにジウがクイズの回答を送ってきた。これを機会に朝、夕5時にクイズを出すことにした。ジウから近づきたいらしい!

 ある日、ジウを校門で待っていると、いつも一緒のシネに殴られていた。シネはジウを守る振りをしてうまく利用していたのだった。スノはジウを特別児童養護学校の救護室で休ませ、母親(チャン・ヨンナム)を呼び特殊児童学校への転校を勧めた。母親はジウには2歳で新聞を読むほどの特別な能力があり、問題ないと受け付けなかった。

 ジウを家に送って、部屋でゲームをしながら、「あの夜の事件で何を見たか」と探りを入れた。ジウがセリフと会話を覚えるのが得意だというから、「あばさん(ミラン)はどんな顔をしていた?」と聞くと、「人の心は難しい」という。彼女は壁一面に「笑い」「怒り」の写真を貼って、その時々顔とその人の心を分析していた。「お母さんは怒った顔なのに私を愛している。おじさんは笑っているが、私を利用するんですか?」と聞いてきた。スノは重要な情報を掴んだ!ここらがヨンヒこの作品のうまいところです。

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 第2次公判。ジウに対する尋問。ミランはウンテクを殺すときの表情は攻撃的であったというジウの証言の検証。ビョンウは「自閉スベクトラム症の理解」という文献を示し、「自閉症のものは他人の考えや感情など簡単には理解できない!」とジウの証言は信用でしないと主張した。スノは実際に色々な表情の顔を展示してジウに読ませ、「精神病患者がつまり特別な障害のある人が私の被害者の行動が攻撃だったか救助のどちらかだったかなど判断できない」とビョンウの主張を支持した。

 スノの主張で、ミラン無罪判決は決定的なものとなった。が、検事は控訴すると思った。

 公判が終わって、ジウが「私は精神病患者ですか?」と抗議。母親も激しく抗議してきた。スノは「自分は弁護士の仕事をしただけ」と答えた。

 結審で、判事はジウの証言能力からミランは「無罪」と宣告した。法廷で傍聴していたキム・マンホが微笑んで出て行った。そして、ミランがスノの話しかけにも返事せず、携帯で(息子)と会話しながら、急いで退廷した。

 スノはミランの態度の急変とキム・マンホの態度に疑問を抱き、ふたりの関係を追った。ミランの子が大病で入院中だが金がないで困っていた。キム・マンホの父親ウンテクは孤児院に遺産の全額を寄付すると意志表示していた。

 スノはこの状況を知って悩んだ!「弁護士には守秘義務がある!でも・・」。

 雨の日。ミランが動いた!下校中のジウに「今、この顔どんな顔?私は殺していないよ!あんたの口を割いてやる!」と脅した。

 スノがジウに電話したが出ない。遂に決心してイ・ヒュンジュン検事に電話した。

ヒュンジュン検事がジウの再出廷を促した。母親が反対したがジウは「証人になりたい。私は読むのも表現するのも上手いが弁護士さんが慣れないと無理。本当のことを喋りたい!」と出廷を望んだ。このことをイ検事がスノに伝えた。

 父からの誕生日カード。「法律家になったときは嬉しかった。世の中は非情に矛盾だらけで失敗して辛いが、失敗しない者はいない。自分を愛して欲しい!」を読んで、再審に臨んだ。

 再審。ジウを証言者に呼んで再審が始まった。所長ビョンウが「ジウは証人として不適切!」と発言。スノは「普通とは違うが必ずしも劣るということではない!」と自分が着けていたネクタ柄の星数(108個)を読み取らせ、ジウの瞬間的な解読力を展示して、あの夜ジウが見た光景を文章にさせた。ジウはミランがウンテクにビニール袋を被せて殺す際喋った言葉を語った!

 スノは「自分の恥ですが、証人を違う人間だと決めつけていた」と告白して、ジウへの尋問を終えた。

 裁判が終わってジウは特別児童養護学校に転校、「普通の人になろうと無理をしていた」と告白した。

 感想:

第1審と2審で判定をひっくりかえし、その理由を、自閉症就中アスペルガー症候群者の証言に偏見を持たず信じること、そして裁判における弁護士の正義とし、簡潔にして明瞭裁判における正義を訴えています。サイドストーリーとしての「発がん性ナプキン被害者」訴訟。強者が弱者に勝つという裁判の実情。これと比較しながら描き、現在の社会に繋がる作品という上手い脚本でした。

弁護士としての強さと優しさを持ち、特にジウに寄り添っていくチョン・ウソンの演技、見事でした!

この映画の立役者はキム・ヒャンギ自閉症アスペルガー症候群を見事に演じ、自閉症者を健常者より劣るという視点でみてはならないとことをしっかり訴えました!今後の活動に注目です!

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