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「異人たち」(2923)ゲイの孤独と愛、華族の絆を描く! 沢山泣いて、生きる力を貰った!

 

LiLiCoさんが“王様のブランチ”で涙しながら「見て欲しい!」と訴えた作品。これで観ることにしました。(笑)

日本を代表する名脚本家・山田太一の長編小説「異人たちとの夏」を、「荒野にて」「さざなみ」のアンドリュー・ヘイ監督が映画化。1988年に大林監督によって映画化されています。しかし、その記憶は極めてあいまい。こんな状況での鑑賞。

主人公は脚本家。12歳で父母を交通事故で亡くし、亡き父母と邂逅・・と同じ設定でありながら、1980年代の“ゲイの孤独と愛”“青族の絆”を描き、このテーマが今の時代に繋がるという、原作とは別物の作品になっている。沢山泣いて、生きる力が貰える作品だった。「自分が生きている限り親は生きている、また会いたい!」と体感させてくれました。

監督・脚本アンドリュー・ヘイ、原作:山田太一脚本:アンドリュー・ヘイ、撮影:ジェイミー・D・ラムジー美術:サラ・フィンレイ、衣装:セーラ・ブレンキンソープ、編集:ジョナサン・アルバーツ、音楽:エミリー・レビネイズ=ファルーシュ。

出演者:SHERLOCK シャーロック」のアンドリュー・スコット、「aftersun アフターサン」のポール・メスカル、「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベル、「ウーマン・トーキング 私たちの選択」のクレア・フォイ

物語は、

12歳の時に交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム(アンドリュー・ヘイ)。ロンドンのタワーマンションに住む彼は、両親の思い出をもとにした脚本の執筆に取り組んでいる。

ある日、幼少期を過ごした郊外の家を訪れると、そこには30年前に他界した父と母が当時のままの姿で暮らしていた。それ以来、アダムは足しげく実家に通っては両親のもとで安らぎの時を過ごし、心が解きほぐされていく。

その一方で、彼は同じマンションの住人である謎めいた青年ハリー(ポール・メスカル)と恋に落ちるが……。(映画COMより)


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、夜明け前。アダムが脚本を書き始めるワープロの手が進まない。そこに火災報知機が鳴り出し、アダムが部屋を飛び出て、タワーマンションを見上げる。古いタワーマンションで、残っているのは5階のアダムとその上のハリーだけだ。

部屋に戻りレコードを聴いているとハリーが日本のウイスキーを持って「飲まないか、ゲイでないならやらなくてもよい」と誘う。アダムは断った。

アダムは両親との思い出を基に脚本描くために古い写真を持って故郷を訪ねた

電車で4~5時間かかるサンダー・ブラッド駅近くの田舎町に着き家を捜していて夜になり、若い父親(ジェイミー・ベル)に出会った。父の案内で見覚えのある邸宅に着いた。母(クレア・フォイ)が暖かく迎えてくれた。父母はアダムがロンドンで脚本を書いていることにことのほか喜んだ。この夜はこれで「また来る」と別れた。

マンションに戻ったアダムはエレベーターでハリーに出会った

その夜ハリーは脚本を書き始めた。朝、マンションの外で手を振ってアダムを見て、彼の部屋を尋ねた。アダムは「ゲイなんだ」と告白。これにハリーは「それは古い!今はクイアだ」という。アダムはゲイという言葉で禁欲していたが、アダムはクイアという新しい言葉でセクシュアリティを捉え「クイアは上品でフェラはやらない」と誘った。同性愛に対する感覚が違っていたふたりが、アダムのリードで結ばれた。「今夜止まっていくか」とハリーが聞くが、アダムは断った。

アダムは雨の中、両親を訪ねた。所用で父は不在だった

雨に濡れていて、父の衣類を借りることにした。着替えするアダムを見て母は「大きくなった。父親にそっくりだ」という。母の「恋人はいるか」に「いない、自分はゲイだ」とカミングアウトした

母は「世間はどう思うか」「子供を作らないのか」「エイズになったらどうする」とゲイに対する古い考えで聞いてくる。アダムを全て問に「今の世界では問題ない」と答えたが、母は納得しなかった。「帰って!」という母の言葉でアダムはマンションに戻った。

マンションに戻ったアダムは雨に濡れたせいか発熱した

尋ねて来たハリーが介護してくれ、「風呂に入って温まれ!」という。ハリーが何でセックスを避けたんだと聞く。アダムは「セックスの先は死だった(エイズ)。君の時代には考えられないだろう」と答えた。このあと「ハリーには許せる」と話し、ふたりはセックスをした。

ハリーが「クイアだと父親に話したことで勘当された。身体が悪いわけではない」と嘆く。この話にアダムは泣いた

時代が変わってもこんな偏見が消えないことに痛みを感じ、ふたりは精神的に深く結びつくようになっていった。

アダムが両親を尋ねると、母は買い物で、父しかいなかった

父は母親から聞いたと言い、アダムに「知っていたら嫌だった」と言う。アダムが「クリスマスツリーの飾りつけで女の子の気分を味わった」と話すと父が「悪かった!」と泣いた。

アダムとハリーはナイトクラブに出掛けゲイカップルとしで飲んで踊った

ナイトクラブの雰囲気に浸り、ふたりは踊り、キスをしてゲイカップルであることを隠そうとはしなかった。ハリーがアダムにケタミン薬を与え、アダムは酩酊状態に陥った。

ふたりはアダムの部屋でともに過ごす。アダムは脚本書き、ハリーはTVを観る、食べて、セックスをして、ナイトクラブに出掛ける。

ハリーに異変が出て来たハリーは一人でクラブに出掛ける。アダムがこれを追う。電車で出かける、アダムが追う。ハリーの孤独はアダムと一緒にいるだけでは開放されなかった。

アダムがクリスマスツリーを飾る両親の部屋にいた

両親は「抱き締めてやれなかった君が寂しいときに・・」と歌いながらツリーを飾りつける。アダムが手伝う。三人で写真を撮った。「これ現実?」と聞くと母が「そうよ!」と言う。「いつまで?」と聞くと「分からない、隣の部屋で寝たら」という。

アダムは大人でありながら赤いパジャマを着てベッドに寝ていた

そこに母はきて添い寝してくれる。母が「とっくに死んでいる、新しい場所に行きなさい、ごめんね!」と言い、父が「お前なら大丈夫だ」という。アムはこんな夢の中にいた。

アダムがベットで目覚めると、そこにハリーがいた

ハリーが「クラブで母の名を叫ぶから連れ戻った」と言い、「俺がついているから大丈夫だ」とアダムを抱き締めた。アダムは両親が亡くなった交通事故について喋った。父は即死、母に病院に運ばれた。母の失った目玉を必死に探したと。これにハリーが「怖い経験をした」と同情した。アダムは「このときの寂しさが年と共に固まってしこりになり、ゲイであることに悩み、自暴自棄になった」と打ち明けた。ハリーがこれに同情するので、アダムは両親にハリーを合わせることにした。

アダムはハリーを伴って両親の家を訪ねた

アダムが幾らドアーを叩いても誰も出てこない。アダムはハリーにロンドンに帰ってもらった。

アダムはベットに寝かされていた。両親が「あの人はハンサムだね」と褒める。アダムは「愛かどうかわからない」と言うと父が「彼は君を愛している」と言い「ここにいてはダメだ」という。アダムが「少しでも長くいたい」とせがむと「三人でお前が好きな世界に行こう」と提案した。

アダムはショッピングセンターに行きたいと言った

ファミリレストランに寄った。父が「俺は即死だったか?」と聞く。「そうだ」と答えると「私に言ってもらいたいことはないか?」と聞く。父は「今はっきりとわかる。家族がひとつになった」と言った。父と母はジュースを飲んで意識が遠くなりながら「ハリーと仲良くしろ!」と声を残していなくなった。

アダムはマンションに戻り、ハリーの部屋を訪ねた

ハリーの姿がない!異臭がする。衣類がソファーにある。風呂を覗くとウイスキー瓶がありハリーは亡くなっていた!衝撃的な幕切れだった!

すると後ろからハリーが現れた。アダムが「両親と別れて来た」と言うと「あの夜は辛かった!君の部屋にいったときだ」という。

アダムは「怖かったんだ」と謝った。「死体を見つけただろう。腐った匂いだ。誰も見つけてくれなかった。俺の親はどこだ!」と喚く。アダムはここにいる」とハリーを自分の部屋に誘った!

アダムが「両親は君を見た」と伝えると、「ちゃんと別れたか?」と聞く。「別れた」と言うと、ハリーは「怖いんだ!」と言い寄った。アダムは「俺がついている。しこりが大きいんだ」とハリーの頭髪に触った。

まとめ

ゴーストストーリーと言うよりゲイの孤独と愛、家族の絆を描いた物語だった。

 アダムは両親の事故死でゲイであることカミングアウト出来ず深い喪失感と孤独の中で生きていたが、異人となった両親に出会い、両親の愛でゲイであることが認められ、ゲイとしての人生を掴んだ。

一歩のハリーはその振りをして家族から放りだされ、酒に溺れ深い孤独の中にあった。ゲイという差別の痛さを知るふたりは痛みを分かち合うように恋に落ちたが、親の愛が得られないハリーの痛みが癒されることはなかった。

最期、ハリーは孤独に耐えられず亡くなっていた。アダム”がハリーを「俺が死神から守る」と抱き締める衝撃的なシーンで終る

ゲイとして親にカミングアウトして愛を得ることが如何に重要か、親は子をどう生かしてやるかを説いた作品だった

最初のふたりのセックスにいい感じを持たなかったが、ドラマの進展でこれが全くなくなったことに気付いた。多分に1980年代にゲイたちの制作曲が用いられていて、これがシーンによく合っていたことにもよる。

これこそが本作の製作目的だろう

アンドリュー・ヘイ監督自身の体験から出た結論だと言い、とてもリアリティがあり、今の時代に繋がるテーマだと思う。

ゴーストストーリーとしても面白かった

死界への出入りが自然で違和感がない。夢か現実か分からなくなる。生死の境界が分からない感覚になった。妖しい幻覚を見ている感覚で、暖かさを感じた。35mmフィルムを使ったというのも頷ける。

あの世で同年齢の両親に会い、喜ぶ姿をみたり、一緒に寝たり、クリスマスツリーを飾ったりする。これは癒される。褒められるというのは最高の喜びかもしれない。そして「あの人と一緒になりなさい」という言葉はアダムの力になる。ミステリアスでホラーっぽいところも良かった。

アンドリュー・スコットとポール・メスカルのゲイカップルとしての繊細な感情表現がすばらしかった。アンドリュー・ヘイ監督の最高傑作かもしれない!

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