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「午前4時にパリの夜は明ける」’80年代のパリ。時を経て再生される家族の物語!

 

2022年度フランス製作作品1980年代のフランス。深夜放送を聞いていたことが切っ掛けで、人生を取り戻す話。

日本の1980代も同じような環境にあったように思う。深夜放送ではなく深夜TVの方でしたが。(笑)

ストーリーがとてもシンプルで、フィーリングで観る作品だった。乳癌で失意の主人公ロット・ゲンズブールが人生を取り戻していくところを観るだけでも、この作品を観た価値がある。やはりフランス映画だ!(笑)

監督:「アマンダと僕」「サマーフィーリング」のミカエル・アース、脚本:ミカエル・アース モード・アメリーヌ マリエット・デゼール、撮影:セバスティアン・ビュシュマン、美術:シャルロット・ドゥ・カドビル、編集:マリオン・モニエ、音楽:アントン・サンコー。

出演者:シャルロット・ゲンズブール、キト・レイヨン=リシュテル、ノエ・アビタ、エマニュエル・ベアール、他。

物語は

1981年、パリの街は選挙の祝賀ムードに包まれ、希望と変革の雰囲気に満ちていた。そんな中、エリザベートは夫と別れ、子どもたちを1人で養うことに。深夜放送のラジオ番組の仕事に就いたエリザベートは、そこで家出少女のタルラと出会い自宅へ招き入れる。タルラとの交流を通し、エリザベートや子どもたちの心は徐々に変化していく。(映画COMより)


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あらすじ&感想

冒頭、1981年5月10日、フランソワ・ミッテランが大統領に就任。パリ市街は改革気分に溢れていた。そこに家出の女性・タルラ(ノエ・アビタ)がやってきた。

夜、タワーマンションが立ちパリ市街。深夜放送の番組“夜の乗客”パーソナリティ・ヴァンダ(エマニュエル・ベアール)の囁き。「皆さん5月11日になりました。今夜も朝4時までヴァンダがお供します。この特別の夜の話を聞かせてください。電話番号は・・・先ずはパルバラの“ごらんよ”です」。

ここから一気に1984年に移る。これがミカエル・アース監督の時の進め方らしい。(笑)

1984年、主人公のエリザベートは40歳の専業主婦

高校3年の娘ジュディット(メーガン・ノーサム)と高校1年生の息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)と共に市街が望めるタワーマンションで暮らしている。ジュディットは政治デモに参加する学生。マチアスは思春期真っ只中。

夫が女性のところに居つき戻らなくなり、エリザベートは離婚を決意し、父親の支援を受けながら自立することにした。これまでの苦しさを深夜放送で癒していた。ということで、子供たちの後押しもあり、ラジオフランスの番組“夜の乗客”の臨時採用試験を受けた。

面接はパーソナリティのヴァンダ。電話の受付係を勧めた。

「リスナーと繋がるだけでなく共有に値する言葉を受け止め電波に乗せられる人が欲しい、どうやってみる?」といきなりテストして採用された。もうこのことだけでエリザベートには革命だった!

ある夜、タルラから番組に電話があった

エリザベートがヴァンダに取り次いだ。タルラはゲスト出演することになった。

ヴァンダの問いに答えるタルラ。18歳、ホテルとか空きビルに住んでいるという。(笑)放送室はまるで戒告室のようだというのが受けた。声のいい子だった。

放送が終り、帰りがけのエリザベートが公園で休んでいるタルラを見つけマンションに連れ戻り、空き部屋を与えた。

朝食時、家族にタルラを紹介。一番興味を示したのはマチアスだった。(笑)

早速、マチアスとジュディットはタルラを誘い映画を見に行った。ちょうど入れ替え時で、タルラの機転で“タダ観”した。(笑)映画はパスカル・オジェ主演の「北の橋」(1981)だった。この映画は後述するようにこの作品にとって特別な意味がある。

夜、マチアスはタルラを誘って屋上に出て。ここからパリの夜景を眺める。「9時だから、じゃ行く」と去って行くタルラ。マチアスは彼女が何ものかを知らなかった。

“夜の乗客”スタジオ。エリザベートがロバンと名乗る男の電話をヴァンダに繋いだ

この男はヴァンダが嫌がる男だった。番組が終って、エリザベートは激しく叱責された。エリザベートが泣いていると男性スタッフのアレクシーに「彼女は強いが、泣いていることがある」と慰められた。ことのはずみでエリザベートはアレクシーとベンチの上でセックスに及んだ。いかにもフランスらしい。(笑)

ある日、スタジオが引けて、アレクシーをマンションに誘うと「仕事が残っている」と断られた。エリザベートは大きなショックを受けた。

マンションに戻って「男性はひとりしか知らない」と涙でタルラに話した。タルラは「男はクズ!」とエリザベートを庇った。エリザベートはタルラよって癒された。

夜、マチアスはタルラとデートしていた。タルラがセーヌ河の橋で見知らぬ男に「クリスティーヌ!」と声を掛けられた。マチアスが「クリスティーヌって良い名だ」と揶揄ると、タルラに押され河に落ちた。タルラは慌ててマチアスを追って河に飛び込んだ。

びしょ濡れでマンションに戻ったふたり。成り行きで結ばれた。マチアスにとっては初体験だった。翌朝、タルラの部屋を覗くとタルラは消えていた。

エリザベートとマチアスの失恋でこの年は終わった。(笑)

 1988年、パーソナリティのヴァンダの囁き「今日は少し特別な日です」から物語が続く

エリザベートの誕生日。以前から電話を受け付けつけています。彼女に手紙を“親愛なるエリザベートに」。

“夜の乗客”スタジオ一同、ディスコで派手に踊る。ヴァンダは煙草を吹かせながら、この時代を代表するスタイルで踊る。

マチアスは大学中退?マンションの管理をしながら小説を書いていた。ジュディットは大学生となり、マンションを出て学友とシェアーハウスに住んでいる。

エリザベートは昼間図書館で働き、“夜の乗客”の方はアルバイトとなっていた

そこで週3回、本を借りにくる男性ヒューゴと恋に墜ちた。

ベッドインで手術した乳房を気にしていると、ヒューゴは「繊細な人だ」と一蹴する。このことがエリザベートを女性に回帰させた。

エリザベートはマチアスと娘のジュディットのシェアハウス尋ねた。エリザベートはマンションを売る話をした。姉弟エリザベートに彼氏ができたことを知った。マンションに戻るとエントランスにタルラが倒れていた。

タルラは薬に冒されていた。別室に閉じ込めて介護した。マチアスの希望でしばらくマンションで面倒見ることにした。

タルラが回復したところで、マチアスが映画に誘った。パスカル・オジェは麻薬事故で無くなっていたが、彼女の出演作「満月の夜」(1984)を観た。

エリザベートはタルミに2度と薬をやらないことを誓わせ、“夜の乗客”スタジオに誘い自分がパーソナリティを務めている姿を見せた。ヴァンダは体調不良で、その代役を務めていた。タルミに仕事を持つことを勧めた

大統領選挙の投票日エリザベート一家は選挙を終えて、タルラが勤める映画館で映画を観た。その後、タルミを家族の一員に加え、食事会を持った。エリザベートは「一緒に過ごせることがうれしい。これもヴァンダのお陰!」と喜んだ。4人でダンスを楽しんだ。

タルミは女優として映画「破滅の日“にセリフのない役で出演。

これにエキストラとしてマチアスを誘った。マチアスはスタッフの男性と親しく話すタルミの姿に嫉妬し「これは不健康な仕事だ、辞めて欲しい、君を愛している」と告白した。タルミは「今の私の姿ならそう思うのは理解できるが、そんなに弱い女性ではない!家族の皆さんには感謝している」とこれを断った。

マチアスにとって2度目の失恋だった。

 エリザベートはマンションを処分してヒューゴのアパートに引っ越すことにした

 引っ越しの日。エリザベートはマチアスには、夫が出て行った日から書き始めた日記を、ジュディットには多産の像のお守りを渡した。

マチアスは自分のアパートに戻り母の日記を読み始めた

ヴァンダが番組で紹介したある詩人の言葉「他者は過去の私たち、他者が垣間見せるのは、私たちの破片や断片、彼らは私たちの夢を見る。でも他人同士だ、私たちはいつも、素晴らしき他人」と書かれていた。マチアスはタルミを思い出しながら、これまでの家族のことを思い出していた。

まとめ

ストーリーはシンプルで淡々と進む。とりとめのない話のようだが終ってみるとエリザベートは結婚し仕事をふたつも持つ人生を歩んでいる

 1980年代のフランスは喪失と再生の時代。これに合わせるようにエリザベートの家族も新しい時代を迎えていた。長い時間尺で観る、時代を感じる作品だった。

 エリザベートの再生物語乳癌による乳房の切除が大きなトラウマになり人生を失いかけたがたが、深夜放送である詩に触れ、人との出会い、性を取り戻していく。ここにシャルロット・ゲンズブールを持ってきてセックスシーンをたっぷり見せるという粋な計らい。これは受ける!

息子のマチアスは思春期、タルラとの性体験と失恋で詩人になる。

姉のジュディットは改革の中で政治に目覚める

1980年代という時代性をもっとも表しているのが、パーソナリティのヴァンダの引退。エマニュエル・ベアールが演じるヴァンダはまさにヌーヴェル・ヴァーグ時代を彷彿させる。

タルラは劇中映画「北の橋」「観月の夜」の主演女優パスカル・オジェがモデルだと言われ、彼女は25歳で薬により急逝している。まさに時代の人だった。

この作品でのタルラはエリザベート家族と出会い、薬を止め、真っ当な道を歩む、いい話だった。(笑)

まとめると、フェニミズの台頭を描いた作品だとも言える、劇中映画シーンはセクハラシーンでまさにこのとこを示している。

深夜放送という懐かしい作品のようで、新しさを感じる作品だった

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