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「ファミリア」(2023)テーマはよくわかるし映像も凄いが、エンタメ過ぎて話のリアリティがぼけたかなと!

 

役所広司佐藤浩市さんおふたりが出演ということで観ることにしました。

ブラジル移民を抱えるコミュニティの在り方をタイトル「ファミリア」という絶妙なニュンスで描いた作品です。

監督:「八日目の蝉」「いのちの停車場」などの成島出脚本:いながききよたか、撮影:藤澤順一、編集:阿部亙英 三條和生、音楽:安川午朗

脚本の“いながき”さんには「ハブと拳骨」(2008)があり、ヤクザの喧嘩(拳骨)を含めて、本作もこれによく似た社会派ドラマになっています。撮影の藤澤さん鈴木清順監督に主事したカメラマン、ということでその映像には定評があります。

出演者:役所広司吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、MIYAVI、佐藤浩市、他。

物語は

山里でひとり孤独に暮らす陶器職人・神谷誠治(役所広司のもとに、一流企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任中の息子・学(吉沢亮)が婚約者ナディア(アリまらい果)を連れてやって来る。学は結婚を機に退職して焼き物を継ぎたいと話すが、誠治は反対する。

一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年マルコス(サガエルカス)は、半グレ集団に追われていたところを助けてくれた誠治に亡き父の姿を重ね、焼き物の仕事に興味を持つように。そんな中、アルジェリアに戻った学とナディアを悲劇が襲う。誠治はこの悲劇を乗り越えように、マルコスらブラジル移民者に心寄せていくというヒューマンドラマ。

アルジェリアの事件、日本のブラジル移民者団地で起きた事件。これらを連ねて「ファミリア」というテーマに落とし込んでいくプロット。出てくるエピソードは脚本家 “いながき”さんがしっかり集めたもので事実なのですが、「ファミリア」に強引に結びつけようとして、「本当なの?」「ここまでやるか?」という疑問がでてくるかもしれません。

しかし、役所、佐藤さんはじめとする演者の熱演と、すばらしい映像でエンターテインメント作品として楽しめる工夫がしてあります!今の時期に、この問題を考えてみる意義のある作品だと思います。


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

冒頭、誠治が森の中で土を採取し、持ち帰り土を捏ねて、ろくろで陶器に仕上げていく陶磁作業。これを演じる役所さんの佇まいに圧倒されます

作品の中心に陶器が出来ていく過程を置いているが、これは丁寧に丁寧に愛情を持って人の役に立つものにするという、この作品テーマによく合っています。

息子の学が恋人ナディアを連れて帰国、結婚式を挙げる。ナディアは5歳で両親を戦争で亡くして難民キャンプで育った子だった。このことを誠治は心配していたがナディアの笑顔を見て気に入り、とてもうれしそうな表情をする。誠治も児童養護施設出身者で若いときははみ出し者であったが、妻晶子の愛情で陶磁師になった。しかし、晶子に苦労させ早世させてしまったという悔いがあった。

テーマのためとは言え、かなり露骨なキャラクター設定になっていていると感じます

ブラジル移民用集合住宅がある保丘団地。この街のクラブで行われるブラジル人の若者たちのダンスパーテイに、半グレ集団:榎本(MIYAVI)が殴り込みをかけて、マルコスを追い回す。

マルコの父親は1990年代のバブル期にブラジルから「ジャパニーズドリームを求めて日本にやってきたリーダだったがリーマンショック、多くのブラジル人が職を失いその責任を取ってアパートの屋上から飛び降り自殺していた。

マルコスが逃げて、誠治の家までやってきて、車を盗もうとして誠治と学に捕まった。誠治は治療して返してやった。

これに、マルコスの恋人エリカ(ワケドファジレ)がお礼にやってきて団地の祭りに誘った。祭りはブラジル色一色だった。誠治、学そしてナディアは大歓迎され、誠治はまるで家族のようなもてなしに大感激だった。マルコスも誠治に心を開くように「なっていった。これはイーストウッド監督の「グラン・トリノ」(2008)に同じ描写が、物語もかなり似ています。

学とナディアはアルジェリアに戻っていた

 半クレグ集団がマルコスらを捕まえ、「団地内で麻薬を売って500万円差し出せ」と要求してきた。榎本は幼い愛娘を酒に酔ったブラジル人運転手に引き殺され、ブラジルに出向いて1年間探し回ったが犯人はすでに亡くなっていた。その恨みをブラジル移民に向けていった。このエピソードもかなり膨らまされていると感じます!

マルコスらは麻薬を町で裁こうとして青木組(重松豊)に捕まり、没収されてしまった。青木は榎本をよくは思っていないが繋がっていた。

マルコスらは再び半グレグループから「500万持ってこないと内蔵を売る。クラブで働くエリカを回す!」と暴力で脅かされた。負傷したマルコスはエリカに「もう生きる意味がない、死のう!」と集合住宅の屋上でひと晩中セックスしたが死に切れず(笑)、ここまで描く必要があるの、誠治の陶磁作業場に逃げてきた。

誠治は自分の過去のことやアルジェリアで生活する学とナディアのことを想い、、これを受け入れた。マルコスが「やりたい!」という焼もの作業を手伝わせていた。

この誠治の強い行動力には、バックにかって共に児童養護施設で育ち、今は刑事になっている駒田(佐藤浩市の存在があるからだった。

赤く髪の駒田が誠治を訪ねてきて、ふたりが雑談をかわすシーンを見れば、ふたりの関係は説明がなくても分るという、役所さんと佐藤さんの役を超えた演技を見ることができます。佐藤さんの出演シーンはわずかですが、凄い!と声がでるほどの表現力でした。

石油プラントに対するテロ事件で学とナディアが拘束された。相手の要求は身代金らしい」というニュースが誠治の耳に入ってきた。誠治は土地を担保に金を作り、外務省に設けられたテロ対策室長に「助けて欲しい!」と金を差し出したが、「除外国と足並みを揃えて対策する」という禅問答のような回答に(笑)「国は当てにならない!」と失望して帰ってきた。その後、ふたりの死が知らされた。帰還した遺体は解剖のため触ることもできなかった。

学の現地の同僚から「仲間を助ける行動で命を落とした」という言葉とともに政治に当てたメールが渡された。そこには「ネディアに子供が出来た!早くとお父さんに顔を見せたい」というものだった。誠治は陶磁師になりたいという学の望みを聞いてやればよかったと思ったと後悔した。

マルコスの同僚ルイ(シマダアラン)が半グレ集団のアジトに誘い出され殺害された。マルコスはルイの復讐と榎本を刺しにアジトに向かったが、榎本に交わされ、激しい暴行を受けて入院することになった。

榎本を演じるMIYAVIさんの蹴り演技、「ヘルドックス」(2922)でも見せてくれましたが、これは見事ですね!(笑)

誠治は学とナディアの死の悲しみの中で、「この暴力は赦せない!」と駒田に相談した。しかし、榎本には正当防衛が成立するしそのバックのヤクザに警察も簡単には動けないということでふたりが一計を案じた

誠治は半グレの一人を捕えて、指を数本折りながら(笑)、榎本の悪事を吐かせこれを録画した。榎本のアジトに出向き、録音を聞かせ、「10年は刑務所だ。ブラジル移民に手を出すな!録音内容は誰も知らない」と榎本の反撃を誘った。榎本が襲ってきたところにパトカーが駆け付け半グレ集団を一網打尽にした。榎本が防弾チョッキを着けずにアジトに乗り込んだのはまずかった。(笑)

1カ月後、傷が癒えた誠治は「焼き物の仕事がしたい」と尋ねてきたマルコスとエリカに手伝わせ、陶磁窯の火入れ作業を始めた。

まとめ

世界は、今、移民問題で苦しんでいる。日本にとっても大きな問題になってきている。いいところに目を付けた作品でした。

そのための“タイトル”が英字で表示される、そこが味噌の作品でした。しかし、エンタメ性を重視した演出が韓国映画のような作品をめざしたように見えましたが、キャラクター設定や暴力シーンなど、エンタメ過ぎてリアリティに疑問を持ちました。

しかし、藤澤順一さんによる冒頭でのドローンによる愛知県豊田市保見団地の朝の風景。マルコスの会社専用通勤バスでの出勤、子供たちの登校、エリカが夜の仕事を終え帰ってくるというブラジル移民団地の日常。ここでのお祭り風景、クラブでのダンスパーティーなど。ブラジル色いっぱいの映像により物語の真実性を証明する映像は見事でした。しかし、キャバレーの中での半グレの乱入シーンなど幾度となく繰り返される暴力シーンはやりすぎだなと感じました。

キャストに、実際に苦しんでいるブラジル人二世たちを出演させるという思い切った作品でした。みなさんよく頑張りました!

この作品での役所さんと佐藤さんの演技、韓国のそれを凌駕していました

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