シリーズ4作目の作品。すでに国民的人気作品になった感があり、雨天にもかかわらず、公開当日3回目の上映もほぼ満席の入りでした。出口評価は「長い!」という声でした。あれもこれも観せたくて、短く出来なかったことが分かる作品でした。(笑)
王騎将軍で始まって王騎将軍で終るシリーズ最終章。これまでは主人公・ワラベ真の成長物語だったが、ここでは王騎将軍の最期、キングダムの名にふさわしい物語になっていました。
映画の面白さはこの時代の戦争ストーリー(戦略・戦術)、登場人物のキャラクター、そして個人技を含めた戦争・戦闘アクションで、その壮大さですが、今回はそのどれをとっても、すこし冗長ではあったが、壮大で泣けるシーンも一杯あって面白かった。
物語は第3作「キングダム 運命の炎」のダイジェストから始まるが、初めての人には理解できないと思うので、作品を楽しむためにはこの作品だけは観ておくことをお勧めします
原作:原泰久の同名人気漫画「馬陽の戦い 飛信隊躍進(11巻 - 16巻)」。未読です。
監督:佐藤信介、脚本:黒岩勉 原泰久、撮影:佐光朗、編集:今井剛、音楽:やまだ豊、主題歌:ONE OK ROCK。
出演者:山崎賢人、吉沢亮、清野菜名、岡山天音、三浦貴大、髙嶋政宏、要潤、長澤まさみ、大沢たかおらレギュラーキャストに加え、前作から参加した吉川晃司、山本耕史、小栗旬らが続投。草刈正雄、新木優子が新たに出演する。
物語は、
春秋戦国時代の中国。馬陽の戦いで、隣国・趙の敵将を討った秦国の飛信隊の信(しん)たちの前に趙軍の真の総大将・ほう煖(ほうけん)が突如現れた。自らを「武神」と名乗るほう煖の急襲により部隊は壊滅的な痛手を追い、飛信隊の仲間たちは致命傷を負った信を背負って決死の脱出劇を試みる。一方、その戦局を見守っていた総大将・王騎は、ほう煖の背後に趙のもう一人の化け物、天才軍師・李牧(りぼく)の存在を感じ取っていた。(映画COMより)
あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
冒頭、前作のダイジェストから物語が始まる。ここで大切なのは、王騎(大沢たかお)が総大将を引き受けた理由。ひとつは秦国王・えん政(吉沢亮)の中華統一の気概、もうひとつ、王騎がいう「私にも過去に向き合わねばならない」とは何か。
そして趙軍、馬陽の戦の緒戦概要。
馬陽に侵攻した10万の趙軍を、王騎率いる秦軍が8万で撃破を図ろうとする戦さ。第1日目、王騎は孤立した趙軍の右翼部隊・ふう忌軍を飛信隊で混乱させ蒙武軍(2万)で各個撃破するというもの。急峻な地形を利用した飛信隊の奇襲は真(山崎賢人)が敵将ふう忌の首を上げて成功した。趙軍総指揮官の趙荘(山本耕史)は主力を後方に下げ陣地再編成中。
王騎は追撃を要請する将軍・蒙武(平山祐介)に、本当の敵は9年前に取り逃がしたほう煖(吉川晃司)と認識し、「この丘から展望できる範囲内で」と深追いを禁じた。
趙軍の計画立案者、軍師・李牧(小栗旬)が戦場を見渡せる丘で戦況を監視中。李牧の計画に王騎が攻撃を仕掛けたわけだが、その計画に罠はなかったか!
戦勝祝いの野外宴にほう煖が自らの名を名乗り現れ、真と羌かい(清野菜名)が挑むが歯が立たない!宴は大混乱状況にあった。
山の民の王・楊端和(長澤まさみ)は盗賊狩りを続けていたが、とある地域が何者かに全滅させられている光景を目にしていた。以上。
本編開始、
飛信隊の戦勝祝いの野外宴にほう煖が現れたシーンから始まる。
真がほう煖に襲いかかるが巨大な矛で一撃、口から血を吐くダメイジを受ける。
次いで羌かい(清野菜名)が「トウダン、トウダン」と呪文を唱え円形を描きながら切り込むが吹き飛ばされる。飛信隊全員が槍を投げるが歯が立たない。そこに友軍の干央軍、敵の万極軍(山田裕貴)が現れ混戦状態になった。
物語の初っ端からほう煖、真、羌かいのすばらしい戦闘シーンに出合い、物語に引き込まれる。
この機を利用して飛信隊は二つに別れで退却。本体は渕(田中美央)が指揮し万極隊を引き付ける。信は尾到(三浦貴大)に背負われ、尾平(岡山天音)の援護のもと後方本部を目指し後退する。尾到は真に「ふう忌を倒し、ほう煖に殺されなかった真は絶対に大将軍に成れる」と励ましながら後退をつづけたが、自分が受けていた傷害が悪化し亡くなった。彼の魂は故郷・城戸村の婚約者友里(村川絵梨)の元に飛んでいった。
1作から3作で描かれた真と尾到の友情が思い出され、泣けるシーンになっている。が、これに五分の一ほどの尺が取ら長過ぎた。
真は尾到を背負い、羌かいは背負われ、飛信隊本体に合流、勢力は36名になっていた。
2日目、馬陽の戦場。
秦の蒙武軍と干央軍が砂嵐の中、攻撃を開始した。
蒙武軍の攻撃は順調に進展、先頭を行く蒙武はほう煖の姿を発見し、それを追った。打ち取ると偽物だった。謀られたと思ったとき、すでに周りを超荘軍に包囲されていた。
王騎は「注意したのに深追いをしたな」と蒙武救出のために飛信隊と副将・謄将軍(要潤)に突進を命じ、王騎自らはわずかな兵を従え、趙軍包囲部隊の側面を駆け抜け、趙軍総大将の趙荘本陣の襲撃に走った。
このころ秦の王宮に山の民の王・楊端和(長澤まさみ)が訪れていた。
楊端和が北の匈奴の成敗に8万で攻め入ったところ、すでに全滅していた。やったのは李牧の軍で、すでに消えているという。「この軍が馬陽に現れると戦は一気に決着するぞ!」と警告するための訪問だった。
李牧は素知らぬ顔で戦場を見渡せる丘で両軍の戦闘を監視していた。が、李牧は王騎の行動を見てここを去り原隊に復帰し、自軍に前進命令を下した。
王騎はこのことをすでに読んでいた。李牧の軍が戦闘加入する前に趙軍を撃破するため趙荘の本陣を狙った。
そこで王騎が見たのはほう煖だった。
王騎は「9年ぶりですかね、てっきり死んだと思っていました。あなたが突然現れるとは!」と挨拶し(笑)、王騎とほう煖の一騎打ちが始まろうとしていた。王騎は特別な感情を抱き、この戦いに臨んでいた。
かって馬陽の戦闘で亡くなった摎(りょう)将軍とはいかなる人物か?
宮廷でえん政が昌文君(高嶋政宏)に尋ねていた。昌文君は先代昭王(草刈正雄)に話すことを禁じられていたがと断り、王騎と摎の関係を語り始める。
ふたりの関係が明かされる中で、王騎がほう煖と一騎打ちする理由が摎の仇打ちであったことが明かされ、とてもロマンチックで泣けます!
王騎と摎の関係は摎が100個の城を落としたとき結婚する約束だったが、100個目にあたる馬陽の戦いで摎がほう煖との一騎打ちに敗れ、ふたりの夢は叶わなかった。
摎は昭王と官女の間に生まれた子で、将来の世継ぎに絡む権力闘争を避けるため官女が密かに王騎の父親に預けたものだった。のちに昭王はこのことを知り大いに喜んだが、名を伏せた。摎は武術にすぐれた能力があり、実父の押しもありめきめきと出世し秦の6大将軍に名を連ねた。馬陽の戦に摎が指揮官で王騎が副指揮官で臨み勝利したが、王騎が駆けつけたとき、摎はほう煖との一騎打ちに敗れ、亡きものになっていた。王騎は怒り狂った。ほう煖の額の傷はこのとき王騎がつけたものだった。
摎を演じる新木さんがうつくしく凛々しい。彼女の映像が王騎とほう煖の戦いに絡むことでこの戦いに摎の魂が宿り、張り詰めた独特の空気感を醸し出す。
王騎は馬を下り、ほう煖と巨大な矛で斬り合う。
大沢さんは前作よりさらに6kg体重を上げ、吉川さんも体重を上げており、顔芸もたっぷりで、重量感のある激しいバトルだった。
王騎が「勝った!」と思ったところに、李牧の第1陣が襲い掛かった。
王騎は周りを包囲され、周辺地形は切り立った谷底で逃げ場はない!将軍の馬が王騎を拾った(馬も凄い!)。「ここで全力で戦う」と決め、“一人10殺“を命じた。これで兵士の士気が上がり戦況は有利に進みだす。
王騎とほう煖は馬上で再び矛を振りかざし、激しく闘う。
王騎有利と見た李牧は第2陣出撃を命じた。
王騎の目に“大元”の旗の文字が入ってきた。李牧が「趙の勝ち!」と声を上げた。
これに連携して弓の名手で李牧軍の副将・魏加(金児憲史)が馬上の王騎を追い始めた。羌がこれを見つけ、真が追った。しかし、戦場の混乱で辿り着けない。弓が放たれ、王騎は腹を撃たれ落馬した。それでも王騎は諦めず、ほう煖の首に矛を突き出し「大将軍に辿りつけるのはひとにぎりだ、あなたに授けられたものは14万人の命を束ねて戦い栄誉だ。」と貶した。ほう煖が「君は何者だ?」と聞く。「天下の大将軍だ」と答えた。
そこに謄が駆けつけ、「敵本陣を切り開いた」と王騎を背負い馬で去る。ほう煖はもはや追わなかった。
真が王騎を背負い馬で退路を突っ走る。
王騎が「あなたは将軍の馬で走っている。将軍の見る景色をみなさい!」という。信は敵陣の中に大将軍のために開かれた一本道を見た。
退却する王騎を見た李牧は「頭を取れば玉砕覚悟で掛かってくる。この戦、王騎の死のみが目的。戦は終った、味方の死は許さない。戦はここまで」と王騎を追撃しなかった。李牧を演じる小栗旬さん、ここにきて本領発揮だった。軍師にしては服装がおかしい。もの静かで軍師からぬが、このセリフが凄い。
無事退却に成功、最期の王騎の言葉を聴く。
王騎はしっかり地に立ち、「誰ひとりとして私のあとを追うことを許さない」と釘を刺し、謄に全権を委ねた。「いつも最強といわれたものがさらなる兵に敗れる。こうして武将は次々と討ちとられる果てしない命の戦いだ。これからの乱世も面白い」「ワラベ真、素養はある。教養をつけてやることは出来なくなった、直に教わることはなくなったが、自分で勉強しなさい」と真を諭し、矛を預けた。王騎は立ったまま亡くなっていた。兵士全員が泣いた!
真が謄の許しを得て「王騎大将軍は亡くなったが、趙軍は退却、馬陽の地は保全できた、秦は勝利した。大将軍の死とその魂は我々に宿る」と声を上げた。鬨の声が上がった。
王騎の死は彼が身をもって示した誠が秦の軍隊をより強くした。
王宮ではえい政が王騎が馬陽に出発する前に昭王の遺言を伝えたことを明かした。えい政が全中華の王になること。民は奴隷にあらず、占領地の民にも愛を注ぐこと、というものであった。昌文君が「あのバカが!」と大泣きだった。
髙嶋政宏さんの名演技で、この泣きが一番胸に染み入る泣きだった。
えい政は城門を開き、大将軍王騎の帰還を迎えた。
まとめ:
戦争ごっこが好きで、そんな感想になってしまいました。(笑)
面白かった!何度も言いますが大沢さんの演技が神がかっていた。彼の吐く大将軍の心得が真に伝わり、中国春秋時代の話だけに沢山の名言(セリフ)があり、今に生きる我々の生き方に繋がると感じた。
大将軍に必用な資質は「兵を見捨てないリーダーシップと実行力だ!」と思った。王騎は実践でこのことを示し言葉で伝え、見るものに感銘を与えた。大沢さんの演技には王騎が乗り移っていた。俳優生活の中で特別な作品ではなかったかと。なし得ればこのスタッフとキャストで信が大将軍になった姿を描いて欲しい。
大将軍は次々に生まれ消え、新しい大将軍が出現してくるころがこの作品を観るポイントだと思った。
それぞれの大将軍の生き方が面白い。
ほうえんは「戦場に義はない」の言葉を残し山に籠る。王騎の魂を受け継いだ謄はいかに。「味方の無意味な死は絶対に許さない」と大戦略家へと進化していく李牧はこの時代にあって新しいタイプの大将軍ではないか。これも見たい!王騎将軍の訓育を受けた信がいかなる大将軍に育っか、これも見たい。
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