何だ、このタイトルは?NHKニュースで紹介された作品、トム・ハンクスとサンドラ・ブロックが夫婦役で共演、9・11テロに絡む作品ということで、NHKBSで録画、鑑賞しました。
このテロ事件(戦争)(2001)はTVによりリアルタイムで観た記憶があり、この時代に戻る感覚で観ました。この事件を契機に、アスペリガー症候群の少年(10歳)の成長と家族の絆、アメリカ国民の中に絆が見えてくる作品でした。
アスペリガー症候群とはいかなる病か?映画の中で語られる「利口だが不器用な人」としか良い解釈を見つけることが出来なかった。(笑)
タイトルの説明は言葉では無理で作品を観ないと分からないアスペリガー症候群の少年の感情でした!(笑)
原作:「9・11文学の金字塔」と評されるジョナサン・サフラン・フォアのベストセラー小説(2015)、未読です。監督:「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーブン・ダルドリー、いずれの作品も未鑑賞。脚本:「フォレスト・ガンプ 一期一会」のエリック・ロス、撮影:クリス・メンゲス、編集:クレア・シンプソン、音楽:アレクサンドル・デプラ。
出演者:トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、トーマス・ホーン、マックス・フォン・シドー、ビオラ・デイビス、ジョン・グッドマン、ジェフリー・ライト、ゾーイ・コールドウェル。
物語は、
9・11テロで最愛の父を亡くした少年オスカーは、クローゼットで1本の鍵を見つけ、父親が残したメッセージを探すためニューヨークの街へ飛び出していく。第2次世界大戦で運命が変わった祖父母、9・11で命を落とした父、そしてオスカーへと歴史の悲劇に見舞われた3世代の物語がつむがれ、最愛の者を失った人々の再生と希望を描き出していく。(映画COMから)
あらすじ&感想:
冒頭、アスペリガー症候群のオスカー・セル(トーマス・ホー)の父親トーマス(トム・ハンクス)が世界貿易センタービルから放り出され空中を飛ぶ映像から物語が始まる。
オスカーは父親の葬儀に「お棺に父親はいない」と参列の席にいなかった。
オスカーは父親トーマスを思い出し、苦悩する毎日だった。
トーマスは大学時代にリンダと結婚。化学者志望だったが、オスカーが生まれ、アスペリガー症候群と知り、これを諦め宝石店を営むことにした。
トーマスは調査探検ゲームを編み出し、オスカーの人間嫌いの病を克服させることに全力を尽くしていた。オスカーもこのゲームが好きだった。だからトーマスが亡くなったことがオスカーには耐えられなかった。
それもオスカーにはトーマスが貿易センターから連絡してきた電話に、恐ろしくて出ることが出来なかった呵責があった。アスペリガー症候群のせいかもしれないが、誰にも言えない苦しみがあった。
調査探検ゲームとはかってニューヨークのセントラルパーク公園下に第6区があったとして、その証拠を捜すゲーム。
トーマスが示す実在のヒントを見つけるために現地を調査する。付近の人にインタビューして証拠を集めカメラであるいは特別な探知機で確証する。これを地図にプロットしながら地域を確定していくゲーム。完全にオスカーを魅了していった。トーマスはこのゲームの仕組みについて妻のリンダ(サンドラ・ブロック)に「息子を鍛えるためだ」と説明し、リンダも承知していた。
このゲームが面白くに描かれ、ちょっとした探検物語になっていて、物語に引き込まれる。
オスカーは父の店で道具を捜していて、祖父の道具箱を見つけた。その中に祖父が撮ったフィルムがあった。フルムの映像を見て、トーマスは「ドレスデンの生まれで、父親はつらい体験があって家を出て行った」と説明した。
トーマスは「公園のブランコの裏側に一枚のメモがあるはずだ。そのメモを確証することだが、怖くてお前にはまだ難しい」という言葉を残して亡くなった。
父トーマスの死から1年が経過し、オスカーは父の遺品を調べていた。
オスカーが見つけ出したのは父の洋服から「探すの“が”止めない」という切り抜き記事メモに青い花瓶に入っていた鍵と「ブラック」と書かれた封筒だった。
オスカーは目と鼻先のアパートに住む祖母に鍵のことを聞いた。
祖母は「何も聞いてない」という。祖母の2階に、間借り人がいることが分かり、祖母を訪ねた。祖母は間借り人を「故郷の人、長くは居ない。怒ると怖い人だから近寄らないで」と言った。
オスカーは鍵屋に相談した。「何の鍵か、穴に当ててみないと分からない」という。
オスカーは持ち主を探し出すことにした。キーワードはブラック。アパートの管理人から電話帳を借り、ブラックの苗字の人を探し出した。472人、216世帯だった。
どうやって鍵の持ち主を探し出すか。これはパパとやった調査探検だと実行計画を立てた。消えたニューヨークの6区探しが今度は鍵の持ち主捜しになった。
探検装備には特別にガスマスクとパニックを押さえるタンバリンを加え、すべてを母には内緒で、旅にでた。
最初の目標はブルックリンのフォートグリーンに住むアビー・ブラック(ビオラ・デイビス)だった。電車は怖くて使えない、徒歩だ。橋は怖い、タンバリンを叩いて渡った。(笑)
アビーは黒人女性だった。夫婦喧嘩中で、夫は「見つからない」と怒って家を出て行った。彼女は父のことも、鍵のことも知らないと言う。写真を撮って帰宅した。
部屋でアピーの写真を見ているところに母親のリンダが「いれて」とノックする。母の声がやたら大きく聞こえた。窓の水滴が父が落下する姿に見えた。
オスカーは父が3番目の電話(9月11日午前9時58分)してきたとき、電話に出ないでベッドの下に隠れていた。そこに母が帰宅し「パパから電話あった」と聞くが返事しないと母は父に電話するが混信で繋がらなかった。母に電話があったことを知られたくないと新しい電話機に取り換えたことを思い出していた。
オスカーは再度、探検の旅に出た。
ハミルトンハイツに住むハゼル・ブラックを訪ねた。彼女からは「鍵穴が見つかったら奇跡よ」と激励された。こうして次々とブラックの苗字の人を尋ね歩いた。一人6分の予定で会うが、誰もがこれより長く慰めてくれ、自分のことを話したがった。オスカーはこれでは父に近づけないと思い始めた。バカがと叱られ、殴られることもあった。
帰宅すると母リンダはベッドに横たわっていた。
母は「なぜ話をしないで出て行くの」とオスカーを責めた。オスカーは中身のないお棺で葬式を出し、パパは死んでしまってもう帰ってこないというリンダを赦せなかった。あの日、なぜ家にいなかったと責めた。そして遂に「あのビルにいたのがママならよかった」と口にした。その後、「本心ではない」と取り消したが・・・。
リンダはあの日世界貿易センタービルが見えるオフィスで働いていた。炎上するビルを見ながら、トーマスからの「106階で50人ぐらいの人と一緒だ、消防の救出を待っている」という電話に「階段を見つけて帰って来て!あの子に電話して!」と電話したことを思い出していた。
真夜中、オスカーは祖母に助けを求めることにした。
祖母のアパートにタンバリンを携え出向くと、出て来たのは間借り人の老人(マックス・フォン・シドー)だった。老人は話せず、メモで会話する。祖母は不在だという。
老人の部屋は書物で一杯だった。老人は声が出ないほども恐怖を体験したという。オスカーは今まで鍵を捜してきたことを喋った。「簡単に見つかったら意味がない、余計にパパが恋しい」と打ち明けると、探検につき合ってくれることになった。
これまで電車に乗ることや騒音の街中を歩けなかったが、老人と一緒で行動できるようになった。
色々なところを訪ねた。しかし鍵穴は見つからない。とうとう、探すのを止めると言い出した。オスカーは「見せたいものがある」と自分の部屋に誘った。ずっと思っていたが、老人の歩き方、肩のすくめ方がトーマスに似ていると思っていた。
オスカーはあの日6回掛かってきたトーマスの電話を聞かせることにした。
第1回は8時56分、次は・・・と聞かせた。当時の状況を思い出させてくれる。しかし、老人は5回の電話で、「もういい!」と聞くのを止めてアパートに帰っていった。
窓から老人を監視しているとタクシーを呼んで祖母のアパートを去ろうとしていた。
オスカーは部屋を飛び出し老人を捕まえた。老人は「君を助けようとしたが、傷つけるだけだと分かった」という。オスカーは手短に、父が母と結婚し自分が押し薬で出産したこと、そして化学者になる夢を捨て家族のために生きてきたことを「お爺ちゃんは何も知らない」と聞かせた。老人が車の中で泣いていた。タクシーは走り去った。
オスカーは父が残した「探すのがやめない」に赤いラインが惹かれた記事を見た。オスカーは最初に訪ねたアビーに電話し、タクシーで出かけた。
アビーはオスカーを車に乗せ、夫(ジェフリー・ライト)の事務所に急いだ。
アビーは父の残した記事の裏にアビー・ブラックの電話番号があって、アビーを訪ねた」と話すと、アビーの夫は「君が訪ねてきたとき鍵を捜していた。不仲な父親が亡くなり、とんでもない親父だと思って、青い花瓶を遺品市場で売った。ところが父の遺書で花瓶の中に貸金庫の鍵があることを知った。花瓶を捜そうと張り紙を広告版に張ったが、9・11事件でどこもビラだらけで、どうのもならなかった」という。
オスカーはアビーの夫に鍵を渡した。
アビーの夫が「一緒に貸金庫を見よう!」と薦めてくれたがこれを断り、「誰にも言えなかった」とあの日、父の電話にでなかったことを告白した。「父は僕がいることを知って勇気が出るよう何度も呼び続けた。泣き声やヘリの音、ものすごくうるさくて、そしてTVでビルが崩れる映像を見て泣き崩れた。父は許してくれるかな」と話すとアビーの夫が「もちろん許すさ」と答えた。アスカーは「これですごく気が楽になった」とアビーの夫と別れ、泣きながら電車でアパートに戻った。
オスカーはアパートに戻り、暴れて泣いた!
母リンダが「そのままでいい」と言い、「わたしがあなたを放っておく?危険に晒す?電話帳を借りたことから全部知っていた。あなたの訪問先を訪ねた。そこでたくさんの人から「ハグされ慰められた」という。オスカーは「大勢の人が大切な何かを失っていることを知った」と話した。リンダも「声が欲しいのよ“愛している“という」と答えた。「パパが最高だった、二度と結婚はしない」というリンダに「僕はママを愛している!」と伝えた。
オスカーは訪ね歩いた人たちに親切にしてもらったお礼の手紙「もう大丈夫です。いくら願ってもパパは戻ってきません」と書いた。間借り人の老人には「くたばれ自己中」と書こうかと思ったが「帰ってきて!」と手紙を書いた。
オスカーは公園のブランコを訪ねた。(ブランコに乗れるようになっていた)
ブランコの椅子の裏に父のメモがあった。「おめでとう!年齢を超えた勇気と知恵で第6回調査探検を制覇した」と記されていた。オスカーがブランコをゴギ、空に飛び出す気分だった。
まとめ:
父と遊んだ調査探偵ごっこが、9・11事件で亡くなった父の残した鍵とメモの捜索に繋がり、その捜索過程で自らが成長し、家族の絆を取り戻し、さらにこの事件の関わった人々を癒していくという、感動的な物語になっている。
失くしたものを捜すより、残してくれた愛を胸に生きる勇気が貰える作品になっていた。
アスペリガー症候群を癒すための探偵ごっこのエピソードが父親の遺品の謎を解き明かすエピソードに繋がるという、伏線がうまく繋がる脚本だった。が、あまりにも上手く繋がり過ぎてリアリティが無くなるが、これをキャストの名演技で補われたと思った。
オスカー役のトーマス・ホーの演技、アスペリガー症候群がどういうものか分からないが、彼が演じた混乱状況が“そうなんだ”と信じ、すばらしい演技だと思っている。その後、彼は俳優にならず、弁護士のなったと聞き驚いた。
スティーブン・ダルドリー作品を観るのは本作が初めて、感想に多少不安を持ちます。
脚本がエリック・ロスだからあざやかなストーリー展開だったが、惜しむらくは祖父の過去描写がもう少し欲しかった。
映像は調査探検シーンやオスカーが多くの人を尋ね歩くシーンを要領よくまとめてさらっと仕上げるなど創意工夫が見られ、また美しく申し分ない。しかし、アスペリガー症候群を描写するためだったのかセリフが哲学的で型苦しさを感じた。
何かが欠けている。テーマが曖昧だ!これがアカデミー賞の作品賞、助演男優賞にノミネートされながらな無冠に終わった理由かなとも思った。
このテロ事件は今の戦争に繋がっている。このテロ事件を思い出し、平和を願う作品だと思う。
****