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「影踏み」(2019)

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原作は横山秀夫さんの同名小説。多くの作品が映像化されるなかで、映像化不可能と言われてきた最後の最後の一作だそうです。未読です。
主人公は、人の寝静まった住宅に忍び込む凄腕の「ノビ師」。横山さんの小説で、犯罪者が謎を濃き明かす小説内はないといわれ、これに注目しての横山作品鑑賞でした。
この作品は“ねたばれなし”で見るべきです。ネタを知ったら全く面白くないでしょう。

監督は「月とキャベツ」の篠原哲雄さん。主演は山崎まさよしさん、共演に尾野真知子・北村匠海滝藤賢一鶴見辰吾・大竹しのみ・中村ゆり中尾明慶さんら。

サスペンスとしての謎解は、きっちり答えを出してくれ心地いいですが、影のある主人公の生き様が解かれてくる人間ドラマがすばらしい。尾野真知子さん演じるノビ師の恋人・久子の恋心に心動かされます。尾野さんフアン必見です!!

あらすじ:
「ノビ師」の真壁修一(山崎まさよし)が、ある日の深夜、県議会議員・稲村道夫の自宅に忍び込むが、そこで偶然、就寝中の夫にまさに火を放とうとする妻・葉子(中村ゆり)の姿を目にする。そして彼女を止めた直後、その場にいるはずのない刑事・吉川聡介(竹原ピストル)に逮捕されてしまう。2年後、刑期を終え出所した修一は、彼を兄貴と慕う若者・啓二(北村匠海)とともに自らの人脈を辿り、自らの流儀で事件の真相を追うなかで、ずっと心の底に押し込めていた20年前の事件の記憶が呼びさまされ・・・。
               *
修一が投獄された事件の真相を追いながら、なんで修一がノビ師となったのかと修一の人となりが明かされるが、ふたつのドラマの繋がりが不自然で、感情移入しずらく惜しい作品になったように思う。

兄貴と慕う若者・啓二は、亡くした自分の弟と同名、うりふたつである。ふたりの関係はタイトルの「影踏み」となりファンタジーであるが、どちらの啓二なのか、それに伴う感情の切り替えが難しい。

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***(ねたばれ)
修一は東大に進学し司法試験を目指した男。山崎さんのイメージにはほど遠いように感じた。(笑)
この修一が、出所後、図書館であの事件を調べた。吉川はなぜあの場所に現れたか。葉子がその後どうしているかを調べることにする。

まず謎の多い刑事の吉川に会う。吉川は「稲村は借金で破産し、家財一式を取られ葉子と離婚、今は行方不明だ」という。
次に昔盗んだ製品の買取業者・大室誠(中尾明慶)に会う。「篠木という関西系ヤクザが進出し、稲村に変わった。葉子は篠木と関西でいちゃついている」という。

修一が戻って動いているということで、相手が動き出した。吉川が殺された。

馬淵警部補(鶴見辰吾)が修一のいるサウナを尋ねてきた。馬淵は「吉川は溺死体で見つかった。葉子が営むスナックで泥酔した帰路での出来事だ」という。
吉川と誠が話した葉子の所在が違う。何故か?葉子を囲ったのは関西ヤクザではなく、地元警察の刑事吉川か? このあたりは横山さんの小説ではよく出てくるパターン。
馬淵から昨夜の居場所を聞かれた修一は、咄嗟に安西久子(尾野真知子)の名前を出した。馬淵は復讐にしては悪すぎると悪態をついた。
久子は保育士の仕事をしながらノビ師の修一の出所を待っていた。なぜ彼女がノビ師の修一を愛し続けるのか?
彼女は今、文具販売をしている久能次郎(滝藤賢一)からプロポーズされている。

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サウナを出て、啓二が「弟は何で兄貴を犯罪人にした。後悔しているんだろうな!」と修一に話しかける。まるで死んだ啓二が兄に語り掛けているようだ!
修一は20年前、高校教師の母(大竹しのぶ)が啓二が万引したことを苦に、ふたりで焼身自殺したことを思い出す。

修一は久子のアパートを訪ねた。久子は「名前を出してくれてうれしい」と言い、金を渡そうとするが修一は断った。修一は久子を抱くこともなく朝になると、啓二と一緒に闇金屋の加藤(田中要次)に出向き、金を借りる。この際、地裁執行官・轟木がバックバージンを取って居る」と話す。轟木が稲村の財産を処分に絡んでいるのではないか?誰からバックバージンを取ったか?
修一は葉子のスナックを訪ね、あの夜吉川は轟木と一緒だったか?吉川と葉子の関係を聞く。葉子は「一緒に飲み、吉川はひとりで店を出た。あの事件の夜ひとりでは不安だから吉川に来てもらった」という。葉子の夫殺し未遂事件の全貌が見えてきた。

修一は轟木邸に忍び込み、預金通帳とネックレスを盗みだした。通帳にはしっかりバックバージン」での入金が記されていた。ネックレスを誠のところで金に換えた。

一方、久子は修一の身分が保育園に知られ、退職を促され、「私の愛する人はドロボウです。あの人は私なのです!」と堂々と宣言して退職する。なにが彼女を強くしたのか?

修一は、驫木と深い関係にある地裁判事・栗本(下条アトム)を訪ね、吉川殺しを臭わせ、止めを刺して結果を待つことにした。ここまでは、これまでの横山作品の展開でした。

予想通り、誠が修一のアパートにやってきて、斬りかかる。吉川殺しの犯人は誠だった。誠を引き取りにきた馬淵警部補に轟木の貯金通帳と自分の自転車に仕組んであった警察のマイクロチップを渡した。

久子が久能のプロポーズを断ったことで、兄(滝藤賢一)が久子を訪ねてきて、暴力を振るった。
謝りにきた久能は、兄とは双子で、自分のやっている商売も彼女も欲しがり、この事件を起こしたと謝罪した。

修一は、自分も双子の弟・啓二が自分の彼女だった久子に恋慕した。久子にとっては、顔・姿が似ていても啓二は修一ではない。弟は兄のものを欲しがり、双子の場合は特にこの傾向が強いのかもしれない。久子はきっぱりと啓二の想いを切った。このことで啓二は泥棒となり、母親がこれを苦にして啓二とともに焼身自殺した。
修一は母、啓二を死なせたのは自分だと悔やむ。啓二の影を踏むようにノビ師になっていた。久子も、修一が母の葬儀で見せた「骨を二度焼くな!」と慟哭した姿を見て、修一と同じ運命を背負うことに決めたのだった。

修一は双子だから分かると久能の苦悩に自分を重ね、久能文具店に入り込み倉庫を調べた。兄は殺されていた。修一は戻ってきた久能に警察への出頭を勧め、久子の元に戻ってきた。このとき、修一は自らに課していた弟・啓二への贖罪から解放されていた。

他の横山作品にはない、強烈な愛にあふれた物語でした。原作を読みたくなります。
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映画『影踏み』 予告編