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「ダンサー イン Paris」(2022)コンテンポラリーダンスとは!踊りたくなる作品だった!

 

挫折した若き女性ダンサーの第二の人生を描いたヒューマンドラマ。どう再生されていくのか、これで観ることにしました。コンテンポラリーダンスのことも、主演のマリオン・バルボーのことも全く知らずに!

再生のプロセスなど考えなくていい!コンテンポラリーダンスそのものが挫折したダンサーが再生される魂のように思えた

これをパリ・オペラ座のバレエダンサーとして活躍するマリオン・バルボーが、気鋭の振付家・ホフェッシュ・シェクター(本名で出演)の振付で踊るのだから凄すぎる

“踊りたくなる”作品だった

監督:セドリック・クラピッシュ脚本:セドリック・クラピッシュ サンティアゴ・アミゴレーナ、撮影:アレクシ・カビルシーヌ、美術:マリー・シェミナル、衣装:アン・ショット、編集:アン=ソフィー・ビオン、音楽:ホフェッシュ・シェクター振付:フローレンス・クラーク ホフェッシュ・シェクター

 

出演者:マリオン・バルボー、ホフェッシュ・シェクター、ドゥニ・ポダリデス、ミュリエル・ロバン、ピオ・マルマイ、フランソワ・シビル、スエイラ・ヤクーブ、メディ・バキ、アレクシア・ジョルダーノ、ロバンソン・カサリーノ

物語は

パリ・オペラ座バレエ団で“エトワール”を目指すエリーズは夢の実現を目前にしたある日、恋人の裏切りを目撃して心が乱れ、足首を負傷してしまう。医師から踊れなくなる可能性を告げられた彼女は、失意の中で新しい生き方を模索しはじめる。そんな折、料理のアシスタント係の仕事でブルターニュを訪れた彼女は、世間から注目を集めるダンスカンパニーと出会い、独創的なコンテンポラリーダンスが生み出される瞬間を目の当たりにする。誘われて練習に参加した彼女は、未知なるダンスを踊る喜びと新たな自分を見いだしていく。(映画COMより)


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あらすじ&感想

冒頭、正真正銘のクラシックバレエを15分間に渡り見せてくれます

エリーズ(マリオン・バルボー)は舞姫(バヤデール)と戦士の悲恋を描く「ラ・バヤデール」で主役をつとめる。

開幕直前、舞台袖で両腕を重ねしなやかに指先を伸ばす。鍛えぬいたこの動きがすばらしい!エリーズは緞帳の小窓から客席の父とふたりの姉の姿を確認して、化粧室に向かう。

本番まであと2分、エリーヌは戦士役で恋人のジュリアンがバレリーナと消えていくのを目にして動揺する。エリーズのダンスは気品があって手の動かし方、脚の運びが美しいが、ステージ中央で宙を舞う中、まさかの着地ミスで足首を骨折して幕が下がる。

圧巻のクラシックバレエだった。エリーヌの怪我をするシーンだが、大切なのはクラシックバレエコンテンポラリーダンスの違いを見せること。クラシックバレエの型に拘る統一美、バレリーナの特権ともいうべき身体の動き、さらに「ラ・バヤデール」が女性の悲劇物語でエリーズの運命と重なることです

エリーズは療法士のヤン(フランソワ・シビル)の治療を受ける

ヤンはエリーズを恋人だと信じていたから、エリーズに恋人がいたことにショックを受け、エリーズが介抱するはめになった。(笑)

エリーズは病院でMRI検査を受け、足首の剥離骨折で重傷と診断された

医師から「完治しない可能性もある。ポアントなど負荷の大きい動きは禁止。3-4か月で手術が必要になるかもと。1~2年は重い運動は出来ない」と言われる。

エリーズは「26歳の自分にとっては今が一番大切なときで、1~2年間も踊れないのは無理」と考えた。

エリーズは仲間の子と一緒に劇場に戻ってきたところ、メディ(本人役:メディ・バキ)が挑発されて、ヒップホップダンス・バトルを始めた。仲間の子が「好きでない」と言うが、エリーズは「凄いダンス!」とメディを褒めた。

エリーズは実家に戻った

弁護士の父・アンリ(ドゥニ・ポダリデス)は「体が衰えたら稼げない」と法学部行きを勧める。ふたりの姉も集まってきた。エリーズは「怪我で正式の団員でなくなり1カ月考えてダンス以外のことをやりたい」と言うが、姉たちは「亡くなった母のために辞めないで」という。

その夜、エリーズはこれまでのダンス生活を思い出していた。6歳で母に薦められバレエを始め、毎日がバレエでいつもリハーサルか舞台だった。9歳から12歳はオペラ座に先生についた。このころ母が亡くなった。父が嫌がったがパリ・オペラ座バレエ学校へ入りパリ・オペラ座バレエ団で“プルミエ・ダンス―ル”に登り詰めた。

エリーズは仲間のサブリナが怪我をして頑張っていることを知った

サブリナは「最初の夢を忘れて生き方を変えた。女優として2つめの人生を歩んでいる」と話し「女優ではまだ食べられないのでバイトをしている」という。

エリーズはサブリナの勧めで新郎新婦の写真撮影モデルのバイトを始めたが、新婦がひざまずいて撮るというポーズに、サブリナが「この姿勢は女性への侮辱だ」とカメラマンとの喧嘩になりモデルのバイトは止めにした。(笑)

ヤンのマッサージを受けると「“ジゼル”“白鳥の湖”“ラ・バヤデール”に出てくる女性の運命は悲劇だ。エリーズが悲劇にならないように」と励まされる。エリーズが「“ラ・バヤデール”の白いチュチュのヒロインは死んだ女性で浮気され亡霊になったり、裏切られたり、傷つけられる」とこの話に納得する。(笑)

ヤンが「軸を作り君らしく正しい道を採って欲しい」と言い、ゴアのアシュテムへ修行に発った。

このドラマは女性の権利主張も作品のテーマになっている

サブリナは恋人で料理人のロイック(ピオ・マルマイ)の手助けをしながら女優を続けていた。エリーヌはブルターニュの音楽やダンスの訓練場&宿泊施設で、ロイックの調理アシスタントとして働くことにした

施設の管理人はジョジアース(ミュリエル・ロバン)で若い頃スキーで脚を悪くしていた。彼女の頼みで早速、今夜で合宿を終え帰って行く演奏グループのための料理を作った。

次の日、コンテンポラリーダンスホフェッシュ・カンパニーがやってきた。かっての仲間アデル、そしてメディがいた。

朝食事時、メディから参加しないかと誘われたが「まだ踊れない」と断った。

ジョジアースから「踊って見たら」と諭された

ジョジアースは「貴方は今まで運が良かった。才能があり美しい世界にいた。しかし皆がそうじゃないの。そうじゃない人を見ることはあなたのためになる。ヒマラヤに初登頂した女性は「低いところで転んだから、高い山に登れると言うよ」と言い「コンテンポラリーダンスを始めたら」と薦めた。

椅子を相手にダンスを練習するロバッソン(本人出演)に、ジョジアースが「椅子の代わりにエリーズを使ったら」と勧めた。死人の役だった。バッソンはエリーズの上手さに驚いた。そこにメディが現れ「ロバッソンは浮気者だ」と注意した。(笑)

カンパニーの人たちがブルターニュ海岸の散歩に出かける

エリーズも誘われて散歩に出た。そこで目にしたのは風を使って自由なダンスを披露するカンパニーの人たちの姿だった。エリーズも加わり手を繋いで輪になって踊った。

ホフェッシュが「君は踊れる!弱さが素晴らしい。新しいスーパーリーダーになれる。クラシックは形が決まっているから完璧を目指して努力できる。だが、我々のダンスは全く違う。君の中にある弱さや迷いや恐れこそが興味を引くし、人間らしい。そういうエネルギーの使い方を学び、踊り方を考える。不完全で良いんだ、君の身体は生きたがっている」とコンテンポラリーダンスを勧めた。

クラブでロバッソンが言い寄ってきたが、エリーズはきっぱりと断った。

夜、エリーズは起き出して踊ってみて、痛みのないやわらかい踊りに変えてみる。

 カンパニーの練習に参加してみる

ホフェッシュの指導に合わせメディと組んで死体を踊ってみる。上手く踊れる。

エリーズは料理をしながら、踊りに加わるようになっていった。そしてメディと結ばれた。

ヤンがゴアから戻りエリーズを訪ねてきて結婚を申し込んだが、エリーズは「好きな人がいる」と断わった。ヤンが悔しがって泣いた。

カンパニーがパリに帰る日

ホフェッシュが「パリに戻って一緒にやらないか」とエリーズを誘った。

パリの戻ったエリーズは「コンテンポラリーは嫌い」と言った仲間に

「バレエは天に向かう、コンテンポラリーは地面を掴む感じ、地面との関係がリアルな気がする。バレーは地面を怖がる。今は地面から逃げるより求めている」とコンテンポラリーダンスで生きることを伝えた。

父アンリに会い、メディを紹介して、舞台に戻ることを伝え、コンテンポラリーダンスを見せた。公演を目指して日夜練習に励んだ。

ホフェッシュ・シェクター振付のコンテンポラリーダンス公演が始まった

これがすばらしい!バレエとちがって、衣装も色々、裸足で群れになり、声を出し、地を這うようにダイナミックに踊る。ラストはエリーズのソロで終った。大きな拍手だった。

エリーズは新しい人生を踏み出した 

まとめ

ストーリーはシンプル。ダンスで見せる作品だった

怪我でバレエダンスを一度は諦めたダンサーの再生の物語。怪我をしてみて、別の世界に生きる人に出会い世界が開け、愛し合う人に巡り遭い、自分の身体に合った踊りを見出すという、普遍的な物語だった「裸足になって」(2022)に重なる部分があるが、こちらはパリ・オペラ座バレエ団が踊るのだからスケールが違う。

コンテンポラリーダンスはリアルで本物の精神がある。高みを求め、光を捜し、人間より大きいものを求めるダンスだ」というエリーズの言葉。まさに踊ることが出来なくなったエリーズが苦しみもがいた末に掴んだ言葉だった。

「コンテンポラリーは地面を掴む感じ、地面との関係がリアルな気がする。今は地面から逃げるより求めている」というコンテンポラリーダンスに対するエリーズの感覚がよく分かる作品だった。

この作品の凄いところは、冒頭で15分間にわたるバレエダンスの中でバレリーナの鍛え抜かれたダンスを見せ、怪我で挫折して、コンテンポラリーダンスの魅せられ人生を取り戻す物語を、本物のバレエダンサーが演じたこと

マリオン・バルボーがドラマの主人公というのが売りの作品だった。

 バルボーが映画に出演するのも、パリ・オペラ座バレエ団のトップ“エトワール”を目指すには、ベットシーンまであるんだから、より広い表現力を身につけねばとの思いがあったのかなと思った。

エリーズがコンテンポラリーダンスに魅入られていく過程で、ブルターニュの海岸で海風に吹かれるままに踊る自然発生的なダンスがすばらしさかった。踊りに形はない、コンテンポラリーダンはこれだと、踊りたくなった!

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